《前回までのあらすじ》
あちゃ~。ついにぬらりひょん企画で20回やっちゃった!? けっこうなボリュームになってしまいましたね……
たぶん、30回にいくまでには完結すると思うんだけど。うむむ。
自分でもまったく気づいていなかった。私はここまで彼のことを想っていたのか……まさに Love is blind!!
アニメ第3期『ゲゲゲの鬼太郎』のフィーバーもバブル経済も過去の記憶となった1996年に、「水木しげるの原作マンガへの回帰」を念頭におかれて製作、放映開始された新アニメシリーズ・第4期。
アニメーションのデジタル化や豪華ゲストの参加なども話題になることの多かったこの第4期は、あくせく働く人間の社会とはかけ離れた独特のスローライフ感を持つ妖怪の世界を見事に映像化したシリーズとして、比較的年長の世代に大いに評価されるものとなりました。
このアニメ第4期の内容は、基本的には第3期と同じく「原作マンガの現代アップデートリメイク」になっています。
つまり、過去の原作マンガ作品との直接の時間的つながりはなく、第3期が原作の傑作エピソード群を1980年代に置き換えてアレンジ、リメイクしていたように、第4期も原作に平成の要素を取り入れたエピソードを製作していたのです。
そういう意味では、原作マンガともアニメ第1~3期ともパラレルな関係にある第4期は必ずしも「原作に100% 忠実」というわけではないのですが、とにかく「鬼太郎と妖怪との派手なバトルだけが水木ワールドじゃないんだゾ。」という気概を見せる野心作ではあったのです。
さて! こういう意気込みを見せるシリーズであったがために、キャラクターとしての扱いが最もビミョ~になってしまったのが我らがぬらりひょん先生でした。
現在ももちろんそうだし、第4期が放送されていた1990年代にも「悪の大ボス」「妖怪総大将」「朱の盤といっしょ」などといったイメージが強烈に定着してしまっていたぬらりひょん。しかし、そんな要素は原作マンガにはほとんどありません。『スポーツ狂時代』のぬらりひょん校長だって、表立った悪事を始める前に鬼太郎に地獄送りにされてたし……
ところがその反面、大ヒットしたアニメ第3期にちょくちょく顔を出し、実質的な最終回に当たる第108話や、それに続く『地獄編』でも堂々たるラスボスを演じていたぬらりひょん。その第3期の劇場版最終作『激突!!異次元妖怪の大反乱』では、妖怪軍団を率いて東京を占拠する正真正銘の妖怪総大将ぶりを見せつけていたぬらりひょん。
これらのイメージを一切無視して、エピソードひとつにしか登場しない孤独なテロリスト妖怪に戻しちゃっていいのだろうか……それに、第4期を長期シリーズにするためには、やっぱり「悪の大ボス」的存在を用意した方がなにかと便利だし。
妖怪ぬらりひょんをどう扱うのか。原作か世間的イメージか? 忠実かアレンジか? まさにアニメ第4期の根幹を揺るがしかねない大問題。製作スタッフの眠れない夜は続きました。
そういった苦心惨憺の結果、ついに。
アニメ第4期の放送が1月から始まった1996年も、そろそろ暮れにさしかかろうかとしていた11月。
核爆弾的存在の妖怪ぬらりひょんが、満を持して第4期に初出演しました。そのエピソードとは、
第46話『妖怪大裁判 前編』
あ、あれれ?
『妖怪大裁判』って、原作でいうと1969年1~2月に連載されてた(全4回)やつでしょ。あれ、ゲストの敵妖怪は「百々爺(ももんじい)」で、ぬらりひょんはとっくの昔に古代に流されてるから出てないはずなんじゃ……
そうなのです。1996年11~12月に放送されていたアニメ第4期46~47話『妖怪大裁判 前後編』で、ぬらりひょんは百々爺の陰謀によって濡れ衣を着せられ天狗ポリスに逮捕された鬼太郎の「弁護人」として初登場したのでした。え、味方!?
