長岡京エイリアン

日記に…なるかしらん

『ウルフボーイ』で圧勝でした  ~今さらレビュー 『The Best! Updated モーニング娘。』~  ハイ本題。

2013年11月22日 22時29分24秒 | すきなひとたち
 どうもこんばんは~いっと。そうだいでございます。みなさま、今日もお疲れさまでした!

 え~っと……今、11月の22日ですか。
 このアルバムがリリースされたのって、いつだったっけな。(CD ジャケットの裏を確かめて)……9月25日って、プリントされてますね。

 ……2ヵ月後にレビューかよ!! いったいどこのどなたが読んでくれるんだよ、こんな記事ぃい~。

 でも、いいんですよ、個人ブログなんですからね。自分が満足すればいいんでい! そして、もはや残り1週間さえもきってしまったモーニング娘。の日本武道館コンサートに間にあえば、まぁいいのだ。

 ほんじゃま、雄々しく参りましょう、音楽にまったく通暁していない人間がへなちょこな言い回しで送ります、音楽アルバムレビュー!!
 あの、言うまでもないことですが、レビューするにあたりましては、あくまでも「わたくし個人の価値観」にのっとりまして、オリジナルバージョンと今回の「updated バージョン」とで、どっちのほうが好きだとかということは、言っちゃいます! 言うけど……それで怒ったりしないでね? 記載した情報に私の勘違いがあったら、ごめんなさい!

 なんかもう、このアルバム、ネット上のいたるところで、きわめて詳細で素晴らしいレビューとか、賛否両論の議論が花ざかりじゃん?
 そんな中、遅れに遅れてこれをアップする理由がアップする本人にもわからない状態なんですが……やっぱ、しいて挙げるのならば、2013年に満を持してこの作品をを世に問うたモーニング娘。とつんく♂さんへの敬意と愛情しかありませんよね、原動力なんて。

 っちぇなわけで、いってみよ~う♪



『The Best!Updated モーニング娘。』収録曲
全作詞&作曲・つんく♂

1、『 LOVE マシーン updated 』
 ……7thシングル(1999年9月リリース)のニューバージョン

 のっけからラスボスを相手にしてしまいました!

 言うまでもなく、モーニング娘。というグループが本格的にブレイクする起点となった、2013年現在にいたる永き歴史のいしずえとも言える名曲であります。これに現メンバー10名が挑戦!
 オリジナル版は無論、マッキングゴールドこと後藤真希エースが初参加した作品であるわけなのですが、それ以上に、1・2期メンバーの低音のきいたヴォーカルのつるべ打ちという感じで、あらためて聴くとびっくりするくらいにアダルトな雰囲気になっています。さすがは、初代リーダー・中澤裕子体制。

 そんなオリジナル版に引き比べて今回の updated バージョンを聴いてみると、確かにモーニング娘。という集団が「ヴォーカルダンスグループ」から「アイドルグループ」に変身したという証拠が確かめられるような気がして感慨深いものがあります。
 つまりは、歌声が隠しようもなくキャピキャピして若返っているということになるのですが、それでも器用に、いつもよりもやや低めの音程をマスターしている現メンバーの相性のよさは、さすがと言うほかありません。歴史的名曲へのチャレンジにもまったく動じずにおのれを貫き通している第8代リーダー・道重さゆみさんの一発でわかる合いの手もさることながら、鞘師、譜久村、鈴木、そして工藤さんといった面々がちゃんと個性を出しているのがとてもいいですね。

 結局、この曲はある程度の「年齢的あせり」が似合う世代の歌声がむちゃくちゃフィットする応援歌であると思いますので、それをまだまだ若いアイドルグループが唄うこと自体が不思議な話になるわけなんですが、この曲、もともとオリジナル版がピコピコサウンド中心なもんだから updated バージョンにそれほど新奇さがなくて、最終的には好みの問題になっちゃうんですよね。低音の魅力か、若さか!

 まぁ、そうなったらやっぱ、updated バージョンに軍配を上げるほかはないわな。無理を申すのならば、また5年後くらいに唄いなおしたら、完勝できるはず! 工藤さんなんか、どうなってんだろうなぁ。


2、『 I WISH updated 』
 ……10thシングル(2000年9月リリース)のニューバージョン(9~11期メンバーの歌唱)

 オリジナル版は、のちに第4代リーダーとなる吉澤ひとみさんを輩出した第4メンバー4名が初めてソロパートを受け持った本格的なデビュー曲でありますが、全体的に見れば、当時人気絶頂にあったエース格の後藤真希さんをメインヴォーカルにすえた、いわば「ごっちん包囲網」のようなパート布陣になっていました。敵味方ってわけじゃないけど、しっかり闘ってます。ただし、かなりあどけなさの残る、ど頭とどラストでの加護亜依さんのソロパートがものすごく印象的です。いつ聴いても……というか、今聴くからこそ、思わず涙が出る。

 それに対して updated バージョンはといいますと、明らかに「小田さく包囲網」とでも言うべきパート割りになっていまして、オリジナル版の各所でごっちんと他メンバーを代表する初代リーダー・中澤裕子とのソロ合戦が展開されていた雰囲気は、そのまま小田さんと現エースの鞘師里保さんとの対峙に受け継がれていますね。
 ただ、加護さんという天才的異端はいたものの、実質的には「1 VS その他」となっていたオリジナル版に対して、updated バージョンは「1 VS 9期4名 VS 10期4名」という『三国志』みたいな構図になっていまして、しかも小田・鞘師ラインの他にも鈴木・譜久村の両巨砲や工藤さんのハスキーボイスあたりがはっきり目立っているため、オリジナル版よりも唄っているメンバーの個性がはっきりわかる、実にいい updated になっていると感じました。
 なので、わたくし的には、『 I WISH 』は updated バージョンのほうが好き!

 でも、実は演奏の点では、明確に作品世界がグッと広がる盛り上がりが用意されているオリジナル版のほうが、幸福感がいっぱいで捨てがたいものがあるんですが……私、ヒップホップ的な「Yo!」とか「ヒャウィゴ!」みたいな合いの手が大っ嫌いなので、こっちも updated のほうがいいかな。
 でも、鳴り物入りの updated の中では、この『 I WISH 』が EDM色がいちばん出てなくて地味なんですよね。歌手の個性を絶対的に信頼している目立たなさです。え……それって、道重リーダーが唄ってないから?


3、『恋愛レボリューション21 updated 』
 ……11thシングル(2000年12月リリース)のニューバージョン

 これはもうあなた、updated バージョンの勝ちなんでないのかい!?

 あらためてオリジナル版のほうを聴いてみますと、意外に落ち着いた感じというか、まだ育ちきっていない第4期の空白があるためか、10人体制だったはずなのに今ひとつ曲のノリに乗り切れていない静けさがあるんですよね。これがまた、およそ1年後の4thアルバムに収録された『恋愛レボリューション21 13人バージョン』になると格段ににぎやかになるんですけど、その成長幅の大きさがモーニング娘。の魅力の源泉であるわけなのです。

 オリジナル版は、モーニング娘。前期におけるブレイク最大の功労者と言ってもさしつかえはない、ダンス☆マンによる古きよきディスコ調編曲が特徴的なのですが、うん、今回の EDM調のほうが、私は好きですね。「ぴゅわわわ~ん」とか「ぎゅぎゅぎゅいぃ~ん」といったうるさい援護射撃が合ってるような気がします。

 ちょっと、鉄板で勝ちにいったという感じで、佐藤さんや生田さんあたりの冒険があんまり聴けなかったのが物足りなくもあるんですが、正調での現メンバーの元気のよさがしっかり反映されているかっこいい傑作になったと思います。ディスコでも EDMでも、どっちでも「ダサかっこいい」を狙ってるわけなんですから、方向性はもともと合ってるんですよね。勢いがあっていいんじゃないのでしょうか!

 さぁ、これがこれからどんどんコンサートの現場でブラッシュアップされていくと、どういう成長ぶりを遂げていくのでありましょうか……モーニング娘。をオリジナル音源だけで知ったような気になってはいけない、そして、グループの進化の証人になる権利を持っているという自分自身の幸せを噛み締めなくてはならないという思いを新たにさせる一曲でした。薄気味悪い言い回しで申し訳ないですけど、要はコンサートがほんとに楽しみだっつうことよ!


4、『ザ☆ピ~ス! updated 』
 ……12thシングル(2001年7月リリース)のニューバージョン

 実際にどういう結果になったのかは度外視しても、まず、この名曲に挑戦した現メンバーとつんく♂さんの胆力を評価したいですよね、なにはなくとも。

 オリジナル版は第2代リーダー・飯田圭織体制になって初のシングルで、メンバー9名の個性が充分に成長し、その中でも安定の魅力をたもつ安倍なつみさんと後藤さんとのエース対決が堪能できる、パーフェクトでハイテンションな名曲となっています。終盤での、「終わった?」と見せかけてまた始まる後奏のリフレインも、実に「6回」も繰り返されるという悪ノリもいいところな演出で、まさしく「何をやっても許される」黄金期を象徴する一曲になっているわけですね。

 そんな強敵に満を持して闘いを挑んだ updated バージョンだったのですが、う~ん、そんなことは決してないんでしょうけれども、全体的に「ビビッてるの?」と感じてしまうような奥ゆかしさがあるといいますか……なんか、ぶっ飛んだ歌詞に対してテンションがさほど高くないんですよね。テンションの高さでオリジナル版にかろうじて拮抗しているのは、いろんな意味で直接の「師匠」にあたる石川梨華さんの伝統ある「語り」を継承していた道重リーダーくらいでしょうか。

 要するに、鞘師エースと譜久村サブリーダーの歌唱が生真面目なんですよね。誠実なのはいいんですが、ちょっとオリジナル版のはっちゃけ魂を受け継いでいるとは言いがたい硬さがあるというか。後奏のリフレインも、たったの3回でヘンな音声加工が入って打ち切られてるし。
 これだったら、もっと歌声に個性のある鈴木さんや佐藤さんを思い切って前面に押し出したほうが良かったのでは……と感じてしまうものがあり、とにかく「この曲にそのパート割りですか?」という疑問が残ってしまいました。

 これはもう……オリジナル版のほうがいいかな。
 updated バージョンの曲調もかなり丁寧に構成されているとは思うんですが、そもそも、この EDM版の「じょじょに盛り上げていく」という計算自体がこの曲にそぐわないというか、これで、序盤から生バンドでドカンと攻めているオリジナル版に勝てるわけがないんですよね。

 この、黄金期の絢爛っぷり。実は、当時は「うるせぇな。」と思って好きではなかったんですが、今となっては懐かしいですな。


5、『そうだ! We're ALIVE updated 』
 ……14thシングル(2002年2月リリース)のニューバージョン

 今回のアルバム構成における、いわゆる「黄金期」の名曲群との激しい闘いの、ついにラストバウトとなる一曲です。
 とはいえ、同じ「黄金期」とくくっても、このオリジナル版でのメンバー13名の構成するモーニング娘。は、およそ2年半前に『 LOVE マシーン』を世に問うたモーニング娘。とはまるで雰囲気の違う集団に変容しており、それは「初代リーダー・中澤裕子の勇退」と、「第4期のはるかな成長&新たなる第5期の本格的始動」が起点となった若返りと多人数化が非常に大きかったというわけだったのです。つまりは、2013年現在に続く「成長し、世代交代する少女中心のアイドルグループ」というモデルの誕生です。

 そして、オリジナル版の曲全体に満ち溢れる元気の良さといちずさは……いつ聴いても胸を熱くさせるものがあります。まるで歌劇のひとくだりでもあるかのように曲調がぐいぐい変わる大曲なのですが、「努力 未来 A BEAUTIFUL STAR!」や「しっ あわせに なり~たい~♪」といったあたりのインパクトのあるフレーズが各所でキマッている、終盤までテンションがまったく落ちない名曲です。『 LOVE マシーン』から、対象が「人類全体」にまで果てしなく拡大してしまった応援歌なんですね、これ。ゆえに暑苦しくもあるんですが。

 さて、これに updated バージョンがどう挑戦したのかといいますと。

「ぺっぺれ ぺっぺれ ぺっぺれ ぺ~れ♪ ぺ~っ ぺ~っ ぺ~、カモ~ナッ!!」

 おお、なんだ、この、今にも『ヤッターマン』あたりが始まりそうな、力の抜けきった間奏は!
 なるほど。ひたすら熱いオリジナル版に対して、みごとに斜めにいった変化球のような脱力系! 確かに、こっちのラフさのほうが現メンバーに似合いそうでいいですね。

 ただし、この曲を聴き比べて痛感したのは、現メンバーには、かつての第1~5期あたりがそのクソ度胸をつちかうこととなった伝説のバラエティ番組『ハロー!モーニング。』、特にコントコーナー『ハロモニ。劇場』あたりの、「おもしろいかどうかわかんないけど、やります!!」という、「死地から生まれる底なしの明るさ」を身につける機会が絶対的に少ないんじゃなかろうか、ということでした。
 もちろん、現メンバーだって当時に劣らない忙しさでお仕事をこなしているでしょうし、当時以上に大変な内容の現場にも幾度も立っていることでしょう。しかし! その地獄のような日々を逆に原動力にして、「笑い」に昇華してしまおうというウェルメイドなバラエティ番組は必ずや、本人たちのスター性をぐんと開花させる大いなる逆境になるはずなのです。現場報告メインのファンクラブ会報みたいな番組だけじゃあダメ、ゆるいトークバラエティだけでもダメ!

 だって見てみてよ、あの第4期の異常な成長速度のはやさを。あれはご本人たちの天才性だけじゃないはずですよ。世の中のみなさんにキャラクターを憶えてもらうためにも、全然別のおちゃらけたキャラを演じているようで、実は「素の自分」がはっきりさらけ出されてしまうコントって、ほんとにいいんですよ! 歌唱力がないメンバーでもどんどん前に出られるし。ねぇ、チャーミーさん!?

