長岡京エイリアン

日記に…なるかしらん

飛騨が舞台で100億超えとは……天狗のしわざかな?  ~映画『君の名は。』~

2016年09月25日 12時55分34秒 | アニメらへん
 いや~、不思議な作品だな、と感じました。

 この前に観たのが『スーサイド・スクワッド』だったからなおさら強く感じたのかもしれませんが、とにかく整合性がしっかり取れているというか、精巧に組み立てた上でガシャーン!と壊しました、みたいな入り組んだ構成が印象的でしたね。序盤であえて「中身が入れ替わった日のこと」を描写してないとか、男女で実は「○○」が違ってましたという部分が中盤でやっと明らかになるところとか。

 中盤のそのどんでん返しまでは、それがオチで終わるという流れの小説やマンガは前に観たことがあるような気がしたのですが、そこから今までパッとしなかった印象の男主人公が一念発起して悪戦苦闘しだし、その努力が最終的に「奇跡」につながるという後半の展開は、なんとなくハッピーエンドになるんだろうなという予測はつくにしても、やっぱり王道の気持ちよさがあったと思いました。

 ただ、物語の中でもいろいろあって相当な時間経過が描かれているためなのか、ちょっと2時間ない作品(107分)とはにわかに信じられないほど長く感じた……それはもちろん、ラストシーンの感動のためには、観る側にも「時間の厚み」を知ってもらわなければいけない、という演出の意図があったのでしょうが。まさしく、ひたすら丹念に要素のひとすじひとすじを織り上げていくような作業に感じられましたね。


 いや~しかし、まさか物語の半分の舞台が飛騨というこの作品が100億円をゆうにオーバーする超絶ヒット街道を驀進中とは……いったい誰が予測しえたでありましょうか。高山ラーメンもビックリよ。
 これはいったいぜんたい誰の仕業なんだって、そりゃ古代、いにしえびとは彗星とかの空の天変地異を「あまつきつね」のしわざって解釈していたんですから、そりゃ天の狗のしわざに決まってますわなぁ。市原悦子さんが旧家のお婆さんを演じているからといって、決して八つ墓明神のたたりではないでしょう。天狗の所業じゃ!


 なるほど、古典的な『おれがあいつであいつがおれで』パターンが、こういう「あくまでお話の一要素ですよ!」というかたちで組み込まれているとは。青春時代の男女にとっては驚天動地すぎるこの一大事件が、実はもっと大きな宇宙のうねりに対峙する人間の「未来への遺産」であったとは! すごいなぁ、『とりかへばや物語』が正真正銘の SFにアップデートされちゃった、みたいな。『とりかへばや物語』はもちろん、『おれがあいつであいつがおれで』とはまるで違うお話ですが。

 っていうか、私はこの作品を観ていて『とりかへばや物語』よりも何よりも、『まんが日本昔ばなし』の『鬼怒沼の機織姫』(1992年)のほうがオーバーラップして仕方ありませんでしたよ! いや、内容はぜんっぜん違うわけなんですが、宮水神社の御神体のある湿原の風景と人里離れた立地条件が鬼怒沼になんとなく似てたし、なんてったって市原悦子さんが糸をよってたし……そりゃ機織りと組み紐は別もんですし、鬼怒沼は栃木県ですけどね。有線式飛び杼サイコミュ発動! おさわりダメ、ゼッタイ!!
 でも、市原さんは最初のシーンでは全然わかりませんでした。そういえば声が高くなった時にやっとわかるかなってくらいで、お上手だったなぁ~! 他の声優プロパーでない方々も軒並み上手だった。最初の起床シーンでの上白石さんの吐息の演技はすごかったですね!

 あれ、ラストシーンでの2人には、それまでの展開のほとんどは記憶に残ってないってことなんですよね。それでも運命の糸を感じて立ち止まり、向かい合って涙を流してしまうという、このロマンチックすぎる味わい。クラシックだなぁ~! クラシックですけど、確かに2016年の作品であるという、「ひとりひとりの人間の力に希望を見出したい」という願いに満ちていますよね。これはやっぱり、『シン・ゴジラ』に伍する、あるいは勝ってしまっても文句のつけようのない物語です。


 日頃、RADWIMPSが好きでない私も、別にこれで好きになったということは全然ないのですが、抵抗なく楽しむことができました。食わず嫌いしてちゃいけないんですねぇ。

 私、今まで全く観たことのないアニメ監督の作品を初めて観るというのは、原恵一監督の『カラフル』(2010年)以来でした。なかなか本当に行くまでの垣根が高くなっちゃうんですが、噂には聞いているけどまだっていうアニメ監督の作品を初めて観に行くのって、ドキドキして楽しいもんですね。お手並み拝見!みたいな。


 これは完全な憶測なのですが、たぶん、新海監督ファンの方々にとっては「あぁ、メジャー向け作品だなぁ……」って感じの薄口テイストなのかもしれない、という余計すぎる詮索も頭をよぎりました。あれ、作家性はちょっと入る余地のなさそうな王道のラストですもんね。でもひとまず、超遅ればせながら私も新海監督の世界にやっと触れられた、ということで。

 井上和彦さんやてらそまさん、茶風林さんが、ああいう大御所枠の役を演じられる時代になったのねぇ。そりゃあ時間軸もしれっと2021年にぶっ飛びますわ。東京オリンピック、無事に終わるといいなぁ~。

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