このポジションは完全なる第4期オリジナルなのですが、ここでもうひとひねり、実はこのぬらりひょん弁護士は、その百々爺を影であやつり、その一方で自身もわざと稚拙な弁護を展開するという、原作版よりもさらに確実な両面作戦で鬼太郎を葬り去ろうとしていた事件の黒幕だったのです!
こ、これは。まさしくアニメ第3期の衣鉢を継いだ、「原作エピソードに影の黒幕としてコバンザメのようにくっついてくるパターン」だっ!!
この初登場の時点で、アニメ第4期における妖怪ぬらりひょんの立ち位置は決しました。
「だいたいアニメ第3期といっしょの悪のボスキャラ」
なんということでしょう。ここにおいて、世間のイメージや期待をバックにつけたぬらりひょんは、「原作に忠実」を旨とするアニメ第4期のスタイルさえも揺るがす大きな存在になってしまっていたのです。ぬ、ぬらりひょんが原作マンガに勝った!?
ところがこの「勝利」は、ぬらりひょん側にも多大な「譲歩」を強いるものとなりました。
そして、この原作に配慮した譲歩こそが、結果的にはアニメ第4期のぬらりひょんイメージを大いに「どっちつかずで中途半端」なものにする原因となってしまったのです。
まず、第4期のぬらりひょんは、顔つきが水木しげるの原作マンガにかなり忠実な「タレ目でしまらない」ものになりました。アニメ第3期の千葉・青野ぬらりひょんが見せていた、「悪人ですが、なにか。」といったふてぶてしさムンムンで目つきの鋭い怜悧な顔立ちとは似ても似つかないものとなっています。ただし厳密に言えば、第3期のドあたまでも、ぬらりひょんは人前に現れた時だけ原作よりの顔になっています。
つまり、第4期ぬらりひょんは原作マンガやそれをそのままアニメ化した第1期ぬらりひょんに準拠した、「いやらしい上目づかいと卑屈な笑いの似合うつまらない悪人」といった印象の強い爺さん妖怪になっていたのです。これはこれでいいんですが、「妖怪総大将」といった称号はちょっと似合いそうにありません。原作マンガの『鬼太郎国盗り物語』では、その顔でムリヤリ正義の総大将になっていましたけど。
こういう難しい立場の第4期ぬらりひょんに通算4代目の声優として命を吹き込んだのは、シブさ爆発・西村知道(50歳)。
それまでのキャリアとして、特に有名な『機動戦士Zガンダム』のジャミトフ=ハイマン役、『魔神英雄伝ワタル』シリーズの剣部シバラク役などを見てもわかるとおり、計算高い酷薄な悪人も義侠心に富んだ豪傑も演じることができるダンディな声が特徴のお方なのですが、このアニメ第4期『ゲゲゲの鬼太郎』では、舌先三寸で妖怪達をだまくらかして鬼太郎にけしかける、いかにも肝の小さそうな悪党ぬらりひょんを見事に演じきっておられます。
ここらへんが、6~7千万年ぶんの恨みを満身にただよわせた迫力満点の青野ぬらりひょんとは実に対照的なところで、西村ぬらりひょんはカリスマ性こそないものの、ぬらりくらりと暗躍しながらしつこく鬼太郎につきまとう「陰湿でイヤ~な感じ」を見事に体現しているんですよねぇ。
「へへへ……きたろぉ。」
う~ん、あの粘着質な声! カッコイイのは断然、青野ぬらりひょんなのですが、妖怪ぬらりひょんの「厭な感じ」にもっとも近いのは、この西村ぬらりひょんなんじゃないかなぁ。
ちなみに、のちのこととなりますが、西村知道さんはアニメ第5期『ゲゲゲの鬼太郎』(2007~09年)でまたしてもリメイクされた『妖怪大裁判』エピソードで、今度は「百々爺」の役を演じてその時の青野ぬらりひょんと奇跡の共演を果たしています。日本全国のぬらりひょんファン、大興奮!!