 保田圭さんに匹敵する迫力を持つ鈴木香音さんがいるのは、よくわかりました。でも現メンバーには、吉澤ひとみさんにあたるグループ全体のムードメイカーがまだ出てきていないような気がするんですよね。かなり競り合いましたが、やっぱりオリジナル版のほうが好きかなぁ。


6、『 THE マンパワー!!! updated 』
 ……25thシングル(2005年1月リリース)のニューバージョン

 安倍なつみさんと後藤真希さんという伝説的両エースがグループを去り、いよいよ「勢い」だけには頼っていられない新時代に突入したモーニング娘。の、まるでこれからの波風の高い未来を予兆するかのような2005年ドあたまの「怪曲」こそが、このオリジナル版であります。

 あっ、何を今さらですが、東北楽天ゴールデンイーグルスさん、2013年日本一、まことにおめでとうございます!
 その8年前に世に出た、ゴールデンイーグルスの「初代公式応援歌」こそが、他ならぬこれであったのですが……

 正直言いまして、私はこのオリジナル版が、モーニング娘。の全楽曲の中で最も「好きくない」曲なんですよねぇ~。嫌いとは言わないけどさぁ、捨て曲とは言わないけどさぁ、といった感じです。まさか、私個人が東北地方の出身だということも潜在意識化で関係しているのだろうか?
 ともかく、これが出たときは「あぁ、モー娘。も《検閲削除》たなぁ。なんでイメージソングじゃなくて公式応援歌なんだ? こんなお経みたいな歌、誰が唄うか!!」などと、ネガティヴな印象しか受けなかったものでした。

 バランスが難しいかとは思うんですが、シングル A面曲というものは、やっぱりある程度はリリースされた瞬間に心をグッとつかむ即効性が必要になると思うんです。それがハッタリなのだとしても。
 この曲、「あとで聴いたら意外といい」とか、「じわじわくる中毒性がある」とかいう遅効性成分しか配合されてないんだもんねぇ。こんなの、毒だったら絶対に2時間サスペンスドラマに出られねぇぜ!? 効いてくる前にドラマ終わっちゃうんだもの。
 前の『そうだ! We're ALIVE 』ではうまくいっていた「歌詞のあいまいさ」も、こっちではけっこう、悪いほうにいっちゃってるような気がするし。ドライな曲調がとにかく他人事感満載で、な~んか元気がもらえないというか。当時のMV では、メンバー12名が「勝利の女神」みたいな衣装を着て踊ってましたが、女神さまって、あんなにビジネスライクな応援しかしないんけ? まぁ、そっちのほうが敵味方に公平で神さまっぽいけど。

 まぁ、そんなこんなで、それが「曲だけの評価になっていない」という、多分に不当なものであることは私本人も十二分に理解してはいるのですが、かなり悪い印象しか持てていないこの『 THE マンパワー!!!』。オリジナル版と updated バージョンとの対決はどうなったかっつうと。

 うん、これはオリジナル版の勝ちだな。その根拠は、「メインを張っているツインボーカルの気合い覚悟の度合い」。これだけかと思われます。もともとがテクノなんですから、EDM になってもあんまり差がなくてボーカルの争いになっちゃうんですよね。このアルバムの中でも、特にアレンジ色がうすい一曲だと感じました。
 だとしたら、なんでまたこんな曲をつんく♂さんは updated リストにピックアップしたのか? それはもう、オリジナル版の収録時に見られた、火花が散りまくってスタジオがボヤさわぎになりそうな、当時の「をんなの一騎打ち」の空気を現メンバーに体感してほしかったからだったのではないのでしょうか。さすがは、ミュージシャン出身のプロデューサー!

 オリジナル版の「2005年における高橋愛 VS 藤本美貴」と、 updated の「2013年における鞘師里保 VS 小田さくら」。どっちの対決のほうがアツいのかっつうと……言わずもがな、ですよね。
 スター性とか歌唱力で両者を比較するのは、 updated のほうに圧倒的な不利があると思います。いや、にしても鞘師さんをさしおく勢いでこの曲をモノにしている小田さんの成長率がとんでもないんですが、モノにした上でしっかり自分の個性を主張しあっているオリジナル版のおふたかたには大きく譲るものがあるでしょう。

 なんてったって「2013年時点」。つまりは、どちらも2001年デビューだったオリジナル版ペアにたいして1~2年のキャリアの幼さがある updated ペアなんですから、テクニックで比較するのは酷というものかと。私がもっと重要にとらえたいのは、この曲を歌唱するメインボーカルとしての「緊張感」の差なんです。

 かたや、「あらかた知ってる人もいなくなってきたし、そろそろ終わりだろうなぁ。」という、世間の冷めた空気を肌身で感じるなか、新年1発目のシングル A面曲として世に出たグループ史上類を見ない異色作。かたや、特にアルバムの看板というわけでもなく、収録曲のひとつとして唄いなおされた珍味。
 これはもう、大学入試一次試験と中間テスト、または、1954年の初代ゴジラと『ゴジラ対メガロ』のゴジラほどの差があるんじゃなかろうか。ご本人たちの実力の問題ではなく、背負っているものの重さの話でちょっと勝負にならない、ということだと思うんです。

 この曲も、2~3年後にまた唄われたらおもしろいんだろうなぁ!


7、『歩いてる updated 』
 ……31stシングル(2006年11月リリース)のニューバージョン(道重さゆみのソロ歌唱)

 まさに、「そうきたかぁ!!」という updated バージョンですね。ソロかぁ! でも、ソロだよなぁ、やっぱ。

 オリジナル曲は、第4代リーダー・吉澤ひとみ体制下での唯一のオリコンシングルチャート首位獲得タイトルであり、これと、第5代リーダー・高橋愛体制で同じく唯一の首位獲得タイトル『しょうがない夢追い人』(39thシングル 2009年5月リリース)と比較すると、それぞれの時代のグループの「色」がほの見えてくるようで非常に興味深いですね。私はつねづねプラチナ、プラチナ言ってますけど、吉澤時代も、いいんですよね……この時期があったから高橋時代の実力が育って、ひいては今現在のモーニング娘。があるわけなのです。

 この曲を聴けば、どうして今現在のモーニング娘。があれほどまでに「ダサい」とか「K-POP みたい」とかと言われている EDM路線を維持しているのか? という疑問の答えのひとつが理解できるのではないのでしょうか?
 つまり、歌唱力とはまた別のお話で、声質やくせに独特な「現実感のなさ」がありすぎる道重リーダーという存在が、最もムリなく生きることができる世界、それこそが EDMの軽く、なつかしく、どこかに「現実逃避」のうしろめたさのある「隠れ里」のようなささやかな聖域だったのではないのかと。

 そういえば、日本の歴史の中でもひときわ「隠れ里」としてのリアリティを持っていたという、江戸時代における「隠れキリシタンの村」は、江戸幕府の崩壊後に本場のカトリック教徒が来日して、その250年以上にわたる辛酸の労苦をねぎらうために訪れたものの、子孫代々に受け継がれた命がけの「伝言ゲーム」の繰り返しの結果、もはやカトリックとはまったく別の「異教」のレベルにまで変質してしまっていたのだそうです。
 それと同じで、モーニング娘。の EDM路線も、本場海外の「EDM」というものとはまったく別の種類の音楽になっているのだとか。ナンをちぎって食べる本格インドのカレー料理と、丸美屋の「ドキドキ!プリキュア カレー ポーク&野菜 甘口」ほどの違いというべきか。

 ともかく、今の「さゆルビー期(また使ったった!)」の本質のひとつがはっきりと垣間見える一曲になったと聴きましたし、モーニング娘。と道重さゆみの歩みを知れば知るほど「泣ける」感動作になっていると思います。前の『 THE マンパワー!!!』とはまた別の理由で勝負にならないオリジナル版と updated バージョンなのですが、ここはやっぱり updated のほうに軍配を上げたいと思います。

 あっぱれ道重さゆみ、天下一のアイドルふるつわものよ。


8、『恋愛ハンター updated 』
 ……49thシングル(2012年4月リリース)のボーカルアップデートバージョン
9、『 One・Two・Three updated 』
 ……50thシングル(2012年7月リリース)のボーカルアップデートバージョン
10、『ワクテカ Take a chance updated 』
 ……51stシングル(2012年10月リリース)のボーカルアップデートバージョン
11、『 Help me!! updated 』
 ……52ndシングル(2013年1月リリース)のボーカルアップデートバージョン
12、『ブレインストーミング updated 』
 ……53rdシングル(2013年4月リリース)のボーカルアップデートバージョン
13、『君さえ居れば何も要らない updated 』
 ……53rdシングルのボーカルアップデートバージョン
14、『わがまま 気のまま 愛のジョーク』
 ……54thシングル(2013年8月リリース)

 別に、字数がかさんできたからいっしょくたにまとめちゃうわけじゃあないんですが、これらの7曲はひっくるめてまとめちゃいましょう。

「そんなに、田中エース色をやっきになって消そうとしなくてもいいじゃないか!」

 まぁ、将来的にいつか「シングルコンプリート集」とか「 updated じゃないほうを収録したベスト盤」が出る可能性も充分にあるかと思うので別にかまわないんですが、私そうだいは非常に古い種類の人間ですので、やっぱりその、長年にわたってグループのエース格として活躍し続けてきた田中れいなさんの功績を讃えるような内容のオリジナルフルアルバム……あったほうが良かったと思うんですよね。

 その雰囲気が、今回の『 updated 』のばたばたでまるごと払拭されちゃったからねぇ。なんか不憫のような気がして。

 でも、今回の updated のおかげで突如として発生した、広大な「れいなパート」という沃野を争奪する9・10・11期メンバーの映画『清須会議』みたいな熾烈な争いが、聴けば聴くほどものすごくおもしろいですね。田中信長、本能寺の変にたおれる!
 さぁ、秀吉になるのは一体、誰なのでしょうか? 盛り上がってまいりました!!


15、『ウルフボーイ』
 ……アルバムオリジナル曲

 好きだなこの曲、なぜかわからん!!


 ということで、いよいよラストの『ウルフボーイ』についてと、アルバム全体に関する総まとめ、そして、余力があったら「おまけ」みたいなものは、またまた先送りの次回ということで!

 うわ~ん、まだ終わんないよう! これ、愛情の大きさがうんぬんとかじゃなくて、ほんとに私の文章力の問題よ。


♪わぁかぁっちゃ いぃるけぇど やぁめらぁれない

 あ、そーれ!!


コメント (2)
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突然炎のごとく……!!  総力特集 「せかいのサメ」 第10集(拾遺)

2013年11月21日 23時23分21秒 | 日記
ここでは、世界に400種生存していると言われるサメには入らないんだけど、触れないでおくには惜しいみなさんを紹介します。


※サメみたいなエイ

ガンギエイ目( Rajiformes )の「サメ」たち
 ガンギエイ目は、エイのグループのひとつ。ガンギエイ科・シノノメサカタザメ科・サカタザメ科・トンガリサカタザメ科の、4科32属285種で構成される。

サカタザメ科
 サカタザメ科は、サカタザメ属など4属42種で構成される。体型はシノノメサカタザメ科のような、サメ型とガンギエイ型の中間にあたる形。背ビレと尾ビレははっきりしているが、尾ビレは上下には分かれていない。

トンガリサカタザメ科
 トンガリサカタザメ科は、トンガリサカタザメ属など1属4種で構成される。シノノメサカタザメ科と同様に、大きな背ビレと上下に分かれた尾ビレを持つが、頭部の先端が長く伸びている。全長3メートルに成長する大型種もいる。

シノノメサカタザメ科
 シノノメサカタザメ科は、シノノメサカタザメ属の1種のみで構成される。「 Sharkray 」という英名が付くほど、外見はサメに似ている。頭部の前面は丸く、大きな背ビレと鎌状の尾ビレを持つ。他のエイ類とは異なり、胸ビレは動かさずに尾ビレを左右に振って泳ぎ、遊泳力は強い。


シノノメサカタザメ(東雲坂田鮫) Rhina ancylostoma
ガンギエイ目シノノメサカタザメ科シノノメサカタザメ属(1属1種)

英名 …… Bowmouth guitarfish (ボウマウス・ギターフィッシュ)、Shark ray (シャーク・レイ)、Mud skate (マッド・スケート)
体長 …… 1.5~3.0メートル

 外見や泳ぎ方はサメのようであり、和名も「~ザメ」とつくことから、サメ類と間違われやすい。英名では、「弓のような鼻先のエイ」、「サメのようなエイ」、「泥が好きなエイ」といった意味の呼び名がある。

分布
 インド洋や西太平洋の熱帯から温帯海域に広く分布する。海表面から水深90メートルまでの海域に生息する。沿岸性で、サンゴ礁や砂泥質の海底付近を好む。

形態
 エイとサメの中間のような体型だが、エラが腹面にあることから、エイ類であることがわかる。
 鼻先は扁平で丸い。両目の上と、目の後ろから背中にかけてノコギリ状の隆起がある。2枚の背ビレはいずれも高く、後方は湾入している。尾ビレは鎌状で、上葉と下葉がはっきり分かれている。

体色
 背側は青みがかった灰色か茶色で、白色のまだら模様がある。腹側は白色である。幼魚では背側のまだら模様がより顕著で、両目の間には暗い色の帯が複数本ある。

生態
 沿岸に生息するエイ類だが、砂に潜ったり海底で休んだりする姿はほとんど見られず、常に海底付近を活発に遊泳する。他の多くのエイ類とは異なり、発達した尾ビレを左右に振って泳ぐ。
 海底に棲む甲殻類や貝類、硬骨魚類を捕食する。胎卵生で、体長1.5~1.8メートルほどで成熟する。

人との関わり
 東南アジアなどでは漁業の対象になり、さまざまな漁網で混獲される。肉は食用になり、大型個体のヒレは高値で取引される。ダイナマイトを用いた漁、サンゴの白化、陸上の森林伐採から引き起こされる海底地形の変化などで生息環境が破壊され、個体数は減少している。
 日本ではもともと個体数が少なく、漁業の対象にはならない。まれに網にかかったものを水族館が引き取る場合がある。人間による飼育環境下でも長期間にわたって生存することができ、大型水槽を備えた各地の水族館で展示されている。



