『軍師官兵衛』第24回『帰ってきた軍師』(2014年6月15日 演出・大原拓)
登場する有名人・武将の『信長の野望』シリーズでのだいたいの能力評価(テロップ順)
小寺 官兵衛 孝高 …… 知力84、統率力67
(演・岡田准一)
明智 光秀 …… 知力93、統率力95
(演・春風亭小朝)
母里 太兵衛 友信 …… 知力44、統率力80
(演・速水もこみち)
石田 三成 …… 知力92、統率力60
(演・田中圭)
本願寺 顕如 …… 知力96、統率力65
(演・真島秀和)
丹羽 長秀 …… 知力82、統率力73
(演・勝野洋)
柴田 勝家 …… 知力51、統率力87
(演・近藤芳正)
織田 信長 …… 知力115、統率力108
(演・江口洋介)
別所 賀相 …… 知力48、統率力45
(演・ベンガル)
別所 重棟 …… 知力64、統率力57
(演・佐戸井けん太)
瀧川 一益 …… 知力66、統率力78
(演・川野太郎)
佐久間 信盛 …… 知力57、統率力51
(演・立川三貴)
蜂須賀 小六 正勝 …… 知力74、統率力90
(演・ピエール瀧)
羽柴 小一郎 秀長 …… 知力83、統率力75
(演・嘉島典俊)
別所 長治 …… 知力63、統率力63
(演・入江甚儀)
森 蘭丸 成利(なりとし)…… 知力67、統率力43
織田信長の小姓(演・柿沢勇人)
小寺 兵庫助 利高 …… 知力78、統率力63
(演・植木祥平)
近衛 前久(さきひさ)
元関白太政大臣で、親織田派公家衆の首魁(演・河合克夫)
別所 友之 …… 知力58、統率力58
別所長治の弟(演・ささの友間)
小寺 政職 …… 知力44、統率力49
(演・片岡鶴太郎)
羽柴 秀吉 …… 知力95、統率力94
(演・竹中直人)
小寺 職隆 …… 知力72、統率力55
(演・柴田恭平)
ざっとの感想
○有岡城からの救出からわずか3ヵ月後という早さで、秀吉の軍師として戦場の最前線に復帰しちゃう官兵衛。よく働くよねぇ~! よほど頑丈なのか、ただワーカホリックなだけなのか……
ともあれ、なんと天正六(1578)年三月から天正八(1580)年一月まで、およそ2年にもわたって籠城を続けてきた播磨国随一の堅城・三木城の攻防編がついに開幕! ベンガルさん、お久しぶりです!! っていうか、別所長治の弟・友之がここにきて初登場……なんか、遅すぎやしないかい?
○高度な戦場外交というよりは、ただ単に怖い顔をして長治をおどしたりすかしたりしているようにしか見えないという、まるでヤクザ屋さんのような官兵衛。そりゃあ栗山善助も後ろでひっそりドン引きしますよ。うそ、うちの主君、変わりすぎ……?
●あれっ、始まったかと思ったら、オープニングあけで三木城、さっさと切腹開城!? 終わっちゃったよ!!
別所長治の最期はなるべくきれいに描かれていたようなんですが、末期の家臣たちへの遺言がナレーション処理で音声カットとは……長治というよりは、演じている俳優さんがあまりにも哀れですよね。いくら大根さんだからといっても、その仕打ちはないんでないかい!? 死者に鞭打つのは私も好むところではないのですが、ついでに言えば、この役者さんの我が子役の男の子を抱くしぐさもかなりヒドかったですね……子役の子、よく文句のひとつも言わなかったね。あんな不安定な抱き方もありませんよ! たった一瞬目に入っただけで、ホントに愛する自分の子なのかと思わず疑ってしまうようなあぶなっかしさでした。器用じゃない人は何をやらせてもとことん器用じゃないというか、若すぎるというか……今回だけチラッと登場した別所友之役のおにいちゃんもたいがいでしたけどね。なんで中学野球部の万年補欠みたいな緊張感のかけらもないガキが、非業の死を目前にひかえた武士を演じてるんだよ!!