さて、オリジナル設定として初登場していながら、多少原作も意識したデザインになっていたぬらりひょんですが、もうひとつ重要なポイントとして、このエピソードの時点では、かつてアニメ第3期であんなに親しく付き添っていたはずの、あの頼りにならない手下妖怪「朱の盤」がいないということが挙げられます。
朱の盤がぬらりひょんのパートナーとなっているのは言うまでもなく第3期の独自設定ですので、その朱の盤をはずしたのは第4期の「脱・第3期」の意気込みを示すものとなったかに見えたのですが……
話をアニメ第4期の『妖怪大裁判』に戻しますが、後編クライマックスで鬼太郎の活躍によりその陰謀が暴露されたぬらりひょんは、天狗ポリスに逮捕されて即刻有罪が確定。タイムマシンみたいな装置で恐竜時代に流されるという「古代流しの刑」に処されてしまいます。
なに、恐竜時代!? そうなんです。エピソードの内容はまったく違うのに、最終的にぬらりひょんが過去世界に追放されてしまうという末路はおんなじなんですねぇ。
でも、前のいくつかのパターンではは蛇骨婆とか朱の盤がいっしょにいたのに、第4期ではひとりで流されることになっちゃった……平成は老人に厳しいなぁオイ。
余談ですが、水木しげるによる原作マンガの中でも屈指の名エピソードとなっている『妖怪大裁判』に、本来登場していないはずのぬらりひょんが関係してくるというストーリーラインは、具体的な関わりかたはそれぞれ違っているものの、2007年10~11月発表のほしの竜一版『ゲゲゲの鬼太郎 妖怪千物語』第26~27話『妖怪大裁判! 前後編』と、先ほどにもふれた2008年3月放送のアニメ第5期『ゲゲゲの鬼太郎』第47話『妖怪大裁判』にも継承されている第4期以来の「恒例パターン」となっています。
ところで、アニメ第3期では「ティラノサウルスがいる。」ということで、だいたい恐竜時代も終わりに近づいた白亜紀末期(6550万年前)あたりにぬらりひょん一味が流されたことは確かだったのですが、第4期での「古代流しの刑」でいう「恐竜時代」というものが、具体的に地球に恐竜がいた三畳紀後期(2億3千万年前)~白亜紀末期(6550万年前)のどのへんのことを指していたのかがはっきりしていないのが実に気になるところです。
だって、場合によっては西村ぬらりひょんは、第3期の千葉ぬらりひょんよりもさらに1億年くらい昔に流されていたのかも知れないんですからね……もう、どんだけ過酷な刑なのか想像もつきません。
ともあれ、経緯は違うにしても、やっぱり結局は鬼太郎によって過去に追放されることとなってしまったぬらりひょん。
このあとはどうなる? 原作みたいにもう2度と出てこないのか? それとも、アニメ第3期や『最新版 ゲゲゲの鬼太郎』のように執念のカムバックを果たすのか?
結果をさっさと言ってしまいますと、アニメ第4期の西村ぬらりひょんは、「古代流しの刑」執行のわずか1ヶ月後、年があらたまって1997年1月放送の第54話『妖怪邪魅とガマ仙人!』(原作は1968年7月連載の『妖怪関ヶ原 前後編』)の黒幕として、まさしく何事もなかったかのようなニヤニヤ顔で早々に復活してきてしまいます。な、なんなんだこいつは……
アニメ第3期同様、恐竜時代から帰ってきた理由はいっさい語られないまま、その回の悪役妖怪・邪魅の影からいつもの感じで現れたわけなのですが、第3期が千葉ぬらりひょんから青野ぬらりひょんへの「声の若返り&凶悪化」というウルトラC(古い表現……)で時の重みを暗に示していたのに対して、こっちの第4期のほうはと言うと、
「へへへ……きたろぉ。」
ぜんぜん変わってねぇ!! 2億年生きてるかも知れないのに、こんなにエヴァーラスティングな小悪党っぷり。
西村ぬらりひょん……恐ろしい子!
こんな感じで、青野ぬらりひょんとはまったく違ったアプローチで魅せる西村ぬらりひょんの活躍っぷりは、また次回~。
果たして朱の盤は、このまま無視なのか~!?
