長岡京エイリアン

日記に…なるかしらん

生きておったか……亡霊!!

2013年10月18日 19時50分23秒 | 花咲ける「るろうに銀魂」ロード
『 PEACE MAKER 鐵』連載再開&『曇天に笑う』続編が12月始動
 (コミックナタリー 2013年10月17日付け記事より)

 黒乃奈々絵(33歳)の江戸幕末時代劇マンガ『 PEACE MAKER 鐵(ピースメーカーくろがね)』および、唐々煙(からからけむり)の明治アクションマンガ『曇天に笑う』の続編『煉獄に笑う』の連載が、12月24日発売予定のムック雑誌『時代活劇画伝 斬』にてスタートする。
 『 PEACE MAKER 鐵』の連載が再開するのは、携帯電話向けデジタルマンガ雑誌『コミックシーモア』で2010年3~9月に連載されていた「油小路編」以来3年ぶり。一方、『煉獄に笑う』は前作から舞台を戦国時代に移す。
 『時代活劇画伝 斬』にはこのほか、『曇天に笑う』の番外編2本と、『 PEACE MAKER 鐵』の特別読み切りも収録。作品はいずれも描き下ろしだ。また『曇天に笑う』の TVアニメ化情報も掲載される。

 『時代活劇画伝 斬』は、マッグガーデンの WEBマンガサイト「 Beat's」とアニメイトのコラボレーション雑誌。全国のアニメイト各店、およびアニメイトとマッグガーデンの通販でのみ販売される。一般書店への流通は行われないため、買い逃がしには注意しよう。

ムック雑誌『時代活劇画伝 斬』
発売予定日:2013年12月24日(火)
価格:980円(税込)※送料・手数料別


『 PEACE MAKER 鐵』(『新撰組異聞 PEACE MAKER 』)とは?

 黒乃奈々絵によるマンガ作品。『月刊少年ガンガン』(スクウェア・エニックス)に連載された『新撰組異聞 PEACE MAKER 』(1999~2001年連載)から物語は始まり、『 PEACE MAKER 鐵』はその直接の続編にあたる。
 物語の設定に関して史実と異なる点が多いが、大筋は江戸幕末期の新撰組を取り巻く実際に発生した事象に沿っている。

 2001年6月のマンガ出版社マッグガーデン設立にいたった、いわゆる「エニックスお家騒動」により、掲載誌を『月刊コミックブレイド』(マッグガーデン)に移し、第2部として『 PEACE MAKER 鐵』が連載されていたが、2005年以降休載し、2010年にケータイサイト『コミックシーモア』で続編「油小路編」が配信された。


主な登場人物
市村 鉄之助(1854~73年)
 新撰組副長・土方歳三の小姓。愛称・鉄。両親を何者かに殺され、敵を討つために新撰組に兄・辰之助と共に入隊する。両親を目の前で殺されたショックから身体の成長が止まっており、よく子供扱いされていたが、池田屋事件での初陣を経て過去の傷を乗り越え、以降は心身ともに立派に成長した。池田屋事件後は新撰組隊士見習いとなり、剣の腕も確実に上がっている。永倉新八曰く、鉄之助の剣は「土方さんと同じ野外実践型」。刀を取るのは「殺すため」ではなく、あくまで「守るため」であり、未だに敵を殺したことはない。
 伊東甲子太郎の脱退により発生した油小路事件で、仲間を助けるべく奮戦するが、鉄之助を坂本龍馬暗殺の真犯人と誤認して追ってきた海援隊にも襲撃され拉致される。しかし、斎藤一の助力で龍馬殺害の無実を証明し、自身を陥れた旧友・北村鈴といずれ決着をつけると決意し、新選組の一員として闘い続ける意志を新たにした。

※史実の市村鉄之助は美濃国大垣藩士・市村半右衛門の三男で、安政五(1858)年に父が浪人となったために近江国国友村(現在の滋賀県長浜市)で暮らし、池田屋事件の3年後、山南敬助切腹の2年後の慶応三(1867)年に兄の辰之助と共に14歳で新撰組に入隊した(油小路事件の直前)。隊内での役職は副長・土方付き小姓。そののち、慶応四(1868)年に兄が脱走したあとも函館戦争にいたるまで新撰組隊士として土方に従い続け、明治二(1869)年5月11日に戦死する直前の土方の命を受け、戦線を離脱して明治新政府軍の厳しい追及をかいくぐり、3ヵ月後に武蔵国多摩郡(現在の東京都日野市)に住む土方の従兄(姉婿でもあった)・佐藤彦五郎のもとに土方の遺品を届けた。その後、鉄之助は2年間ほど佐藤家に滞在し、後に実家の岐阜県大垣市に帰って兄・辰之助と再会したが、明治六(1873)年にその地で病死したという。
 一説に、鉄之助は明治十(1877)年まで生存し、2~9月の西南戦争に西郷隆盛軍として参戦して戦死したとも言われているが、確証は無く俗説の域を出ない。

市村 辰之助(1846~72年)
 新撰組勘定方。鉄之助の兄。両親が亡くなってからは鉄之助の親代わりでもある。いつも鉄之助の無茶苦茶な行動に振り回され、神経性の胃炎を患っている。鉄之助に対しては過保護で、彼が剣を取ることを快く思っていない。坂本龍馬と出会った際に彼の持つピストルに着目し、銃を扱えるようになることを志すようになる。

※史実の市村辰之助は美濃国大垣藩士・市村半右衛門の次男で、安政五(1858)年に父が浪人となったために近江国国友村で暮らし、慶応三(1867)年に弟の鉄之助と共に22歳で新撰組に入隊した。隊内での役職は勘定方ではなく、局長・副長共有の小姓(両長抱)。そののち、鳥羽・伏見合戦や甲斐勝沼合戦での敗戦の末に新撰組が江戸に撤退した慶応四(1868)年3月以降に脱走し、大垣藩に帰参している。

沖田 総司(1844~68年)
 新撰組一番隊隊長。一見すると優男風の美青年だが、新撰組随一の剣の遣い手であり、戦闘時は鬼神の如き強さを発揮する。普段は明るく振舞っているが、内実はとてもクールな性格。池田屋事件の後から結核を患い体調を崩している。土方の趣味の句集を勝手に持ち出して笑いながら詠むなど、よく土方にちょっかいを出している面もあるが、周囲の誰よりも土方を気遣っている。近所の子供たちと共によく遊んでいる。
 子供の頃に剣の才が災いして父を亡くし、自身の存在を忌み嫌っていたが、武士として身を立てることを夢見る土方に新撰組という居場所を与えられ、精神的に救われる。それ以来、土方に深い信義を感じている。
 油小路事件の頃には、少し動くだけで身体が悲鳴を上げる病状に陥っている。仲間の力になれない歯痒さに耐え切れず、病を押して戦闘に参加しようとするが、山崎烝に制止された。

土方 歳三(1835~69年)
 新撰組副長。「鬼の副長」という異名の通り、性格は冷徹。それゆえに隊員からも恐れられているが、実際は部下思いである。鉄之助に対しては彼に刀を持たせないなど特別な態度を取っているが、その理由はまだわかっていない。趣味は俳句で俳号は「豊玉」。
 過去に結核で母と姉を亡くしたことがあり、同じ結核のために体調が急激に悪化していく沖田に焦燥を抱いている。

山崎 烝(すすむ 1833~68年)
 新撰組監察方。主に間者として敵方の詮索を行う。小姓としての役目を果たさない鉄之助に怒ることもあった。池田屋事件に先立っては、女装して「おせん」と名乗り内情を探っていた。その際、自分の身代わりになって殺害された姉・歩の最期を知って抑えていた感情を爆発させる。その後、姉と親しかった鉄之助と親友になり、以前よりも感情を表に出すようになった。鉄之助の兄・辰之助に対しては、生真面目な彼をおちょくるのを愉しみにしている。のちに将軍の侍医でもあった名医・松本良順の指導により新撰組の専属隊医も務めることとなる。真面目な性格であり、仏頂面で表面上は冷徹そうに見えるが、沖田の容態を心配したり海援隊に襲われた鉄之助を諭したりと、ぶっきら棒ながらも心優しい一面を見せることもある。