○有岡、三木の落城に完全に影響されて、小寺政職の御着城も瞬時に開城! 実に政職らしいというか、逆にそれまで2年間もよく反織田方でもちこたえていられたな、というか……
政職以下、家臣団がきれいにそろって戦国っぽくない南北朝時代チックなクラシック甲冑に身をつつんでいるのも象徴的なんですが(私は個人的にはこっちの戦場ファッションのほうが断然好きです)、ちょっと政職の思考の古さや滑稽さが強調されたあまり、英賀城(あがじょう 放送第10回参照)、三木城とならんで「播磨国の三大城郭」とたたえられた「総構え」式の堅城としての御着城の威容がほとんど描写されずじまいになってしまったのが残念で仕方ありません。
たぶん、小寺政職だって海千山千の播磨国情勢を泳いでわたりきった戦国大名だったわけなんですから、それなりに人並み以上の先進性と政治センスを持ち合わせてもいたはずなんですが……まぁ、大河ドラマに半年近くレギュラーで登場できてたんだし、多少の誇張・過小評価は目をつぶろっか!?
●小寺家重臣としての人生が破滅するその瞬間になって、初めて個性を発揮する小河(おごう)良利と江田善兵衛の「ダメ家老コンビ」……人間として、最期の最期になってやっとおもしろくなるという生き方だけは絶対にしたくないな、としみじみ感じ入ってしまう今回での活躍でした。破滅する様子が魅力的になったって、なんにもなんねぇんだってば……
しかしこの2人、ホントによくここまで律儀に政職についてこられたもんですね。いい人……だったんだろうなぁ。尊敬はまるでできないけど。
○死んだわけじゃないんだけど、おそらくは今回が最後の登場になるであろう、小寺政職の溺愛する嫡男・斎(いつき のちの黒田家家臣・小寺氏職)を演じている相澤侑我という子役さんが、私はもう大好きで大好きでよう……ドラマにおける退場が残念で残念で仕方ありません。
侑我くん、いいんだよねぇ~! 戦場で命をやりとりする部類の身分ではない、高貴で世間知らずなボンボンというキャラクターの説得力を、セリフを弄さずに表情と所作で完全に伝えきってるわけ!! それでいて、画面のどこかにいるだけでついついそこに目がいく親しみと愛嬌を持ち合わせてるんだものねぇ~。ただ色白で物静かだったらいいというポジションを、もののみごとに魅力200% で演じきってくれました。こういうのを、正真正銘の「役不足」というんですねぇ。
また出てきてほしいんだけど……万が一に再登場しても、たぶん成長しきった小寺氏職になってるだろうしなぁ。侑我くん、別の映像作品でまた会いましょう!
……あっ、わかった。この子、モーニング娘。の工藤遥さんに似てるから私、好きなんだわ。こんな侑我くんも、もうしばらくしたらむくつけき立派な男性に変貌していくんだろうなぁ。はかないもんだなぁ、少年期。アブナいもんだなぁ、そこに注目してしまう私の嗜好。
○荒木村重・村次・岩佐又兵衛父子をのぞく一族すべてを根絶やしにした有岡城に重臣一同こぞって入城し、そこで戦勝祝いの宴会を開く信長。悪趣味まるだしですが、そこには荒木派残党や毛利家に対する示威という政治的意味合いも込められていまして……さらに信長特有のお高いプライドもあるもんですから、やるしかないわけです。
正室のお濃の方は「なにゆえ、このような気味の悪い所で宴をなされます……?」と眉をひそめますが、内心では「まぁ、敵のしゃれこうべを2~3コど真ん中に置かれるよりはマシか。丸くなったなぁ~、この人も。」と、しみじみ時の流れを感じていることでしょう。あのころは、私もこの人もギラギラでトンガッてブッとばしてたもんだわ!!