※サメにされちゃった硬骨魚

スズキ目コバンザメ亜目コバンザメ科( Echeneidae )の「サメ」たち
 コバンザメ亜目コバンザメ科は、軟骨魚類のサメとはまったく違う硬骨魚類のグループで、サバやカジキなどが属するスズキ目である。

 コバンザメ属(コバンザメ・ホワイトフィンシャークサッカー)、スジコバン属(スジコバン)、ナガコバン属(オオコバン・クロコバン・ヒシコバン・ナガコバン)、シロコバン属(シロコバン)の4属8種で構成される。

グループ全体の特徴
・体型が太い。
・尾ビレの幅が広い。
・頭部の背面に、約20本の板状の横縞(隔壁)によってできた小判型の大きな吸盤がある。
・大型のサメ類やカジキ類、ウミガメ、クジラなどに吸い付き、えさのおこぼれや寄生虫、排泄物を食べて暮らす「片利共生型」の魚類だが、しばしば、吸い付いた相手のエラや総排泄口付近に入り込んでいる光景も見受けられるため、「共生」と「寄生」との境界は曖昧である。
・外洋性で、世界各地の暖かい海に生息している。

コバンザメの習性を利用する漁法
 コバンザメはウミガメ漁に利用されている。生きたまま捕らえたコバンザメの尾にロープを結びつけ、ウミガメの近くで放つと、コバンザメは一直線にウミガメに向かっていき腹にくっつく。ロープをたぐればコバンザメと一緒にウミガメが釣れる。小型のものであれば直接捕獲し、大型のものであれば最終的に銛でしとめる。
 この漁はインド洋全体、特にモザンビークや南アフリカ共和国近海の東アフリカ大陸沿岸や、北オーストラリアのトレス海峡近辺で記録されており、類似した漁法は日本やアメリカでも行われている。
 西洋の文献で最初にこの漁法が記述されたのは、クリストファー=コロンブス(1451~1506年)の航海記録であるが、これはコロンブスによる創作なのではないかとも考えられている。

日本語での蔑称としての「コバンザメ」
 自らにくらべてより強大な者に身を寄せて外敵から自身を守り、しばしばその食べ残しにありつく、というコバンザメの習性を人間社会に当てはめて、人間界においても、勢力のある者にすり寄ってその声望を借りたり、「おこぼれ」にあずかったりするとみなされる人物に対して、軽蔑を込めた比喩表現としても用いられる。同様の表現として「金魚のふん」、「腰巾着」、「虎の威を借る狐」がある。
 また、大規模な商業施設や遊園地、公共施設など、多数の人間を集める施設の近隣で営業する商法を「コバンザメ商法」と呼ぶこともある。


コバンザメ(小判鮫) Echeneis naucrates
コバンザメ亜目コバンザメ科コバンザメ属

英名 …… Live sharksucker (ライブ・シャークサッカー)
体長 …… 0.7~1.1メートル

形態
 頭部の背面に小判型の吸盤があり、これで大型のサメ類やカジキ類、ウミガメ、クジラなどに吸い付き、えさのおこぼれや寄生虫、排泄物を食べて暮らす「片利共生型」の魚類である。吸盤には横に18~28枚の隔壁がある。この隔壁はふだんは後ろ向きに倒れており、吸盤が動いている大きな魚の体表などに接触すると、これらは垂直に立ちあがる。このとき、隔壁と隔壁との間の水圧が周囲の海水の圧力より低くなり、これによって吸盤は面に吸いつく。吸いついたコバンザメを後ろに引くと、隔壁の間の水圧はさらに低くなるため、吸盤はさらに強く吸いつく。反対にコバンザメを前に押すと、隔壁が元の位置に倒れるとともに、吸盤は面からはずれる。この構造によって、本種は自分がくっついた大きな魚などが速く泳いでもふりはらわれずにすみ、また、離れたいときには相手よりも少し速く泳ぐだけで簡単に離れることができる。

体色
 身体の側面には太い黒線と、その上下を走る細い白線が走っている。

生態
 世界各地の熱帯と亜熱帯域に分布し、これらの海域では最もよく見られるコバンザメ類である。水深20~50メートルの海域に生息する。大型の海洋生物や、ときには人間の船にも付着して生活するが、サンゴ礁の沿岸では単独で生活している姿が見られることも多い。
 幼魚は、サンゴ礁で他の魚類の老廃物や外部寄生虫を食べる「掃除魚」として生活することもある。



チョウザメ(蝶鮫)目( Acipenser brevirostrum )の「サメ」たち
 チョウザメ目は、軟骨魚類のサメとはまったく違う硬骨魚類で、約2億5千万年前の三畳紀には既に出現していたことが知られる原始的なグループで、しばしば古代魚として扱われる。2科6属で構成され、高級食材キャビアの原料として漁獲されるチョウザメなど、淡水魚あるいは遡河性の魚類27種を含む。
 そのグループ全体に共通して用いられる和名「チョウザメ」は、体表にある古代魚の特徴を残す硬いウロコが昆虫の蝶の形、そして体型がサメに似ていることから名付けられた。

 分布は北半球に限られ、一生を河川で送る淡水性の種類と、産卵時のみに河川に遡上する遡河性の2種がある。キャビアと呼ばれる卵の塩漬けが高級食材として珍重され、乱獲により資源量は著しく減少した。かつては、日本の石狩川や天塩川(どちらも北海道)などにも遡上したが、現在では全く見られなくなっている。

 かつて明治時代の日本では、茨城県や三重県などの沿岸で体長2メートル以上の「龍魚(りゅうぎょ)」もしくは「鰐魚」が捕獲されたり人間を襲ったりしたという報道が新聞などでなされ、吉兆とされたり忌避されたりしたが、その外見から、正体はチョウザメか、チョウザメのイメージをもとにしたものだったのではないかと考えられている。

特徴
 本目は硬骨魚類に属してはいるが、骨格の大半は軟骨で構成されている。尾ビレは上下に分かれているが大きさは均等でなく、上方が長く伸びた形をしている。現生の硬骨魚では唯一、アゴ骨ができる以前の痕跡である噴水孔が開口しており、これらの特徴は、軟骨魚類のサメ類と共通している。これは身体の側面に並ぶ大きなウロコと共に、本目が古い系統の魚類であることを意味する。

 現存するチョウザメ目は、2科6属27種で構成されている。

チョウザメ科
 4属25種からなる。すべて北半球に分布し、淡水魚あるいは産卵のために河川に遡上する遡河性の魚類である。身体の側面に菱形の硬いウロコが5列並んでいることが特徴である。口は下向きについており、前方に突き出すことが可能で、周りには4本のヒゲがある。成魚には歯がなく、浮袋は大きい。

チョウザメ属
ダウリアチョウザメ属(1属2種)
 ロシア極東のアムール川やオホーツク海沿岸に生息するダウリアチョウザメ(カルーガ)と、ロシア西部のカスピ海や黒海、イタリアのアドリア海に生息するオオチョウザメ(ベルーガ)は、いずれも非常に大型な魚類で、オオチョウザメは最大体長7.2メートルの個体が記録されている。

ヘラチョウザメ科
 2属2種で構成される。鼻先が長く伸び、ヘラ状になっているのが大きな特徴である。チョウザメ科とは異なり大型の硬いウロコはなく、小さなウロコ状の構造が尾ビレなどの一部に見られるのみである。口ヒゲと歯は小さい。ヘラチョウザメ属はアメリカのミシシッピ川に生息して体長2メートルほどで、主にプランクトンを濾過して食べている。ハシナガチョウザメ属は中国の長江に棲み魚食性で、最大で体長3.6メートルに達する。



※今は(たぶん)もういない史上最大のサメ

メガロドン Carcharodon megalodon もしくは Carcharocles megalodon
メジロザメ目メジロザメ科ホホジロザメ属 もしくは メジロザメ目 Otodontidae 科カルカロクレス属

別名   …… ムカシオオホホジロザメ(昔大頬白鮫)
英名   …… Megalodon
体長   …… 12~20メートル
生息年代 …… 新生代新第三紀・中新世中期から更新世前期(約1800万~150万年前)、もしくは新生代古第三紀・漸新世後期から更新世前期(約2800万~150万年前)

 メガロドンは、新生代の、海が比較的暖かった時代に生息していた絶滅種のサメ類である。

 サメは軟骨魚類であり、化石には通常は歯しか残らない。そのため、メガロドンの体長については、本種がホホジロザメ属であるという説を前提に、「ホホジロザメのX倍の大きさの歯を持つから、身体のサイズもX倍。」という計算で類推されたものが多い。
 しかし、メガロドンは従来、メジロザメ目メジロザメ科のホホジロザメと同じホホジロザメ属(現存するのはホホジロザメ1種のみ)のサメ類だと考えられていたが、近年ではホホジロザメとの直接の関係を否定する学説も提唱されており、結論はまだ出ていない。

特徴
 体長は最大個体の推定値で約13メートルだが、しばしば「約20メートル」説も取り上げられる。しかし、この20メートル説は、「今までに発見されている以上の大きさの歯の化石があるのかもしれない。あるとするのならば、全長はこれくらいになるだろう。」という想像によるもので、そもそも、現存するホホジロザメの成長カーブをもとにメガロドンのサイズを算出する手法自体が、空想的でやり過ぎなのではないかとも指摘されている。
 だがいずれにしても、メガロドンはホホジロザメ(最大6.0メートル)よりははるかに大きく、現存する魚類では最も大きいジンベエザメ(最大13.7メートル)に匹敵する大きさを誇る、巨大な捕食者だったと考えられている。なお、過去に主張された体長40メートル説などは、全ての歯が最大サイズの化石で構成されていると仮定されたもので、現在では否定されている。

出現
 新生代第三紀始新世(約5500万~3800万年前)に登場したクジラ類は、中新世から鮮新世前期(約2300万~500万年前)にかけてさまざまな種類に進化し、生息数も増加した。現存するクジラ類やイルカ類のほとんどは、中新世の末期から鮮新世前期(約720万年~500万年前)に登場している。中新世から鮮新世にかけての脊椎動物が豊富にいたと思われる海域の地層からは、メガロドンとクジラの化石が大量に見つかっており、大型のクジラの背骨やヒレの骨格の化石には、鋸歯状縁が特徴的なメガロドンの歯による噛みあとが見られる。

絶滅
 メガロドンは、中新世末期から更新世前期(約600万~150万年前)に絶滅したと考えられている。これは、大陸棚の海水温の低下と、クジラが寒冷な海域に逃げ込んだことによって、その生態的地位を維持しえなくなったためとされる。変温動物であるサメは、恒温動物であるクジラのようには低温の環境に適応できない。
 ただし、その異説として、メガロドンが属するか、近縁であるとされるネズミザメ科は「奇網」と呼ばれる体温維持システムを備えていることや、ある程度寒冷化が進んだ後の高緯度地方からも本種の歯の化石が発見されていることから、寒冷化が絶滅の主因であるという見方はおかしいと指摘するものもある。
 そして、同じようにクジラを捕食するシャチの出現とほぼ同時に本種が絶滅していること。また、サメ類は「浮袋」を持たないために、巨大化するほどに泳ぐ速度が遅くなる傾向があるため、奇網があったにせよ速度などではより小型のホホジロザメ(最高時速35キロメートル)よりも劣るはずで、同じ大きさのウバザメやジンベエザメの泳ぐ速度(平均時速5キロメートル前後)とさほど変わらないものだったと推測されること(そもそもホホジロザメ自体も、一般に流布されているイメージとは異なり、魚類の中では遊泳能力が高いとはいえない)。しばしば、現存するナガスクジラのような体長20メートル級のクジラ類を捕食していたと語られるが、外洋に適応したばかりだった体長4メートル程度の原始的なクジラ類のケトテリウム(ナガスクジラの祖先)などが主食だったはずであり、そのケトテリウムも、他のクジラ類に淘汰されてメガロドンとほぼ同時の鮮新世後期(約360万年~258万年前)に絶滅している。
 これらの説の総合から、メガロドンは海水温の低下にともなう餌不足ではなく、メガロドンにとって餌も対抗種も急激に強力になり、進化についていけずに淘汰されたという新説が現在では主流になりつつあり、特にシャチの出現が決定打になったとする見解が強い。

 メガロドンは、出生時ですでに成体のホホジロザメ(体長4~6メートル)より巨大だったと考えられており、そのため、メガロドンの絶滅寸前まで、幼体であってもメガロドンを狙うような捕食者は存在しなかったと予想できる。しかし、シャチならば少なくとも幼体のメガロドンは捕食できたと考えられ、実際に現在でも、シャチが成体のホホジロザメを襲う観察例が多くある。つまり、単に同じ生態を持つシャチとの餌をめぐっての競合に負けたというだけではなく、直接シャチの餌になって淘汰された可能性もあるのである。

生存説
 海中の大型捕食動物は、陸上よりも気候の変化などに影響されにくいと考えられており、1918年のオーストラリアの巨大ザメ目撃談や、1954年に船に突き刺さった、ホホジロザメのものと同様の形状を持つ巨大なサメの歯(長さ10センチメートル)などから、今でも未確認動物学者などがメガロドンの生存説を主張しているが、学問的には否定されている。また、その個体数を維持するために不可欠であろう、暖かい海に棲む小型のクジラ類がほぼ存在しないため、生存しているとしても生息数は非常に少ないとみられる。

日本との関わり
 日本において、メガロドンの歯の化石はながらく「天狗の爪」として珍重されていた。
 完全に近いと思われるメガロドンの歯の化石が、1989年に埼玉県で出土している。サメの歯の化石は1本1本バラバラで発見されることが多いが、この化石には1個体の上下の歯が73本含まれていた。現在、埼玉県立自然の博物館では、このセットを用いたメガロドンのアゴの復元模型が展示されている。この復元は「ホホジロザメ属説」に基づいて復元され、全長12メートルの個体であったと推定されている。



《特別おまけ》こいつらに陸上のルールは通用しない!! 「他の動物(か植物)の名前のつくサメ」ほんとの大きさランキング

イタチザメ(鼬鮫)…… 2.2~7.5メートル

オオワニザメ(大鰐鮫)…… 2.0~4.5メートル

レモンザメ(檸檬鮫)…… 2.0~3.8メートル

ニシネズミザメ(西鼠鮫)…… 1.5~3.6メートル

トラフザメ(虎斑鮫)…… 1.5~3.5メートル

シロワニ(白鰐)…… 2.0~3.2メートル

ネズミザメ(鼠鮫)…… 1.6~3.0メートル

ニシレモンザメ(西檸檬鮫)…… 3メートル

ハナザメ(花鮫)…… 3メートル

ポートジャクソンネコザメ…… 0.5~1.7メートル

イヌザメ(犬鮫)…… 1.4メートル

シマネコザメ(縞猫鮫)…… 0.7~1.3メートル

ネコザメ(猫鮫)…… 0.7~1.2メートル

ミズワニ(水鰐)…… 0.8~1.1メートル

トラザメ(虎鮫)…… 0.5メートル



 あ~、楽しかった! これでもう、大満足。
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とりいそぎ、とりいそぎ。

2013年11月19日 23時46分14秒 | 日記
 どうもこんばんは~、そうだいでございます。みなさま、今日も一日お疲れさまでした!