山崎 歩(あゆむ)※本作オリジナルの人物
 山崎烝の姉。普段は料理人として新撰組隊士の食事を作っている。その味は絶品と人気があり、隊士達からは「アユ姉」と呼ばれて慕われている。だがそれは表向きの顔であり、指令を受ければ「髪結いの弓」として敵方を探るくノ一としても活動していた。しかし、潜入に失敗して拷問にかけられ殺害される。弟の身を誰よりも案じており、鉄之助に弟を頼むと遺言していた。

永倉 新八(1839~1915年)
 新撰組二番隊隊長。神道無念流を修めた剣の達人で、その手腕は隊内では沖田と並ぶといわれる。原田・藤堂を含めた新撰組三馬鹿の中でただ一人のツッコミ役。自称「原田左之助の飼い主」。他人の感情に敏く、考えすぎる余り一人で抱え込んでしまうことがある。

原田 左之助(1840~68年)
 新撰組十番隊隊長。種田宝蔵院流の槍の名手。新撰組三馬鹿の一人。単純かつ豪快な人柄で、情に厚い。その一方で医者が怖いという臆病な一面もある。腹に切腹の傷跡がある。

藤堂 平助(1844~67年)
 新撰組八番隊隊長。北辰一刀流の遣い手。池田屋事件で額に大きな傷跡をつくる。新撰組三馬鹿の一人であり、他の永倉・原田と共に江戸試衛館時代からの古株。性別を問わず、動物でも何でも小さいものや可愛いものが大好き。興奮すると言葉遣いが乱暴になる。副長・山南敬助の切腹をきっかけに隊の方向性に疑問を抱くようになり、参謀・伊東甲子太郎らと共に新撰組を脱退し御稜衛士(ごりょうえじ)となる。その後、油小路事件で新撰組隊士に斬られ命を落とす。新選組幹部では際立って幼い感性の持ち主であり、不穏な空気にも目を背け、組の結束と安泰は絶対であると信じ切っていた。油小路事件では永倉・原田に看取られて息を引き取った。

斎藤 一(1844~1915年)
 新撰組三番隊隊長で沖田と1、2を争う剣の実力の持ち主。物静かだが何事にも動じず、つかみどころのない性格。霊感が強く、死者の魂と対話ができる。また、幼少時代から未来を予見することができたという。よく蕎麦を鉄之助におごらせる。幼い頃から自身の千里眼のために人生を諦観していたが、油小路事件で海援隊に幽閉された鉄之助と対峙し、己の意志も歴史を動かす歯車になり得ることを悟る。そして鉄之助の行動に付き合う覚悟を決め、共に歩んでいく意思を示した。

近藤 勇(1834~68年)
 新撰組局長。大らかな性格で鉄之助にも優しく接するが、時には局長としての厳格な一面も見せる。情に厚い。

山南 敬助(1833~65年)
 新撰組のもう一人の副長。北辰一刀流の遣い手。温厚な気質のため「仏の副長」と呼ばれている。沖田に慕われている。京・島原の明里は、その正体に勘付きつつも本気で愛していた。土方とは意見が食い違うこともあるが、お互いを認め合っている。しかし新撰組の隊規でも重罪とされていた脱走をはかり切腹を命じられる。

明里(あけさと)/サラ=フウマ
 山南の恋人。異人と日本人のハーフ。表向きは京・島原の天神(上位の妓女)の明里だが、裏では風魔流の忍者として長州藩に情報を流していた。籠絡する目的で接近した山南を本当に愛するようになる。山南の死後は遊女・明里の名を捨て、忍びとして生きる決心をする。山南の死後は龍馬を愛するようになっていた。龍馬暗殺の真犯人が北村鈴だと知る唯一の人物であったため、鈴によって監禁される。

伊東 甲子太郎(かしたろう 1835~67年)
 元治元(1864)年から新撰組に入隊した参謀。のちに脱退して御稜衛士を結成して新撰組と対立する。男色趣味が強く、副長・土方に対し執着心を抱いている。1867年12月に発生した油小路事件で自らを暗殺しようとした新撰組を逆に嵌め、屯所に攻撃を仕掛ける。しかし土方と一騎打ちとなった末に敗れ、藤堂と同様に命を落とす。

北村 鈴(すず)※本作オリジナルの人物
 兄を斬殺した新撰組に復讐するため、吉田稔麿の小姓になっている少年。鉄之助とはお互いの素性を知らない時点で親友になる。池田屋事件で敬愛する師匠・稔麿を失い、鉄之助の素性を知ったことでさらに新撰組と鉄之助を強く憎むようになり、復讐のみを生き甲斐とするようになる。のちにその存在が邪魔になった坂本龍馬と中岡慎太郎を斬殺した。漆塗りにした稔麿の頭蓋骨を常に持ち歩いている。

吉田 稔麿(としまろ 1841~64年)
 長州藩士で急進派攘夷志士。吉田松陰の愛弟子として崇高な理念を持ち活動。京では桝屋喜右衛門こと古高俊太郎の邸宅に他の同志たちと共に潜伏する。北村鈴が崇敬する師匠だったが、池田屋事件で臆することなく新撰組と戦い、敗死する。

膕(ひかがみ)
 罪人として処刑されそうになったところを北村鈴に助けられ、それ以来、鈴に絶対的な忠誠を誓う。容姿が吉田稔麿によく似ている。

坂本 龍馬(1836~67年)
 もと土佐藩郷士の志士。鉄之助と辰之助の父・市村龍之助のことを知る人物。ドレッドへアにサングラス、テンガロンハットにブーツという風貌で、ピストルを携行している。後に京・近江屋で盟友の中岡慎太郎と共に襲撃を受け、北村鈴に斬殺された。

桂 小五郎(1833~77年)
 長州藩の重臣。常に江戸幕府側の新撰組や京都見廻組の追手から逃げ回る生活を余儀なくされているため、変装していないと落ち着かない性質になっている。幾松という恋人がいる。

勝 海舟(1823~99年)
 江戸幕府軍艦奉行。青谷という部下がいる。あんみつが大好物。江戸っ子口調で剛胆な性格の持ち主である。坂本龍馬や鉄之助の父・市村龍之助をよく知る。

陸奥 陽之助(宗光 1844~97年)
 坂本龍馬が結成した株式会社「海援隊」の隊士。後の明治政府外務大臣。坂本龍馬のことを慕っていた。龍馬の暗殺を知るが、北村鈴の陰謀にかかり鉄之助を真犯人として付け狙う。


TV アニメ版
 『 PEACE MAKER 鐵』のタイトルで放送されたが、内容は第1部『新撰組異聞 PEACE MAKER 』のものである。全24話。2003年10月~04年3月にテレビ朝日系列にて毎週火曜日深夜3時12~42分に放送された。

主なキャスティング
市村鉄之助 …… 小林 由美子(24歳)
沖田総司  …… 斎賀 みつき(30歳)
土方歳三  …… 中田 譲治(49歳)
市村辰之助 …… うえだ ゆうじ(36歳)
山崎烝   …… 櫻井 孝宏(29歳)
山崎歩   …… 永島 由子(33歳)
永倉新八  …… 山口 勝平(38歳)
原田左之助 …… 乃村 健次(33歳)
藤堂平助  …… 鳥海 浩輔(30歳)
斎藤一   …… 松山 鷹志(43歳)
近藤勇   …… 土師 孝也(51歳)
山南敬助  …… 井上 倫宏(45歳)
北村鈴   …… 今井 由香(33歳)
吉田稔麿  …… 諏訪部 順一(31歳)
明里    …… 根谷 美智子(38歳)
坂本龍馬  …… 江原 正士(50歳)
宮部鼎蔵  …… 宮林 康(38歳)