○吹きすさぶ夜桜の嵐の中で、一瞬だけ荒木村重の正妻だしの怨霊を観てしまう信長。ダサかったりコテコテだったりするんですけど、私、この『軍師官兵衛』において時々ふってわいたように展開される、現実だか脳内だかよくわかんない信長視点のイメージシーンが大好きなんですよね。なに主人公をさしおいてメインづらしてるんだと! いいですよねぇ、この突拍子のなさ。
そしてその信長の心理描写の中でも、かなり近い距離に一人だけ付き添っているお濃の方もステキです。どんだけ夫婦仲がいいんだと!! 少なくとも今回までの流れで言えば、官兵衛・お光ペア、秀吉・お寧ペアとは次元の異なるラブラブが『軍師官兵衛』で展開されているわけなんですよね、面と向かってはあんまりしゃべらないんですけど。う~ん、うちゆき姫グッジョブ♡
○信長「なにゆえ裏切った……どこへ逃げても必ず探し出し、おぬしの首をはねてやる!」
勝った記念の宴席だっていうのに、いまだにねちねち村重への未練を口にする信長。しつけぇ!!
この発言の次のカットで、オーバーに戦慄した顔をして信長を見つめるお濃の方。なにをいまさらビビッてるんですか……そういう亭主でしょ? 昔っから。
あっそうか、「首をはねるだけでいいなんて、あっさりすぎ!! もっといろんな R-18指定的なことグチャグチャやんないの!? カッパ着てナタ持ってシャワールームまっかっかとかさぁ!」っていうニュアンスで驚愕してたのかな。どこのめおとシリアルキラーなんでしょうか。
○斎「官兵衛、官兵衛……父上を、助けてくれ、官兵衛!」
うをを、こいつ、どんだけできた息子なんだ……またしても、本筋とはかかわりのうすい斎の人間レベルの高さに感動してしまった!
口では助けるようなことを言いつつも、官兵衛の全身から発せられる殺気を敏感にかぎとっていた斎。このドラマ、小寺氏職をこれだけ魅力的で将来有望な人物に造形して、この先どうする気なんでしょうか!? ひとえに、侑我くんの演技力が十二分に備わっていてこその番狂わせですよね。いいなぁ~侑我くん。
○ドラマではそうとうな苦渋煩悶の末の判断で、小寺政職の国外逃亡を見逃した官兵衛ですが、実際にはそれほどの思い入れもあったのかどうか……どちらかといえば秀吉に近いようなドライな立場で、「興味がない。生きようが死のうがファッキンどうでもいい。」という冷たさをもって無視したのではないのでしょうか。信長の村重に対する思い入れとはまったく対極にある関係ですよね。実におもしろい対比!
○え、石山本願寺ちかくの天王寺砦って、そんなに豪華な大広間がある御殿チックな城郭だったのか……でも、増築に増築を重ねてそうなった可能性はありますか。なんにしても見栄を大事にする信長さんですからね。
歴史上でも非常に有名な佐久間信盛失脚劇が、ここでやっときたわけなんですが、まぁ~ムチャクチャなボスですよ。会社で働いている人ほど、心底ゾッとするエピソードなのではないのでしょうか。そりゃあんた、長く働いてひとっつも欠点のない部下なんて、どこにもいませんって! 信盛がそれほど無能なのかどうかは判断が難しいですが、同じ天王寺砦における天正四(1576)年五月の大合戦で信長自身がそうとうなリスクを背負って本願寺軍に大勝利をおさめたのにも関わらず、その後まるまる4年間も事態を進展させることができなかった、ということへの思いはドロドロたまっていたようで……信長の性格じゃあ、しょうがないか。その宣告を他ならぬ天王寺砦でくだすんですからね! 「おまえ、もうわかってるよな。」っていうすごみの恐ろしさですよね。
にしても、「今日は……蒸すのう。」って、そのコスプレしてたらそりゃ蒸すわ!! 信長さんの身体を張ったボケでした~。家臣ども、笑ってちょうだいよ……信長さんがこの場を少しでもなごませようと、がんばって準備してきたんですよ!?
