『機甲都市 伯林』(2000~01年 メディアワークス電撃文庫)
『機甲都市 伯林』(きこうとしベルリン)は、川上稔の代表作「都市シリーズ」内の作品シリーズである。「都市シリーズ」の通算第6作だが、シリーズ第1作『パンツァーポリス1935』(1997年)の直接の続編にあたる。全5巻の大長編で、巻ごとに『パンツァーポリス19××』というサブタイトルがつく。
1937~44年におけるドイツ首都のベルリンを中心に描いており、前作『パンツァーポリス1935』に対して「新伯林」と呼ばれる。都市シリーズの第2期第1作として始まった。作品世界が前作を遥かに凌ぐスケールに拡大している。文庫版イラストはさとやすが担当した。
あらすじ
こことは異なる世界のドイツ。
1935年、ある新型航空戦艦を2人の男が奪取して逃走。ドイツ軍は奪還のために追跡するが、新型機の拿捕は失敗に終わる。新型航空戦艦はこの時、人類の大気圏外の飛行を世界で初めて成功させ、これを参考に、ドイツ軍の極秘機関「G(ゲハイムニス)機関」が強臓式(アインゲヴァイデ)航空戦艦「疾風(シルフィード)」の建造を開始する。
1937年、「疾風」が開発者の死亡により暴走し、「ドイツを救う」と予言されていた救世者(メサイア)を拉致するという事件が起きる。この事件は隻腕の男が解決すると予言され、事実その通りになったが、救世者はドイツ国外のアメリカに亡命するという結末になる。
1939年、第二次世界大戦勃発。G機関が建造していたガルド級航空戦艦の一番艦が反独隊(反戦独立部隊)によって破壊される。この事件の後、救世者は反独隊に入隊する。
1942年、ドイツの重要都市ケルンが大空爆され、その際にドイツのガルド級航空戦艦一番艦「葬送曲(レクイエム)」と、イギリスの言詞砲搭載型双胴航空艦「大時報(ビッグシグナル)」が相討ちになり轟沈。その後、ドイツは超弩級要塞「トリスタン」を完成させ、ドイツ上空に防御用の天蓋を発生させたことにより、ドイツへの空爆攻撃は事実上不可能となる。
1943年、G機関が救世者を確保するも、再び国外に逃がしてしまう。救世者は反独隊と共にドイツに侵攻し、「トリスタン」を破壊する。
作中での関連年表
962年 「救世者」がドイツを統一し、神聖ローマ帝国が建国される(第一帝国)。
1415年 ドイツ北東部の都市ベルリン、神聖ローマ帝国の構成国ブランデンブルク選帝侯領の首都となる。
1698年 イギリスの発明家トーマス=セイヴァリ(1650~1715年)により「精霊式機関模型」が創られる。
1701年 ブランデンブルク選帝侯フリードリヒ3世、神聖ローマ帝国の認可によりプロイセン王国初代国王フリードリヒ1世として即位。
1710年 イギリスの発明家トーマス=ニューコメン(1664~1729年)により精霊式機関が実用化される。
1853年 江戸幕府治世下の日本にアメリカ合衆国の黒船来航。鎖国制度廃止。
1871年 プロイセン王国を母体としたドイツ帝国成立(第二帝国)。
1894年 イギリスに移民したアメリカ人発明家ハイラム=マキシム(1840~1916年)による精霊式飛行機の史上初飛行が成功する。
1901年 ドイツ人冒険家フーバー=タールシュトラーセ(22歳)、エジプトで「千王母の墓」を発見する。
1906年 ドイツ人技術者パウル=ヴァーグナー(31歳)、精霊式機関を応用した重力変化に成功する。
1914年 第一次世界大戦勃発。
1916年 フーバー、戦争中のフランスで「大空洞」を発見する。
1918年 ドイツ革命が勃発し、皇帝ヴィルヘルム2世のオランダ亡命によりドイツ帝国が崩壊、ドイツ共和国成立。ドイツ降伏。
1919年 ヴェルサイユ条約の調印により、第一次世界大戦終戦。
1920年 ドイツ、世界初の有人気圏外探査船の打ち上げを試みるも、失敗。
1935年 ベルリン騒乱(第1作『パンツァーポリス1935』の内容)。
1937年 「疾風」事件(第1巻の内容)。
1938年 大ドイツ帝国宣言(第三帝国)。
1939年 第二次世界大戦勃発(第2巻の内容)。
1940年 大ドイツ帝国G機関、言詞塔砲搭載ガルド級戦艦「葬送曲」完成。
1941年 大日本帝国、大ドイツ帝国に呼応してアメリカ合衆国に宣戦布告。
1942年 連合国軍、ドイツの軍需都市ケルンを大空爆(第3巻の内容)。
1943年 新ベルリン騒乱(第4・5巻の内容)。
1945年 ドイツ降伏。
登場キャラクター(新ベルリン騒乱時)
ヘイゼル=ミリルドルフ
主人公。第1作『パンツァーポリス1935』に登場したドイツ空軍少将オスカー=ミリルドルフの娘。1922年生まれ。
猫の獣人(母)と人間(オスカー)とのハーフであり、恐怖を感じたり興奮したりすると猫に獣詞変(フレクティーレン 変身のこと)する特徴がある。
1937年時の異族判定の際に片目を失明し、強臓式義眼「救世者」を移植されている。
ドイツ空軍中将ハイリガーの娘とは同級生だった。
ダウゲ=ベルガー
「野犬(ヴィルト・フント)」のあだ名を持つ異族(ハイデンガイスト)。強臓式武剣「運命」の所持者。1914年生まれ。
架空都市ロンドンの出身で、神の遺伝詞を持つが、能力的にはただの人間である。
元々は逃がし屋だったが、後に反独隊に入隊。重騎の扱いに長ける。
ヘラード=シュバイツァー
ドイツG機関空軍部所属の中尉(後に大尉)。「音速裁断師(ツェアステーラー・シャルマオアー)」の異名を持つ全方位結界師でもある。
ノイシュヴァンタインで復活した緑竜から病院を護る際に片腕を失い、巨大な強臓式義腕「英雄」を所持することになった。
ベルガーとは高校の同窓。
ベルマルク・フィーア
アイラム式自動人形ベルマルクシリーズの第4号。「射撃人形(シーセラインプッペ)」の異名を持つ。
ヘラード=シュバイツァーの副官で、強臓式拳銃「魔弾の射手」の所持者。
マルシュ=ガント
ドイツG機関開発部第二企画班長。強臓式航空戦艦「疾風」の設計者。
本人は死亡しているが、意識遺伝詞が「疾風」に記乗している。ベルガーとは高校の同窓生だった。
レーヴェンツァーン=ネイロル
ドイツG機関の司令。ヘルベルトの養子。
「速読歴(ゾフォルト・レーザー)」の称号を名乗るが、自身には予言を詠む能力はない。
強臓式心臓「新世界」を移植されている。
アルフレート=マルドリック
ドイツG機関陸軍部第一師団・第一独立機動重騎小隊の小隊長。「皇帝剣(カイザー・シュベールト)」の異名を持つ。
自身の声帯を移植した強臓式重騎「皇帝」(後に「皇帝改」)に乗る重騎師。
ボルドーゾンから欧州五行総家を継承したマルドリック家の次男であり、「幻崩の衛士(ハウンド)」としての任を務める。異族を嫌う。