アニメーション制作 …… ゴンゾ


TV ドラマ版
 『新撰組 PEACE MAKER 』のタイトルで、2010年1~3月に毎日放送・TBSほかで毎週水曜日深夜0時34分~1時04分に放送された。全10話。
 内容は TVアニメ版と同じく第1部『新撰組異聞 PEACE MAKER 』のものである。

主なキャスティング
市村鉄之助 …… 須賀 健太(15歳)
沖田総司  …… 柳下 大(とも 21歳)  
土方歳三  …… 谷内 伸也( Lead 22歳)
市村辰之助 …… 古川 雄大(22歳)
永倉新八  …… 松川 尚瑠輝(なるき 20歳)
原田左之助 …… 伊崎 右典(ゆうすけ 25歳)
藤堂平助  …… 佐野 泰臣(25歳)
近藤勇   …… 遠藤 章造(ココリコ 38歳) 
山南敬助  …… 上山 竜司(RUN&GUN 23歳)
山崎歩   …… 原 幹恵(22歳) 
明里    …… 中島 愛里(19歳)
北村鈴   …… 野村 周平(16歳)
吉田稔麿  …… 荒木 宏文(26歳)
桂小五郎  …… ユキ リョウイチ(37歳)
宮部鼎蔵  …… 脇崎 智史(26歳)

主なスタッフ
メイン脚本&メイン演出 …… 山本 清史(31歳)


舞台版
『新撰組異聞 PEACE MAKER 』
2007年7月21・22日 大阪・松下IMPホール、8月2~6日 新宿・新国立劇場小劇場
主なキャスティング
吉田稔麿  …… 郷本 直也(27歳)
山崎烝・歩 …… 矢崎 広(20歳)

『新撰組異聞 PEACE MAKER 』
2009年5月6~10日 池袋・東京芸術劇場小ホール2
主なキャスティング
市村鉄之助 …… 矢吹 卓也(22歳)
北村鈴   …… 米原 幸佑(RUN&GUN 23歳)
山崎烝   …… 斎藤 ヤスカ(21歳)
沖田総司  …… 松岡 佑季(20歳)
吉田稔麿  …… 高木 俊(28歳)
山南敬助  …… 上杉 輝(26歳)
近藤勇   …… 柏 進(37歳)
原田左之助 …… 住谷 正樹(レイザーラモンHG 33歳)

『 PEACE MAKER 新撰組参上』
2011年6月3~12日 東京ドームシティ・シアター Gロッソ
主なキャスティング
市村鉄之助 …… 吉村 卓也(21歳) 
土方歳三  …… 兼崎 健太郎(26歳)
沖田総司  …… 浜尾 京介(19歳)
市村辰之助 …… 滝口 幸広(26歳)
近藤勇   …… タイソン大屋(39歳)
山南敬助  …… 聡太郎(25歳)
永倉新八  …… 内藤 大希(23歳)
吉田稔麿  …… 林 剛史(28歳)
北村鈴   …… 井沢 勇貴(18歳)

『新撰組異聞 PEACE MAKER 』
2012年4月15~22日 東京ドームシティ・シアター Gロッソ
主なキャスティング
市村鉄之助 …… 聖也(18歳)
土方歳三  …… 兼崎 健太郎(27歳)
沖田総司  …… 浜尾 京介(20歳)
市村辰之助 …… 伊勢 大貴(20歳)
永倉新八  …… 椎名 鯛造(25歳)
藤堂平助  …… 水谷 百輔(26歳)
山崎烝   …… 服部 翼(22歳)
山崎歩   …… 工藤 真由(25歳)
吉田稔麿  …… 伊崎 右典(27歳)
北村鈴   …… 佐野 岳(20歳 仮面ライダー鎧武!)
明里    …… 人見 早苗(29歳)



 こやつ、まだ生きておったか!

 この作品、私にとっては「いちおう読んでみた唯一の新撰組もの連載マンガ」で、主人公の人選が珍しかったのでおもしろく読んでいたのですが、2005年にご存知の通りの休載、中断! かなり気合いの入ったアニメ化もされていたというのに……好きだっただけにとっても残念に感じていました。
 そんで2010年に降って湧いたように続きが連載されたわけなんですが、それもなんだか、はっきり言って「油小路事件と坂本龍馬暗殺事件のときの伏線を回収しに来ました~。」みたいな作業的な内容で、「史実で死んだはずの伊東甲子太郎が、実は生き延びていた!!」という2005年までの驚愕の展開を、「……そんで、数時間後にやっぱ死にました。」という That's 尻すぼみなシメにしてしまうというがっかり感のはなはだしいものになり下がっていました。おまえは映画版『風の谷のナウシカ』のドロドロ巨神兵か!? 生きねば!!

 この作品って、主人公の市村鉄之助の新撰組入隊のタイミングの大幅すぎる改変からもわかるように、作者の創作部分に、あまりにも無造作に実在する人物や団体の名称をそのまんま乗っけるきらいがあって、その点、史実にちゃんと距離をとった上でハチャメチャなことをしている『るろうに剣心』とか『銀魂』のスタイルがよっぽど大人というか、そうやるのがプロとして当たり前の配慮だと思うんですよね。いや、『銀魂』はハチャメチャしすぎですけど、ちゃんとそれなりの仁義を切った上でやらかしてるわけです。

 山崎烝に姉をつくるとか、伊東甲子太郎が土方歳三に気があるとか、斎藤一がオカルト体質だとかいう、「無から可能性を拾ってオリジナルを創造する姿勢」は、やっぱり実名を使っているという点で納得はいかないのですがギリギリ許容できるとしても、市村兄弟の入隊時期と兄弟の父親が何者かに殺害されたっていう設定って、「オリジナルとまったく違う事実を捏造する」ことなんじゃなかろうかと思うんですよ。それはダメなんじゃない!?
 そんなもん、もし大学受験の日本史Bの試験で「市村兄弟の新撰組入隊時期は?」っていう問題が出たら、どんだけの人たちの運命に甚大な影響をおよぼすと思ってるんですか!! え、そんなの問題に出ないし、そんなことをいちいち気にしてる読者もお前くらいしかいない? ごもっとも☆

 織田信長が本能寺の変で死ななかった、っていう設定のフィクション作品もよくありますけど、それは完全に『ドリフ大爆笑』における「もしもシリーズ」的な遊びを中心におく「架空歴史もの」ですからね。それとも違うみたいだし、『 PEACE MAKER 鐵』は態度がかなり不鮮明なんです。はっきりしてちょーだい!

 だから、私はこの『 PEACE MAKER 鐵』のグズグズな姿勢がどんどん嫌いになっていっちゃって……特に、タイトルが『 PEACE MAKER 鐵』になったところから嫌いですね。坂本龍馬嫌いなんだよなぁ~、わたし。

 そんで、しょうこりもなくまた復活するんでしょ? 今年のクリスマスに。

 ……


『時代活劇画伝 斬』、絶対買いま~っす♡
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これから読もうと思ってんだけどさぁ2  ~前勉強をつらつら~

2013年10月17日 23時07分23秒 | すきな小説
『エアリアルシティ』(1997年7月 メディアワークス電撃文庫)

 小説家・川上稔の代表作「都市シリーズ」の第2作で、異世界の都市ロンドンを描く長編ファンタジー小説。
 1995年の第2回電撃ゲーム小説大賞(現在の電撃小説大賞)にて、2次選考を通過。その後落選したが、翌96年の『パンツァーポリス1935』の金賞受賞を受けて、改稿された上で、1997年7月にデビュー後第1作として刊行された。
 次作である『風水街都 香港』(1998年6~7月)に直接通じる作品で、「自動人形(ザイン・フラウ)」や「言詞砲(バベル・カノン)」が登場するなど、都市シリーズの世界観を初めて前面に大きく打ち出した作品でもある。前作『パンツァーポリス1935』(1997年1月)に比べて設定などが難解になっている。
 文庫版のイラストはイラストレーターの中北晃二が担当した。

あらすじ
 15世紀後半以来、書物の中に封印されて魔物たちの国となったイギリス王国の架空都市ロンドンで、次々に異族たちが殺される事件が発生する。

物語の時間設定について
 作中で具体的に時系列が記されることはなかったが、「十数年前に発生した神と悪魔との戦争(神魔戦争)の影響で、人間界でも第一次世界大戦が勃発した。」という内容の会話があったり、ドイツ出身のラルフ神父が、「鉄血主義の我が国でも、あと少しで宇宙へ出ることが可能になるところでした。」と発言しているため、前作『パンツァーポリス1935』よりも過去、冒険家フーバー=タールシュトラーセの有人気圏外探査船の打ち上げ実験失敗よりも未来の、「1920年代後半」あたりが本作の時間設定であると考えられる。
※その後、「都市シリーズ」の第6作『機甲都市 伯林』の第2巻(2000年)で、本作が「1933年」に起こった出来事であることが明記された。う~ん……当たらずとも、遠からず?