 他人様にとってはど~でもいいことなんですが、先日わたくし、あるお人に仕事場で、

「そうだいは若いころ、モテたの?」

 となにげなくたずねられまして、ものすんごく新鮮な感覚におちいりました。
 「そりゃ、この顔みりゃわかんだろ!」とその場で軽く返しはしたのですが……

 そうか、ついに私も、「若いころ」が過去のことだとふつうに解釈される年齢に入ったということなのよねェ。おんとし、33歳。
 今さらショックを受けるほど自分の外見に自信があったわけでもないし、現に私の頭髪がものすごい勢いで季節はずれの夏仕様に様変わりしつつある今日このごろなので、異議のとなえようもない話ではあるんですが。
 「中学生のころ」とか「大学生のころ」といった限定の言い方じゃなくて、そこらへんが全部まるごと一色におさまった「若いころ」!! 生まれて初めてそうこられたものでしたので、内心かなりビックリしてしまいました。そうか、私もそう言われる世代になったのか。

 ショックというよりは、半分以上の割合で「よくぞまぁ、ここまで生きてこられたなぁ。」という感慨のほうが大きいですね。
 これによって、晴れてわたしは名実ともにおっさん! 今後も精進いたしてまいる所存。なにとぞ、よしなに~。


 そんなファッキンど~でもいい決意を胸に、今日はお仕事が早めに終わりましたので、その足で新宿に直行して、こんなお芝居を観てまいりました。


張ち切れパンダ 第5回公演『さめザ”わ』(作&演出・梨澤慧以子、新宿・サンモールスタジオ)


 梨澤慧以子さんが作・演出をつとめる演劇ユニット・張ち切れパンダのプロデュース公演。だいたい年に1回というペースでやっておられるようで、私はおととしの第3回公演『醜い蛙ノ子』いらいの観劇になります。
 その『醜い蛙ノ子』は、肉親のグツグツと煮えたぎる愛憎がうずまくものすごい家族ドラマだったのですが、今回の公演も、チラシや宣伝文句を見る限りでは、寂れたスーパーの裏側で繰り広げられる人間模様を描いたものなのだとか、なんとか。
 う~ん、今回も、内容はかなり重たそう! 正直言いまして、仕事で疲れていたこともあって、新宿にたどり着くまでの足並みは決してかろやかものではなかったんです。たとえ作品がおもしろかったのだとしても、なんか観た後につら~い気分を背負って千葉に帰ることになるんじゃなかろうか、という不安ですね。

 だが、しかし! さすがは張ち切れパンダ、その実際の内容はというと、私の予想の斜め上をいった、時間軸の自由な跳躍が楽しめる不思議なサスペンスコメディになっていました。それでいて、大手スーパーに買収されることとなった個人経営の老舗スーパーの落日、その悲哀が底流にながれて物語が進行していくという複層構造。まったくテンションを下げることなく楽しむことができました。
 コメディのようでコメディでなく、重いようで重くない。今回の張ち切れパンダさんは、なにかが吹っ切れたような思い切りのよさが随所に見受けられたような気がしましたね。

 ストーリーはいたって単純明快。経営、恋愛、不倫、犯罪……さまざまな思惑が交錯する寂れたスーパー「やなぎや」裏手のスタッフルームで、作品のタイトルにもなっているアルバイト店員・鮫沢の持っている「ある特殊技能」によって、周囲の登場人物たちがいやおうなくそれぞれの本性をさらけ出していくという、荒唐無稽きわまりない崩壊劇。
 言ってみれば、ヒッチコックの『ハリーの災難』みたいなブラックぎみのコメディが展開していくわけなのですが、その過程で、トラブルの起点になり続ける鮫沢の視点で、多くの混乱の「きっかけ」と「結果」がかわりばんこに提示されていき、最終的には、ずっと傍観者の立場のままだった鮫沢が持つ「哀しみ」の本質にせまる「過去」までもがひもとかれるという、自由なシーン展開。
 それほど複雑な構成になっているわけでもないんですが、ある問題を解決しようとした人の起こしたアクションが、また別の人の疑惑や問題を引き起こしていくという「悪夢のピタゴラスイッチ」って、観客として安全な場所から見るぶんには最高におもしろいんですよね……

 鮫沢を単なる「目立たない同僚」としかとらえていないスーパーのスタッフたちとは別に、スーパーにふらりと帰ってきた経営者夫人の妹だとか、スーパーのトラブルに振り回されてやたら呼び出される近所の交番の巡査さんだとかといった特別な視点を持ったキャラクターたちの味わいもけっこうきいていて、特に、スーパーの買収のためにやってきた大手グループの社員こそが、実は鮫沢のことを最もよく知っている人間だった、という「ありえない衝撃の事実」も良かったですねぇ。
 その「ウソのつき具合」についていけなくなると興味は離れてしまうのかも知れませんが、少なくとも私にとっては、ついていけるギリギリオッケーのライン上だったので、かなりおもしろかったです。作・演出の梨澤さんが演じていたチョイ役のふざけっぷりは、ちょっとやりすぎかと思いましたが……まぁ、そこはそれ、張ち切れパンダですから。

 この公演を通じて改めて思ったのは、「大混乱は、その場で混乱していない演技をする役者の技量でその完成度が決まる!」ってことなんですよねぇ。混乱を、必死に理性で抑えようとしている人物の緊迫感こそがいちばん大事なのであって、ひたすら素直にギャーギャー騒ぎ立てる演技は、その必要はあるとしても、そこだけを一転押しにしても、うるさいだけで効果はあんまりないはずなのです。役者をやってるような方の声なんかたいていデカイに決まってるんですから、絶叫なんかされた日にゃあ、頭が痛くなって興ざめもいいところ!

 今回の場合で言うと、いつもの感じとはだいぶ違って、ドスの利いた低音で周囲をビビらせていた経営者夫人の妹役の中島愛子さんと、最初は絵に描いたような小心者っぷりを見せながらも、話が進んでいくにつれて見る見るうちに底意地の悪い冷徹さをがにじみ出てくる巡査役の鈴木利典さんの2人がかなり良かったですね。鈴木さんの立ち居振る舞いは、なんか好きになっちゃったなぁ!

 あと、これは完全に余談なんですが、他の若いリア充なアルバイトの娘さんたちをさしおいて、疲れた感じの経営者夫人役の小林美江さんの「お胸」が隠しようもなく最大最強の魅力を放ちまくっていたのは、ストーリー展開上いかがなものかと思いました。あれによって、経営者であるおじさんが不倫に夢中になるリアリティが、致命的にそがれてしまったのではなかろうかと……あらぁもう、ビックラこいちまっただよ。

 張ち切れパンダ。次回公演も楽しみにしたいと思います。今度はどんな跳躍が見られるんでしょうか?


 さてわたくし、お仕事は相変わらず忙しいわけなんですが、ここから半月くらい、お芝居観劇だの日本武道館2デイズだので足しげく東京にかよって、まともに休みらしい休みがとれない日々が続くんですよね……

 健康第一ですが……私は生き残ることができるのであろうか!? まぁ、せいぜい死ぬ気でがんばるぞ~いっと☆
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突然炎のごとく……!!  総力特集 「せかいのサメ」 第9集

2013年11月16日 23時31分22秒 | 日記
ここでは、世界に400種生存していると言われるサメのうち、代表的な種を紹介します。

 めくるめくサメたちの饗宴も、ついに今回でおしまいとあいなります。ここまでおつきあいくださったみなさま、本当にありがとうございました! もしいたら!!
 おらぁもう、サメ好きとして思い残すことはねぇだ……いや、まだ生きてくけどね。


ツノザメ目(つづき オンデンザメ・ニシオンデンザメ)

オンデンザメ(隠田鮫) Somniosus pacificus
オンデンザメ科オンデンザメ属

英名 …… Pacific Sleeper Shark (パシフィック・スリーパー・シャーク)
体長 …… 3.7~7.0メートル

形態
 ツノザメ目では近似種のニシオンデンザメと並ぶ最大種であり、成熟サイズは雌雄ともに体長3.7メートルほどであると考えられる。
 姿形はニシオンデンザメとほとんど変わらず、体型は流線形で太く重量感があり、鼻先は丸くなっている。2枚の背ビレはほぼ同じ大きさで、やや後方に位置する。尻ビレはない。他のツノザメ目のサメ類と違い、身体に比べて目が小さく、鼻孔穴は大きい。口は大きく、上アゴの歯は下アゴの歯よりも長く、下アゴの歯は中央を境に左右対称のノコギリ状になっている。胸ビレや背ビレも、体長に比べてやや小さい。皮膚は鮫肌特有のザラザラ感があるが、その身体は深海魚らしくぷよぷよとしており、柔らかい。

体色
 全体的にピンクがかった黒っぽい灰色で、ヒレは暗い青色をしている。このサメはたいてい、海底の暗い茶色の泥におおわれている。

分布
 北太平洋の温帯から寒帯海域、日本列島、ベーリング海からアメリカ・カリフォルニア州、メキシコに沿った北太平洋の海域に生息する。寒い海域では海面近くにまで上がってくるが、暖かい海域では表層面に姿を現すことはない。水深200メートルの深海までに生息する。もっぱら深海の海底付近で生活し、日本の駿河湾ではしばしば確認、観察されていることでも有名である。

生態
 肉食性で、表層から大陸棚付近の海底に生息する動物を捕食する。貪欲で口に入るものは何でも食べ、魚類やイカ、タコなどの頭足類、甲殻類、海産哺乳類に加え、生物の死骸も食する。その性質と身体の大きさから、深海生態系の頂点に立つと思われ、人間以外にはほとんど天敵もいない。体内からアザラシが発見されたこともあるが、生きたものを捕食したのかは不明である。オンデンザメ属のサメ類は肉に毒素 (トリメチルアミン-N-オキシド) を有するといわれ、食べると酔っぱらったような感覚に襲われるという。

 繁殖様式は不明であるが、おそらく卵黄依存型の胎卵生である。
 体表には寄生性のプランクトンがよく付いている。同じツノザメ目のダルマザメの攻撃も受けており、ダルマザメに体表を傷つけられた跡が見られる場合もある。

人との関わり
 さまざまな漁業で混獲されるが、普通はその場で捨てられる。肉は食用には適さないが、肝臓は肝油の原料となる。しかし、深海性であるために漁獲高は低く、大型種とはいえ、日本では産業的にはそれほど重要な種ではない。

 人間の泳げない深海性であるために直接人と関わることはなく、大きさの割には筋肉構造から泳ぐ速度が遅いことなどから、人を襲うサメではない。身体の大きさとその食性から、潜在的に危険な可能性もあるが、浅い海に引き揚げられた際には体の重みと身体組織の関係から、ほとんど暴れることもなく漁獲される。


ニシオンデンザメ(西隠田鮫) Somuniosus microcephalus
オンデンザメ科オンデンザメ属

英名 …… Greenland Shark (グリーンランド・シャーク)
体長 …… 6.0~7.3メートル

体型
 ツノザメ目の最大種である。近縁種のオンデンザメと同様に深海性だが、エサを求めて浅い海に上がってくることもある。
 上アゴの歯が突き出ており、下アゴの歯はやや小さくなっている。短く丸い頭部は前方に突き出る。体型はずんぐりとしたシリンダー状で、横幅がある。
 身体の大きさに比べて、各ヒレと目は小さい。目には寄生性のプランクトンが付着していることがよくある。

体色
 全身が黒っぽい灰色で統一されている。

分布
 英名が示すように、グリーンランド近辺の北極海域に生息する唯一のサメ類と思われる。しかも水深1200メートルまでの深海に生息しているため、その遊泳する姿はほとんど記録されていない。緯度が北の低水温の海水であれば、海面付近に現れることもある。北極海の他には、北大西洋の全域と沿岸沖の大陸棚地帯に生息している。
 通常は、主に北極海の水深540メートルの海域に多く生息するが、水深2100メートルという非常に深い海域でも発見されたことがある。

生態
 ジンベエザメ(第3集参照)、ウバザメ(第2集参照)に次ぎ、ホホジロザメ(第1集参照)とほぼ同じ大きさを誇るサメ類である。20世紀初頭には、ニシオンデンザメは商業目的で捕獲されていた。深海にすむニシオンデンザメが自然界で映像に撮影されたり、潜水艇乗組員によって目撃されることはめったにない。これまでに撮影された人間とニシオンデンザメの遭遇はすべて、エサに引き寄せられてくるか、海面まで浮上したときのみだった。

