どうもこんばんは~、そうだいでございます。なんか、今年は空梅雨なんですかねぇ。降る、降るっていっても、こちら山形はなかなか雨が降ってくれないんですよ。九州地方とか、西日本は豪雨に悩まされている地域もあるそうなんですが、こっちは湿度が高くなるばっかりで。夏が来るといっても、今年はプールも打ち上げ花火もお祭りもないでしょうし。この夏は、遊ぶにもなにかとアイデアが必要のようですなぁ。
今年のゴールデンウィークはどこにも行けなかったんで、そろそろ近づいてきた夏休み、7月の4連休なんかは、思いきってどこか遠くの温泉宿にでも泊りに行きたいなぁ~と考えているんですが、東京のコロナ事情を見ていますと、もしかして第2波もすぐそこまで来ているのかも知れず……まだ安心はできませんよね。
私が山形に戻ってきて、はや5年が経ちまして、温泉王国・山形の温泉を各個撃破していくこころみも、ついに昨年で100湯を超えました。でもさすがは豊饒なる王国と言いますか、米沢とか庄内とか、まだまだ未開の温泉郷はいくらでも残っています。銀山も、ちゃんと泊りでは行ってないし。いやほんと、山形温泉ネットワークは広大ですわ! 五色温泉、またいつか泊りに行きたいなぁ。
ただ、この夏はそんな山形県内を生意気にもひょいっと跳び越えて県外に繰り出したいとも考えているのですが……まだ時期尚早かも知れないし、判断つきかねているところです。やだね~コロナ!
さて、そんなこんなでともかく良いニュースの少ない印象のある2020年なわけですが、まさか! まさかまさかの大朗報が!! これにはわたくし、心の底から驚きました。
ドラマシリーズ『探偵・由利麟太郎』(2020年6~7月放送予定 全5話 関西テレビ)
『探偵・由利麟太郎(たんていゆりりんたろう)』は、カンテレ(関西テレビ)制作・フジテレビ系列「火曜21時枠」で放送予定の、横溝正史原作による「由利麟太郎」シリーズを映像化した連続テレビドラマシリーズ。主演は、本作が地上波連続ドラマ初主演となる吉川晃司。各話54分、第1回のみ15分拡大放送。
番組キャッチコピーは、「観察すれば、真実は自ずと浮かび上がる」。
本作は、昭和を代表する推理小説作家・横溝正史が、彼の代表作である「金田一耕助」シリーズよりも前に生み出していた探偵・由利麟太郎が活躍するシリーズ作品を初めて連続ドラマ化したもので、在阪テレビ局であるカンテレ(関西テレビ)が「ALL関西」を掲げ、34年ぶりにゴールデン・プライム帯の連続ドラマとして東映京都撮影所と共同制作した。全シーンにおいて京都をはじめとする関西地方で撮影されている。
原作小説において由利麟太郎が登場する作品の映像化は、単発のテレビドラマとしては石坂浩二が由利麟太郎を演じた『蝶々殺人事件』(1998年12月5日にテレビ朝日『土曜ワイド劇場』枠で放送)の事例がある。また、『真珠郎』、『仮面劇場』、『木乃伊(ミイラ)の花嫁』、『悪魔の家』を原作として、由利および三津木を金田一耕助(演・古谷一行)に置き換えた連続ドラマや単発ドラマシリーズの事例や、『真珠郎』を原作として由利を金田一耕助(演・小野寺昭)に置き換えた単発ドラマの事例もある。ちなみに、映像化作品において由利麟太郎が原作小説の通りに白髪の人物として描写されているのは本作が初である。
また本作は、2019新型コロナウイルスの感染拡大で開催延期となった東京オリンピックが本来は2020年7月に開幕予定だったことから、当初より全5話の特別連続ドラマとして企画・制作が進んでいたため、撮影はコロナ禍の影響を受ける直前だった2020年3月にクランクアップしている。
なお、原作小説の時代設定は昭和初期(太平洋戦争前)であるが、本作では令和現在に置き換えるなどの変更が行われている(第1話で2020年3月1日の日付が見られる)。
ちなみに、原作小説における由利麟太郎は「1893年生まれ」という設定であり、今回映像化される作品の中では40歳代ということになる。
主なキャスティング
4代目・由利 麟太郎 …… 吉川 晃司(54歳)
22代目・等々力 大志警部 …… 田辺 誠一(51歳)
三津木 俊助 …… 志尊 淳(25歳)
波田 聡美 …… どんぐり(60歳)
山岸 克平 …… 木本 武宏(49歳)
鈴子(等々力の部下)…… 森山 くるみ(26歳)
等々力の妻 …… あだち 理絵子(45歳)
主なスタッフ
脚本 …… 小林 弘利(59歳)
音楽 …… ワンミュージック