救世者ゆかりの神形具「純皇(ラインケーニッヒ)」を操る五行師(バスター)でもある。ベルガーとは高校の同窓生。
ベルマルク・ナイン
アルフレートの部下で、「人形双騎師(ドッペルパンツァー)」の異名を持つ自動人形。
「E(アイゼンリッター)計画」により、その脳と脊髄がそれぞれ「蒼獅子改」と「朱獅子改」に組み込まれた。
グラハム=カールスルーエ
ドイツG機関副長にして、全軍の大将軍。カールスルーエ家の長男で、ローゼには「大兄様」と呼ばれる。
ローゼと同じく言障患者であるため、全身を義体化し、感情喪失機構を組み込んでいる。重騎「銀獅子」に乗る。
五大頂とG機関を組織し、フロウベルをその長に据えた。実質的なG機関の創設者。
ハイリガー=カールスルーエ
カールスルーエ家の次男。ローゼには「小兄様」と呼ばれる。
ドイツ空軍中将だったが、後にグラハムの遺志を汲んでG機関総帥となる。「統率者(コマンディーレン)」の異名を持つ。
過去に反独隊の人狼将軍ペイルとの戦闘で両腕を失い、強臓式義腕「悲愴」を装着している。
両肩に異族を材料とした言詞板(フロギストン・プラッテ)を収納しているが、右肩の2枚は妻と娘を加工したものである。
グラハムの機体を改造した重騎「銀獅子改」に記乗する。
ローゼ=カールスルーエ
カールスルーエ家の末妹。強臓式ガルド級航空戦艦「葬送曲」を操る少女。
言障に犯されているため、「葬送曲」が完成するまではG機関の地下で眠っていた。
カール=シュミット
G機関陸軍部長にして五大頂(フェンフト・ライトハメル)の一人。「鋼鉄騎師」の異名を持つ。ジャンヌの夫。
第一次世界大戦において身体を失い、「E 計画」によって巨大な緑色の重騎「カール・シュミット」と合一している。
ヘルベルト=ミューラー
G機関空軍部長にして五大頂の一人。「不動騎師(シュタントハフト)」の異名を持つ。
グラハムの命により、レーヴェンツァーンの義父になっていた。
リーリエ=テルメッツ
G機関海軍部長にして五大頂の一人。「水流師(ヴァッサーマイスター)」の異名を持つ。
風水師であり、自身の涙を材料とした強臓式竪琴「月夜(モーントナハト)」を使って水竜を生む。
「都市シリーズ」第2作『エアリアルシティ』に登場した「幻崩の衛士」モイラ(エリス=テルメッツ)の姉。
ガリュー=ビッツマン
G機関情報部長にして五大頂の一人。「千里眼(ヘルゼーエン)」の異名を持つ禿頭の老人。
特殊な紋章術を自在に操る。
コンラート=エルリッヒ
G機関開発部長にして五大頂の一人。「穴熊(ダックス)」の異名を持つ白髪の老人。
技術を愛する技術者であり、日本の神器を改良したり、独断で「疾風」を改造したりする。
強臓式航空戦艦「疾風」の設計者であるG機関開発部第二企画班長マルシュ=ガントの上司だった。
ジャンヌ=シュミット
G機関陸軍部副部長。「鋼華(アイゼンブルーメ)」の異名を持つ。
カールの妻で、リーリエとは知己の仲である。
コレール=セバン
反独隊大尉。輸送戦艦「 rb-21」の艦長。伝式四十七符(テリング・フルカード)を操り、「高空魔術師(ハイランディスト)」の異名を持つ。
ペイル=ホース
「人狼将軍(ハーディストウルフ)」のあだ名を持つ異族。元は傭兵だったが、後に反独隊隊長となる。
両腕は義腕「第三月帝」。また、過去にドイツ空軍騎師時代のハイリガーとの戦闘で右目を潰され、隻眼となっている。
「先生」(レーラア)
反独隊の諜報員。「先生」のあだ名を持つ五行師(バスター)。ベルガーと仲がいい。26歳。
エリンギウム=エルダーリンク
図書館司書の娘で、異族。
かつてベルガーやヘラード、アルフレート、マルシュの友人だった。彼ら4人に重要な「約束」を課している。
ある事件がもとで記憶を失っている。また、肉体に大きな傷痕を持つ。1942年に結婚。旧姓はイルヘイム。
ベンドゥーター・イースト
自動人形。イギリスのビッグベン3姉妹の一人で、東方の役。「大時報」に搭載された準言詞塔砲の加圧を行う。
ミハイル=シュリアー
「都市シリーズ」に共通して登場するマイアーの孫。新ベルリン騒乱の顛末を記録する著者。父はマクシミリアン。
レーヴェンハイト=ネイロル
レーヴェンツァーンの父。「速読歴」の異名を持つ。1918年のイギリス襲撃事件で死亡している。
フロウベル=ネイロル
レーヴェンツァーンの母。旧姓はイルヘイム。「速読歴」の異名を持つ。
G機関の創設者であり、かつての長でもあった。レーヴェンツァーンが8歳だった1926年に心臓疾患で死去している。
ハイリガー、グラハム、ベルテヒト、レーヴェンハイトの4人に、ある「約束」を課している。
G(ゲハイムニス)機関とは……
総員207名のドイツ竜騎師団の末裔で構成される高機密性組織。正式名称は「大ドイツ帝国守護竜騎師団(ゲルマニアドラグーン)五大部」。
10世紀に神聖ローマ帝国(第一帝国)を建国した「救世者」を中心にしてドイツ南西部の「黒き森」アルヘイム地方で結成され、13世紀以降はドイツ北東のプロイセン地方に拠点を移した。
1871年にプロイセン王国がドイツ帝国(第二帝国)に発展してからは、ドイツ国軍から完全に独立した、政府への全権介入さえもが可能な全国組織になった。1919年の第二帝国崩壊後も、極秘の国防機関として本部をアルヘイムに移して機能し続けている。
最高責任者は「騎師団長(速読歴)」で、それを補佐する「副長(大将軍)」と、陸軍・海軍・空軍・開発・情報の5部門を各自統括する「五大頂」が機関を運営している。
あまりに危険であるがゆえに、歴史上から消された喪失技巧(オーバーゲハイムニス)を復活・改良してドイツの軍事力に加えようとする。
反独隊とは……
正式名称は「反戦独立部隊」。
ヨーロッパの緊張状態を避けてアメリカに亡命した資本家たちが、世界各国の速読家(ゾフォルト・レーザー)たちの世界滅亡の予言を受けて、ヨーロッパの情勢を把握するために1934年に共同で創立した民間の情報調査機関が母体となっている。
その後、ヨーロッパ現地での諜報活動に実力行使が必要になったことと、逆にヨーロッパ各国の政府機関から情報の提供を求められるようになったことから、1937年以降は複数の企業体をスポンサーとする極秘の軍事部隊に発展した。
部隊の主力は異族(ハイデンガスト)が多く、1939年時点ではアメリカ・アリゾナ州に大規模な訓練基地を持ち、陸上部隊・航空部隊ともに四個師団なみの軍事力を擁している。
喪失技巧を確保・封印する他、各国軍隊の過度な実力行使や戦争商人の横行を抑止する役目も果たす。
機甲都市・新ベルリン(ゲルマニア)とは……
1939年7月ごろから建設が開始され、翌40年9月に完成した、大ドイツ帝国首都ベルリン直下の地下要塞都市。