 ニシオンデンザメについては、やる気なさそうに泳ぎ回ったり、その割にはかなり広範囲な食性を持つこと以外はほとんど知られていない。カイアシ類として知られる小さな甲殻プランクトン類がニシオンデンザメの目の部分に付着しており、これによっておそらくサメは目が見えないが、この甲殻類の発光によって獲物をおびき寄せていると考えられる。

 低温の海域に生息しているために筋肉の収縮速度が遅く、泳ぐ速さは時速1キロメートル程度と、サメ類に限らず大型魚類の中でも極端に遅いため、「世界一のろい魚」と呼ばれている。一方、その食性は非常に多彩で、サケ、マスなどの魚類やイカ、海底に棲む動物を主に捕食するが、大型の個体になると、アザラシやクジラも襲うようになることが胃の内容物から判明している。動きが遅いため、積極的に獲物を追うのではなく、待ち伏せや不意討ちといった手段を使うと見られる。
 貪欲で、エサになりそうなものであれば、何でも口に入れるようで、胃の中からトナカイの全身やホッキョクグマの骨が見つかったこともある。しかし、死亡して漂流していた個体を食べた可能性も指摘される。人間の長靴や、人間そのものの遺体まで胃の中から発見された例もある。

 この鈍重なサメがいったいどうやって、速く泳ぐことのできる魚類やイカを食べることができるのかはよくわかっていない。一部の研究者は、このサメが瞬間的に猛スピードでダッシュすることができるのではないかという仮説を立てている。またこのサメは、魚を吸い込むこともできるという。

人間との関わり
 身体が大きく、その貪欲な食性のため潜在的に危険なサメとされているが、人間の泳げない低温の海水域に分布しているので、直接害が及ぶことは無いとされる。

 本種は肉に毒 (トリメチルアミン-N-オキシド) があり、焼いて毒抜きしないと食べられないと言われるが、肝臓は肝油などに利用され、アイスランドでは肉を熟成発酵させた伝統食品「ハウカットル」(ウバザメの肉も利用される)の素材にもなるため、北極海近辺では年間およそ3万尾が捕獲されている。
 北方系原住民の人々は古くから本種を利用しており、疑似餌を丈夫なロープにくくりつけ、氷の下に巻き、そこで誘い出された本種を捕獲していた。



ネコザメ目(ネコザメ・シマネコザメ・ポートジャクソンネコザメ)
 「生きた化石」ともいうべき種族で、古代のサメの特徴をよく残している。それが特に強く出ているのは歯である。ネコザメ目の学名「 Heterodontiformes 」の「 heterodon 」とは「異なった歯」の意味で、固い殻をもった貝やウニを噛みつぶすために丸く発達していて、何列にも並んでいる。この種族はすべて2枚ある背ビレの前方にトゲを持っていて、これによって捕食者から身を守る。また、ネコザメの仲間は水族館での飼育が容易である。


ネコザメ(猫鮫) Heterodontus japonicus
ネコザメ科ネコザメ属

別名 …… サザエワリ
英名 …… Japanese Bullhead Shark (ジャパニーズ・ブルヘッド・シャーク)
体長 …… 0.7~1.2メートル

体型
 ほぼ円筒形の体つきで、目の下と後ろに排水口がある。2枚の背ビレには前方に鋭いトゲがあり、これは特に幼魚が大型魚の捕食から逃れるために役立っている。尻ビレを持つ。風変わりな頭部はずんぐりしていて尖っておらず、平べったい口と、目の上の突起が特徴的である。この突起を和名ではネコの耳に、英名ではウシの角に見立てている。歯は他のネコザメ属と同様に前歯がトゲ状で、奥歯が臼歯状である。循鱗(鮫肌)は大きく頑丈である。

体色
 明るい茶色で、エッジが不明瞭なおよそ11~14本の濃い茶色の横帯が全身に入っている。

分布
 太平洋の北西に棲む。英名「 Japanese 」のとおりに、日本の北海道以南の沿岸に最も多く生息するネコザメ科の代表種である。日本には他に同属のシマネコザメが分布するが、こちらは比較的珍しい。その他にも朝鮮半島や東シナ海の沿岸海域に分布する。

生態
 大陸棚で頻繁に見かける種で、海表面から水深40メートルまでの浅い海域に生息する。特に岩場や海中林(海藻類の群生地帯)のある海底付近を好む。さらに本種は、遊泳力は弱いが、胸ビレを使って海底を歩くように移動することもできる。
 主に硬い殻を持つサザエなどの貝類やウニ、甲殻類などを好んで食べる。臼歯状の奥歯で殻を噛み砕いて食べるため、別名「サザエワリ(栄螺割り)」とも呼ばれる。日中は海藻や岩の陰に隠れ、夜間に餌を求めて動き回る夜行性である。

 卵生で、3周ほどのらせんにおおわれた殻を持つ卵を産みつける。卵は短い角状の糸が頂点から伸びており、岩の隙間や海藻の間に産み落とされた卵を固定する役割がある。日本では3~9月に産卵が行われ(春が最盛期)、メスはたいてい1回に2個ほどの卵を1ヶ所に産みつけ、1シーズンに合計で6~12個産卵する。幼魚は卵の中で約1年かけて成長し、体長18センチメートルくらいになると孵化する。体長70センチメートルほどで成熟する。性格はおとなしい。

人との関わり
 刺し網などで混獲されるが、水産上は重要でない。日本の和歌山県などでは食べられる。
 日本では水族館でよく飼育、展示される定番種である。丈夫で、10年以上生きることも多い。一般家庭での水槽飼育も可能で、小さな個体は観賞用に販売されることもある。
 人間には危害を加えない。


シマネコザメ(縞猫鮫) Heterodontus zebra
ネコザメ科ネコザメ属

英名 …… Zebra bullhead shark (ゼブラ・ブルヘッド・シャーク)
体長 …… 65~125センチメートル

分布
 西太平洋、日本から朝鮮半島、中国、東南アジア、オーストラリア北西部までの温暖な沿岸海域に分布する。水深50メートルより浅い海域で見られるが、西オーストラリアでは水深150~200メートルで確認されている。日本では和歌山県以南に分布しているが、比較的珍しい。

形態
 2枚の背ビレの前方にトゲがあり、尻ビレをもつ。目の上の隆起はあまり顕著でない。幼魚では背ビレは高いが、成長すると低くなる。尾ビレは上葉、下葉ともにやや長く伸びる。

体色
 体表面には独特な縞模様があり、白色地に22~36本の暗い色の横帯が入ることで、他のネコザメ類と区別できる。

生態
 分布域では普通に見られる底生性のサメだが、生態に関する情報は極めて乏しい。
 卵生。幼体は少なくとも体長15センチメートルで孵化する。成熟サイズは体長65~85センチメートル。

人との関わり
 水産上重要ではなく、混獲される程度である。個体数は少ないが、水族館や博物館などで飼育、展示されている。


ポートジャクソンネコザメ Heterodontus portusjacksoni
ネコザメ科ネコザメ属

英名 …… Port Jackson Shark (ポートジャクソン・シャーク)、Oystercrusher (オイスタークラッシャー)
体長 …… 0.5~1.7メートル

形態
 ネコザメ科に共通した特徴として、背ビレ前方のトゲ、目の上の隆起、尻ビレを持つことが挙げられる。
 前歯は尖ってトゲ状であり、奥歯は臼歯状で物を噛み砕くために使われる。体表は大きな循鱗(鮫肌)に覆われ、非常に荒く頑丈である。

体型
 シリンダー状の体つきで、目の下と後ろに排水口がある。目の上の突起は低く、目の後ろで突然終わらない。

体色
 時には白くさえ見えるほどの明るい灰色か茶色に、頭から頬にかけて垂直に濃い色の縞が入っている。胴体にも独特な鞍状の濃い色の縞が第1背ビレの開始部分と腹ビレと胸ビレからはじまり、身体の側面と背中でつながる。水平な黒い線が尾ビレから第1背ビレの付け根までのびる。

分布
 太平洋の南西、特にオーストラリアとニュージーランドの沿岸海域にのみ生息している。その名前は、本種がよく見られるオーストラリアの湾「 Port Jackson 」に由来する。

生態
 大陸棚の、潮間帯から水深280メートルまでの海底で生活し、夜行性である。底生の無脊椎動物を捕食し、特にウニを好むが、貝類、甲殻類、小型の魚類も捕食する。アゴは頑丈で、「オイスタークラッシャー(牡蠣割り)」の異名をとる。休息場所として岩穴や砂底、もしくは平たいリーフの開けた水路を好む。1ヶ所に集まってくることもあり、16尾ほどの群れも発見されている。昼間はあまり活発でなく、岩の隙間などに身を潜めて休んでいることが多い。

 卵生である。卵は4~5周のらせん状の殻に覆われ、短い角状の糸が頂点からのびて、岩の割れ目などに産みつけられた卵を固定する働きをしている。産卵期は毎年の8~9月が最盛期で、メスは1回に2個ずつ卵を産み、1シーズンに合計10~16個の卵を自分の隠れ場所に産みつける。幼魚は産卵後9~12ヶ月で体長18~23センチメートル程度になってから孵化する。オスは体長50~80センチメートル・8~10歳、メスは70~90センチメートル・11~14歳で成熟する。

人との関わり
 水産上は重要ではなく、混獲される程度で食用にはならない。スポーツ・フィッシングの対象になることもほとんどない。
 ただし、観賞用としては需要があり、世界の水族館や個人の間で取引される。丈夫でおとなしく、飼育に向いている人気者である。
 人に危害を加えることはないが、刺激すると反撃して咬まれる危険はある。



カグラザメ目(カグラザメ・シロカグラ・エビスザメ・エドアブラザメ・ラブカ)
 エラが他のサメ類の5対と違って6~7対あるため、古代のサメ類からほとんど変わっていないといわれている種族である。この仲間には最近つとに有名なラブカも属する。主に深海性で、口の位置が頭部の先端に寄っている。


カグラザメ Hexanchus griseus
カグラザメ科カグラザメ属

英名 …… Bluntnose Sixgill Shark (ブルントノーズ・シックスギル・シャーク)
体長 …… 4~6メートル

体型
 幅が広く前方に大きく突き出た頭部と、6対のエラを持つ大型のサメである。サメ類のエラはほとんどが5対であり、他に6対のエラを持つのは、わずかに同じ科のシロカグラとラブカと、ノコギリザメ目ノコギリザメ科のシックスギルソウシャークのみである。
 目は小さく、緑色に発光するが、死ぬとすぐに白くなる。背ビレは1枚しかなく、位置は尾ビレのほうに後退する。尾ビレは長い。歯の形状は非常に特徴的で、上アゴの歯は牙状だが、下アゴの12本の歯はノコギリ状に並び、幅が広く内側に傾いている。

体色
 背中は暗い灰色か茶色、暗い黄色がかっていることもある。たいていは側面に沿って明るい線が入っている。腹のほうはくすんだ白色。ヒレには薄い白の縁取りがある。

分布
 世界中の熱帯、亜熱帯、温帯の大陸棚付近の深海に広く分布し、水深2000メートルまでの深海に生息する。

生態
 餌の種類は豊富で、サメやエイも含むあらゆる魚類、甲殻類、頭足類(イカ、タコ)、貝類、海産哺乳類などを捕食する。ゆっくりと泳ぎ、昼間はたいてい海底で休んでいるが、夜になると狩りをおこなうために深海から上昇してくる。
 胎卵生で、子宮内で卵を孵化させる。体長60~75センチメートルほどの幼体を1回に22~108尾も出産する。若い個体は海岸寄りに生息する傾向があり、体長4メートルで成熟する。

人との関わり
 漁業やスポーツ・フィッシングの対象になる。水産物としては肉や肝油が利用される。
 普段は深海に生息しているため人間と遭遇する確率は低く、人を襲うこともほとんどない。しかし、強いアゴと鋭い歯を持っているので、釣り上げたときなどは注意が必要である。
 個体数が少なく、絶滅が心配されている。


シロカグラ(白神楽) Hexanchus nakamurai
カグラザメ科カグラザメ属

英名 …… Bigeyed sixgill shark (ビッグアイド・シックスギル・シャーク)
体長 …… 1.2~1.8メートル

分布
 ほぼ全世界の温暖な海域に分布すると考えられるが、限定的にしか確認されていない。日本列島では中部以南で見られる。大陸斜面に沿って水深600メートルまでの深海に生息する。海底付近にいることがほとんどだが、まれに海表面まで移動してくることもある。

形態
 体型は細身の紡錘型である。鼻先は尖っており、目は大きく緑色に光を反射する。6対のエラを備え、最前列のエラが最も大きく、後ろのエラにいくほど小さい。背ビレは1枚のみで、身体の後方に位置する。尾ビレは上葉が長く、欠けがある。上アゴの歯はカギ状に曲がり、鋭い。下アゴの歯は、12本の歯がノコギリ状に並ぶ櫛型である。
 同属のカグラザメと非常によく似ており、しばしば混同される。カグラザメの方が体長が大きくなるが、外見で区別することは難しい。

体色
 背側は明るい灰色から褐色で、腹側は白色である。

生態
 稀種であるため、生態に関しては不明な点が多い。小型から中型の硬骨魚類や甲殻類を捕食する。
 胎卵生である。1回に産む個体数は13~26尾で、出産されるときの幼体の体長はおよそ40センチメートルほどである。オスは体長1.4~1.8メートル、メスは体長1.2~1.6メートルで成熟する。

人との関わり
 延縄(はえなわ)漁、トロール漁などでまれに混獲されるが、漁業の対象にはならない。


エビスザメ(恵比寿鮫) Notorynchus cepedianus
カグラザメ科エビスザメ属(1属1種)

英名 …… Broadnose sevengill shark (ブロードノーズ・セブンギル・シャーク)
体長 …… 1.5~3.0メートル

 現存するほとんどのサメ類が5対のエラを持つのに対して、エビスザメは7対のエラを持つ。他に7対のエラのあるサメ類は、同じカグラザメ科のエドアブラザメが知られているのみである。
 なお、日本の関東地方の方言でジンベエザメ(第3集参照)を「エビスザメ」と呼ぶことがあるが、関連はない。