主題歌 …… 吉川 晃司
演出 …… 木村 弥寿彦
原作小説 …… 『花髑髏』(1937年)、『憑かれた女』(1933年)、『銀色の舞踏靴』(1939年)、『蝶々殺人事件』(1946~47年)
原作との相違点
・原作小説では、由利麟太郎の活動拠点は東京の麹町であるが、本作では京都となっている。
・本作での由利の弓道の心得があるという設定はオリジナルで、由利役の吉川晃司と制作スタッフとの打ち合わせから設定に盛り込まれた。
・原作小説では、三津木俊助は新日報社の社会部の新聞記者であり、本作のようなミステリー作家志望の青年ではないが、原作の三津木も記者業の傍ら探偵小説を執筆している。
・原作では三津木が由利の解決した事件を新日報で記事にしているが、本作では三津木が WEBサイトに由利の活躍記録をアップしている。
・等々力警部は原作小説では警視庁の警部であるが、本作では京都府警に所属している。
・等々力警部が由利と大学時代の同窓生という設定と、たい焼き好きという設定はオリジナルである。
・本作の波田聡美と山岸克平、鈴子や等々力警部の妻は、すべて本作オリジナルのキャラクターである。
いや~、まさか、2020年にこのお方が堂々復活なされるとは! しかも、京都で!? 5話限定で!? 吉川晃司さんで!? もう、どこから不思議に思っていいのやら……
まず兆候として、おととし2018年に角川文庫版の『真珠郎』が、まんまあの杉本一文画伯の表紙絵ごと堂々の復刊をとげました。21世紀も10年以上が過ぎたこの時代に、いったい誰がこの復活を予期しえたというのでしょうか……いや、そりゃ確かに傑作なんですけど!
なんだこれは……これはおかしい。これは何か、2016年の長谷川博己金田一版『獄門島』以降の「金田一耕助ブーム」とは別の地下水流が動き始めているぞ……なんとなく、浮かれてばかりもいられないミョ~な胸騒ぎがし始めていたわけです。まぁ、名探偵・金田一耕助にとどまらない「横溝正史ワールド」全体の再発見の流れなのかと喜んではいたのですが。
そして、今年の春ごろに本屋さんで「連続ドラマ化決定!!」という目を疑うような惹句とともに、『蝶々殺人事件』、『憑かれた女』、『花髑髏』、『血蝙蝠』という、これまた目を疑うようなラインナップが月イチで復刊されるという、もはや「血迷ったか、角川書店!?」というか、「もっと先に復刊するやつ、あんじゃん!?」というか……いや、これはもううれしい悲鳴以外の何ものでもないわけなんですが、まぁ~ビックリ仰天のムーブメントが告知されたわけなのです。
今までわたくし、横溝ワールドを原作とする映像作品についてのレビューだのなんだのを、この『長岡京エイリアン』にてさまざまつづってまいりましたが、正直言いまして、「由利麟太郎シリーズ」に関しましてはアウェー感があるというか、そんなに詳しくないです。というか、そもそも思い入れがうすいという……
そりゃまぁ、横溝ファンとして青春の大切な時間をつぎ込んで古本屋をまわった身としましては、昔からちょいちょい、例の角川文庫の「黒地に緑字の背表紙」の未読本を掘り出してはむさぼり読み、その中で由利麟太郎ものも読んではいたのですが、ぶっちゃけ「なんだよ! 金田一出てこないやつ買っちゃったよ!」みたいな印象の持ち方で、完全に「金田一耕助ガチャ」のハズレ枠としか言いようのないポジションに甘んじていたのでした。いや、あくまでも当時の私の中では、の話ですよ!?
振り返ってみれば、それだけ「金田一耕助」の名探偵としてのイメージは、すでに当時のそうだい少年に強烈に植えつけられていたのでしょう。それはひとえに、単発になっていたとはいえ充分におどろおどろしいインパクトを持って放送されていた TBSの古谷金田一による『名推理』シリーズとか、フジテレビの片岡金田一シリーズとか、衛星放送でたまに放送されていた石坂金田一シリーズとか、『金田一少年の事件簿』とか、一連の二次的作品の情報のおかげだったわけです。当然、原作小説も読んでみたらおもしろいわけで。
それに対して由利麟太郎シリーズはといいますと……たま~に『真珠郎』とかが映像化されても、あったり前のように名探偵役が金田一耕助にすり替えられて、「え? 解決するのは金田一耕助ですが、なにか?」みたいな恐怖の情報操作が行われていたわけです。『仮面劇場』とか、『木乃伊の花嫁』とか、『悪魔の家』とか……すべて金田一耕助という怪物の犠牲者ですよね。こんなキャラクターが「天使」なわけねぇだろ!!