地上は「緑地帯・歴史的建造物・帝国軍の地上施設」、地下第一層は「民間生産工場」、地下第二層は「ベルリン市民居住区」、地下第三層は「民間と軍事の物資倉庫・地上への鉄道路線」、地下第四層は「軍需工場・地下換気機能の中央制御機構」、最深部の地下第五層は「帝国軍大本営・政府要人の避難施設」で構成されている。
この六層構造と、近郊に配置された超弩級要塞「トリスタン」によって、新ベルリンは戦時下の大ドイツ帝国の首都機能を果たす。
航空戦艦
dp-xxxx 疾風(シルフィード)
第1作に登場した宇宙航空戦艦「dp-xxx 皇城(カイザーブルク)」をもとに、ドイツG機関が開発した強臓式航空戦艦。完成直前に死亡した設計者マルシュ=ガントの意識遺伝詞が記乗している。全長約27メートル。
仮発動(ベヴァイゼン)でP 機構を動かし、駕発動(オーバー・ベヴァイゼン)で機甲紋章「疾竜」が起動する。
1937年、マルシュの意識を乗せたまま暴走し、ヘイゼルを取り込み宇宙を目指そうとしたが、それ以前に撃ち込まれていた遺伝詞還元弾の影響を受けて崩壊をはじめ、後を追ってきたベルガーとシュバイツァーにヘイゼルを開放した後に自壊した。
その後、パウル=ヴァーグナー研究所の跡地から機動停止していた「疾風」が発掘され、G機関による移送中に奪取。自己修復を行いつつベルガー、そして「先生」と共にヘイゼル救出のためハンブルク基地を襲撃する。
アルフレートによって中破し、最終的には「魔王」との一騎打ちを行い、相討ちとなった。
その後、G機関によって回収され、完全状態への修復とヘイゼルに合わせた風水神形具化の改造が行われた後に「新ベルリン」最下層に封印。新ベルリンにおけるヘイゼルの「救世者」の仮発動によって目覚め、戦いに参加。その際、「魔王」との再戦で一蹴するなど力の差を見せた。
その後、暴走した「トリスタン」との戦いにおいて、中途で撃沈した連合国軍の自突艦 MO、墜落した「葬送曲」、さらに皆から集めた記憶を有する物品などを飲み込み、トリスタンと対決。救世者と共に過去に降りた。
dlp-444lsx 葬送曲(レクイエム)
ドイツG機関の開発した強臓式航空戦艦。8隻の母艦を組み立てて作り上げるガルド級戦艦一番艦。全長1.1キロメートル。
8艦はそれぞれ左右前後3隻、中央前後2隻をつなげた双胴艦形で構成されており、この構成は後の『境界線上のホライゾン』における「武蔵」にも受け継がれている。
言詞砲を搭載するか、または言実詞により機甲紋章「駆天竜」を発動できる。
艦長(強臓式保有者)はローゼ=カールスルーエ。素体には彼女の身体組織を用いていると思われる。
彼女の本体は小さな赤珠となっており、艦内には大気の流体を使って立体映像のように現れることができる。
1942年、ケルン防衛の最中にイギリス軍の「大時報」の射撃によって撃沈され、その時に大破した「銀獅子」に記乗していた兄グラハムともども死亡する。
その際、彼女の本体であった赤珠はグラハムによって銀獅子に収められており、のちにヘイゼルが銃弾を受けた時の身代わりとなって砕けたベルガーのペンダントに移された。
魔王(エルルケーニッヒ)
ドイツG機関が「疾風」をもとに開発した強臓式航空戦艦。最終的に全部で8艦が存在した。全長27メートル。
「疾風」とは違い完全な無人機で、「新世界」の仮発動によって制御され、独自の言実詞を用る。
外観は「疾風」とほぼ同一だが、メインのカラーリングが青から黒に変更されている。また無人機であるため艦橋部は無い。
1943年7月のハンブルクにおける初出撃時は、救世者と共に時を超え修復のままならない「疾風」と戦い、相討ちのような形で墜落。その後、「疾風」と共に回収され、その際に量産型として同型艦7艦が建造される。
しかし、43年8月のベルリンにおける、修復され完全状態となった「疾風」との戦闘時に簡単に敗北する。その後出撃した量産型7艦は途中で制御不可能になり墜落した。
その後の「トリスタン」暴走ではハイリガーに操られて機甲紋章を展開、ドラゴンの姿となって再び「疾風」とヘイゼルの前に立ちふさがった。その時、最低1艦ずつがビッツマンとエルリッヒの両名によって撃破されている。
航空機
王飛竜(ケーニッヒ・ギドラー)
G機関最速の戦略偵察機。
王双剣(ドッペルシュナイデ)
G機関の最新鋭双胴艦。広範囲弾を用いた後部防御に優れる。
銀/銀改(ズイルバー/ノイエ・ズイルバー)
G機関の戦略輸送艦。全長100メートル。
V0/V1
ドイツ軍の巡航型自突艦。神術爆弾を搭載して、自動操縦で標的に突撃する。もともとはG機関の戦略輸送艦「銀」の同型艦として設計された。全長100メートル。
rb-21
反独隊の航空輸送戦艦。双胴式で、右舷上部にはジプシークイーンが描かれている。全長46メートル。
大時報(ビッグシグナル)
連合国軍の双胴式航空艦。準言詞塔砲を搭載している。
MO
連合国軍の自動突撃兵器(自動制御爆撃艦)で、1943年にドイツ軍の自突艦「 V0」の情報をもとに開発された。内部に広範囲型爆弾を搭載し、一撃で都市を破壊する威力を持つ。全長100メートル。
「トリスタン」暴走を知った連合軍によって放たれるも、ドイツ空軍と「疾風」の迎撃によって破壊され、その爆発のエネルギーもろとも「疾風」に吸収された。
第二次世界大戦終結後は、大陸間巡行弾などの超々音速兵器の基礎となり、現代戦争の様相を一変させていく。
騎
蒼獅子(ブラウ・ローヴェ)
ドイツ空軍の艦上防御用重騎(グレーセ・パンツァー)。全高7.3メートル。凌駕紋章「空牙(ルフト・ファング)」による飛行を可能とする。V0 を迎撃するためにベルガーが搭乗し、特攻をかける形で大破した。
黒獅子(シュバルツ・ローヴェ)
ドイツG機関陸軍部の重騎。
「皇帝」の試用騎体で、強臓式の試作部品が組み込まれ、対空飛行も可能とする汎用型。1939年にベルガーによって奪取されて以後、彼の乗騎となった。
その後もベルガーと共に転戦するが、43年7月のハンブルクにおいて「皇帝改」との戦闘によって中破し、その状態のまま航空艦隊の対空砲火を受けて大破する。
黒獅子改(ノイエ・シュバルツ)
ベルガーの血液から部品を新調した重騎。「皇帝」から受け継いだ戦闘関連記録を内蔵している。凌駕紋章は「白皇」。武装は「運命」の他に、「皇帝」の使っていた神形具の大剣も常用の武装として有すると思われる。
43年8月の「新ベルリン」における戦闘において、ベルガーの乗騎として参加。「言詞加速砲」による砲撃後、「トリスタン」内部に突入、門扉に突っ込む形で行動不能となる。
その後「トリスタン」暴走時に「新世界」の仮発動を受け、「皇帝」の力を持って起動。最後の一撃の直前に、「救世者」たるヘイゼルに道を譲る形で撃破された。