あちゃ~。ついにぬらりひょん企画で20回やっちゃった!? けっこうなボリュームになってしまいましたね……
たぶん、30回にいくまでには完結すると思うんだけど。うむむ。
自分でもまったく気づいていなかった。私はここまで彼のことを想っていたのか……まさに Love is blind!!
アニメ第3期『ゲゲゲの鬼太郎』のフィーバーもバブル経済も過去の記憶となった1996年に、「水木しげるの原作マンガへの回帰」を念頭におかれて製作、放映開始された新アニメシリーズ・第4期。
アニメーションのデジタル化や豪華ゲストの参加なども話題になることの多かったこの第4期は、あくせく働く人間の社会とはかけ離れた独特のスローライフ感を持つ妖怪の世界を見事に映像化したシリーズとして、比較的年長の世代に大いに評価されるものとなりました。
このアニメ第4期の内容は、基本的には第3期と同じく「原作マンガの現代アップデートリメイク」になっています。
つまり、過去の原作マンガ作品との直接の時間的つながりはなく、第3期が原作の傑作エピソード群を1980年代に置き換えてアレンジ、リメイクしていたように、第4期も原作に平成の要素を取り入れたエピソードを製作していたのです。
そういう意味では、原作マンガともアニメ第1~3期ともパラレルな関係にある第4期は必ずしも「原作に100% 忠実」というわけではないのですが、とにかく「鬼太郎と妖怪との派手なバトルだけが水木ワールドじゃないんだゾ。」という気概を見せる野心作ではあったのです。
さて! こういう意気込みを見せるシリーズであったがために、キャラクターとしての扱いが最もビミョ~になってしまったのが我らがぬらりひょん先生でした。
現在ももちろんそうだし、第4期が放送されていた1990年代にも「悪の大ボス」「妖怪総大将」「朱の盤といっしょ」などといったイメージが強烈に定着してしまっていたぬらりひょん。しかし、そんな要素は原作マンガにはほとんどありません。『スポーツ狂時代』のぬらりひょん校長だって、表立った悪事を始める前に鬼太郎に地獄送りにされてたし……
ところがその反面、大ヒットしたアニメ第3期にちょくちょく顔を出し、実質的な最終回に当たる第108話や、それに続く『地獄編』でも堂々たるラスボスを演じていたぬらりひょん。その第3期の劇場版最終作『激突!!異次元妖怪の大反乱』では、妖怪軍団を率いて東京を占拠する正真正銘の妖怪総大将ぶりを見せつけていたぬらりひょん。
これらのイメージを一切無視して、エピソードひとつにしか登場しない孤独なテロリスト妖怪に戻しちゃっていいのだろうか……それに、第4期を長期シリーズにするためには、やっぱり「悪の大ボス」的存在を用意した方がなにかと便利だし。
妖怪ぬらりひょんをどう扱うのか。原作か世間的イメージか? 忠実かアレンジか? まさにアニメ第4期の根幹を揺るがしかねない大問題。製作スタッフの眠れない夜は続きました。
そういった苦心惨憺の結果、ついに。
アニメ第4期の放送が1月から始まった1996年も、そろそろ暮れにさしかかろうかとしていた11月。
核爆弾的存在の妖怪ぬらりひょんが、満を持して第4期に初出演しました。そのエピソードとは、
第46話『妖怪大裁判 前編』
あ、あれれ?
『妖怪大裁判』って、原作でいうと1969年1~2月に連載されてた(全4回)やつでしょ。あれ、ゲストの敵妖怪は「百々爺(ももんじい)」で、ぬらりひょんはとっくの昔に古代に流されてるから出てないはずなんじゃ……
そうなのです。1996年11~12月に放送されていたアニメ第4期46~47話『妖怪大裁判 前後編』で、ぬらりひょんは百々爺の陰謀によって濡れ衣を着せられ天狗ポリスに逮捕された鬼太郎の「弁護人」として初登場したのでした。え、味方!?