主な登場キャラクター

アモン
 翼を持たない魔族。周囲からは「ニアデス(死にたがり)」と呼ばれている。
 もともと街頭孤児だったが、2年前の異族虐殺事件に関係して逮捕され、現在は酒屋店主の人狼ジョナサンのもとで保護観察期間中。

クラウゼル
 アイレポーク式自動人形。ロンドン警察庁の警察官。常に目を閉じていて視覚機能を持たない。

警部
 ロンドン警視庁に住む謎の男。言実化(オーバーライド)と言影化(オーバーロス)の能力に優れる。

フィルアス
 猫人。もともとは街頭孤児のリーダーで、現在は警部の部下。アモンのことをよく知る。

リックラント=ヴァレス
 人間。本名ライクル=ボルドーゾン。魔族と対等に闘うことができる「幻崩の衛士(ハウンド)」。欧州五行総家の生き残りである。
 1921年に魔物の襲撃を受けて妻を亡くしている。その際に魔物の血を浴び、悪魔契約術「駕契約(オーバーコントラクト)」を会得している。

モイラ=テルメッツ
 人間。本名エリス=テルメッツ。魔女の能力を持つ幻崩の衛士。
 かつてボルドーゾン家に仕えていた小間使いの生き残り。詠唱式魔術や結界術を用いる。

ラルフ=グルト
 人間。幻崩の衛士。神父でありながら神と天使を憎んでいる。長銃(ライフル銃)・散弾銃・短機関銃といった火器を駆使して異族を狩る銃師。

フランドル=アイレポーク
 ロンドン警視庁の地下室に住む自動人形技師。クラウゼルの親。

ジョナサン=ホランド
 人狼。酒屋「満月酒庫」の店長。アモンの保護観察を行っている。
 第一次世界大戦中に右腕を戦車砲で吹き飛ばされ、義腕を装着している。

グロース
 天使。ジョナサンの親友だが、アモンを苦手としている。

アイレン(故人)
 女性の木霊。2年前の異族虐殺事件で死亡している。アモンとは深い関係にあったらしい。
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池脇千鶴はやっぱり、いい!!  映画『凶悪』

2013年10月15日 22時04分50秒 | ふつうじゃない映画
 アイヤー! どうもこんばんは、そうだいでございます~。みなさま、今日も一日お疲れさまでした。
 千葉はもう、お昼前後から降りだした雨がどんどん強くなっていく一方でありありまして。台風26号? 怖いね~。明日も電車を使って通勤するつもりなんですが……大丈夫、じゃないよね。

 相変わらず近況は忙しい、忙しいの一辺倒でありまして。ほんでも、稼がなきゃいかんのですから文句は言いませんけど!
 どのくらい忙しいのかっていいますと、2週間前に購入したアルバム『ザ・ベスト! アップデイテッド・モーニング娘。』が、いまっだに聴けていない!!
 1~2時間もあったら聴けるだろうそんなもん、という声もあろうかと思います。でもねェ、あたしゃあきっちり腰をすえて、1曲1秒も聴きもらさずにその新世界を堪能したいわけなんですよ。そしてそのためには、仕事帰りで疲れた身でははなはだ心もとないし、なんといってもモーニング娘。とそのスタッフのみなみなさまに失礼にあたると!!
 そんなわけで、もろもろの喧騒をとっぱらい、沐浴うがいなど精進潔斎した上で再生ボタンを押すつもりなので、まだまだ落ち着ける状態にはありません。さすがに今月中にはなんとかするつもりではありまするが……

 さて、そんな毎日ではあるのですが、先日、予定よりも早くお仕事が終わったので、慌てて家にすっ飛んで帰り、自転車で繰り出して映画館のレイトショー上映を観てきました。
 今年の秋のラインナップの中でも、この映画ばっかりはなんとかして観ておきたかったんですが、上映から1ヶ月近くたって近所での上映スケジュールもレイトショーで1回きりっていう状況になってたんですよね。いや~、私は運がいい!


映画『凶悪』(2013年9月21日公開 128分)

 『凶悪』(きょうあく)は2013年の日本映画。ノンフィクションベストセラー小説『凶悪 ある死刑囚の告発』(『新潮45』編集部・編 新潮社)を原作とする社会派サスペンス映画である。
 原作は、実際に発生した凶悪な殺人事件を基に、獄中の死刑囚が告発した事件の真相を『新潮45』編集部が暴き、首謀者逮捕に至るまでを描いた犯罪ドキュメントであり、2009年の文庫化で10万部を超えるベストセラーとなった。

あらすじ
 スクープ雑誌『明潮24』に、東京拘置所に収監中の死刑囚・須藤から一通の手紙が届く。記者の藤井は、編集長の芝川から須藤に面会して話を聞いて来るように命じられる。藤井が須藤から聞かされたのは、警察も知らない須藤の余罪、3件の殺人事件とその首謀者である「先生」と呼ばれる男・木村の存在だった。木村を追いつめたいので記事にして欲しいと頼み込む須藤の告白に当初は半信半疑だった藤井も、取材を進めるうちに須藤の告発に信憑性があることを知り、やがて取り憑かれたように取材に没頭していく。

主なキャスティング
藤井 修一  …… 山田 孝之(29歳)
 スクープ雑誌『明潮24』の記者。
須藤 純次  …… ピエール瀧(46歳)
 元暴力団組長の死刑囚。
木村 孝雄  …… リリー・フランキー(49歳)
 須藤に「先生」と呼ばれている不動産ブローカー。
藤井 洋子  …… 池脇 千鶴(31歳)
 藤井の妻。認知症の姑の介護に疲れ果てている。
藤井 和子  …… 吉村 実子(70歳)
 藤井の実母。認知症を患っている。
五十嵐 邦之 …… 小林 且弥(31歳)
 須藤の舎弟。須藤に心酔している。
日野 佳政  …… 斉藤 悠(29歳)
 木村から須藤に託された新参の舎弟。
田中 順子  …… 範田 紗々(ささ 28歳)
 日野の交際相手。日野の裏切りを疑って逆上した須藤により惨殺される。
佐々木 賢一 …… 米村 亮太朗(36歳)
 須藤の刑務所時代からの仲間。須藤を裏切って殺される。
新島     …… 粟野 史浩(39歳)
 暴力団・新島組の組長。手下の佐々木の策略に乗った須藤に襲撃される。
遠野 静江  …… 松岡 依都美(いづみ 33歳)
 須藤の内縁の妻。須藤との間に娘の星姫(せいら)がいる。
福森 孝   …… 九十九 一(60歳)
 木村の共犯者。身寄りのない老人を探して木村に紹介していた。
森田 幸司  …… 外波山 文明(66歳)
 森田土建の社長。木村の共犯者。現在は原因不明の事故に遭い植物状態になっている。
森田 道江  …… 竜 のり子(69歳)
 幸司の妻。植物状態になった夫を介護している。
牛場 悟   …… ジジ・ぶぅ(56歳)
 牛場電機設備の社長。借金まみれの呑んだくれ。
牛場 百合枝 …… 白川 和子(66歳)
 牛場悟の妻。夫の殺害を木村たちに依頼する。
牛場 恵美子 …… 原 扶貴子(41歳)
 牛場悟と百合枝の娘。母と共に、実父の殺害を木村たちに依頼する。
牛場 利明  …… 広末 哲万(ひろまさ 35歳)
 恵美子の夫。姑や妻と共に、舅の殺害を木村たちに依頼する。
菅原     …… 伊藤 紘(こう 67歳)
 第一の事件の被害者。借金のトラブルで木村に殺害される。
島神 剛志  …… 五頭 岳夫(ごづ たけお 65歳)
 第二の事件の被害者。福森に紹介されて木村と接触する。
木村 幸恵  …… 山田 彩(17歳)
 木村孝雄の娘。藤井が事件を取材した時点では高校3年生。
遠野 星姫  …… 森田 眞生(まお 16歳)
 須藤と静江の娘。藤井が事件を取材した時点では中学3年生。
芝川 理恵  …… 村岡 希美(43歳)
 『明潮24』編集長、藤井の上司。
池田 太一  …… ウダ タカキ(35歳)
 『明潮24』の記者、藤井の同僚。