皇帝/皇帝改(カイザー/ノイエ・カイザー)
アルフレートの声帯を部品とした強臓式重騎。全高10メートル。機械式の推進装置を有し、凌駕紋章を展開しない状態でも対空飛行が可能。
1939年に完成し、初戦において量産型重騎2騎を圧倒するも、ベルガーの奪取した「黒獅子」と交戦、神形具の剣を「運命」によって断たれる。
43年7月、ハンブルク基地において改造中、ヘイゼルの「救世者」の仮発動を受けて自立起動。カール・シュミットと交戦し、これを退けるも、アルフレート自身によって主導権を取り返された。
その後のベルガーとの交戦後、ハンブルク空爆部隊を伴った航空艦隊を北海で迎撃した際に撃墜されたが、それらの記憶と神形具の大剣は「黒獅子」に受け継がれ、また「純皇」はヘイゼルの手に渡った。
蒼獅子改/朱獅子改(ノイエ・ブラウ/ノイエ・ツィノーバ)
E 計画により、ベルマルク・ナインの脳と脊髄が合一している重騎。意志を用いず凌駕紋章を展開することが可能である。
「蒼獅子改」は88ミリ徹甲実弾を発射する長銃を、「朱獅子改」は左手に大盾を持ち、内部に短剣を格納している。
基本的に「朱獅子改」が防御、「蒼獅子改」が攻撃を担当する。どちらも全高9メートル。
銀獅子(ズィルバー・ローヴェ)
グラハムの記乗する銀色の重騎。機械式推進装置によって凌駕紋章に頼らない飛行能力を得ており、その点において「黒獅子」と同じく「皇帝」の試作機となった。全高7.3メートル。
1942年、ケルン防衛の際に大破。残骸は回収され、改修されて「銀獅子改」となった。
銀獅子改(ノイエ・ズィルバー)
ハイリガーの記乗する銀色の重騎。大破した「銀獅子」を修復したもの。
43年8月の「新ベルリン」における攻防戦において人狼将軍ペイル=ホースと対決し、「背翼が無いと飛行が不可能」という固有の弱点をペイルに突かれ、地上からトリスタンの最下層まで落下し大破した。
カール・シュミット
カール=シュミットの合一した陸戦用重騎。全高25メートル。本体は真鍮色、装甲服は当時のドイツ陸軍軍服の意匠である濃緑色。
他の重騎に比べてかなり大型であり、装甲服には「航空艦用の浮遊紋章をハニカム状にして仕込んである」など、重量軽減に配慮がなされているようである。
その巨体(蒼獅子改が抱えるようにして使っていた88ミリ徹甲長銃を「拳銃サイズ」として扱っている)に加えてかなりの重武装であり、2門の竜詞砲を背中に背負う他、多数の火砲を有している。
なお、背中側に副座を備えており、火器管制を分業していると考えられる。
狗鎧(パンツァー・フクス)
凌駕紋章で凍気をまとう重騎。1937年のベルリンでベルガーと相対したが、撃破された。
黒犬(ヤークト・フント)
量産型中騎。肩の装甲板が厚い。第5作『閉鎖都市 巴里』にも同種の騎体が登場している。
銃砲・火器
言詞砲・言詞塔砲(独:ベイベルカノーネ/英:バベルカノン)
加速させた言詞の言詞格を開放し、照射する兵器。対象空間を広範囲に言詞崩壊させる。
準言詞砲と比べて複雑な機構を必要とするが、長時間の照射や連射が可能である。
準言詞砲・準言詞塔砲(独:クルツ・ベイベル/英:バベルガン)
加速させた言詞の言詞格を固め、弾丸として発射する兵器。効果は言詞砲とほぼ同じ。
言詞砲と比べ簡易な機構で済むものの、弾丸を生成するために長時間の加圧が必要となる。
竜詞砲・竜詞塔砲(独:ドラッヘ・カノーネ/英:ドラゴン・ブレス)
竜の吐く竜詞砲を機械に置き換えて再現した兵器。遠距離用である。
準竜詞砲・準竜詞塔砲(独:ギドラー・カノーネ/英:サブ・ブレス)
竜の吐く竜詞砲を機械に置き換えて再現した兵器。竜詞砲よりも小型のものを指す。
言詞銃(ベイベルゲヴェーア)
超弩級要塞「トリスタン」に搭載された言詞兵器。ガルド級二番艦の言詞砲を転用している。
機甲浄弾(パンツァー・ライニグン)
対異族用の武器。長さ30センチメートルほどの鉄製の筒から霊木の杭を打ち出す。
魔弾の射手(フライシュッツェ)
ベルマルク・フィーアの持つ強臓式拳銃。歯と骨を材料にしている。
仮発動ではその名の通り魔弾を射出し、駕発動であらゆる機械を分解する。
神形具(ヴェルクツォイク)
純皇(ラインケーニッヒ)
神聖ローマ帝国皇帝からマルドリック家に預けられた、救世者ゆかりの神形具。純白。アルフレートが使っていたが、彼の撃墜と共にヘイゼルへと受け継がれ、過去に渡った。
月夜(モーントナハト)
リーリエの扱う強臓式竪琴。涙を材料としている。言実詞により水を風水し、水竜を生む。
義体
救世者(メサイア)
ヘイゼルの持つ強臓式義眼。仮発動で他の強臓式機械を操作し、駕発動で周囲の遺伝詞を読む。素体にはマルシュ=ガントの目が使用されているため、青い色の人間の目である(ヘイゼル自身の目は猫目)。
新世界(ノイエ・エールデ)
レーヴェンツァーンの持つ強臓式心臓。仮発動で他の強臓式機械を操作し、駕発動で超弩級要塞「トリスタン」の加圧を行う。
英雄(デア・ヘルト)
シュバイツァーの持つ強臓式義腕。長杖を射出し、周囲の空間を言実化する。
悲愴(トラーギシュ)
ハイリガーの持つ強臓式義腕。素体は彼の両腕と思われる。仮発動で機械に仮初の命を与え、駕発動ではあらゆる機械に記乗できる。
燃料として異族を加工した高出力言詞板を必要とし、其々の肩内部に二枚ずつ収めることが可能。駕発動には2枚とも使用するが、仮発動は1枚で済むものと思われる。
右肩部に収められている言詞板は過去に「加工」されたハイリガーの妻と娘である。
「新ベルリン」における戦闘によって左腕側は失われ、残った右腕に残っていた言詞板を燃料に駕発動して「トリスタン」に記乗した。
運命(ゲレーゲンハイト)
ベルガーの持つ強臓式武剣。精燃を動力として「運命の糸を断つ」闇の刃を発生させる。
ある理由で、駕発動は使えないことになっている。
祖国(ファーターラント)
ドイツの強臓式地脈加圧炉。ドイツ国内のみでなく、世界各地に建造されている。
高純度の精燃を生成する。また、ドイツの地脈を改造し、全てのドイツ国民に言実化能力を付与できる。
トリスタン
新ベルリン近郊に建造された「祖国」にガルド級戦艦二番艦を合体させた超弩級要塞。全高は1.6キロメートルを超える。
ドイツ上空に防空用の「天蓋」を発生させるほか、各地の「祖国」への加圧支援などを行う。
最終的な目的は、地脈から時虚遺伝詞を抽出し、「破滅の転輪」を起こして世界の崩壊を防ぐことである。
1942年6月以降は、G機関本部の機能も兼務するようになった。
伝式四十七符(テリング・フルカード)
コレールが操る「幻実都市 出雲」の占術符。奏の22符、騒の22符、噤の3符から成る。
騒の10番「破滅の転輪(ニーベルンゲ)」…… 何が起こるか分からない不幸の連鎖を予兆する。