このポジションは完全なる第4期オリジナルなのですが、ここでもうひとひねり、実はこのぬらりひょん弁護士は、その百々爺を影であやつり、その一方で自身もわざと稚拙な弁護を展開するという、原作版よりもさらに確実な両面作戦で鬼太郎を葬り去ろうとしていた事件の黒幕だったのです!
こ、これは。まさしくアニメ第3期の衣鉢を継いだ、「原作エピソードに影の黒幕としてコバンザメのようにくっついてくるパターン」だっ!!
この初登場の時点で、アニメ第4期における妖怪ぬらりひょんの立ち位置は決しました。
「だいたいアニメ第3期といっしょの悪のボスキャラ」
なんということでしょう。ここにおいて、世間のイメージや期待をバックにつけたぬらりひょんは、「原作に忠実」を旨とするアニメ第4期のスタイルさえも揺るがす大きな存在になってしまっていたのです。ぬ、ぬらりひょんが原作マンガに勝った!?
ところがこの「勝利」は、ぬらりひょん側にも多大な「譲歩」を強いるものとなりました。
そして、この原作に配慮した譲歩こそが、結果的にはアニメ第4期のぬらりひょんイメージを大いに「どっちつかずで中途半端」なものにする原因となってしまったのです。
まず、第4期のぬらりひょんは、顔つきが水木しげるの原作マンガにかなり忠実な「タレ目でしまらない」ものになりました。アニメ第3期の千葉・青野ぬらりひょんが見せていた、「悪人ですが、なにか。」といったふてぶてしさムンムンで目つきの鋭い怜悧な顔立ちとは似ても似つかないものとなっています。ただし厳密に言えば、第3期のドあたまでも、ぬらりひょんは人前に現れた時だけ原作よりの顔になっています。
つまり、第4期ぬらりひょんは原作マンガやそれをそのままアニメ化した第1期ぬらりひょんに準拠した、「いやらしい上目づかいと卑屈な笑いの似合うつまらない悪人」といった印象の強い爺さん妖怪になっていたのです。これはこれでいいんですが、「妖怪総大将」といった称号はちょっと似合いそうにありません。原作マンガの『鬼太郎国盗り物語』では、その顔でムリヤリ正義の総大将になっていましたけど。
こういう難しい立場の第4期ぬらりひょんに通算4代目の声優として命を吹き込んだのは、シブさ爆発・西村知道(50歳)。
それまでのキャリアとして、特に有名な『機動戦士Zガンダム』のジャミトフ=ハイマン役、『魔神英雄伝ワタル』シリーズの剣部シバラク役などを見てもわかるとおり、計算高い酷薄な悪人も義侠心に富んだ豪傑も演じることができるダンディな声が特徴のお方なのですが、このアニメ第4期『ゲゲゲの鬼太郎』では、舌先三寸で妖怪達をだまくらかして鬼太郎にけしかける、いかにも肝の小さそうな悪党ぬらりひょんを見事に演じきっておられます。
ここらへんが、6~7千万年ぶんの恨みを満身にただよわせた迫力満点の青野ぬらりひょんとは実に対照的なところで、西村ぬらりひょんはカリスマ性こそないものの、ぬらりくらりと暗躍しながらしつこく鬼太郎につきまとう「陰湿でイヤ~な感じ」を見事に体現しているんですよねぇ。
「へへへ……きたろぉ。」
う~ん、あの粘着質な声! カッコイイのは断然、青野ぬらりひょんなのですが、妖怪ぬらりひょんの「厭な感じ」にもっとも近いのは、この西村ぬらりひょんなんじゃないかなぁ。
ちなみに、のちのこととなりますが、西村知道さんはアニメ第5期『ゲゲゲの鬼太郎』(2007~09年)でまたしてもリメイクされた『妖怪大裁判』エピソードで、今度は「百々爺」の役を演じてその時の青野ぬらりひょんと奇跡の共演を果たしています。日本全国のぬらりひょんファン、大興奮!!