○ここにきて唐突にクローズアップされてきた、秀吉の「この時点での」後継者である羽柴秀勝(織田信長の四男 1568~86年)。ここでいう秀勝は、むかし我が『長岡京エイリアン』でも『江』のときに取りあげたことのあった「3人の秀勝くん」のうちの2人目であるわけなのですが、自分の血を引いていない養子に、自分の築き上げてきた財産を相続されるのって、どういう気分なんだろうか。複雑なもんですよねぇ。
ともあれ、ただ単純に「子がいない」という処理のされ方になりがちなこの時期の秀吉ファミリーに、ちゃんと将来有望な「息子」がいるという設定を無視せずに組み込んでいるのはいいなと思いました。さぁ、この後どのくらいドラマの中で秀勝くんが活躍してくれるかな? 難しいポジションですよ~!
○官兵衛の家が「小寺」から「黒田」にもどり、1万石を領する大名へ昇進! そして新たなる「藤巴(ふじどもえ)」の家紋の発祥。
小寺政職の重臣という立場からここでやっと解放され、いよいよ秀吉の軍師にして大名という才能相応の身分を獲得するにいたったわけで、『軍師官兵衛』の物語から観てもかなり重要な回になったと思います。
ここまでで約半年かぁ~。こっからは、かなり濃密な展開が目白押しになるぞ!!
結論、「第25回がとてもたのしみです。」
オープニングのテロップで、ついにあの「流れ関白」こと近衛前久が登場すると知ってウキウキワクワクだったんですが、セリフはないわワンカットだわ、おまけにゃ遠くに座ってるだけなもんだから、表情も誰が演じてるのかさえも皆目見当がつかないわ! カンベンしてよぉ~、龍山公がどんだけキャラクターの立ちまくってるお方か、知らないわけじゃないでしょう!? モブ扱いにするって、なんてもったいないことしてくれちゃってんの!?
まぁまぁ、次回はもっといろんなお公家さんが出てきはるようですし、ここでがたがたいうのはやめときまひょ。官兵衛はん、次も楽しみにしておじゃりまするゆえ、せいぜいおきばりになってたもれ。ほっほっほっほ……
登場する有名人・武将の『信長の野望』シリーズでのだいたいの能力評価(テロップ順)
小寺 官兵衛 孝高 …… 知力84、統率力67
(演・岡田准一)
明智 光秀 …… 知力93、統率力95
(演・春風亭小朝)
母里 太兵衛 友信 …… 知力44、統率力80
(演・速水もこみち)
石田 三成 …… 知力92、統率力60
(演・田中圭)
本願寺 顕如 …… 知力96、統率力65
(演・真島秀和)
丹羽 長秀 …… 知力82、統率力73
(演・勝野洋)
柴田 勝家 …… 知力51、統率力87
(演・近藤芳正)
織田 信長 …… 知力115、統率力108
(演・江口洋介)
別所 賀相 …… 知力48、統率力45
(演・ベンガル)
別所 重棟 …… 知力64、統率力57
(演・佐戸井けん太)
瀧川 一益 …… 知力66、統率力78
(演・川野太郎)
佐久間 信盛 …… 知力57、統率力51
(演・立川三貴)
蜂須賀 小六 正勝 …… 知力74、統率力90
(演・ピエール瀧)
羽柴 小一郎 秀長 …… 知力83、統率力75
(演・嘉島典俊)
別所 長治 …… 知力63、統率力63
(演・入江甚儀)
森 蘭丸 成利(なりとし)…… 知力67、統率力43
織田信長の小姓(演・柿沢勇人)
小寺 兵庫助 利高 …… 知力78、統率力63
(演・植木祥平)
近衛 前久(さきひさ)
元関白太政大臣で、親織田派公家衆の首魁(演・河合克夫)
別所 友之 …… 知力58、統率力58
別所長治の弟(演・ささの友間)
小寺 政職 …… 知力44、統率力49
(演・片岡鶴太郎)
羽柴 秀吉 …… 知力95、統率力94
(演・竹中直人)
小寺 職隆 …… 知力72、統率力55
(演・柴田恭平)
ざっとの感想
○有岡城からの救出からわずか3ヵ月後という早さで、秀吉の軍師として戦場の最前線に復帰しちゃう官兵衛。よく働くよねぇ~! よほど頑丈なのか、ただワーカホリックなだけなのか……
ともあれ、なんと天正六(1578)年三月から天正八(1580)年一月まで、およそ2年にもわたって籠城を続けてきた播磨国随一の堅城・三木城の攻防編がついに開幕! ベンガルさん、お久しぶりです!! っていうか、別所長治の弟・友之がここにきて初登場……なんか、遅すぎやしないかい?