『機甲都市 伯林』(きこうとしベルリン)は、川上稔の代表作「都市シリーズ」内の作品シリーズである。「都市シリーズ」の通算第6作だが、シリーズ第1作『パンツァーポリス1935』(1997年)の直接の続編にあたる。全5巻の大長編で、巻ごとに『パンツァーポリス19××』というサブタイトルがつく。
1937~44年におけるドイツ首都のベルリンを中心に描いており、前作『パンツァーポリス1935』に対して「新伯林」と呼ばれる。都市シリーズの第2期第1作として始まった。作品世界が前作を遥かに凌ぐスケールに拡大している。文庫版イラストはさとやすが担当した。
あらすじ
こことは異なる世界のドイツ。
1935年、ある新型航空戦艦を2人の男が奪取して逃走。ドイツ軍は奪還のために追跡するが、新型機の拿捕は失敗に終わる。新型航空戦艦はこの時、人類の大気圏外の飛行を世界で初めて成功させ、これを参考に、ドイツ軍の極秘機関「G(ゲハイムニス)機関」が強臓式(アインゲヴァイデ)航空戦艦「疾風(シルフィード)」の建造を開始する。
1937年、「疾風」が開発者の死亡により暴走し、「ドイツを救う」と予言されていた救世者(メサイア)を拉致するという事件が起きる。この事件は隻腕の男が解決すると予言され、事実その通りになったが、救世者はドイツ国外のアメリカに亡命するという結末になる。
1939年、第二次世界大戦勃発。G機関が建造していたガルド級航空戦艦の一番艦が反独隊(反戦独立部隊)によって破壊される。この事件の後、救世者は反独隊に入隊する。
1942年、ドイツの重要都市ケルンが大空爆され、その際にドイツのガルド級航空戦艦一番艦「葬送曲(レクイエム)」と、イギリスの言詞砲搭載型双胴航空艦「大時報(ビッグシグナル)」が相討ちになり轟沈。その後、ドイツは超弩級要塞「トリスタン」を完成させ、ドイツ上空に防御用の天蓋を発生させたことにより、ドイツへの空爆攻撃は事実上不可能となる。
1943年、G機関が救世者を確保するも、再び国外に逃がしてしまう。救世者は反独隊と共にドイツに侵攻し、「トリスタン」を破壊する。
作中での関連年表
962年 「救世者」がドイツを統一し、神聖ローマ帝国が建国される(第一帝国)。
1415年 ドイツ北東部の都市ベルリン、神聖ローマ帝国の構成国ブランデンブルク選帝侯領の首都となる。
1698年 イギリスの発明家トーマス=セイヴァリ(1650~1715年)により「精霊式機関模型」が創られる。
1701年 ブランデンブルク選帝侯フリードリヒ3世、神聖ローマ帝国の認可によりプロイセン王国初代国王フリードリヒ1世として即位。
1710年 イギリスの発明家トーマス=ニューコメン(1664~1729年)により精霊式機関が実用化される。
1853年 江戸幕府治世下の日本にアメリカ合衆国の黒船来航。鎖国制度廃止。
1871年 プロイセン王国を母体としたドイツ帝国成立(第二帝国)。
1894年 イギリスに移民したアメリカ人発明家ハイラム=マキシム(1840~1916年)による精霊式飛行機の史上初飛行が成功する。
1901年 ドイツ人冒険家フーバー=タールシュトラーセ(22歳)、エジプトで「千王母の墓」を発見する。
1906年 ドイツ人技術者パウル=ヴァーグナー(31歳)、精霊式機関を応用した重力変化に成功する。
1914年 第一次世界大戦勃発。
1916年 フーバー、戦争中のフランスで「大空洞」を発見する。
1918年 ドイツ革命が勃発し、皇帝ヴィルヘルム2世のオランダ亡命によりドイツ帝国が崩壊、ドイツ共和国成立。ドイツ降伏。
1919年 ヴェルサイユ条約の調印により、第一次世界大戦終戦。
1920年 ドイツ、世界初の有人気圏外探査船の打ち上げを試みるも、失敗。
1935年 ベルリン騒乱(第1作『パンツァーポリス1935』の内容)。
1937年 「疾風」事件(第1巻の内容)。
1938年 大ドイツ帝国宣言(第三帝国)。
1939年 第二次世界大戦勃発(第2巻の内容)。
1940年 大ドイツ帝国G機関、言詞塔砲搭載ガルド級戦艦「葬送曲」完成。
1941年 大日本帝国、大ドイツ帝国に呼応してアメリカ合衆国に宣戦布告。
1942年 連合国軍、ドイツの軍需都市ケルンを大空爆(第3巻の内容)。
1943年 新ベルリン騒乱(第4・5巻の内容)。
1945年 ドイツ降伏。
登場キャラクター(新ベルリン騒乱時)
ヘイゼル=ミリルドルフ
主人公。第1作『パンツァーポリス1935』に登場したドイツ空軍少将オスカー=ミリルドルフの娘。1922年生まれ。
猫の獣人(母)と人間(オスカー)とのハーフであり、恐怖を感じたり興奮したりすると猫に獣詞変(フレクティーレン 変身のこと)する特徴がある。
1937年時の異族判定の際に片目を失明し、強臓式義眼「救世者」を移植されている。
ドイツ空軍中将ハイリガーの娘とは同級生だった。
ダウゲ=ベルガー
「野犬(ヴィルト・フント)」のあだ名を持つ異族(ハイデンガイスト)。強臓式武剣「運命」の所持者。1914年生まれ。
架空都市ロンドンの出身で、神の遺伝詞を持つが、能力的にはただの人間である。
元々は逃がし屋だったが、後に反独隊に入隊。重騎の扱いに長ける。
ヘラード=シュバイツァー
ドイツG機関空軍部所属の中尉(後に大尉)。「音速裁断師(ツェアステーラー・シャルマオアー)」の異名を持つ全方位結界師でもある。
ノイシュヴァンタインで復活した緑竜から病院を護る際に片腕を失い、巨大な強臓式義腕「英雄」を所持することになった。
ベルガーとは高校の同窓。
ベルマルク・フィーア
アイラム式自動人形ベルマルクシリーズの第4号。「射撃人形(シーセラインプッペ)」の異名を持つ。
ヘラード=シュバイツァーの副官で、強臓式拳銃「魔弾の射手」の所持者。
マルシュ=ガント
ドイツG機関開発部第二企画班長。強臓式航空戦艦「疾風」の設計者。
本人は死亡しているが、意識遺伝詞が「疾風」に記乗している。ベルガーとは高校の同窓生だった。
レーヴェンツァーン=ネイロル
ドイツG機関の司令。ヘルベルトの養子。
「速読歴(ゾフォルト・レーザー)」の称号を名乗るが、自身には予言を詠む能力はない。
強臓式心臓「新世界」を移植されている。
アルフレート=マルドリック
ドイツG機関陸軍部第一師団・第一独立機動重騎小隊の小隊長。「皇帝剣(カイザー・シュベールト)」の異名を持つ。
自身の声帯を移植した強臓式重騎「皇帝」(後に「皇帝改」)に乗る重騎師。
ボルドーゾンから欧州五行総家を継承したマルドリック家の次男であり、「幻崩の衛士(ハウンド)」としての任を務める。異族を嫌う。
救世者ゆかりの神形具「純皇(ラインケーニッヒ)」を操る五行師(バスター)でもある。ベルガーとは高校の同窓生。