生態
 世界中の温帯域に生息する。水深150メートルまでの表層海域を泳ぎ、浅い湾やサンゴ礁の周辺で生活する。
 オスは体長1.5メートル、メスは体長2.2メートルで成熟する。体型は流線型に近い円筒形である。体色は背側が暗い褐色から黒色または灰色で、腹側は白い。全身に多数の黒色または白色の斑点が見られる。背ビレは1枚のみで、身体の後方に位置する。尻ビレがある。化石で発掘される先史時代のサメ類と形態的によく似ており、かなり古いタイプのサメ類であると考えられている。

 エビスザメは群れで狩りをすることが知られており、仲間と共同でアザラシやイルカ、他のサメ類などを追い詰めて捕食する。これに関しては、古代のサメ類も同じ手法で狩りをしていたと考えられている。


エドアブラザメ(江戸油鮫) Heptranshias perlo
カグラザメ科エドアブラザメ属(1属1種)

英名 …… Sharpnose sevengill shark (シャープノーズ・セブンギル・シャーク)
体長 …… 0.8~1.4メートル

 同じカグラザメ科のエビスザメとともに英名「 Sevengill shark 」と呼ばれる、7対のエラを持つサメである。

分布
 太平洋の北東部を除いた、ほぼ全世界の暖海域に分布する。比較的珍しい種で、水深1000メートルまでの深海に生息する。普段は海底付近で生活するが、まれに表層面に出現することもある。

形態
 体型は細身の紡錘型である。エラは7対あり、現存するサメ類の中では最も多い。最前列のエラが最も大きく、後方にいくにつれて小さくなる。背ビレは1枚で、身体の後方に位置する。尾ビレは上葉が長く、欠けがある。目は大きく、光をよく反射して緑色に発光する。上アゴの歯の前歯は細長いカギ状で、内側に向いている。下アゴの歯は櫛状の特徴的な形状で、12本がノコギリの歯のように並んでいる。

体色
 背側は濃い灰色から明るい褐色で、腹側は白色である。幼体では背ビレと尾ビレの先端に黒色斑が見られるが、成長すると消えていく。

生態
 頭足類(イカ、タコ)、甲殻類、硬骨魚類、サメやエイなどを幅広く捕食する。
 胎盤を形成せず、子宮内で卵を孵化させる形の胎卵生である。1回に体長25センチメートル程度の幼魚を9~20尾産む。成熟サイズは、オスが体長80センチメートル、メスが体長90~100センチメートルである。

人との関わり
 底曵き網や底延縄(そこはえなわ)漁などで混獲されるが、漁業の対象にはならない。人間には無害だが、網にかかった個体を引き揚げる際に咬まれることもある。肉には弱い毒性がある。


ラブカ(羅鱶) Chlamydoselachus anguineus
ラブカ科ラブカ属

別名   …… ウナギザメ
英名   …… Frilled Shark (フリルド・シャーク)、Lizard Shark (トカゲザメ)、Scaffold Shark (首吊りザメ)、Silk Shark (シルク・シャーク)
体長   …… 1.0~2.0メートル
生息年代 …… ジュラ紀後期(約1億5000万年前)から現在

分類
 多尖頭の歯、目の後方で頭骨と直接つながっているアゴ(両接型)、椎骨が不明瞭で脊索のような脊柱になっていることから、昔の専門家は本種を絶滅したサメ・エイ類の祖先の生き残りだと考えていた。19世紀には、古生代のデボン紀(約4億1600万年~3億5920万年前)に捕食者として繁栄していたクラドセラケ(サメ類の祖先)と同じグループであるという学説と、中生代(約2億5000万年~6500万年前 恐竜時代)に栄えたヒボドゥス目に属しているという学説の2説が提唱されていた。
 その一方で、最近の研究では、頭部の骨格構造にツノザメ類(第8集参照)に近い部分があるとも指摘されているが、本種の歯の形状がクラドセラケと同じであることや、エラが6対あるという特徴の解明まではなされていない。

 骨格や筋肉の特徴には、明らかに現存する他のサメ類に共通するものがあり、特にカグラザメと類似する。それでも、本種はサメ類の中で最も古い系統のひとつに属し、白亜紀後期(約9500万年前)やジュラ紀後期(約1億5000万年前)の化石も発見されている。 原始的なサメの特徴をよく残していることから「生きている化石」と呼ばれている。

形態
 細長いウナギのような円筒型で、頭部は幅広くて平たく、先端は短く丸い。目は比較的大きく楕円形で、瞬膜はない。非常に大きい口は、通常のサメ類とは異なり身体の前方に開く。歯列は隙間を開けて並び、上アゴで19~28列、下アゴで21~29列ある。歯は合計で300本ほどで、個々は小さく、細い3つの尖頭を持ち、先は鋭くとがる。このように細かく並んだ針状の歯は、イカなどの柔らかい獲物を引っ掛けるのに適している。
 エラはとても大きく6対でヒダ状になっており、特に最前列のエラはノドでつながって胴体をほとんど一周しているため、まるで首にフリルか襟を巻いているように見える。そのため英名で「フリルド・シャーク」と呼ばれる。
 胸ビレは短くて丸い。背ビレは1枚でこれも短くて丸く、身体の後方の尻ビレの上部に位置する。腹ビレと尻ビレは大きく、幅広くて丸く、これも身体の後方に位置する。尾ビレは非常に長く、下葉や欠けはない。腹部はオスよりメスの方が長く、腹ビレがより後方にある。皮歯(鮫肌)は小さく、タガネ型である。尾ビレ上部の皮歯は大きくて鋭い。

体色
 全体的に黒っぽい茶色から灰色である。

分布
 稀種ではあるが分布域は広く、大西洋や太平洋の全域から散発的に記録がある。東大西洋ではノルウェー北部、スコットランド北部、アイルランド西部、フランスからモロッコ、マデイラ諸島、アフリカ大陸北西部のモーリタニア。中央大西洋ではアゾレス諸島からブラジル南部までの大西洋中央海嶺(かいれい)上、西アフリカ沖。西大西洋ではアメリカ北東部のニューイングランド地方から南米大陸北東部のスリナムまで。西太平洋では、日本の本州南東、台湾、オーストラリア南東部、ニュージーランド。中央・東太平洋ではハワイ、アメリカ・カリフォルニア州・チリ北部で確認されている。日本では相模湾や駿河湾で比較的多く見られる。

 大陸棚の外縁と大陸斜面の上~中部に生息し、海水が深層から表層に湧き上がる湧昇流(ゆうしょうりゅう)などの、栄養分が豊富で生産力の高い海域を好むようである。最深で水深1570メートルの地点で見つかっているが、通常は水深120~1000メートルの深海の海底で生活している。駿河湾では水深50~200メートルでよく見られるが、8~11月は水深100メートル以浅の水温が摂氏15℃を超えるため、深場に移動する。基本的に海底付近で生活するが、おそらく日周鉛直移動を行い、夜間には表層面で摂餌すると考えられる。大きさや繁殖状況に応じて棲み分けが行われている。

生態
 個体数が少なく、深海に生息する種であるために観察が難しく、詳しい生態はほとんどわかっていない。
 普段の動きは緩慢で、ウナギのように身体を波打たせて遊泳する。遊泳速度は遅い。
 骨格の石灰化が弱く、低密度の脂質が詰まった大きな肝臓を持つ。これは体内の密度を減らし、水中に停止するための適応である。水中で水圧や水流の変化を感じとるための器官「側線」が開いており、受容器の細胞が外部に露出している数少ないサメ類のひとつである。これによって、獲物の細かい動きを捉えることができると考えられる。他の種のサメに襲われたものと見られる、尾ビレの先端が欠損した個体がよく見つかる。

 アゴは柔軟で非常に大きく開けることができ、体長の半分を超える獲物も飲み込むことができる。だが、アゴの長さと関節から見れば、他のサメ類に比べあまり強く噛み付くことはできないようである。これまでのほとんどの捕獲個体には胃に内容物がなく、消化速度が速いか摂餌間隔が長いと考えられる。自分よりも小型なサメ類や硬骨魚類、頭足類(イカ、タコ)などを捕食する。駿河湾では餌の60% がイカであり、動きの遅い種だけでなく、大型で高速遊泳する種も捕食していた。
 泳ぎの遅い本種がどのように高速遊泳するイカを捕えるのかは不明であるが、傷ついた、または繁殖後で弱った個体を狙っている可能性はある。身体の後方に各ヒレが集中した体型は瞬間的な突進に適しており、ヘビのように身体をくねらせて獲物に食らいつくことができる。さらに、エラを閉じることで口の中の水圧を減らし、獲物を吸い込んでいるとも考えられる。鋭く小さい、内側に向いた歯はアゴを突き出すことで外側に展開し、獲物を引っ掛けやすくなる。観察例からは口を開けたまま泳ぐことが分かっているが、これは白い歯と黒い口内の色調の対比によって、疑似餌として機能するのではないかという仮説もある。

 胎盤を形成しない胎卵生で、胎児は卵黄を消費して成長する。
 成体のメスは2つの卵巣、右側の1つの子宮が機能する。深海は季節の影響が少ないため、繁殖期はない。おそらくは繁殖のために、大西洋中央の海山に15匹のオスと19匹のメスが集まったことが記録されている。1回に産む個体数は2~15尾だが、平均6尾である。
 他のあらゆる脊椎動物よりも長い「3年半」の妊娠期間を持つ。出生時の幼体は体長40~60センチメートルである。オスは体長1.0~1.2メートル、メスは体長1.4~1.5メートルで性成熟する。

人との関わり
 深海に生息するため生体と人間が遭遇することは少なく、人に危害を加えることはないが、釣り上げたラブカにさわろうとすると身体をくねらせて噛みついてくるので、鋭い歯でケガをすることがあるため注意が必要である。2004年8月に、アメリカの遠隔操作無人探査機によって、史上初めて深海で活動する生体の姿が観察された。その長い身体のために、多くの専門家は、昔から世界的に伝わる大海蛇(シーサーペント)の目撃報告の一部は本種によって説明できると考えている。本種そのものはそれほど大きくないが、より大型の化石種が生き残っていると信じている未確認動物学者もいる。

 まれに底曵き網や底延縄で混獲されるが、漁業の対象にはならない。駿河湾ではタイ・ムツなどの刺網、サクラエビ漁の網にかかることがあるが、漁網を傷つけるため漁師からは嫌われる。まれに肉や魚粉が流通することがあり、個体数が少なく繁殖力が低い中での生息域での商業漁業の拡大により、IUCN(国際自然保護連合)は保全状況を「準絶滅危惧」としている。

 日本の駿河湾では以前から地元の漁網にかかることがあったが、その容貌から縁起が悪いとそのまま船上で捨てられているらしいと東海大学海洋学部の研究者たちが聞きつけ、捕まえたものを捨てずに持ち帰ってもらうように依頼をしたことで、ようやく標本が集まるようになったという。

展示
 生体の展示は非常にまれで、あったとしてもごく短期間である。固定標本の展示は各地の水族館や博物館で行われている。



 はいっ、そんなわけでして、いちばん古いサメなのに、21世紀の今、話題的にいちばんホットだという「若いもんにはまだまだ負けらんねぇ!!」スピリット全開なラブカさんの大トリをもちまして、『長岡京エイリアン』版の「せかいサメ図鑑」は一巻のおしまいでございます。項目を設けられなかった他のサメのみなさまがた、力不足で大変にすみませんでした! あっ、いや、噛まないでください!!

 正式な「現存するサメ類」はこれで終わりなんですが、次回は「拾遺集」といった感じで、これらにもれた「惜しいみなさん」をひろってみたり、サメ好きなみなさんならば必ず一度は通り抜けるであろう「混乱」についてまとめてみたおまけなどをひっつけて本当の完結にしたいと思います。


「最終回じゃないぞよ。もうちっとだけ続くんじゃ。」
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これから読もうと思ってんだけどさぁ6  ~前勉強をつらつら~

2013年11月15日 23時20分28秒 | すきな小説
『機甲都市 伯林』(2000~01年 メディアワークス電撃文庫)

 『機甲都市 伯林』(きこうとしベルリン)は、川上稔の代表作「都市シリーズ」内の作品シリーズである。「都市シリーズ」の通算第6作だが、シリーズ第1作『パンツァーポリス1935』(1997年)の直接の続編にあたる。全5巻の大長編で、巻ごとに『パンツァーポリス19××』というサブタイトルがつく。
 1937~44年におけるドイツ首都のベルリンを中心に描いており、前作『パンツァーポリス1935』に対して「新伯林」と呼ばれる。都市シリーズの第2期第1作として始まった。作品世界が前作を遥かに凌ぐスケールに拡大している。文庫版イラストはさとやすが担当した。

あらすじ
 こことは異なる世界のドイツ。
 1935年、ある新型航空戦艦を2人の男が奪取して逃走。ドイツ軍は奪還のために追跡するが、新型機の拿捕は失敗に終わる。新型航空戦艦はこの時、人類の大気圏外の飛行を世界で初めて成功させ、これを参考に、ドイツ軍の極秘機関「G(ゲハイムニス)機関」が強臓式(アインゲヴァイデ)航空戦艦「疾風(シルフィード)」の建造を開始する。
 1937年、「疾風」が開発者の死亡により暴走し、「ドイツを救う」と予言されていた救世者(メサイア)を拉致するという事件が起きる。この事件は隻腕の男が解決すると予言され、事実その通りになったが、救世者はドイツ国外のアメリカに亡命するという結末になる。
 1939年、第二次世界大戦勃発。G機関が建造していたガルド級航空戦艦の一番艦が反独隊(反戦独立部隊)によって破壊される。この事件の後、救世者は反独隊に入隊する。
 1942年、ドイツの重要都市ケルンが大空爆され、その際にドイツのガルド級航空戦艦一番艦「葬送曲(レクイエム)」と、イギリスの言詞砲搭載型双胴航空艦「大時報(ビッグシグナル)」が相討ちになり轟沈。その後、ドイツは超弩級要塞「トリスタン」を完成させ、ドイツ上空に防御用の天蓋を発生させたことにより、ドイツへの空爆攻撃は事実上不可能となる。
 1943年、G機関が救世者を確保するも、再び国外に逃がしてしまう。救世者は反独隊と共にドイツに侵攻し、「トリスタン」を破壊する。