○高度な戦場外交というよりは、ただ単に怖い顔をして長治をおどしたりすかしたりしているようにしか見えないという、まるでヤクザ屋さんのような官兵衛。そりゃあ栗山善助も後ろでひっそりドン引きしますよ。うそ、うちの主君、変わりすぎ……?
●あれっ、始まったかと思ったら、オープニングあけで三木城、さっさと切腹開城!? 終わっちゃったよ!!
別所長治の最期はなるべくきれいに描かれていたようなんですが、末期の家臣たちへの遺言がナレーション処理で音声カットとは……長治というよりは、演じている俳優さんがあまりにも哀れですよね。いくら大根さんだからといっても、その仕打ちはないんでないかい!? 死者に鞭打つのは私も好むところではないのですが、ついでに言えば、この役者さんの我が子役の男の子を抱くしぐさもかなりヒドかったですね……子役の子、よく文句のひとつも言わなかったね。あんな不安定な抱き方もありませんよ! たった一瞬目に入っただけで、ホントに愛する自分の子なのかと思わず疑ってしまうようなあぶなっかしさでした。器用じゃない人は何をやらせてもとことん器用じゃないというか、若すぎるというか……今回だけチラッと登場した別所友之役のおにいちゃんもたいがいでしたけどね。なんで中学野球部の万年補欠みたいな緊張感のかけらもないガキが、非業の死を目前にひかえた武士を演じてるんだよ!!
○有岡、三木の落城に完全に影響されて、小寺政職の御着城も瞬時に開城! 実に政職らしいというか、逆にそれまで2年間もよく反織田方でもちこたえていられたな、というか……
政職以下、家臣団がきれいにそろって戦国っぽくない南北朝時代チックなクラシック甲冑に身をつつんでいるのも象徴的なんですが(私は個人的にはこっちの戦場ファッションのほうが断然好きです)、ちょっと政職の思考の古さや滑稽さが強調されたあまり、英賀城(あがじょう 放送第10回参照)、三木城とならんで「播磨国の三大城郭」とたたえられた「総構え」式の堅城としての御着城の威容がほとんど描写されずじまいになってしまったのが残念で仕方ありません。
たぶん、小寺政職だって海千山千の播磨国情勢を泳いでわたりきった戦国大名だったわけなんですから、それなりに人並み以上の先進性と政治センスを持ち合わせてもいたはずなんですが……まぁ、大河ドラマに半年近くレギュラーで登場できてたんだし、多少の誇張・過小評価は目をつぶろっか!?
●小寺家重臣としての人生が破滅するその瞬間になって、初めて個性を発揮する小河(おごう)良利と江田善兵衛の「ダメ家老コンビ」……人間として、最期の最期になってやっとおもしろくなるという生き方だけは絶対にしたくないな、としみじみ感じ入ってしまう今回での活躍でした。破滅する様子が魅力的になったって、なんにもなんねぇんだってば……
しかしこの2人、ホントによくここまで律儀に政職についてこられたもんですね。いい人……だったんだろうなぁ。尊敬はまるでできないけど。
○死んだわけじゃないんだけど、おそらくは今回が最後の登場になるであろう、小寺政職の溺愛する嫡男・斎(いつき のちの黒田家家臣・小寺氏職)を演じている相澤侑我という子役さんが、私はもう大好きで大好きでよう……ドラマにおける退場が残念で残念で仕方ありません。
侑我くん、いいんだよねぇ~! 戦場で命をやりとりする部類の身分ではない、高貴で世間知らずなボンボンというキャラクターの説得力を、セリフを弄さずに表情と所作で完全に伝えきってるわけ!! それでいて、画面のどこかにいるだけでついついそこに目がいく親しみと愛嬌を持ち合わせてるんだものねぇ~。ただ色白で物静かだったらいいというポジションを、もののみごとに魅力200% で演じきってくれました。こういうのを、正真正銘の「役不足」というんですねぇ。
また出てきてほしいんだけど……万が一に再登場しても、たぶん成長しきった小寺氏職になってるだろうしなぁ。侑我くん、別の映像作品でまた会いましょう!