ベルマルク・ナイン
アルフレートの部下で、「人形双騎師(ドッペルパンツァー)」の異名を持つ自動人形。
「E(アイゼンリッター)計画」により、その脳と脊髄がそれぞれ「蒼獅子改」と「朱獅子改」に組み込まれた。
グラハム=カールスルーエ
ドイツG機関副長にして、全軍の大将軍。カールスルーエ家の長男で、ローゼには「大兄様」と呼ばれる。
ローゼと同じく言障患者であるため、全身を義体化し、感情喪失機構を組み込んでいる。重騎「銀獅子」に乗る。
五大頂とG機関を組織し、フロウベルをその長に据えた。実質的なG機関の創設者。
ハイリガー=カールスルーエ
カールスルーエ家の次男。ローゼには「小兄様」と呼ばれる。
ドイツ空軍中将だったが、後にグラハムの遺志を汲んでG機関総帥となる。「統率者(コマンディーレン)」の異名を持つ。
過去に反独隊の人狼将軍ペイルとの戦闘で両腕を失い、強臓式義腕「悲愴」を装着している。
両肩に異族を材料とした言詞板(フロギストン・プラッテ)を収納しているが、右肩の2枚は妻と娘を加工したものである。
グラハムの機体を改造した重騎「銀獅子改」に記乗する。
ローゼ=カールスルーエ
カールスルーエ家の末妹。強臓式ガルド級航空戦艦「葬送曲」を操る少女。
言障に犯されているため、「葬送曲」が完成するまではG機関の地下で眠っていた。
カール=シュミット
G機関陸軍部長にして五大頂(フェンフト・ライトハメル)の一人。「鋼鉄騎師」の異名を持つ。ジャンヌの夫。
第一次世界大戦において身体を失い、「E 計画」によって巨大な緑色の重騎「カール・シュミット」と合一している。
ヘルベルト=ミューラー
G機関空軍部長にして五大頂の一人。「不動騎師(シュタントハフト)」の異名を持つ。
グラハムの命により、レーヴェンツァーンの義父になっていた。
リーリエ=テルメッツ
G機関海軍部長にして五大頂の一人。「水流師(ヴァッサーマイスター)」の異名を持つ。
風水師であり、自身の涙を材料とした強臓式竪琴「月夜(モーントナハト)」を使って水竜を生む。
「都市シリーズ」第2作『エアリアルシティ』に登場した「幻崩の衛士」モイラ(エリス=テルメッツ)の姉。
ガリュー=ビッツマン
G機関情報部長にして五大頂の一人。「千里眼(ヘルゼーエン)」の異名を持つ禿頭の老人。
特殊な紋章術を自在に操る。
コンラート=エルリッヒ
G機関開発部長にして五大頂の一人。「穴熊(ダックス)」の異名を持つ白髪の老人。
技術を愛する技術者であり、日本の神器を改良したり、独断で「疾風」を改造したりする。
強臓式航空戦艦「疾風」の設計者であるG機関開発部第二企画班長マルシュ=ガントの上司だった。
ジャンヌ=シュミット
G機関陸軍部副部長。「鋼華(アイゼンブルーメ)」の異名を持つ。
カールの妻で、リーリエとは知己の仲である。
コレール=セバン
反独隊大尉。輸送戦艦「 rb-21」の艦長。伝式四十七符(テリング・フルカード)を操り、「高空魔術師(ハイランディスト)」の異名を持つ。
ペイル=ホース
「人狼将軍(ハーディストウルフ)」のあだ名を持つ異族。元は傭兵だったが、後に反独隊隊長となる。
両腕は義腕「第三月帝」。また、過去にドイツ空軍騎師時代のハイリガーとの戦闘で右目を潰され、隻眼となっている。
「先生」(レーラア)
反独隊の諜報員。「先生」のあだ名を持つ五行師(バスター)。ベルガーと仲がいい。26歳。
エリンギウム=エルダーリンク
図書館司書の娘で、異族。
かつてベルガーやヘラード、アルフレート、マルシュの友人だった。彼ら4人に重要な「約束」を課している。
ある事件がもとで記憶を失っている。また、肉体に大きな傷痕を持つ。1942年に結婚。旧姓はイルヘイム。
ベンドゥーター・イースト
自動人形。イギリスのビッグベン3姉妹の一人で、東方の役。「大時報」に搭載された準言詞塔砲の加圧を行う。
ミハイル=シュリアー
「都市シリーズ」に共通して登場するマイアーの孫。新ベルリン騒乱の顛末を記録する著者。父はマクシミリアン。
レーヴェンハイト=ネイロル
レーヴェンツァーンの父。「速読歴」の異名を持つ。1918年のイギリス襲撃事件で死亡している。
フロウベル=ネイロル
レーヴェンツァーンの母。旧姓はイルヘイム。「速読歴」の異名を持つ。
G機関の創設者であり、かつての長でもあった。レーヴェンツァーンが8歳だった1926年に心臓疾患で死去している。
ハイリガー、グラハム、ベルテヒト、レーヴェンハイトの4人に、ある「約束」を課している。
G(ゲハイムニス)機関とは……
総員207名のドイツ竜騎師団の末裔で構成される高機密性組織。正式名称は「大ドイツ帝国守護竜騎師団(ゲルマニアドラグーン)五大部」。
10世紀に神聖ローマ帝国(第一帝国)を建国した「救世者」を中心にしてドイツ南西部の「黒き森」アルヘイム地方で結成され、13世紀以降はドイツ北東のプロイセン地方に拠点を移した。
1871年にプロイセン王国がドイツ帝国(第二帝国)に発展してからは、ドイツ国軍から完全に独立した、政府への全権介入さえもが可能な全国組織になった。1919年の第二帝国崩壊後も、極秘の国防機関として本部をアルヘイムに移して機能し続けている。
最高責任者は「騎師団長(速読歴)」で、それを補佐する「副長(大将軍)」と、陸軍・海軍・空軍・開発・情報の5部門を各自統括する「五大頂」が機関を運営している。
あまりに危険であるがゆえに、歴史上から消された喪失技巧(オーバーゲハイムニス)を復活・改良してドイツの軍事力に加えようとする。
反独隊とは……
正式名称は「反戦独立部隊」。
ヨーロッパの緊張状態を避けてアメリカに亡命した資本家たちが、世界各国の速読家(ゾフォルト・レーザー)たちの世界滅亡の予言を受けて、ヨーロッパの情勢を把握するために1934年に共同で創立した民間の情報調査機関が母体となっている。
その後、ヨーロッパ現地での諜報活動に実力行使が必要になったことと、逆にヨーロッパ各国の政府機関から情報の提供を求められるようになったことから、1937年以降は複数の企業体をスポンサーとする極秘の軍事部隊に発展した。
部隊の主力は異族(ハイデンガスト)が多く、1939年時点ではアメリカ・アリゾナ州に大規模な訓練基地を持ち、陸上部隊・航空部隊ともに四個師団なみの軍事力を擁している。
喪失技巧を確保・封印する他、各国軍隊の過度な実力行使や戦争商人の横行を抑止する役目も果たす。
機甲都市・新ベルリン(ゲルマニア)とは……
1939年7月ごろから建設が開始され、翌40年9月に完成した、大ドイツ帝国首都ベルリン直下の地下要塞都市。