ただ、これらは別にテレビ局の横暴でそんな改変が行われていたとも言いきれず、『真珠郎』と『仮面劇場』はがっつり横溝先生がご存命の時に金田一ものとして映像化されており、さらに言うと、もともと由利麟太郎や三津木俊助が主人公だったジュブナイル作品(『夜光怪人』と『蝋面博士』)が、横溝先生の許可を得て推理作家・山村正夫によって金田一ものとしてリライトされるという、由利&三津木ファンにとってはもう造物主さえも信用できない愛なき極寒の迫害時代が、半世紀にもわたって続いていたわけだったのです。かわいそすぎ!!
映像化された『真珠郎』なんて、3作品中3作すべてが金田一もの! ちゃんと由利ものにしてるのは JET先生のコミカライズだけだという寒々しさ。さすがは JET先生、金田一もののコミカライズの3番目に『睡れる花嫁』を持ってくるだけのお人だ!!
そんな中でも、かつてあの石坂浩二さんが由利麟太郎を演じた『蝶々殺人事件』があったこと、確かに私も覚えてました。ただ、見たはずなんだけど肝心の内容は……とにかくつまんなかったっていう記憶しかない! いや、それは私がガキンチョだったからおもしろさがわかんなかったんだろうな、きっと! うん……
ちなみにここで、横溝先生の手による原作小説での「由利麟太郎の事件簿」をざっと簡単に整理してみましょう。個人的には意外に感じたのですが、あの完璧主義者っぽい横溝先生にしては珍しく、中絶作品が2作もあるんですね! 金田一ものの『仮面舞踏会』を見てもわかる通り、自作の完成にはあんなにねちっこく執念を燃やしていた先生なのに……
それにしても、金田一ものも当然そうなのですが、大小関係なく全ての作品を書籍で読めるっていう今現在の状況は、ホントに幸せなことですよ。四半世紀前の私が聞いたら口から血を吐いてうらやましがりますよ! 嗚呼、自転車立ちこぎで山形市内を汗まみれで駆けずり回り、数少ない古本屋に通いつめていたあの日々。っていうか、柏書房さまは神様だ!!
☆特別ふろく 名探偵・由利麟太郎の事件簿(カッコ内の年数は事件発生推定年月)
1、『石膏美人』 (19?年5月 角川文庫『悪魔の設計図』に収録)
2、『獣人』 (19?年9月 角川文庫『悪魔の設計図』に収録)
3、『憑かれた女』(1933年8月 角川文庫)
※ただし『憑かれた女』は初出当初は由利&三津木ものではなく、戦後1948年1月に単行本化された際に由利&三津木ものとして改稿された。
4、『白蝋変化』 (1936年4月 角川文庫『花髑髏』に収録)
5、『蜘蛛と百合』(1936年7月 角川文庫『蝶々殺人事件』に収録)
6、『真珠郎』(1936年10月 角川文庫)
ex1、『猫と蝋人形』(1936年8月 三津木俊助のみの登場 角川文庫『仮面劇場』に収録)
7、『首吊り船』(1936年10月 角川文庫『憑かれた女』に収録)
8、『夜光虫』(1936年11月 角川文庫)
9、『幻の女』(1937年1月 角川文庫)
10、『焙烙の刑』(1937年初春 角川文庫『花髑髏』に収録)
11、『鸚鵡を飼う女』(1937年4月 角川文庫『双仮面』に収録)
12、『幽霊鉄仮面』(1937年4月 ジュブナイル作品 角川スニーカー文庫)
※この作品から、由利&三津木に加えて少年探偵・御子柴進が登場する。
13、『花髑髏』(1937年5月 角川文庫)
14、『薔薇と鬱金香』(1937年7月 角川文庫『蝶々殺人事件』に収録)
15、『蝶々殺人事件』 (1937年10月 角川文庫)※作品の連載は1946~47年
16、『迷路の三人』(1937年8月 翻案作品 柏書房『由利・三津木探偵小説集成2』)
ex2、『猿と死美人』(1938年2月 三津木俊助のみの登場 角川文庫『幻の女』に収録)
17、『木乃伊の花嫁』 (1938年2月 角川文庫『青い外套を着た女』に収録)
ex3、『白蝋少年』(1938年4月 三津木俊助のみの登場 角川文庫『仮面劇場』に収録)
ex4、『悪魔の家』(1938年5月 三津木俊助のみの登場 角川文庫)
18、『悪魔の設計図』(1938年6月 角川文庫)
19、『双仮面』(1938年7月 角川文庫)
20、『仮面劇場』(1938年10月 角川文庫)
21、『銀色の舞踏靴』(1939年3月 角川文庫『血蝙蝠』に収録)
22、『黒衣の人』(1939年4月 角川文庫『悪魔の家』に収録)