……あっ、わかった。この子、モーニング娘。の工藤遥さんに似てるから私、好きなんだわ。こんな侑我くんも、もうしばらくしたらむくつけき立派な男性に変貌していくんだろうなぁ。はかないもんだなぁ、少年期。アブナいもんだなぁ、そこに注目してしまう私の嗜好。
○荒木村重・村次・岩佐又兵衛父子をのぞく一族すべてを根絶やしにした有岡城に重臣一同こぞって入城し、そこで戦勝祝いの宴会を開く信長。悪趣味まるだしですが、そこには荒木派残党や毛利家に対する示威という政治的意味合いも込められていまして……さらに信長特有のお高いプライドもあるもんですから、やるしかないわけです。
正室のお濃の方は「なにゆえ、このような気味の悪い所で宴をなされます……?」と眉をひそめますが、内心では「まぁ、敵のしゃれこうべを2~3コど真ん中に置かれるよりはマシか。丸くなったなぁ~、この人も。」と、しみじみ時の流れを感じていることでしょう。あのころは、私もこの人もギラギラでトンガッてブッとばしてたもんだわ!!
○吹きすさぶ夜桜の嵐の中で、一瞬だけ荒木村重の正妻だしの怨霊を観てしまう信長。ダサかったりコテコテだったりするんですけど、私、この『軍師官兵衛』において時々ふってわいたように展開される、現実だか脳内だかよくわかんない信長視点のイメージシーンが大好きなんですよね。なに主人公をさしおいてメインづらしてるんだと! いいですよねぇ、この突拍子のなさ。
そしてその信長の心理描写の中でも、かなり近い距離に一人だけ付き添っているお濃の方もステキです。どんだけ夫婦仲がいいんだと!! 少なくとも今回までの流れで言えば、官兵衛・お光ペア、秀吉・お寧ペアとは次元の異なるラブラブが『軍師官兵衛』で展開されているわけなんですよね、面と向かってはあんまりしゃべらないんですけど。う~ん、うちゆき姫グッジョブ♡
○信長「なにゆえ裏切った……どこへ逃げても必ず探し出し、おぬしの首をはねてやる!」
勝った記念の宴席だっていうのに、いまだにねちねち村重への未練を口にする信長。しつけぇ!!
この発言の次のカットで、オーバーに戦慄した顔をして信長を見つめるお濃の方。なにをいまさらビビッてるんですか……そういう亭主でしょ? 昔っから。
あっそうか、「首をはねるだけでいいなんて、あっさりすぎ!! もっといろんな R-18指定的なことグチャグチャやんないの!? カッパ着てナタ持ってシャワールームまっかっかとかさぁ!」っていうニュアンスで驚愕してたのかな。どこのめおとシリアルキラーなんでしょうか。
○斎「官兵衛、官兵衛……父上を、助けてくれ、官兵衛!」
うをを、こいつ、どんだけできた息子なんだ……またしても、本筋とはかかわりのうすい斎の人間レベルの高さに感動してしまった!