地上は「緑地帯・歴史的建造物・帝国軍の地上施設」、地下第一層は「民間生産工場」、地下第二層は「ベルリン市民居住区」、地下第三層は「民間と軍事の物資倉庫・地上への鉄道路線」、地下第四層は「軍需工場・地下換気機能の中央制御機構」、最深部の地下第五層は「帝国軍大本営・政府要人の避難施設」で構成されている。
この六層構造と、近郊に配置された超弩級要塞「トリスタン」によって、新ベルリンは戦時下の大ドイツ帝国の首都機能を果たす。
航空戦艦
dp-xxxx 疾風(シルフィード)
第1作に登場した宇宙航空戦艦「dp-xxx 皇城(カイザーブルク)」をもとに、ドイツG機関が開発した強臓式航空戦艦。完成直前に死亡した設計者マルシュ=ガントの意識遺伝詞が記乗している。全長約27メートル。
仮発動(ベヴァイゼン)でP 機構を動かし、駕発動(オーバー・ベヴァイゼン)で機甲紋章「疾竜」が起動する。
1937年、マルシュの意識を乗せたまま暴走し、ヘイゼルを取り込み宇宙を目指そうとしたが、それ以前に撃ち込まれていた遺伝詞還元弾の影響を受けて崩壊をはじめ、後を追ってきたベルガーとシュバイツァーにヘイゼルを開放した後に自壊した。
その後、パウル=ヴァーグナー研究所の跡地から機動停止していた「疾風」が発掘され、G機関による移送中に奪取。自己修復を行いつつベルガー、そして「先生」と共にヘイゼル救出のためハンブルク基地を襲撃する。
アルフレートによって中破し、最終的には「魔王」との一騎打ちを行い、相討ちとなった。
その後、G機関によって回収され、完全状態への修復とヘイゼルに合わせた風水神形具化の改造が行われた後に「新ベルリン」最下層に封印。新ベルリンにおけるヘイゼルの「救世者」の仮発動によって目覚め、戦いに参加。その際、「魔王」との再戦で一蹴するなど力の差を見せた。
その後、暴走した「トリスタン」との戦いにおいて、中途で撃沈した連合国軍の自突艦 MO、墜落した「葬送曲」、さらに皆から集めた記憶を有する物品などを飲み込み、トリスタンと対決。救世者と共に過去に降りた。
dlp-444lsx 葬送曲(レクイエム)
ドイツG機関の開発した強臓式航空戦艦。8隻の母艦を組み立てて作り上げるガルド級戦艦一番艦。全長1.1キロメートル。
8艦はそれぞれ左右前後3隻、中央前後2隻をつなげた双胴艦形で構成されており、この構成は後の『境界線上のホライゾン』における「武蔵」にも受け継がれている。
言詞砲を搭載するか、または言実詞により機甲紋章「駆天竜」を発動できる。
艦長(強臓式保有者)はローゼ=カールスルーエ。素体には彼女の身体組織を用いていると思われる。
彼女の本体は小さな赤珠となっており、艦内には大気の流体を使って立体映像のように現れることができる。
1942年、ケルン防衛の最中にイギリス軍の「大時報」の射撃によって撃沈され、その時に大破した「銀獅子」に記乗していた兄グラハムともども死亡する。
その際、彼女の本体であった赤珠はグラハムによって銀獅子に収められており、のちにヘイゼルが銃弾を受けた時の身代わりとなって砕けたベルガーのペンダントに移された。
魔王(エルルケーニッヒ)
ドイツG機関が「疾風」をもとに開発した強臓式航空戦艦。最終的に全部で8艦が存在した。全長27メートル。
「疾風」とは違い完全な無人機で、「新世界」の仮発動によって制御され、独自の言実詞を用る。
外観は「疾風」とほぼ同一だが、メインのカラーリングが青から黒に変更されている。また無人機であるため艦橋部は無い。
1943年7月のハンブルクにおける初出撃時は、救世者と共に時を超え修復のままならない「疾風」と戦い、相討ちのような形で墜落。その後、「疾風」と共に回収され、その際に量産型として同型艦7艦が建造される。
しかし、43年8月のベルリンにおける、修復され完全状態となった「疾風」との戦闘時に簡単に敗北する。その後出撃した量産型7艦は途中で制御不可能になり墜落した。
その後の「トリスタン」暴走ではハイリガーに操られて機甲紋章を展開、ドラゴンの姿となって再び「疾風」とヘイゼルの前に立ちふさがった。その時、最低1艦ずつがビッツマンとエルリッヒの両名によって撃破されている。
航空機
王飛竜(ケーニッヒ・ギドラー)
G機関最速の戦略偵察機。
王双剣(ドッペルシュナイデ)
G機関の最新鋭双胴艦。広範囲弾を用いた後部防御に優れる。
銀/銀改(ズイルバー/ノイエ・ズイルバー)
G機関の戦略輸送艦。全長100メートル。
V0/V1
ドイツ軍の巡航型自突艦。神術爆弾を搭載して、自動操縦で標的に突撃する。もともとはG機関の戦略輸送艦「銀」の同型艦として設計された。全長100メートル。
rb-21
反独隊の航空輸送戦艦。双胴式で、右舷上部にはジプシークイーンが描かれている。全長46メートル。
大時報(ビッグシグナル)
連合国軍の双胴式航空艦。準言詞塔砲を搭載している。
MO
連合国軍の自動突撃兵器(自動制御爆撃艦)で、1943年にドイツ軍の自突艦「 V0」の情報をもとに開発された。内部に広範囲型爆弾を搭載し、一撃で都市を破壊する威力を持つ。全長100メートル。
「トリスタン」暴走を知った連合軍によって放たれるも、ドイツ空軍と「疾風」の迎撃によって破壊され、その爆発のエネルギーもろとも「疾風」に吸収された。
第二次世界大戦終結後は、大陸間巡行弾などの超々音速兵器の基礎となり、現代戦争の様相を一変させていく。
騎
蒼獅子(ブラウ・ローヴェ)
ドイツ空軍の艦上防御用重騎(グレーセ・パンツァー)。全高7.3メートル。凌駕紋章「空牙(ルフト・ファング)」による飛行を可能とする。V0 を迎撃するためにベルガーが搭乗し、特攻をかける形で大破した。
黒獅子(シュバルツ・ローヴェ)
ドイツG機関陸軍部の重騎。
「皇帝」の試用騎体で、強臓式の試作部品が組み込まれ、対空飛行も可能とする汎用型。1939年にベルガーによって奪取されて以後、彼の乗騎となった。
その後もベルガーと共に転戦するが、43年7月のハンブルクにおいて「皇帝改」との戦闘によって中破し、その状態のまま航空艦隊の対空砲火を受けて大破する。
黒獅子改(ノイエ・シュバルツ)
ベルガーの血液から部品を新調した重騎。「皇帝」から受け継いだ戦闘関連記録を内蔵している。凌駕紋章は「白皇」。武装は「運命」の他に、「皇帝」の使っていた神形具の大剣も常用の武装として有すると思われる。
43年8月の「新ベルリン」における戦闘において、ベルガーの乗騎として参加。「言詞加速砲」による砲撃後、「トリスタン」内部に突入、門扉に突っ込む形で行動不能となる。
その後「トリスタン」暴走時に「新世界」の仮発動を受け、「皇帝」の力を持って起動。最後の一撃の直前に、「救世者」たるヘイゼルに道を譲る形で撃破された。
皇帝/皇帝改(カイザー/ノイエ・カイザー)