23、『盲目の犬』(1939年4月 角川文庫『双仮面』に収録)
24、『血蝙蝠』(1939年8月 角川文庫)
25、『嵐の道化師』(1939年10月 角川文庫『悪魔の家』に収録)
26、『怪盗どくろ指紋』(1940年1月 ジュブナイル作品 角川文庫『仮面城』に収録)
27、『三行広告事件』 (1942年 角川文庫『空蝉処女』に収録)
28、『神の矢』(1949年2月 中絶作品 柏書房『由利・三津木探偵小説集成4』)
29、『模造殺人事件』(1950年5月 中絶作品 柏書房『由利・三津木探偵小説集成4』)
30、『カルメンの死』(1950年1月 角川文庫『幻の女』に収録)
なるほど~。名探偵・由利麟太郎が活躍する作品は、ジュブナイルもあわせて全部で30作なんですか。ほとんどが長編じゃないし、これはコンプリートもお手頃ですな。本のお値段はちょっと張るかも知れませんが、まぁ読めるんだからいいですよね。
いっぽう、我らが金田一耕助ものの作品は、ジュブナイル9作をあわせて全部で86作! 由利シリーズの約3倍というのは、順当なボリュームでしょう。そして、その中には先ほど言ったような経緯で、由利&三津木から「ぶんどった」因縁の2作もあるという……まぁいいじゃないのジュブナイルなんだから! 仲良くしましょうよ~。
さてさて、原作小説のお話はここまでにしておきまして、肝心の「令和に復活した由利&三津木 in 京都」に話題を移しましょう!
この記事をつづる時点では、第1話『花髑髏』のみを観ているという状況なのですが、ドラマの中身はといいますと……
存外(失礼ながら)おもしろいじゃないか! 由利麟太郎やらなんやら、アレンジはものすごいけど。
いや~、っていうか、主演が吉川晃司っていう段階で、まぁ成功しかないんじゃないですか。何しててもカッコいい! 原作小説をちょっと読んでみるとわかるんですが、由利麟太郎って、実年齢的にも吉川さんよりもずっと若いし、けっこう猪突猛進で軽率に見えるところもあるんですよね。それなのに、一人称は「わし」! よくわかんねぇ……作品によっても印象がかなり変わるし。
あと、由利麟太郎ものって、ほんとに「雰囲気系ミステリー」といいますか、「細かいことは気にしない!」という往年の「探偵小説」のお作法を色濃く継いでいるんですよね、だって戦前の娯楽小説なんですし。
ですから、今回のように大幅に作中要素を改変して、由利麟太郎も原作以上にエキセントリックな変人にしたとしても、いちいち目くじら立てずに「いや~この、天知小五郎みたいな予定調和感が心地いいね。」ってな感じで眺めていればいいんですな。「推理小説」じゃあないんですよね。完全に、金田一耕助でなく明智小五郎の系譜にある名探偵になっているわけです。いかにも何か起こりそうな洋館は出てくるわ、謎の生体実験は出てくるわ!
そう、基本的に由利&三津木シリーズは「戦前」の物語なんです。そして、『獄門島』の例を出すまでもなく、金田一耕助シリーズのほとんどは、「戦後」の物語。「古い時代の終わり」が生む事件という意味では、あの『本陣殺人事件』だって、由利先生ではなく金田一耕助が解決するべき事件なんですな。ちゃんと棲みわけてるんだなぁ。そして、金田一耕助が活躍する時、由利先生は去るという。
なので、令和のこの時代に由利麟太郎が復活するというのは、確かに理に適ったことなのかもしれません。「もはや戦後ではない。すでに戦前である。」という……ちょっと怖い話ですが。
それにしましても、今回の初連続ドラマ化が、たったの5回で終わってしまうというのは、最初から決まっているとだとは言え、いかにももったいない!
京都ロケにもかなりの気合が入っていますし、来年にでも、また撮影状況が落ち着いた時に、まさかの第2シーズンの到来を期待したいと思います!! あ、来年もまたオリンピック進行に巻き込まれてしまうのでしょうが……
いや~、等々力警部、気持ちいいくらいに原作小説からかけ離れたキャラクターになっていましたね……加藤武バージョンとはまた違った方向性で。そういえば、かつて田辺誠一さんはコマーシャルかかなんかで金田一耕助を演じていましたよね。まさか等々力警部のほうにいくとは。硬派な由利麟太郎に比べて、まるで金田一耕助のようなユニークな人物になっているのが興味深い。そして、部下の女刑事の名前は「鈴子」て! 制作スタッフもお好きねぇ~!!