口では助けるようなことを言いつつも、官兵衛の全身から発せられる殺気を敏感にかぎとっていた斎。このドラマ、小寺氏職をこれだけ魅力的で将来有望な人物に造形して、この先どうする気なんでしょうか!? ひとえに、侑我くんの演技力が十二分に備わっていてこその番狂わせですよね。いいなぁ~侑我くん。
○ドラマではそうとうな苦渋煩悶の末の判断で、小寺政職の国外逃亡を見逃した官兵衛ですが、実際にはそれほどの思い入れもあったのかどうか……どちらかといえば秀吉に近いようなドライな立場で、「興味がない。生きようが死のうがファッキンどうでもいい。」という冷たさをもって無視したのではないのでしょうか。信長の村重に対する思い入れとはまったく対極にある関係ですよね。実におもしろい対比!
○え、石山本願寺ちかくの天王寺砦って、そんなに豪華な大広間がある御殿チックな城郭だったのか……でも、増築に増築を重ねてそうなった可能性はありますか。なんにしても見栄を大事にする信長さんですからね。
歴史上でも非常に有名な佐久間信盛失脚劇が、ここでやっときたわけなんですが、まぁ~ムチャクチャなボスですよ。会社で働いている人ほど、心底ゾッとするエピソードなのではないのでしょうか。そりゃあんた、長く働いてひとっつも欠点のない部下なんて、どこにもいませんって! 信盛がそれほど無能なのかどうかは判断が難しいですが、同じ天王寺砦における天正四(1576)年五月の大合戦で信長自身がそうとうなリスクを背負って本願寺軍に大勝利をおさめたのにも関わらず、その後まるまる4年間も事態を進展させることができなかった、ということへの思いはドロドロたまっていたようで……信長の性格じゃあ、しょうがないか。その宣告を他ならぬ天王寺砦でくだすんですからね! 「おまえ、もうわかってるよな。」っていうすごみの恐ろしさですよね。
にしても、「今日は……蒸すのう。」って、そのコスプレしてたらそりゃ蒸すわ!! 信長さんの身体を張ったボケでした~。家臣ども、笑ってちょうだいよ……信長さんがこの場を少しでもなごませようと、がんばって準備してきたんですよ!?
○ここにきて唐突にクローズアップされてきた、秀吉の「この時点での」後継者である羽柴秀勝(織田信長の四男 1568~86年)。ここでいう秀勝は、むかし我が『長岡京エイリアン』でも『江』のときに取りあげたことのあった「3人の秀勝くん」のうちの2人目であるわけなのですが、自分の血を引いていない養子に、自分の築き上げてきた財産を相続されるのって、どういう気分なんだろうか。複雑なもんですよねぇ。
ともあれ、ただ単純に「子がいない」という処理のされ方になりがちなこの時期の秀吉ファミリーに、ちゃんと将来有望な「息子」がいるという設定を無視せずに組み込んでいるのはいいなと思いました。さぁ、この後どのくらいドラマの中で秀勝くんが活躍してくれるかな? 難しいポジションですよ~!
○官兵衛の家が「小寺」から「黒田」にもどり、1万石を領する大名へ昇進! そして新たなる「藤巴(ふじどもえ)」の家紋の発祥。
小寺政職の重臣という立場からここでやっと解放され、いよいよ秀吉の軍師にして大名という才能相応の身分を獲得するにいたったわけで、『軍師官兵衛』の物語から観てもかなり重要な回になったと思います。
ここまでで約半年かぁ~。こっからは、かなり濃密な展開が目白押しになるぞ!!
結論、「第25回がとてもたのしみです。」
オープニングのテロップで、ついにあの「流れ関白」こと近衛前久が登場すると知ってウキウキワクワクだったんですが、セリフはないわワンカットだわ、おまけにゃ遠くに座ってるだけなもんだから、表情も誰が演じてるのかさえも皆目見当がつかないわ! カンベンしてよぉ~、龍山公がどんだけキャラクターの立ちまくってるお方か、知らないわけじゃないでしょう!? モブ扱いにするって、なんてもったいないことしてくれちゃってんの!?
まぁまぁ、次回はもっといろんなお公家さんが出てきはるようですし、ここでがたがたいうのはやめときまひょ。官兵衛はん、次も楽しみにしておじゃりまするゆえ、せいぜいおきばりになってたもれ。ほっほっほっほ……