アルフレートの声帯を部品とした強臓式重騎。全高10メートル。機械式の推進装置を有し、凌駕紋章を展開しない状態でも対空飛行が可能。
1939年に完成し、初戦において量産型重騎2騎を圧倒するも、ベルガーの奪取した「黒獅子」と交戦、神形具の剣を「運命」によって断たれる。
43年7月、ハンブルク基地において改造中、ヘイゼルの「救世者」の仮発動を受けて自立起動。カール・シュミットと交戦し、これを退けるも、アルフレート自身によって主導権を取り返された。
その後のベルガーとの交戦後、ハンブルク空爆部隊を伴った航空艦隊を北海で迎撃した際に撃墜されたが、それらの記憶と神形具の大剣は「黒獅子」に受け継がれ、また「純皇」はヘイゼルの手に渡った。
蒼獅子改/朱獅子改(ノイエ・ブラウ/ノイエ・ツィノーバ)
E 計画により、ベルマルク・ナインの脳と脊髄が合一している重騎。意志を用いず凌駕紋章を展開することが可能である。
「蒼獅子改」は88ミリ徹甲実弾を発射する長銃を、「朱獅子改」は左手に大盾を持ち、内部に短剣を格納している。
基本的に「朱獅子改」が防御、「蒼獅子改」が攻撃を担当する。どちらも全高9メートル。
銀獅子(ズィルバー・ローヴェ)
グラハムの記乗する銀色の重騎。機械式推進装置によって凌駕紋章に頼らない飛行能力を得ており、その点において「黒獅子」と同じく「皇帝」の試作機となった。全高7.3メートル。
1942年、ケルン防衛の際に大破。残骸は回収され、改修されて「銀獅子改」となった。
銀獅子改(ノイエ・ズィルバー)
ハイリガーの記乗する銀色の重騎。大破した「銀獅子」を修復したもの。
43年8月の「新ベルリン」における攻防戦において人狼将軍ペイル=ホースと対決し、「背翼が無いと飛行が不可能」という固有の弱点をペイルに突かれ、地上からトリスタンの最下層まで落下し大破した。
カール・シュミット
カール=シュミットの合一した陸戦用重騎。全高25メートル。本体は真鍮色、装甲服は当時のドイツ陸軍軍服の意匠である濃緑色。
他の重騎に比べてかなり大型であり、装甲服には「航空艦用の浮遊紋章をハニカム状にして仕込んである」など、重量軽減に配慮がなされているようである。
その巨体(蒼獅子改が抱えるようにして使っていた88ミリ徹甲長銃を「拳銃サイズ」として扱っている)に加えてかなりの重武装であり、2門の竜詞砲を背中に背負う他、多数の火砲を有している。
なお、背中側に副座を備えており、火器管制を分業していると考えられる。
狗鎧(パンツァー・フクス)
凌駕紋章で凍気をまとう重騎。1937年のベルリンでベルガーと相対したが、撃破された。
黒犬(ヤークト・フント)
量産型中騎。肩の装甲板が厚い。第5作『閉鎖都市 巴里』にも同種の騎体が登場している。
銃砲・火器
言詞砲・言詞塔砲(独:ベイベルカノーネ/英:バベルカノン)
加速させた言詞の言詞格を開放し、照射する兵器。対象空間を広範囲に言詞崩壊させる。
準言詞砲と比べて複雑な機構を必要とするが、長時間の照射や連射が可能である。
準言詞砲・準言詞塔砲(独:クルツ・ベイベル/英:バベルガン)
加速させた言詞の言詞格を固め、弾丸として発射する兵器。効果は言詞砲とほぼ同じ。
言詞砲と比べ簡易な機構で済むものの、弾丸を生成するために長時間の加圧が必要となる。
竜詞砲・竜詞塔砲(独:ドラッヘ・カノーネ/英:ドラゴン・ブレス)
竜の吐く竜詞砲を機械に置き換えて再現した兵器。遠距離用である。
準竜詞砲・準竜詞塔砲(独:ギドラー・カノーネ/英:サブ・ブレス)
竜の吐く竜詞砲を機械に置き換えて再現した兵器。竜詞砲よりも小型のものを指す。
言詞銃(ベイベルゲヴェーア)
超弩級要塞「トリスタン」に搭載された言詞兵器。ガルド級二番艦の言詞砲を転用している。
機甲浄弾(パンツァー・ライニグン)
対異族用の武器。長さ30センチメートルほどの鉄製の筒から霊木の杭を打ち出す。
魔弾の射手(フライシュッツェ)
ベルマルク・フィーアの持つ強臓式拳銃。歯と骨を材料にしている。
仮発動ではその名の通り魔弾を射出し、駕発動であらゆる機械を分解する。
神形具(ヴェルクツォイク)
純皇(ラインケーニッヒ)
神聖ローマ帝国皇帝からマルドリック家に預けられた、救世者ゆかりの神形具。純白。アルフレートが使っていたが、彼の撃墜と共にヘイゼルへと受け継がれ、過去に渡った。
月夜(モーントナハト)
リーリエの扱う強臓式竪琴。涙を材料としている。言実詞により水を風水し、水竜を生む。
義体
救世者(メサイア)
ヘイゼルの持つ強臓式義眼。仮発動で他の強臓式機械を操作し、駕発動で周囲の遺伝詞を読む。素体にはマルシュ=ガントの目が使用されているため、青い色の人間の目である(ヘイゼル自身の目は猫目)。
新世界(ノイエ・エールデ)
レーヴェンツァーンの持つ強臓式心臓。仮発動で他の強臓式機械を操作し、駕発動で超弩級要塞「トリスタン」の加圧を行う。
英雄(デア・ヘルト)
シュバイツァーの持つ強臓式義腕。長杖を射出し、周囲の空間を言実化する。
悲愴(トラーギシュ)
ハイリガーの持つ強臓式義腕。素体は彼の両腕と思われる。仮発動で機械に仮初の命を与え、駕発動ではあらゆる機械に記乗できる。
燃料として異族を加工した高出力言詞板を必要とし、其々の肩内部に二枚ずつ収めることが可能。駕発動には2枚とも使用するが、仮発動は1枚で済むものと思われる。
右肩部に収められている言詞板は過去に「加工」されたハイリガーの妻と娘である。
「新ベルリン」における戦闘によって左腕側は失われ、残った右腕に残っていた言詞板を燃料に駕発動して「トリスタン」に記乗した。
運命(ゲレーゲンハイト)
ベルガーの持つ強臓式武剣。精燃を動力として「運命の糸を断つ」闇の刃を発生させる。
ある理由で、駕発動は使えないことになっている。
祖国(ファーターラント)
ドイツの強臓式地脈加圧炉。ドイツ国内のみでなく、世界各地に建造されている。
高純度の精燃を生成する。また、ドイツの地脈を改造し、全てのドイツ国民に言実化能力を付与できる。
トリスタン
新ベルリン近郊に建造された「祖国」にガルド級戦艦二番艦を合体させた超弩級要塞。全高は1.6キロメートルを超える。
ドイツ上空に防空用の「天蓋」を発生させるほか、各地の「祖国」への加圧支援などを行う。
最終的な目的は、地脈から時虚遺伝詞を抽出し、「破滅の転輪」を起こして世界の崩壊を防ぐことである。
1942年6月以降は、G機関本部の機能も兼務するようになった。
伝式四十七符(テリング・フルカード)
コレールが操る「幻実都市 出雲」の占術符。奏の22符、騒の22符、噤の3符から成る。
騒の10番「破滅の転輪(ニーベルンゲ)」…… 何が起こるか分からない不幸の連鎖を予兆する。