さて、オリジナル設定として初登場していながら、多少原作も意識したデザインになっていたぬらりひょんですが、もうひとつ重要なポイントとして、このエピソードの時点では、かつてアニメ第3期であんなに親しく付き添っていたはずの、あの頼りにならない手下妖怪「朱の盤」がいないということが挙げられます。
朱の盤がぬらりひょんのパートナーとなっているのは言うまでもなく第3期の独自設定ですので、その朱の盤をはずしたのは第4期の「脱・第3期」の意気込みを示すものとなったかに見えたのですが……
話をアニメ第4期の『妖怪大裁判』に戻しますが、後編クライマックスで鬼太郎の活躍によりその陰謀が暴露されたぬらりひょんは、天狗ポリスに逮捕されて即刻有罪が確定。タイムマシンみたいな装置で恐竜時代に流されるという「古代流しの刑」に処されてしまいます。
なに、恐竜時代!? そうなんです。エピソードの内容はまったく違うのに、最終的にぬらりひょんが過去世界に追放されてしまうという末路はおんなじなんですねぇ。
でも、前のいくつかのパターンではは蛇骨婆とか朱の盤がいっしょにいたのに、第4期ではひとりで流されることになっちゃった……平成は老人に厳しいなぁオイ。
余談ですが、水木しげるによる原作マンガの中でも屈指の名エピソードとなっている『妖怪大裁判』に、本来登場していないはずのぬらりひょんが関係してくるというストーリーラインは、具体的な関わりかたはそれぞれ違っているものの、2007年10~11月発表のほしの竜一版『ゲゲゲの鬼太郎 妖怪千物語』第26~27話『妖怪大裁判! 前後編』と、先ほどにもふれた2008年3月放送のアニメ第5期『ゲゲゲの鬼太郎』第47話『妖怪大裁判』にも継承されている第4期以来の「恒例パターン」となっています。
ところで、アニメ第3期では「ティラノサウルスがいる。」ということで、だいたい恐竜時代も終わりに近づいた白亜紀末期(6550万年前)あたりにぬらりひょん一味が流されたことは確かだったのですが、第4期での「古代流しの刑」でいう「恐竜時代」というものが、具体的に地球に恐竜がいた三畳紀後期(2億3千万年前)~白亜紀末期(6550万年前)のどのへんのことを指していたのかがはっきりしていないのが実に気になるところです。
だって、場合によっては西村ぬらりひょんは、第3期の千葉ぬらりひょんよりもさらに1億年くらい昔に流されていたのかも知れないんですからね……もう、どんだけ過酷な刑なのか想像もつきません。
ともあれ、経緯は違うにしても、やっぱり結局は鬼太郎によって過去に追放されることとなってしまったぬらりひょん。
このあとはどうなる? 原作みたいにもう2度と出てこないのか? それとも、アニメ第3期や『最新版 ゲゲゲの鬼太郎』のように執念のカムバックを果たすのか?
結果をさっさと言ってしまいますと、アニメ第4期の西村ぬらりひょんは、「古代流しの刑」執行のわずか1ヶ月後、年があらたまって1997年1月放送の第54話『妖怪邪魅とガマ仙人!』(原作は1968年7月連載の『妖怪関ヶ原 前後編』)の黒幕として、まさしく何事もなかったかのようなニヤニヤ顔で早々に復活してきてしまいます。な、なんなんだこいつは……
アニメ第3期同様、恐竜時代から帰ってきた理由はいっさい語られないまま、その回の悪役妖怪・邪魅の影からいつもの感じで現れたわけなのですが、第3期が千葉ぬらりひょんから青野ぬらりひょんへの「声の若返り&凶悪化」というウルトラC(古い表現……)で時の重みを暗に示していたのに対して、こっちの第4期のほうはと言うと、
「へへへ……きたろぉ。」
ぜんぜん変わってねぇ!! 2億年生きてるかも知れないのに、こんなにエヴァーラスティングな小悪党っぷり。
西村ぬらりひょん……恐ろしい子!
こんな感じで、青野ぬらりひょんとはまったく違ったアプローチで魅せる西村ぬらりひょんの活躍っぷりは、また次回~。
果たして朱の盤は、このまま無視なのか~!?
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