主なスタッフ
監督    …… 白石 和彌(39歳)
脚本    …… 高橋 泉(39歳)、白石和彌
原作    …… 『凶悪 ある死刑囚の告発』(月刊『新潮45』編集部編 2007年)
音楽    …… 安川 午朗(48歳)
製作・配給 …… 日活
企画協力  …… 新潮社

原作『凶悪 ある死刑囚の告発』の内容
 雑誌『新潮45』の記者・宮本の元に一通の手紙が送られて来た。送り主は、当時2件の殺人事件で死刑判決を受けていた元暴力団組長の後藤良次という男だった。
 手紙の内容は、自らが関わった新たな3件の殺人事件の告白だった。さらに事件には他に首謀者がおり、その男は今も一般社会で普通に生活しているという。 後藤はその男への復讐のために事件を告白する手紙を送ってきたのだった。
 宮本は面会や手紙のやり取りを重ね、取材を続けた。さらに、後藤が語る事件の首謀者に関しても独自に調査を開始した。その人物は、茨城県で不動産取引をしている地元の名士だった。
 しかし、3件のうち2件は明確な証拠をつかむことはできず、事件を立証できる可能性があるのは残る1件だけだった。その事件は、借金を苦にした自殺と処理されていたが、後藤によると、実はこれが家族も承知した上での保険金殺人だったのだという。後藤は自殺したとされる男性の保険金の金額を記憶しており、それが重要な証拠になった。
 こうして2005年10月、首謀者と目される「先生」が関与したとされる3件の殺人事件の取材記事を載せた雑誌『新潮45』が刊行された。そしてこの記事がきっかけとなり、「先生」や共犯者、殺人を依頼した家族が逮捕された。裁判の結果、2009年1月に「先生」には無期懲役の刑が下り、一方、後藤は控訴が棄却され死刑が確定した。


 いつものように、前情報が長くなってしまい、あいすみません! 私の大大大好物な、実録犯罪もの映画の最新作であります。

 このへんの「実際にあった事件を元にしたサスペンス映画」というジャンルでいいますと、最近の作品で私の頭にパッと浮かぶのはデイヴィッド=フィンチャー監督の『ゾディアック』(2007年)とポン=ジュノ監督の『殺人の追憶』(2003年)、そして、なにはなくとも園子温監督の『冷たい熱帯魚』(2010年)といったあたりですね。

 『冷たい熱帯魚』なんかが極端な例になると思いますが、実録犯罪ものは「実録」といいつつも、フィクション作品になる上で、必ずどこかに実際に発生した事件とは違う設定や展開が入り込んでひとつの作品になるものがほとんどだと思います。それは、実際の事件に関する裁判がまだ途中であるとか事件に関係した人物が存命しているとか、2~3時間という上映時間におさめるために事件の複雑な経緯をショートカットしなければいけなかった、などといった制作上の事情もあるだろうし、事件を観客に近い視点から俯瞰する主人公を作らなければならないとか、展開をもっとドラマティックにしたいという物語上の意図もあったりするわけです。

 そういった中で、今回観た『凶悪』は比較的、原作となったルポ小説に忠実な内容に仕上がっているように前半は見受けられたのですが、物語がどんどん進んでいくうちに、原作を夢中になって読んだ身としては、「あれ……こんな感じだったっけ?」と不思議な違和感にとらわれるようになっていきました。

 例えば、『冷たい熱帯魚』の後半からの「アッと驚く急展開」は、作品が「よくできた実録犯罪もの」から一気に「まごうことなき園子温ワールド」に跳躍していくという、監督の作家性がさらけ出された結果の改変だったと解釈しました。まぁ、個人的には前半のほう(でんでんパート)がむちゃくちゃおもしろかったので、はっきり言っちゃえば監督の個性でも実際の事件における真犯人の狂気にはまるで歯が立たなかった、と私は見たんですけど。

 それとほぼ同じくらいの配分で、実は『凶悪』にも、原作にはなかったオリジナルな部分、つまりは監督・白石和彌の作家性というものがかなり濃厚に混入していたと感じました。『冷たい熱帯魚』ほどわかりやすく熱いスパークはありませんが、よっぽど『凶悪』のほうが巧妙でよくできた「編み込み」だったと私は思ったので、そのチャレンジはすごく良かったですね。


 映画の『凶悪』は、物語が進んでいくうちに、主人公である雑誌記者の藤井が入り込んでいく、死刑囚・須藤と不動産ブローカーの「先生」を中心として黒々と渦巻く殺人の連鎖と並行して、その世界の取材を終えた藤井が帰宅した先、つまりは他ならぬ藤井自身の家庭でリアルタイムに発生している、「認知症の姑の世話にノイローゼ状態に陥っている妻」という大問題もクローズアップされていくようになります。もちろんこの、藤井の個人的な話は原作にはまったくありませんでしたし、映画のパンフレットでも、藤井のモデルとなった原作者自身が「あのくだりは完全に監督のオリジナリティ」と断った上で絶賛しています。

 映画で語られる藤井家の問題は実に深刻なもので、丸一日取材のために家をあけている夫のために妻が姑の面倒を見ているのですが、いよいよ行動がおかしくなってきた姑とのコミュニケーションもまったくとれなくなり、「言うことを聞いてくれない意地悪な女」と認識する姑は妻に手を上げる始末。その一方で、実の母であることもあってか、夫(主人公)は施設に入れるべきだという妻の懇願を、「仕事で疲れてるからまたあとにしてくれ。」と、まったく聞き入れてくれません。孤立無援となり、披露困憊した妻はついに夫婦生活そのものを続けることにも意味を見いだせなくなり……

 こういった非常に重だるい問題が、猟奇的な連続殺人事件の取材と並行して描写されていくわけなのですが、普通ならば「なんでまた、こんな話題をいっしょに織り込んでいくんだ?」と感じてしまうくらいに、いかにもサイズが小さくホームドラマ的なこの問題は、『凶悪』の扱う異常にも程のある大事件とは乖離した距離感があるように思えます。

 でもねぇ、これがまた、終盤に行くにつれて実に効果的に藤井の取材する事件のあらわす「凶悪」の本質にからんできて、作品の奥行きの深さを生み出してくるんですよねぇ!

