すずき・みちのぶ ニューバーガー・バーマンやゴールドマン・サックス・アセット・マネジメント、
ピムコジャパンなどを経て、2018年のヌビーン・ジャパン東京オフィス設立時から経営全般を統括する
米大手運用会社、ヌビーン日本法人の鈴木康之社長は日本経済新聞社の取材に応じ、関西の金融市場について「この1年で富裕層のマネーがものすごく動き始めている」と語った。
ヌビーンは運用資産残高が1.1兆ドル(約158兆円、2023年3月末時点)にのぼり、不動産などのオルタナティブ(代替)投資を強みとしている。大阪が国際金融都市を目指すには、外資系金融機関に向けた情報提供が重要だとの見方を示した。
――関西のビジネス環境をどう見ていますか。
「関西の富裕層はこの1年で明確に動き始めており、株や債券でリターンを得にくくなった富裕層のマネーはオルタナティブに流れている。関西には1回の投資で数億円単位を動かせるようなオーナー系の企業も多い。顧客から直接問い合わせをもらうことも増えた」
「具体的な企業名を出すことはできないが、関西の企業を含めて日本株にも積極的に投資している。
日本株は割安だ。株価は上がっているが、それ以上に円相場が下がっているため、海外勢からするとやはり割安に感じる。一方、関西の企業は堅実経営のためかデット(借り入れ)調達があまりなく、債券市場は薄い印象だ」
――ヌビーンが大阪に拠点を設ける可能性はありますか。
「たとえば、公募投信を自前で持っているような、個人向けの運用会社はすでに大阪にも積極的に進出している。
我々のような機関投資家が大阪に拠点を開く理由は少ないのかもしれないが、関西は大阪だけでなく京都や神戸を含め、富裕層がまとまっている地域が多い。将来的にビジネスチャンスがあると判断すれば、営業拠点を設けることはあるのかもしれない」
「そういう意味では、やはり富裕層の動きは重要だ。富裕層のマネーはオルタナティブなどの長期投資に向いている。証券会社では買えないような、一般的にはアクセスが難しいプライベートエクイティ(PE=未公開株)や不動産にもっと需要が出てくれば、細かなサポートができるように拠点を置くこともありうる」
――関西にはどのくらいのペースで来ていますか。
「私自身でなくとも、社員は週1回は関西に来ており、金融機関や企業年金などを営業に回っている。地銀とのコミュニケーションもオンラインを含めてかなり頻繁にしており、地銀のオルタナティブへの注目度も高まっていると感じている」
「関西に限らず、オルタナティブは地銀や企業年金、富裕層などにとって着実に新しい投資対象になっている。他のオルタナティブ系の運用会社もすごい勢いで日本に来ている」
――大阪府・市は国際金融都市を標榜しています。
「おそらく多くの外資系金融機関はグローバルという視点で大阪を認識していないのではないか。外資系の金融機関が求めているのは情報だ。
たとえば、地銀がエリア内にどれくらいあって、企業年金はどれくらいあって、富裕層の潜在資金はいくらあるのかなど、詳細な情報があればかなりの検討材料になる。
そうした情報を府市がプレゼンするなどしてアピールすることは、存在感を高めるためにも有効ではないか」
(田村匠が担当しました)
日経記事 2023.08.16より引用