今年のゴールデンウィークはどこにも行けなかったんで、そろそろ近づいてきた夏休み、7月の4連休なんかは、思いきってどこか遠くの温泉宿にでも泊りに行きたいなぁ~と考えているんですが、東京のコロナ事情を見ていますと、もしかして第2波もすぐそこまで来ているのかも知れず……まだ安心はできませんよね。
私が山形に戻ってきて、はや5年が経ちまして、温泉王国・山形の温泉を各個撃破していくこころみも、ついに昨年で100湯を超えました。でもさすがは豊饒なる王国と言いますか、米沢とか庄内とか、まだまだ未開の温泉郷はいくらでも残っています。銀山も、ちゃんと泊りでは行ってないし。いやほんと、山形温泉ネットワークは広大ですわ! 五色温泉、またいつか泊りに行きたいなぁ。
ただ、この夏はそんな山形県内を生意気にもひょいっと跳び越えて県外に繰り出したいとも考えているのですが……まだ時期尚早かも知れないし、判断つきかねているところです。やだね~コロナ!
さて、そんなこんなでともかく良いニュースの少ない印象のある2020年なわけですが、まさか! まさかまさかの大朗報が!! これにはわたくし、心の底から驚きました。
ドラマシリーズ『探偵・由利麟太郎』(2020年6~7月放送予定 全5話 関西テレビ)
『探偵・由利麟太郎(たんていゆりりんたろう)』は、カンテレ(関西テレビ)制作・フジテレビ系列「火曜21時枠」で放送予定の、横溝正史原作による「由利麟太郎」シリーズを映像化した連続テレビドラマシリーズ。主演は、本作が地上波連続ドラマ初主演となる吉川晃司。各話54分、第1回のみ15分拡大放送。
番組キャッチコピーは、「観察すれば、真実は自ずと浮かび上がる」。
本作は、昭和を代表する推理小説作家・横溝正史が、彼の代表作である「金田一耕助」シリーズよりも前に生み出していた探偵・由利麟太郎が活躍するシリーズ作品を初めて連続ドラマ化したもので、在阪テレビ局であるカンテレ(関西テレビ)が「ALL関西」を掲げ、34年ぶりにゴールデン・プライム帯の連続ドラマとして東映京都撮影所と共同制作した。全シーンにおいて京都をはじめとする関西地方で撮影されている。
原作小説において由利麟太郎が登場する作品の映像化は、単発のテレビドラマとしては石坂浩二が由利麟太郎を演じた『蝶々殺人事件』(1998年12月5日にテレビ朝日『土曜ワイド劇場』枠で放送)の事例がある。また、『真珠郎』、『仮面劇場』、『木乃伊(ミイラ)の花嫁』、『悪魔の家』を原作として、由利および三津木を金田一耕助(演・古谷一行)に置き換えた連続ドラマや単発ドラマシリーズの事例や、『真珠郎』を原作として由利を金田一耕助(演・小野寺昭)に置き換えた単発ドラマの事例もある。ちなみに、映像化作品において由利麟太郎が原作小説の通りに白髪の人物として描写されているのは本作が初である。
また本作は、2019新型コロナウイルスの感染拡大で開催延期となった東京オリンピックが本来は2020年7月に開幕予定だったことから、当初より全5話の特別連続ドラマとして企画・制作が進んでいたため、撮影はコロナ禍の影響を受ける直前だった2020年3月にクランクアップしている。
なお、原作小説の時代設定は昭和初期(太平洋戦争前)であるが、本作では令和現在に置き換えるなどの変更が行われている(第1話で2020年3月1日の日付が見られる)。
ちなみに、原作小説における由利麟太郎は「1893年生まれ」という設定であり、今回映像化される作品の中では40歳代ということになる。
主なキャスティング
4代目・由利 麟太郎 …… 吉川 晃司(54歳)
22代目・等々力 大志警部 …… 田辺 誠一(51歳)
三津木 俊助 …… 志尊 淳(25歳)
波田 聡美 …… どんぐり(60歳)
山岸 克平 …… 木本 武宏(49歳)
鈴子(等々力の部下)…… 森山 くるみ(26歳)
等々力の妻 …… あだち 理絵子(45歳)
主なスタッフ
脚本 …… 小林 弘利(59歳)
音楽 …… ワンミュージック
主題歌 …… 吉川 晃司
演出 …… 木村 弥寿彦
原作小説 …… 『花髑髏』(1937年)、『憑かれた女』(1933年)、『銀色の舞踏靴』(1939年)、『蝶々殺人事件』(1946~47年)