 まず第一に、藤井家の介護問題と木村&須藤の巻き起こした連続殺人事件は、高齢化して家庭の中心にいられなくなった人物を周囲がどう扱うのか、という問題の結果としてそれぞれの現在がある、という共通項があります。つまり、まだ若く現役バリバリの藤井記者の家庭ではまだ「老いた身内と同居するか、施設に入所させるか?」という選択肢にとどまっていますが、物語の中で木村の哀れな餌食となった牛場家では、「木村に老いた身内の殺害を依頼して保険金をせしめるか、破産するか?」という、どっちに転んでも地獄しか見えない状況になっていました。深刻さの度合いはまるで違いますが、問題の中心に「老いた身内」がいるという点では同じなんですね。

 これらの話題の並立によって、映画『凶悪』は、原作を読んだだけでは「へぇ~、世の中にはそんな悪魔もいるのか。かかわり合いにならないように気をつけないとなぁ。」という程度だった大事件との距離感が、「もしかしたら自分自身がその悪魔になるのかも知れない。」というまでにググッと迫ってくる効果があったと思うんです。

 そして、精力的に取材を進め、木村と須藤という稀代の犯罪者コンビが持つ狂気の深奥を見つめていくにつれて、明らかに眼の光り方が一般人から離れていく藤井記者の異様さのあらわす意味も、山田孝之さんの的確な演技によって非常にわかりやすく提示されていたと思います。
 最初は、いまだに発覚していない卑劣な事件を世に明らかにするという正義から始まったのに、真相に近づけば近づくほど、その正義の執行人が狂気にとらわれていく恐ろしさ……まさにニーチェですねぇ。

 もちろん、原作から垣間見える実際の原作者は映画の藤井よりももっとプロフェッショナルでドライなジャーナリストですし、藤井がこの事件の取材の後に頭がおかしくなって犯罪者になってしまう、という単純な話でもありません。
 しかし、原作になかった「木村との面会シーン」というクライマックスにおいて、「お前も同類なんだよ。」というメッセージを刻み付けられてしまった藤井の顔の怖さといったら、もう……とにかくものすごいラストシーンでしたね。実は、まともに TVも観ない私にとって、山田孝之さんの演技を観るのはほんとに遅ればせながら今回が初めてだったのですが、まだまだ若いのに、危険な味わいをこんなに意識的に演じきることができるお人がいらっしゃったとは。おじさん感心してしまいました。

 山田さんもものすごく良かったのですが、映画『凶悪』はいろんな面でキャスティングが功を奏している部分が大きかったと思います。

 まぁ、何はなくとも事件の真犯人である木村&須藤ペアを演じきったリリー・フランキー&ピエール瀧ペア!! ここが実に良かったですねぇ~。
 名前の字ヅラを改めて見てもおわかりのように、どちらも実にふざけたスタイルで時代の最先端を駆け抜けてきた「おふざけのプロフェッショナル」です。そしてこれはつまり、実際の事件の真犯人である北関東のやくざ崩れと悪質不動産ブローカーの2人組とはまったく異質ながらも、「現代日本の生み出した流浪の民」という点では非常に似通ったところのある浮遊感があったのではないのでしょうか。
 リリーさんもピエールさんも、ちょっとモデルに忠実だとは言えない独自色がありすぎですし、そこをなんとか似せようとする演技的努力もきれいさっぱり捨ててしまっている潔さがあります。それなのに! それぞれの存在感がミョ~に設定にフィットしているんですよね。ムリが生じていないんです。
 そこに関しては、セリフを標準語で統一して、「だっぺ」的な方言を取り入れる再現演出を避けたという監督の選択がうまくいったと思います。なにはなくともリリー&ピエールのナチュラルな「フワフワした」不気味さが生きるようにしたということだったのでしょう。

 特にピエールさんの身体を張った熱演が随所に観られましたが、どこからもにじみ出てしまう須藤というアウトローの「あぶれ者」感。やくざ社会にも居場所のなかった狂犬がたどり着いた最終の地が木村の片腕だったという哀しみがごくごく自然に出ていたと思います。

 あと、上にヅラヅラと20名以上ものキャスト表をならべてしまったのですが、この映画において全員が見逃せない重要人物である、という意味ではありません。中にはまともなセリフさえ無かった人もいますし、1シーンにしか登場しなかった人もいっぱいいます。
 でも、そういう脇役中の脇役の味わいがいいんだ、この映画は! それぞれのキャラクターが、他のキャラクターの隠れた一面を如実にあらわす役割を担ったり、異常な事件の広大なネットワークを構成する欠かせない一角になっているんですね。

 たとえば、満を持して真犯人・木村への直撃取材を敢行した藤井に木村本人は居留守を決めこみますが、彼の代わりに制服姿の娘(演・山田彩)が玄関先に現れて、決然とした表情で藤井に帰れと通告します。娘さんにとっては、藤井は父の名誉と家庭の平穏をおびやかすハイエナ記者にしか見えないんですね。
 このシーンからは、あれほどまでに残忍無比な悪行を繰り返している木村が、その反面で娘をこれほどまでに立派に育て上げ、娘に尊敬される家庭人であった、ということが見て取れます。それ以前にも、他人の血にまみれた大金を得た木村&須藤がそれぞれの家族を集めてクリスマスパーティを盛大に開くという象徴的なシーンがあるのですが、他人の不幸の上に成り立つ自分たちの幸福、そしてその幸福を得るためならば何でもするのが人間、親を見殺しにするのも人間(牛場一家)という世の中の哲理を、この映画『凶悪』はあの手この手を使って描いているんですね。
 そういう意味でも、この映画はどんなに小さな役割のキャラクターにも見逃すことができない人生が込められていると思うんです。個人的には、主要でないキャラクターの中では牛場一家の娘婿役の広末さんの演技が印象的でした。「あ、俺たち、確実にやっちゃいけないことをしてる! もう後戻りできねぇ……」という絶望感がにじみ出るたたずまいが最高でした。そしてその一方で、自分の夫や実父にあたる人物の殺害を依頼する女たちの、悟りきったようなドライな対応も実に良かった。そこらへんの演者のバランスが本当にいいんですよね。

 リリーさんも怖かったねぇ、ほんとに。逮捕されたのちの法廷で、検察側の証人として出廷するピエールさんとにらみ合うときの目つきがサイコーに怖い!! いやいや、法廷でそんな顔したら絶対に不利だからやめてください!! 発言するセリフがいちいち、プロの役者さんにはなかなか出せなさそうな軽さに満ちているのも良かったです。

「とにかく、お酒飲ませて殺しちゃうけど、それはホラ、そちらが頼み込んできたわけだから。」

 という軽い言い方の恐ろしさね。


 『冷たい熱帯魚』にも、映画館中が爆笑に包まれてしまうやりとりがあったわけなのですが、なんのなんの、こちらの『凶悪』も思わず笑い声があがってしまうシーンがいっぱいありました。そこはもう、普段から親交があるというリリー&ピエールペアの独擅場ですよね。
 「あ、これ、先生関係ねぇや。」とか「焼却炉って思ったより浅いんッスね……あっ、これ、いったん置こう!」とか、「純ちゃん、ちょっとそれ、僕にもやらせて。」とか「純ちゃんは黙っててよ、バカなんだから!」とかね。う~ん、さすがは軽さが身上の一流タレント! 役者じゃないところがいいんでしょうね。


 いろいろ言いましたが、その一方で「北関東の自然の寂寥感とか田舎の無人感をもっと深めに撮ってもよかったのでは?」とか、「編集長役の村岡さんの演技がステレオタイプでつまんない」とか、「ジジ・ぶぅさんの起用は良かったと思うが、声質と服を脱いだときの体つきが若々しすぎて残念だった」とか、言いたいことはまだまだあります。特に、原作では須藤と木村の事件解明のための最重要人物だった共犯者(映画版でいう福森)の末路が原作よりもつまらないものに変更されてしまっていたことには大いに不服でした。いくらなんでも、あのくらいの勢いの衝突事故で死ぬことはないと思うんですけど……

 ということで、映画『凶悪』の結論。


池脇千鶴さんはやっぱり、いい!!


 いや~、30すぎたのにぜんぜん変わってないんですよね、容姿も演技も。
 ヘアメイクでどんなに疲れたように見せかけても、まだまだ中学生でもいけるんじゃないかというくらいに、若い……っていうか、幼い! ここまで老けないというのは……実際、女優さんとしてはマイナスよね。

 「犯罪の魅惑から逃れられない犯罪者とジャーナリスト」を描ききった作品とはまったく違う次元で、「老けることができない女優」という恐るべき業病をさらけ出した池脇さんだったのでした……

 設定上は「家庭生活に疲れ切った主婦」という役だったのに、作中に登場した他のどの女優よりもエロいとは……濡れ場を演じた人だっていたのに、だぜ!?