作中での関連年表

962年 「救世者」がドイツを統一し、神聖ローマ帝国が建国される(第一帝国)。
1415年 ドイツ北東部の都市ベルリン、神聖ローマ帝国の構成国ブランデンブルク選帝侯領の首都となる。
1698年 イギリスの発明家トーマス=セイヴァリ(1650~1715年)により「精霊式機関模型」が創られる。
1701年 ブランデンブルク選帝侯フリードリヒ3世、神聖ローマ帝国の認可によりプロイセン王国初代国王フリードリヒ1世として即位。
1710年 イギリスの発明家トーマス=ニューコメン(1664~1729年)により精霊式機関が実用化される。
1853年 江戸幕府治世下の日本にアメリカ合衆国の黒船来航。鎖国制度廃止。
1871年 プロイセン王国を母体としたドイツ帝国成立(第二帝国)。
1894年 イギリスに移民したアメリカ人発明家ハイラム=マキシム(1840~1916年)による精霊式飛行機の史上初飛行が成功する。
1901年 ドイツ人冒険家フーバー=タールシュトラーセ(22歳)、エジプトで「千王母の墓」を発見する。
1906年 ドイツ人技術者パウル=ヴァーグナー(31歳)、精霊式機関を応用した重力変化に成功する。
1914年 第一次世界大戦勃発。
1916年 フーバー、戦争中のフランスで「大空洞」を発見する。
1918年 ドイツ革命が勃発し、皇帝ヴィルヘルム2世のオランダ亡命によりドイツ帝国が崩壊、ドイツ共和国成立。ドイツ降伏。
1919年 ヴェルサイユ条約の調印により、第一次世界大戦終戦。
1920年 ドイツ、世界初の有人気圏外探査船の打ち上げを試みるも、失敗。
1935年 ベルリン騒乱(第1作『パンツァーポリス1935』の内容)。
1937年 「疾風」事件(第1巻の内容)。
1938年 大ドイツ帝国宣言(第三帝国)。
1939年 第二次世界大戦勃発(第2巻の内容)。
1940年 大ドイツ帝国G機関、言詞塔砲搭載ガルド級戦艦「葬送曲」完成。
1941年 大日本帝国、大ドイツ帝国に呼応してアメリカ合衆国に宣戦布告。
1942年 連合国軍、ドイツの軍需都市ケルンを大空爆(第3巻の内容)。
1943年 新ベルリン騒乱(第4・5巻の内容)。
1945年 ドイツ降伏。


登場キャラクター(新ベルリン騒乱時)

ヘイゼル=ミリルドルフ
 主人公。第1作『パンツァーポリス1935』に登場したドイツ空軍少将オスカー=ミリルドルフの娘。1922年生まれ。
 猫の獣人(母)と人間(オスカー)とのハーフであり、恐怖を感じたり興奮したりすると猫に獣詞変(フレクティーレン 変身のこと)する特徴がある。
 1937年時の異族判定の際に片目を失明し、強臓式義眼「救世者」を移植されている。
 ドイツ空軍中将ハイリガーの娘とは同級生だった。

ダウゲ=ベルガー
 「野犬(ヴィルト・フント)」のあだ名を持つ異族(ハイデンガイスト)。強臓式武剣「運命」の所持者。1914年生まれ。
 架空都市ロンドンの出身で、神の遺伝詞を持つが、能力的にはただの人間である。
 元々は逃がし屋だったが、後に反独隊に入隊。重騎の扱いに長ける。

ヘラード=シュバイツァー
 ドイツG機関空軍部所属の中尉(後に大尉)。「音速裁断師(ツェアステーラー・シャルマオアー)」の異名を持つ全方位結界師でもある。
 ノイシュヴァンタインで復活した緑竜から病院を護る際に片腕を失い、巨大な強臓式義腕「英雄」を所持することになった。
 ベルガーとは高校の同窓。

ベルマルク・フィーア
 アイラム式自動人形ベルマルクシリーズの第4号。「射撃人形(シーセラインプッペ)」の異名を持つ。
 ヘラード=シュバイツァーの副官で、強臓式拳銃「魔弾の射手」の所持者。

マルシュ=ガント
 ドイツG機関開発部第二企画班長。強臓式航空戦艦「疾風」の設計者。
 本人は死亡しているが、意識遺伝詞が「疾風」に記乗している。ベルガーとは高校の同窓生だった。

レーヴェンツァーン=ネイロル
 ドイツG機関の司令。ヘルベルトの養子。
 「速読歴(ゾフォルト・レーザー)」の称号を名乗るが、自身には予言を詠む能力はない。
 強臓式心臓「新世界」を移植されている。

アルフレート=マルドリック
 ドイツG機関陸軍部第一師団・第一独立機動重騎小隊の小隊長。「皇帝剣(カイザー・シュベールト)」の異名を持つ。
 自身の声帯を移植した強臓式重騎「皇帝」(後に「皇帝改」)に乗る重騎師。
 ボルドーゾンから欧州五行総家を継承したマルドリック家の次男であり、「幻崩の衛士(ハウンド)」としての任を務める。異族を嫌う。
 救世者ゆかりの神形具「純皇(ラインケーニッヒ)」を操る五行師(バスター)でもある。ベルガーとは高校の同窓生。

ベルマルク・ナイン
 アルフレートの部下で、「人形双騎師(ドッペルパンツァー)」の異名を持つ自動人形。
 「E(アイゼンリッター)計画」により、その脳と脊髄がそれぞれ「蒼獅子改」と「朱獅子改」に組み込まれた。

グラハム=カールスルーエ
 ドイツG機関副長にして、全軍の大将軍。カールスルーエ家の長男で、ローゼには「大兄様」と呼ばれる。
 ローゼと同じく言障患者であるため、全身を義体化し、感情喪失機構を組み込んでいる。重騎「銀獅子」に乗る。
 五大頂とG機関を組織し、フロウベルをその長に据えた。実質的なG機関の創設者。

ハイリガー=カールスルーエ
 カールスルーエ家の次男。ローゼには「小兄様」と呼ばれる。
 ドイツ空軍中将だったが、後にグラハムの遺志を汲んでG機関総帥となる。「統率者(コマンディーレン)」の異名を持つ。
 過去に反独隊の人狼将軍ペイルとの戦闘で両腕を失い、強臓式義腕「悲愴」を装着している。
 両肩に異族を材料とした言詞板(フロギストン・プラッテ)を収納しているが、右肩の2枚は妻と娘を加工したものである。
 グラハムの機体を改造した重騎「銀獅子改」に記乗する。

ローゼ=カールスルーエ
 カールスルーエ家の末妹。強臓式ガルド級航空戦艦「葬送曲」を操る少女。
 言障に犯されているため、「葬送曲」が完成するまではG機関の地下で眠っていた。

カール=シュミット
 G機関陸軍部長にして五大頂(フェンフト・ライトハメル)の一人。「鋼鉄騎師」の異名を持つ。ジャンヌの夫。
 第一次世界大戦において身体を失い、「E 計画」によって巨大な緑色の重騎「カール・シュミット」と合一している。

ヘルベルト=ミューラー
 G機関空軍部長にして五大頂の一人。「不動騎師(シュタントハフト)」の異名を持つ。
 グラハムの命により、レーヴェンツァーンの義父になっていた。

リーリエ=テルメッツ
 G機関海軍部長にして五大頂の一人。「水流師(ヴァッサーマイスター)」の異名を持つ。
 風水師であり、自身の涙を材料とした強臓式竪琴「月夜(モーントナハト)」を使って水竜を生む。
 「都市シリーズ」第2作『エアリアルシティ』に登場した「幻崩の衛士」モイラ(エリス=テルメッツ)の姉。

ガリュー=ビッツマン
 G機関情報部長にして五大頂の一人。「千里眼(ヘルゼーエン)」の異名を持つ禿頭の老人。
 特殊な紋章術を自在に操る。

コンラート=エルリッヒ
 G機関開発部長にして五大頂の一人。「穴熊(ダックス)」の異名を持つ白髪の老人。
 技術を愛する技術者であり、日本の神器を改良したり、独断で「疾風」を改造したりする。
 強臓式航空戦艦「疾風」の設計者であるG機関開発部第二企画班長マルシュ=ガントの上司だった。

ジャンヌ=シュミット
 G機関陸軍部副部長。「鋼華(アイゼンブルーメ)」の異名を持つ。
 カールの妻で、リーリエとは知己の仲である。

コレール=セバン
 反独隊大尉。輸送戦艦「 rb-21」の艦長。伝式四十七符(テリング・フルカード)を操り、「高空魔術師(ハイランディスト)」の異名を持つ。

ペイル=ホース
 「人狼将軍(ハーディストウルフ)」のあだ名を持つ異族。元は傭兵だったが、後に反独隊隊長となる。
 両腕は義腕「第三月帝」。また、過去にドイツ空軍騎師時代のハイリガーとの戦闘で右目を潰され、隻眼となっている。

「先生」(レーラア)
 反独隊の諜報員。「先生」のあだ名を持つ五行師(バスター)。ベルガーと仲がいい。26歳。

エリンギウム=エルダーリンク
 図書館司書の娘で、異族。
 かつてベルガーやヘラード、アルフレート、マルシュの友人だった。彼ら4人に重要な「約束」を課している。
 ある事件がもとで記憶を失っている。また、肉体に大きな傷痕を持つ。1942年に結婚。旧姓はイルヘイム。

ベンドゥーター・イースト
 自動人形。イギリスのビッグベン3姉妹の一人で、東方の役。「大時報」に搭載された準言詞塔砲の加圧を行う。

ミハイル=シュリアー
 「都市シリーズ」に共通して登場するマイアーの孫。新ベルリン騒乱の顛末を記録する著者。父はマクシミリアン。

レーヴェンハイト=ネイロル
 レーヴェンツァーンの父。「速読歴」の異名を持つ。1918年のイギリス襲撃事件で死亡している。

フロウベル=ネイロル
 レーヴェンツァーンの母。旧姓はイルヘイム。「速読歴」の異名を持つ。
 G機関の創設者であり、かつての長でもあった。レーヴェンツァーンが8歳だった1926年に心臓疾患で死去している。
 ハイリガー、グラハム、ベルテヒト、レーヴェンハイトの4人に、ある「約束」を課している。


G(ゲハイムニス)機関とは……
 総員207名のドイツ竜騎師団の末裔で構成される高機密性組織。正式名称は「大ドイツ帝国守護竜騎師団(ゲルマニアドラグーン)五大部」。
 10世紀に神聖ローマ帝国(第一帝国)を建国した「救世者」を中心にしてドイツ南西部の「黒き森」アルヘイム地方で結成され、13世紀以降はドイツ北東のプロイセン地方に拠点を移した。
 1871年にプロイセン王国がドイツ帝国(第二帝国)に発展してからは、ドイツ国軍から完全に独立した、政府への全権介入さえもが可能な全国組織になった。1919年の第二帝国崩壊後も、極秘の国防機関として本部をアルヘイムに移して機能し続けている。
 最高責任者は「騎師団長(速読歴)」で、それを補佐する「副長(大将軍)」と、陸軍・海軍・空軍・開発・情報の5部門を各自統括する「五大頂」が機関を運営している。
 あまりに危険であるがゆえに、歴史上から消された喪失技巧(オーバーゲハイムニス)を復活・改良してドイツの軍事力に加えようとする。

反独隊とは……
 正式名称は「反戦独立部隊」。
 ヨーロッパの緊張状態を避けてアメリカに亡命した資本家たちが、世界各国の速読家(ゾフォルト・レーザー)たちの世界滅亡の予言を受けて、ヨーロッパの情勢を把握するために1934年に共同で創立した民間の情報調査機関が母体となっている。
 その後、ヨーロッパ現地での諜報活動に実力行使が必要になったことと、逆にヨーロッパ各国の政府機関から情報の提供を求められるようになったことから、1937年以降は複数の企業体をスポンサーとする極秘の軍事部隊に発展した。
 部隊の主力は異族(ハイデンガスト)が多く、1939年時点ではアメリカ・アリゾナ州に大規模な訓練基地を持ち、陸上部隊・航空部隊ともに四個師団なみの軍事力を擁している。
 喪失技巧を確保・封印する他、各国軍隊の過度な実力行使や戦争商人の横行を抑止する役目も果たす。

機甲都市・新ベルリン(ゲルマニア)とは……
 1939年7月ごろから建設が開始され、翌40年9月に完成した、大ドイツ帝国首都ベルリン直下の地下要塞都市。
 地上は「緑地帯・歴史的建造物・帝国軍の地上施設」、地下第一層は「民間生産工場」、地下第二層は「ベルリン市民居住区」、地下第三層は「民間と軍事の物資倉庫・地上への鉄道路線」、地下第四層は「軍需工場・地下換気機能の中央制御機構」、最深部の地下第五層は「帝国軍大本営・政府要人の避難施設」で構成されている。
 この六層構造と、近郊に配置された超弩級要塞「トリスタン」によって、新ベルリンは戦時下の大ドイツ帝国の首都機能を果たす。