原作との相違点
・原作小説では、由利麟太郎の活動拠点は東京の麹町であるが、本作では京都となっている。
・本作での由利の弓道の心得があるという設定はオリジナルで、由利役の吉川晃司と制作スタッフとの打ち合わせから設定に盛り込まれた。
・原作小説では、三津木俊助は新日報社の社会部の新聞記者であり、本作のようなミステリー作家志望の青年ではないが、原作の三津木も記者業の傍ら探偵小説を執筆している。
・原作では三津木が由利の解決した事件を新日報で記事にしているが、本作では三津木が WEBサイトに由利の活躍記録をアップしている。
・等々力警部は原作小説では警視庁の警部であるが、本作では京都府警に所属している。
・等々力警部が由利と大学時代の同窓生という設定と、たい焼き好きという設定はオリジナルである。
・本作の波田聡美と山岸克平、鈴子や等々力警部の妻は、すべて本作オリジナルのキャラクターである。
いや~、まさか、2020年にこのお方が堂々復活なされるとは! しかも、京都で!? 5話限定で!? 吉川晃司さんで!? もう、どこから不思議に思っていいのやら……
まず兆候として、おととし2018年に角川文庫版の『真珠郎』が、まんまあの杉本一文画伯の表紙絵ごと堂々の復刊をとげました。21世紀も10年以上が過ぎたこの時代に、いったい誰がこの復活を予期しえたというのでしょうか……いや、そりゃ確かに傑作なんですけど!
なんだこれは……これはおかしい。これは何か、2016年の長谷川博己金田一版『獄門島』以降の「金田一耕助ブーム」とは別の地下水流が動き始めているぞ……なんとなく、浮かれてばかりもいられないミョ~な胸騒ぎがし始めていたわけです。まぁ、名探偵・金田一耕助にとどまらない「横溝正史ワールド」全体の再発見の流れなのかと喜んではいたのですが。
そして、今年の春ごろに本屋さんで「連続ドラマ化決定!!」という目を疑うような惹句とともに、『蝶々殺人事件』、『憑かれた女』、『花髑髏』、『血蝙蝠』という、これまた目を疑うようなラインナップが月イチで復刊されるという、もはや「血迷ったか、角川書店!?」というか、「もっと先に復刊するやつ、あんじゃん!?」というか……いや、これはもううれしい悲鳴以外の何ものでもないわけなんですが、まぁ~ビックリ仰天のムーブメントが告知されたわけなのです。
今までわたくし、横溝ワールドを原作とする映像作品についてのレビューだのなんだのを、この『長岡京エイリアン』にてさまざまつづってまいりましたが、正直言いまして、「由利麟太郎シリーズ」に関しましてはアウェー感があるというか、そんなに詳しくないです。というか、そもそも思い入れがうすいという……
そりゃまぁ、横溝ファンとして青春の大切な時間をつぎ込んで古本屋をまわった身としましては、昔からちょいちょい、例の角川文庫の「黒地に緑字の背表紙」の未読本を掘り出してはむさぼり読み、その中で由利麟太郎ものも読んではいたのですが、ぶっちゃけ「なんだよ! 金田一出てこないやつ買っちゃったよ!」みたいな印象の持ち方で、完全に「金田一耕助ガチャ」のハズレ枠としか言いようのないポジションに甘んじていたのでした。いや、あくまでも当時の私の中では、の話ですよ!?
振り返ってみれば、それだけ「金田一耕助」の名探偵としてのイメージは、すでに当時のそうだい少年に強烈に植えつけられていたのでしょう。それはひとえに、単発になっていたとはいえ充分におどろおどろしいインパクトを持って放送されていた TBSの古谷金田一による『名推理』シリーズとか、フジテレビの片岡金田一シリーズとか、衛星放送でたまに放送されていた石坂金田一シリーズとか、『金田一少年の事件簿』とか、一連の二次的作品の情報のおかげだったわけです。当然、原作小説も読んでみたらおもしろいわけで。
それに対して由利麟太郎シリーズはといいますと……たま~に『真珠郎』とかが映像化されても、あったり前のように名探偵役が金田一耕助にすり替えられて、「え? 解決するのは金田一耕助ですが、なにか?」みたいな恐怖の情報操作が行われていたわけです。『仮面劇場』とか、『木乃伊の花嫁』とか、『悪魔の家』とか……すべて金田一耕助という怪物の犠牲者ですよね。こんなキャラクターが「天使」なわけねぇだろ!!