 ……それでも好きだ!!(『ギャグマンガ日和』)
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とりいそぎ、日記までに

2013年10月13日 23時12分23秒 | 日記
 はいど~も~。そうだいでございます。最近多めの週末連休、みなさまいかがお過ごしでしょうか? わっちは仕事、仕事!


 私は昨日土曜日はお休みをいただきまして、たまにお手伝いをさせてもらっているボランティア団体の会合に出席したり、そのあとは新宿に行ってお芝居を観たりしてきました。昨日も相変わらずの真夏日でよう! 真夏日? 10月なのに正真正銘の真夏日なんだからしょうがねぇ。

 ボランティア団体の会合っていうのは昼間から夕方くらいまで開かれたんですが、団体の拠点でもある松戸市のだいたい中南部に位置する八柱(やはしら)のエスニック料理屋さんでおこなわれました。
 松戸市って、実は数年前まではまったく行く機会のない縁の薄い土地だったんですが、私は現在のお仕事をするようになってから、やっと足しげく通うようになりまして、隠すまでもなく、東京と埼玉に接する千葉県第三の大都市であるということを実感しました。実感……? いや、八柱界隈はずいぶんとおだやかな町なみでありまして。住むには最高ですよね。でも、JR 新八柱駅の地下構造はちょっと雰囲気が怖くて苦手です。

 会場がエスニック料理屋さんであるということからもおわかりの通り、団体はめっちゃくちゃ若い人ばっかりで、中心メンバーはもちろん年下で、新卒のフレッシュビジネスマンだとか大学生だとか高校生だとか……こ、高校生!? 15歳! ワタシ、その2倍以上も心臓を動かしてんのか……
 実際、会合の中では30代の人間は私ひとりしかいないという衝撃的事実と本格アジアンカレーの辛さに私は心神喪失状態におちいってしまったのですが、いろんな人が「オレ、ホームページ作るよ。」とか、「音楽やれるよ、楽器修理しなきゃだけど!」とか、「会計とか今、勉強中だからやってみたい。」とか、どんどん意見を言い合うエネルギーのみずみずしさに圧倒されてしまいました。いやぁ、若いっていうことは素晴らしいもんだよ、うん。

 実のところを言えば、私も仕事のあいまに決して楽ではないボランティア活動に参加するというのはしんどいと感じるときもあるんですが、こういうパワーに力添えできるかもしれないからこそ、参加させてもらってるわけで。がんばっていただきたいねぇ、わこうど。


 そんなこんなで、会合の後はみんなでカラオケに行こう!という、私が参加したら地獄以外の何者も予想できない流れになったのですが、幸いにも! 本当に幸いにも、私はその後に新宿に行ってお芝居を観るという予定が入っていたため、泣く泣く遠慮させていただいて失礼しました。いや、ちょっと行ってみたいっていう気にもなるにはなったけどさ……精神がこなごなになって死ぬじゃん? 単純に!

 さてさて、私がシッポ巻いておもむいた先のお芝居は、これ。


うわの空・藤志郎一座 第39回公演 『水の中のホームベース』(2013年10月12~14日 新宿・タイニイアリス)


 実は、この劇団さんの公演は2000年という遠い昔からちょいちょい観させていただいていたのですが、あぁ~そうか、もう私が大学生だった頃から10年以上も時間が経ってんのよねぇ。最初に拝見したのも、このタイニイアリスだったわ。確か、タイニイアリスでお芝居を観た最初の作品がこのうわの空さんの『悲しみにてやんでい』でした。最近になって映画化されたやつですね。
 それで、前回観たのは2010年10月の第31回公演『ダブルファンタジー』だってんですから、なんと酷薄な客なのでしょうか。オリンピックかそれ以上のペースでしか観に来ないとは……

 今回の公演はうわの空さんの「劇団旗揚げ15周年記念公演」の第2弾だそうで、全国4都市公演ツアーの一環として上演されています。めでたいねぇ。
 そんでま、うわの空さんがたびたび再演する代表作として有名な『水の中のホームベース』をやっと拝見したわけだったのですが。

 まぁ~、おもしろいのは当たり前よね。高頻度のギャグの応酬という意味では、昨日拝見した THE REDCARPETSさんの『ママは悪魔』とパッケージは同じであるとも言えるのですが、なんというか、笑いに対するスタンスはちょっと違うような気がするんですね。
 レッカペさんはまず最初に笑えない重さのストーリーがあって、それをお客さんに観てもらうために笑いを利用するという順番があると見たのですが、うわの空さんはなにはなくとも笑い優先! 明確にセリフが文章化されていない「口立て」方式の台本であると公表されているように、もちろん最終的に感動は用意されてはいるものの、そこにいくまでの筋道が完全にギャグで埋め尽くされている質感に驚きました。

 つまり、お話の流れがどうこうというよりも、その場のお客さんのノリを見てギャグをどのくらい転がしていくのかを判断するという、役者さん同士の間に張りつめたスリルが満点で、作品の完成度よりもおもしろさを優先するという実にきっぷのいい態度に改めて感じ入りました。そこはやっぱり、うわの空さんならではの姿勢ですよね。そして再演ということもあるのでしょうが、そこに現れるのはプロ意識の高いしゃべくりや小道具をフル活用した普遍性の高いギャグで、昨日観たような TV的な時事ネタは気持ちいいくらいに排除されていました。そこは藤志郎さんの好みなんでしょうか。私は恥ずかしながら TVで観たことは一度もなかったのですが、Dr.レオンさんの手妻はホンットに見事だったね!! ストーリーなんかそっちのけで客席全体がドカンとわいちゃいましたからね、そりゃもうすんばらしい腕前でしたよ。

 しかしまぁ、うわの空さんの中心メンバーは総じてベテランになられましたね……いや、舞台ツアーをこなすんだから当然まだまだ若いわけなんですが、時のうつろいはいやおうなく感じちゃいますよね。
 若い役者さんの中ではミュージシャンの西村晋弥さんがかなりがんばっておられていましたが、年齢差に関係なく、私の目には中心メンバーとそれ以外の役者陣との間に、これはもう隠しようのないテクニックの差というか、舞台の上での安心感の違いが見えてしまいまして、、そりゃまぁ当然といえば当然なんですが、ちょっと寂しく感じましたね。
 中心メンバーをおびやかすような若手が現れて活性化するのが集団だと思うんですが、そこは劇団に限らず、どの団体でも難しい問題ですよね。特に結成メンバーの個性が強ければ強いほど大変なハードルになるわけでね。

 そんなこんなで、旗揚げ15周年というめでたさもあいまって満場が盛り上がった公演だったのですが、自分の年の重ね方もいやおうなく思い起こされて、いろんなことをしみじみ考えながら新宿をあとにしました。

 もはや若くもないとは思うんですが、逆に「年とったなぁ~。」と実感することも頭髪の量以外には特になく、とりあえず元気に働けてはいる今日このごろ。
 でも、ある局面では15歳の人と同席してビックラこくし、またある局面では親になった親友やベテランになったちょい年上の俳優さんを見てビックラこくわけなのよね。

 こうやって時間の経過を実感するのも大事なことですよ。働いてばっかりだとわかんなくなるからね、こういうことも。
 非常に有意義な連休でありんした~。

 しかし、新宿は疲れるね……人が多くて。
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やっぱり、世界というものは恐ろしく……おもしろい!!