航空戦艦
dp-xxxx 疾風(シルフィード)
 第1作に登場した宇宙航空戦艦「dp-xxx 皇城(カイザーブルク)」をもとに、ドイツG機関が開発した強臓式航空戦艦。完成直前に死亡した設計者マルシュ=ガントの意識遺伝詞が記乗している。全長約27メートル。
 仮発動(ベヴァイゼン)でP 機構を動かし、駕発動(オーバー・ベヴァイゼン)で機甲紋章「疾竜」が起動する。
 1937年、マルシュの意識を乗せたまま暴走し、ヘイゼルを取り込み宇宙を目指そうとしたが、それ以前に撃ち込まれていた遺伝詞還元弾の影響を受けて崩壊をはじめ、後を追ってきたベルガーとシュバイツァーにヘイゼルを開放した後に自壊した。
 その後、パウル=ヴァーグナー研究所の跡地から機動停止していた「疾風」が発掘され、G機関による移送中に奪取。自己修復を行いつつベルガー、そして「先生」と共にヘイゼル救出のためハンブルク基地を襲撃する。
 アルフレートによって中破し、最終的には「魔王」との一騎打ちを行い、相討ちとなった。
 その後、G機関によって回収され、完全状態への修復とヘイゼルに合わせた風水神形具化の改造が行われた後に「新ベルリン」最下層に封印。新ベルリンにおけるヘイゼルの「救世者」の仮発動によって目覚め、戦いに参加。その際、「魔王」との再戦で一蹴するなど力の差を見せた。
 その後、暴走した「トリスタン」との戦いにおいて、中途で撃沈した連合国軍の自突艦 MO、墜落した「葬送曲」、さらに皆から集めた記憶を有する物品などを飲み込み、トリスタンと対決。救世者と共に過去に降りた。

dlp-444lsx 葬送曲(レクイエム)
 ドイツG機関の開発した強臓式航空戦艦。8隻の母艦を組み立てて作り上げるガルド級戦艦一番艦。全長1.1キロメートル。
 8艦はそれぞれ左右前後3隻、中央前後2隻をつなげた双胴艦形で構成されており、この構成は後の『境界線上のホライゾン』における「武蔵」にも受け継がれている。
 言詞砲を搭載するか、または言実詞により機甲紋章「駆天竜」を発動できる。
 艦長(強臓式保有者)はローゼ=カールスルーエ。素体には彼女の身体組織を用いていると思われる。
 彼女の本体は小さな赤珠となっており、艦内には大気の流体を使って立体映像のように現れることができる。
 1942年、ケルン防衛の最中にイギリス軍の「大時報」の射撃によって撃沈され、その時に大破した「銀獅子」に記乗していた兄グラハムともども死亡する。
 その際、彼女の本体であった赤珠はグラハムによって銀獅子に収められており、のちにヘイゼルが銃弾を受けた時の身代わりとなって砕けたベルガーのペンダントに移された。

魔王(エルルケーニッヒ)
 ドイツG機関が「疾風」をもとに開発した強臓式航空戦艦。最終的に全部で8艦が存在した。全長27メートル。
 「疾風」とは違い完全な無人機で、「新世界」の仮発動によって制御され、独自の言実詞を用る。
 外観は「疾風」とほぼ同一だが、メインのカラーリングが青から黒に変更されている。また無人機であるため艦橋部は無い。
 1943年7月のハンブルクにおける初出撃時は、救世者と共に時を超え修復のままならない「疾風」と戦い、相討ちのような形で墜落。その後、「疾風」と共に回収され、その際に量産型として同型艦7艦が建造される。
 しかし、43年8月のベルリンにおける、修復され完全状態となった「疾風」との戦闘時に簡単に敗北する。その後出撃した量産型7艦は途中で制御不可能になり墜落した。
 その後の「トリスタン」暴走ではハイリガーに操られて機甲紋章を展開、ドラゴンの姿となって再び「疾風」とヘイゼルの前に立ちふさがった。その時、最低1艦ずつがビッツマンとエルリッヒの両名によって撃破されている。


航空機
王飛竜(ケーニッヒ・ギドラー)
 G機関最速の戦略偵察機。

王双剣(ドッペルシュナイデ)
 G機関の最新鋭双胴艦。広範囲弾を用いた後部防御に優れる。

銀/銀改(ズイルバー/ノイエ・ズイルバー)
 G機関の戦略輸送艦。全長100メートル。

V0/V1
 ドイツ軍の巡航型自突艦。神術爆弾を搭載して、自動操縦で標的に突撃する。もともとはG機関の戦略輸送艦「銀」の同型艦として設計された。全長100メートル。

rb-21
 反独隊の航空輸送戦艦。双胴式で、右舷上部にはジプシークイーンが描かれている。全長46メートル。

大時報(ビッグシグナル)
 連合国軍の双胴式航空艦。準言詞塔砲を搭載している。

MO
 連合国軍の自動突撃兵器(自動制御爆撃艦)で、1943年にドイツ軍の自突艦「 V0」の情報をもとに開発された。内部に広範囲型爆弾を搭載し、一撃で都市を破壊する威力を持つ。全長100メートル。
 「トリスタン」暴走を知った連合軍によって放たれるも、ドイツ空軍と「疾風」の迎撃によって破壊され、その爆発のエネルギーもろとも「疾風」に吸収された。
 第二次世界大戦終結後は、大陸間巡行弾などの超々音速兵器の基礎となり、現代戦争の様相を一変させていく。



蒼獅子(ブラウ・ローヴェ)
 ドイツ空軍の艦上防御用重騎(グレーセ・パンツァー)。全高7.3メートル。凌駕紋章「空牙(ルフト・ファング)」による飛行を可能とする。V0 を迎撃するためにベルガーが搭乗し、特攻をかける形で大破した。

黒獅子(シュバルツ・ローヴェ)
 ドイツG機関陸軍部の重騎。
 「皇帝」の試用騎体で、強臓式の試作部品が組み込まれ、対空飛行も可能とする汎用型。1939年にベルガーによって奪取されて以後、彼の乗騎となった。
 その後もベルガーと共に転戦するが、43年7月のハンブルクにおいて「皇帝改」との戦闘によって中破し、その状態のまま航空艦隊の対空砲火を受けて大破する。

黒獅子改(ノイエ・シュバルツ)
 ベルガーの血液から部品を新調した重騎。「皇帝」から受け継いだ戦闘関連記録を内蔵している。凌駕紋章は「白皇」。武装は「運命」の他に、「皇帝」の使っていた神形具の大剣も常用の武装として有すると思われる。
 43年8月の「新ベルリン」における戦闘において、ベルガーの乗騎として参加。「言詞加速砲」による砲撃後、「トリスタン」内部に突入、門扉に突っ込む形で行動不能となる。
 その後「トリスタン」暴走時に「新世界」の仮発動を受け、「皇帝」の力を持って起動。最後の一撃の直前に、「救世者」たるヘイゼルに道を譲る形で撃破された。

皇帝/皇帝改(カイザー/ノイエ・カイザー)
 アルフレートの声帯を部品とした強臓式重騎。全高10メートル。機械式の推進装置を有し、凌駕紋章を展開しない状態でも対空飛行が可能。
 1939年に完成し、初戦において量産型重騎2騎を圧倒するも、ベルガーの奪取した「黒獅子」と交戦、神形具の剣を「運命」によって断たれる。
 43年7月、ハンブルク基地において改造中、ヘイゼルの「救世者」の仮発動を受けて自立起動。カール・シュミットと交戦し、これを退けるも、アルフレート自身によって主導権を取り返された。
 その後のベルガーとの交戦後、ハンブルク空爆部隊を伴った航空艦隊を北海で迎撃した際に撃墜されたが、それらの記憶と神形具の大剣は「黒獅子」に受け継がれ、また「純皇」はヘイゼルの手に渡った。

蒼獅子改/朱獅子改(ノイエ・ブラウ/ノイエ・ツィノーバ)
 E 計画により、ベルマルク・ナインの脳と脊髄が合一している重騎。意志を用いず凌駕紋章を展開することが可能である。
 「蒼獅子改」は88ミリ徹甲実弾を発射する長銃を、「朱獅子改」は左手に大盾を持ち、内部に短剣を格納している。
 基本的に「朱獅子改」が防御、「蒼獅子改」が攻撃を担当する。どちらも全高9メートル。

銀獅子(ズィルバー・ローヴェ)
 グラハムの記乗する銀色の重騎。機械式推進装置によって凌駕紋章に頼らない飛行能力を得ており、その点において「黒獅子」と同じく「皇帝」の試作機となった。全高7.3メートル。
 1942年、ケルン防衛の際に大破。残骸は回収され、改修されて「銀獅子改」となった。

銀獅子改(ノイエ・ズィルバー)
 ハイリガーの記乗する銀色の重騎。大破した「銀獅子」を修復したもの。
 43年8月の「新ベルリン」における攻防戦において人狼将軍ペイル=ホースと対決し、「背翼が無いと飛行が不可能」という固有の弱点をペイルに突かれ、地上からトリスタンの最下層まで落下し大破した。

カール・シュミット
 カール=シュミットの合一した陸戦用重騎。全高25メートル。本体は真鍮色、装甲服は当時のドイツ陸軍軍服の意匠である濃緑色。
 他の重騎に比べてかなり大型であり、装甲服には「航空艦用の浮遊紋章をハニカム状にして仕込んである」など、重量軽減に配慮がなされているようである。
 その巨体(蒼獅子改が抱えるようにして使っていた88ミリ徹甲長銃を「拳銃サイズ」として扱っている)に加えてかなりの重武装であり、2門の竜詞砲を背中に背負う他、多数の火砲を有している。
 なお、背中側に副座を備えており、火器管制を分業していると考えられる。

狗鎧(パンツァー・フクス)
 凌駕紋章で凍気をまとう重騎。1937年のベルリンでベルガーと相対したが、撃破された。

黒犬(ヤークト・フント)
 量産型中騎。肩の装甲板が厚い。第5作『閉鎖都市 巴里』にも同種の騎体が登場している。


銃砲・火器
言詞砲・言詞塔砲(独:ベイベルカノーネ/英:バベルカノン)
 加速させた言詞の言詞格を開放し、照射する兵器。対象空間を広範囲に言詞崩壊させる。
 準言詞砲と比べて複雑な機構を必要とするが、長時間の照射や連射が可能である。

準言詞砲・準言詞塔砲(独:クルツ・ベイベル/英:バベルガン)
 加速させた言詞の言詞格を固め、弾丸として発射する兵器。効果は言詞砲とほぼ同じ。
 言詞砲と比べ簡易な機構で済むものの、弾丸を生成するために長時間の加圧が必要となる。

竜詞砲・竜詞塔砲(独:ドラッヘ・カノーネ/英:ドラゴン・ブレス)
 竜の吐く竜詞砲を機械に置き換えて再現した兵器。遠距離用である。

準竜詞砲・準竜詞塔砲(独:ギドラー・カノーネ/英:サブ・ブレス)
 竜の吐く竜詞砲を機械に置き換えて再現した兵器。竜詞砲よりも小型のものを指す。

言詞銃(ベイベルゲヴェーア)
 超弩級要塞「トリスタン」に搭載された言詞兵器。ガルド級二番艦の言詞砲を転用している。

機甲浄弾(パンツァー・ライニグン)
 対異族用の武器。長さ30センチメートルほどの鉄製の筒から霊木の杭を打ち出す。

魔弾の射手(フライシュッツェ)
 ベルマルク・フィーアの持つ強臓式拳銃。歯と骨を材料にしている。
 仮発動ではその名の通り魔弾を射出し、駕発動であらゆる機械を分解する。


神形具(ヴェルクツォイク)
純皇(ラインケーニッヒ)
 神聖ローマ帝国皇帝からマルドリック家に預けられた、救世者ゆかりの神形具。純白。アルフレートが使っていたが、彼の撃墜と共にヘイゼルへと受け継がれ、過去に渡った。

月夜(モーントナハト)
 リーリエの扱う強臓式竪琴。涙を材料としている。言実詞により水を風水し、水竜を生む。


義体
救世者(メサイア)
 ヘイゼルの持つ強臓式義眼。仮発動で他の強臓式機械を操作し、駕発動で周囲の遺伝詞を読む。素体にはマルシュ=ガントの目が使用されているため、青い色の人間の目である(ヘイゼル自身の目は猫目)。

新世界(ノイエ・エールデ)
 レーヴェンツァーンの持つ強臓式心臓。仮発動で他の強臓式機械を操作し、駕発動で超弩級要塞「トリスタン」の加圧を行う。

英雄(デア・ヘルト)
 シュバイツァーの持つ強臓式義腕。長杖を射出し、周囲の空間を言実化する。

悲愴(トラーギシュ)
 ハイリガーの持つ強臓式義腕。素体は彼の両腕と思われる。仮発動で機械に仮初の命を与え、駕発動ではあらゆる機械に記乗できる。
 燃料として異族を加工した高出力言詞板を必要とし、其々の肩内部に二枚ずつ収めることが可能。駕発動には2枚とも使用するが、仮発動は1枚で済むものと思われる。
 右肩部に収められている言詞板は過去に「加工」されたハイリガーの妻と娘である。
 「新ベルリン」における戦闘によって左腕側は失われ、残った右腕に残っていた言詞板を燃料に駕発動して「トリスタン」に記乗した。

運命(ゲレーゲンハイト)
 ベルガーの持つ強臓式武剣。精燃を動力として「運命の糸を断つ」闇の刃を発生させる。
 ある理由で、駕発動は使えないことになっている。

祖国(ファーターラント)
 ドイツの強臓式地脈加圧炉。ドイツ国内のみでなく、世界各地に建造されている。
 高純度の精燃を生成する。また、ドイツの地脈を改造し、全てのドイツ国民に言実化能力を付与できる。

トリスタン
 新ベルリン近郊に建造された「祖国」にガルド級戦艦二番艦を合体させた超弩級要塞。全高は1.6キロメートルを超える。
 ドイツ上空に防空用の「天蓋」を発生させるほか、各地の「祖国」への加圧支援などを行う。
 最終的な目的は、地脈から時虚遺伝詞を抽出し、「破滅の転輪」を起こして世界の崩壊を防ぐことである。
 1942年6月以降は、G機関本部の機能も兼務するようになった。

伝式四十七符(テリング・フルカード)
 コレールが操る「幻実都市 出雲」の占術符。奏の22符、騒の22符、噤の3符から成る。
騒の10番「破滅の転輪(ニーベルンゲ)」…… 何が起こるか分からない不幸の連鎖を予兆する。
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