ただ、これらは別にテレビ局の横暴でそんな改変が行われていたとも言いきれず、『真珠郎』と『仮面劇場』はがっつり横溝先生がご存命の時に金田一ものとして映像化されており、さらに言うと、もともと由利麟太郎や三津木俊助が主人公だったジュブナイル作品(『夜光怪人』と『蝋面博士』)が、横溝先生の許可を得て推理作家・山村正夫によって金田一ものとしてリライトされるという、由利&三津木ファンにとってはもう造物主さえも信用できない愛なき極寒の迫害時代が、半世紀にもわたって続いていたわけだったのです。かわいそすぎ!!
映像化された『真珠郎』なんて、3作品中3作すべてが金田一もの! ちゃんと由利ものにしてるのは JET先生のコミカライズだけだという寒々しさ。さすがは JET先生、金田一もののコミカライズの3番目に『睡れる花嫁』を持ってくるだけのお人だ!!
そんな中でも、かつてあの石坂浩二さんが由利麟太郎を演じた『蝶々殺人事件』があったこと、確かに私も覚えてました。ただ、見たはずなんだけど肝心の内容は……とにかくつまんなかったっていう記憶しかない! いや、それは私がガキンチョだったからおもしろさがわかんなかったんだろうな、きっと! うん……
ちなみにここで、横溝先生の手による原作小説での「由利麟太郎の事件簿」をざっと簡単に整理してみましょう。個人的には意外に感じたのですが、あの完璧主義者っぽい横溝先生にしては珍しく、中絶作品が2作もあるんですね! 金田一ものの『仮面舞踏会』を見てもわかる通り、自作の完成にはあんなにねちっこく執念を燃やしていた先生なのに……
それにしても、金田一ものも当然そうなのですが、大小関係なく全ての作品を書籍で読めるっていう今現在の状況は、ホントに幸せなことですよ。四半世紀前の私が聞いたら口から血を吐いてうらやましがりますよ! 嗚呼、自転車立ちこぎで山形市内を汗まみれで駆けずり回り、数少ない古本屋に通いつめていたあの日々。っていうか、柏書房さまは神様だ!!
☆特別ふろく 名探偵・由利麟太郎の事件簿(カッコ内の年数は事件発生推定年月)
1、『石膏美人』 (19?年5月 角川文庫『悪魔の設計図』に収録)
2、『獣人』 (19?年9月 角川文庫『悪魔の設計図』に収録)
3、『憑かれた女』(1933年8月 角川文庫)
※ただし『憑かれた女』は初出当初は由利&三津木ものではなく、戦後1948年1月に単行本化された際に由利&三津木ものとして改稿された。
4、『白蝋変化』 (1936年4月 角川文庫『花髑髏』に収録)
5、『蜘蛛と百合』(1936年7月 角川文庫『蝶々殺人事件』に収録)
6、『真珠郎』(1936年10月 角川文庫)
ex1、『猫と蝋人形』(1936年8月 三津木俊助のみの登場 角川文庫『仮面劇場』に収録)
7、『首吊り船』(1936年10月 角川文庫『憑かれた女』に収録)
8、『夜光虫』(1936年11月 角川文庫)
9、『幻の女』(1937年1月 角川文庫)
10、『焙烙の刑』(1937年初春 角川文庫『花髑髏』に収録)
11、『鸚鵡を飼う女』(1937年4月 角川文庫『双仮面』に収録)
12、『幽霊鉄仮面』(1937年4月 ジュブナイル作品 角川スニーカー文庫)
※この作品から、由利&三津木に加えて少年探偵・御子柴進が登場する。
13、『花髑髏』(1937年5月 角川文庫)
14、『薔薇と鬱金香』(1937年7月 角川文庫『蝶々殺人事件』に収録)
15、『蝶々殺人事件』 (1937年10月 角川文庫)※作品の連載は1946~47年
16、『迷路の三人』(1937年8月 翻案作品 柏書房『由利・三津木探偵小説集成2』)
ex2、『猿と死美人』(1938年2月 三津木俊助のみの登場 角川文庫『幻の女』に収録)
17、『木乃伊の花嫁』 (1938年2月 角川文庫『青い外套を着た女』に収録)
ex3、『白蝋少年』(1938年4月 三津木俊助のみの登場 角川文庫『仮面劇場』に収録)
ex4、『悪魔の家』(1938年5月 三津木俊助のみの登場 角川文庫)
18、『悪魔の設計図』(1938年6月 角川文庫)
19、『双仮面』(1938年7月 角川文庫)
20、『仮面劇場』(1938年10月 角川文庫)
21、『銀色の舞踏靴』(1939年3月 角川文庫『血蝙蝠』に収録)
22、『黒衣の人』(1939年4月 角川文庫『悪魔の家』に収録)