2013年10月12日 01時46分12秒 | 日記
 いや~、今日は楽しかったねぇ。

 久しぶりの親友との会合……非常にたのしゅうございました!! 忙しいのにありがたいかぎりでございます。
 ここで語るにはあまりにもったいない、とっても有意義でかけがえのないひとときになりました。
 やっぱりその、第一線で闘って頭の回転速度がまるで違う人と話をするのは、本当にいい刺激をもらえます。なにはなくとも楽しいし。


 そして、それに加えて、思わぬ経路をたどって、非常に信頼できる確度の、衝撃の秘密情報ももらっちゃったりして……

まさか、私が最近になってハマってしまった『杉田智和のアニゲラ!ディドゥーーン!!』に、そんな恐るべき事実が隠されていたとは!!

 これはいかん、この情報は、番組みずからが明らかにするまでには絶対に日の目を見てはいけない最重要機密だ。
 いやはや、有名人ってホントに大変ですね。学生時代とか、昔のピュアな私だったらがっかりしたり怒ったりしたのかもしれませんが、今の私は「タイヘンねぇ~。」という感慨しか浮かびません。

 でもまぁ、『アニゲラ』知ってなかったら、こんな情報にもいちいち衝撃を受けなかったわけでしてね。親友に会う直前に『アニゲラ』を聴いたという、この「縁」の深さ……持つべきものは、親友と縁ね!


 さて、そんな実り多いひとときを過ごしたあとは、池袋に行ってそうとう久しぶりにお芝居を観ました。


THE REDCARPETS 第4回公演 『ママは悪魔』(作&演出・金房実加 2013年10月10~14日 池袋シアターグリーン Box in Box シアター)


 まともなお芝居を観るのは3ヶ月ぶりということで、私としてはけっこう久しぶりに舞台を観る感覚になったんですが、おもしろかったですねぇ、いろいろと思うところがあって。
 レッドカーペッツさんの公演は第3回の『ドールハウス』から2年ぶりですか。前回公演もずいぶんと攻めた題材のお話だったんですが、今回もまた、世間の話題とか私の仕事とか、ついさっきまで親友と話していた話題だとか、偶然にしてもびっくりするほどいろんなテーマがギュウギュウに詰まったアグレッシヴな物語になっていました。すごい姿勢よね、ドドッと倒れる寸前ギリギリの前のめりですよ!

 『ママは悪魔』の物語は、風俗街の近くにある老舗の喫茶店を舞台にした一幕もので、現代のパートと、現代パートの主人公である女性・かや(演・横田恵美)が生まれる前後のいきさつを描いた過去のパートとが交互に展開される流れになっています。具体的な時期関係は、かやが現在27歳であるという設定でしか語られないのですが、過去パートで語られる時事ネタが「三宅島の噴火」だとか「『8時だョ!全員集合』の停電事件」だったりするので、過去パートが1983年の後半から84年の前半、したがって現代パートは2010~11年のお話ということになりますね。なんで、再演でもないのに現代パートが微妙に過去になっているのかがわからないのですが、かやが30歳近くになったら困ることでもあったのか、過去パートが1980年代の後半になってはいけなかったのか……? でも、現代パートでは「倍返し」だとか「じぇじぇじぇ」だとか「お・も・て・な・し」だとかがうっさいくらいにネタにされてましたけど。家に TVがないと、こういうセリフにいちいちイラッときます。ライヴの演劇を観に来たのに、なんでそんなネタを見せられなきゃいかんのかと。それだけ流行ってるってことなんでしょうか。でも、少なくとも私が観た回の客席の反応はおしなべていまひとつでしたよ!

 お話の中心となるものは、過去パートの主人公であるかやの母・月江が、どうしてかやを産んでまもなく失踪してしまったのか、という謎。そのために生後半年にもならないうちに施設に入り、母も父も知らずに育ってきたかやは、あることをきっかけに自分と母のルーツを探るために、母がよく通っていた喫茶店にやってきます。そして、立派な大人になったかやと出会い、27年前の母・月江と親交のあった喫茶店のオーナー・ますみ(演・矢代朝子)や近所の開業医・昭二(演・新納敏正)がひもといた、月江の真実とは……

 だいたいこういう筋のお話なのですが、過去と現代の両方で喫茶店に顔を出しているますみと昭二は、それぞれの時間軸で別の役者さんが演じており(喫茶店のアルバイト店員だったますみは津乃村真子、大学の医学生だった昭二は浜本ゆたか)、過去と現在がしっかり分かれていつつも、過去の自分を見つめる現在の自分、という心理描写がとってもわかりやすく舞台化されていて非常に見やすい構図になっていました。

 役者さんも、今までに名前が出たメイン5名以外にも魅力的な顔ぶれが多く、月江役の平島茜さんと現代パートで喫茶店の店員を演じる伊藤亜沙美さんといったレッカペ中核メンバーは言わずもがな、スキャンダルで没落した元トップアイドル役の福岡理恵子さんと、それを追うハイエナ雑誌記者役の中島愛子さん、かやの彼氏役の沖田裕樹さんといったあたりが、脇役にしておくにはあまりにももったいないエネルギッシュな光彩をはなっていましたね。ものすっごくぜいたくなキャスティングです。盛りだくさん!

 お話自体は、時間もめまぐるしく変わり、笑えるセリフもバンバン繰り出されるにぎやかな雰囲気にいろどられているのですが、いっぽうで物語の中で持ち上がってくる問題はといいますと、「母と娘の愛憎」「風俗譲への職業差別」「父のわからない子ども」「施設児童への差別」「アイドルへの職業差別」「娘かもしれない人物が突然やってきた!」という、解決しようのない重さに満ちたものが目白押しになっています。
 そういった、明確に「これ!」という答えが見つからない人生の選択肢の連続の中で、月江はかやを産んで、そして育てずに失踪するという道を選びました。その理由は物語の中で明らかになっていき、母を恨むばかりだったかやの心にも変化がおとずれ、感動のクライマックスとなるわけなのですが……

 やっぱり、根がガンコなのかねぇ……私は、ひとつの選択として月江の判断は理解できるんですが、賛成はできないんだよなぁ、どうしても。
 元気でいる限りは、どんな親でも親は子といっしょにいるのがいちばんだと思うんです。世の中には親が我が子を殺すような哀しい事件も後を絶たないんですが、そういう人物に月江がなりそうな兆候はなかったわけだし。
 う~ん、いろいろ考えた上でそうしたんでしょうが、結局はエゴ優先な選択だと思うんだよなぁ、親が赤ん坊を置いてどっかに消えちゃうっていうのは。

 そういうことをぶつぶつ考えながら私は観ていたのですが、舞台は大きな拍手につつまれてエンディングを迎えました。ぜひとも他のお客さんの意見も聞きたいところなんですが、素直に感動された方々も多かったってことですよね。まぁ、人生いろいろってことだわな!

 レッカペさんの作品は、いつも重たいものを軽~く舞台化するよね。そのスレスレ感がレッカペですよね。

 でも、今回は若干過剰気味に心象風景ダンスシーンを盛り込んだりして、エンタメにすることに腐心していたきらいがありました。もっと突っ走っていけばいいのに、なんか足踏みしてお客さんがついてきてるかどうかを気にしている感じ、というべきか。

 でも、そういうのは多分に私がそう見えたってだけでね。他のお客さんにとってはいいクッションになってたのかも知れないし、単に私が、曲で使われた三代目 J Soul Brothers のことが大嫌いだからってだけなのかも知れないし。
 三代目 J Soul Brothers って、なんなんですか、その自意識過剰なネーミング。わたくしはあなたがたが三代目だろうが四代目だろうがファッキンどうでもよろしいんですが。三代目ってなに、メフィラス星人の手下として2~3秒しか登場しなかったってこと? 次に登場するのは「J Soul Brothers ジュニア」でロボット怪獣ビルガモを連れてくるってこと?

 ああいうのって、いまだに女性ウケしてんのかねぇ。あたしゃもう、過去パートに転換するときに流れていた村下孝蔵さんの『初恋』のほうが数万倍いいと思うんですけどね。はい、おっさん、おっさん、おっさんさ~んっと♪

 そんなこんなで、やっぱり作り手の熱が直接伝わってくる舞台はいいなぁ~と感じたのでした。
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