23、『盲目の犬』(1939年4月 角川文庫『双仮面』に収録)
24、『血蝙蝠』(1939年8月 角川文庫)
25、『嵐の道化師』(1939年10月 角川文庫『悪魔の家』に収録)
26、『怪盗どくろ指紋』(1940年1月 ジュブナイル作品 角川文庫『仮面城』に収録)
27、『三行広告事件』 (1942年 角川文庫『空蝉処女』に収録)
28、『神の矢』(1949年2月 中絶作品 柏書房『由利・三津木探偵小説集成4』)
29、『模造殺人事件』(1950年5月 中絶作品 柏書房『由利・三津木探偵小説集成4』)
30、『カルメンの死』(1950年1月 角川文庫『幻の女』に収録)
なるほど~。名探偵・由利麟太郎が活躍する作品は、ジュブナイルもあわせて全部で30作なんですか。ほとんどが長編じゃないし、これはコンプリートもお手頃ですな。本のお値段はちょっと張るかも知れませんが、まぁ読めるんだからいいですよね。
いっぽう、我らが金田一耕助ものの作品は、ジュブナイル9作をあわせて全部で86作! 由利シリーズの約3倍というのは、順当なボリュームでしょう。そして、その中には先ほど言ったような経緯で、由利&三津木から「ぶんどった」因縁の2作もあるという……まぁいいじゃないのジュブナイルなんだから! 仲良くしましょうよ~。
さてさて、原作小説のお話はここまでにしておきまして、肝心の「令和に復活した由利&三津木 in 京都」に話題を移しましょう!
この記事をつづる時点では、第1話『花髑髏』のみを観ているという状況なのですが、ドラマの中身はといいますと……
存外(失礼ながら)おもしろいじゃないか! 由利麟太郎やらなんやら、アレンジはものすごいけど。
いや~、っていうか、主演が吉川晃司っていう段階で、まぁ成功しかないんじゃないですか。何しててもカッコいい! 原作小説をちょっと読んでみるとわかるんですが、由利麟太郎って、実年齢的にも吉川さんよりもずっと若いし、けっこう猪突猛進で軽率に見えるところもあるんですよね。それなのに、一人称は「わし」! よくわかんねぇ……作品によっても印象がかなり変わるし。
あと、由利麟太郎ものって、ほんとに「雰囲気系ミステリー」といいますか、「細かいことは気にしない!」という往年の「探偵小説」のお作法を色濃く継いでいるんですよね、だって戦前の娯楽小説なんですし。
ですから、今回のように大幅に作中要素を改変して、由利麟太郎も原作以上にエキセントリックな変人にしたとしても、いちいち目くじら立てずに「いや~この、天知小五郎みたいな予定調和感が心地いいね。」ってな感じで眺めていればいいんですな。「推理小説」じゃあないんですよね。完全に、金田一耕助でなく明智小五郎の系譜にある名探偵になっているわけです。いかにも何か起こりそうな洋館は出てくるわ、謎の生体実験は出てくるわ!
そう、基本的に由利&三津木シリーズは「戦前」の物語なんです。そして、『獄門島』の例を出すまでもなく、金田一耕助シリーズのほとんどは、「戦後」の物語。「古い時代の終わり」が生む事件という意味では、あの『本陣殺人事件』だって、由利先生ではなく金田一耕助が解決するべき事件なんですな。ちゃんと棲みわけてるんだなぁ。そして、金田一耕助が活躍する時、由利先生は去るという。
なので、令和のこの時代に由利麟太郎が復活するというのは、確かに理に適ったことなのかもしれません。「もはや戦後ではない。すでに戦前である。」という……ちょっと怖い話ですが。
それにしましても、今回の初連続ドラマ化が、たったの5回で終わってしまうというのは、最初から決まっているとだとは言え、いかにももったいない!
京都ロケにもかなりの気合が入っていますし、来年にでも、また撮影状況が落ち着いた時に、まさかの第2シーズンの到来を期待したいと思います!! あ、来年もまたオリンピック進行に巻き込まれてしまうのでしょうが……
いや~、等々力警部、気持ちいいくらいに原作小説からかけ離れたキャラクターになっていましたね……加藤武バージョンとはまた違った方向性で。そういえば、かつて田辺誠一さんはコマーシャルかかなんかで金田一耕助を演じていましたよね。まさか等々力警部のほうにいくとは。硬派な由利麟太郎に比べて、まるで金田一耕助のようなユニークな人物になっているのが興味深い。そして、部下の女刑事の名前は「鈴子」て! 制作スタッフもお好きねぇ~!!