政府はアフリカで電気自動車の電池に欠かせない重要鉱物のサプライチェーン構築に乗り出す
政府はアフリカで電気自動車(EV)の電池に欠かせないコバルトなど重要鉱物のサプライチェーン(供給網)構築に乗り出す。日本への輸出を視野に年内にもザンビア、コンゴ民主共和国、ナミビアの3カ国とそれぞれ共同探査などを拡充する。
アフリカ投資を増やす中国への対抗を念頭に、輸入先の多角化で経済安全保障の強化につなげる。
エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)が近くザンビアと覚書を、コンゴ民主共和国とナミビアとはすでに交わした覚書を具体化した作業計画を結ぶ。
西村康稔経済産業相は1日、6〜13日の日程で3カ国に加え、アンゴラとマダガスカルを訪問すると発表した。覚書などの締結はそれにあわせて実施する。
ザンビアなど3カ国ではJOGMECは活動しているものの、重要鉱物の鉱山開発の分野で進出している日系企業はない。リスクが高く莫大な資金を要する鉱物資源の開発を政府主導で後押しし、民間投資を呼び込む。
ザンビアではJOGMECを通じ、衛星画像から鉱山エリアを分析して割り出すリモートセンシングと呼ぶ技術を提供し、ザンビア全土で共同探査を始める。従来の対象だったコバルトと銅に加え、新たにニッケルも対象に追加する。
鉱山投資に向けた官民会議も開催し、日産自動車や阪和興業など日系企業を招く見通しだ。
コンゴ民主共和国では銅とリチウムの探査を拡充する。国際協力機構(JICA)の支援を受けて現地で整備中のリモートセンシングを実施する拠点でJOGMECなどが技術指導を通じて現地の人材育成で連携する。
ナミビアでは国営鉱山企業「エパンゲロ」とレアアースなどの供給網強化に向けた作業計画を結ぶ。亜鉛や銅などの鉱物資源が豊富なナミビアは鉱物の供給網は十分整備されていないが大きな港があり、将来のアフリカの輸出拠点と目されている。
将来の日本への輸出を見据え、早い段階から開発に関与する狙いがある。日本政府は3カ国それぞれとの関係を強化し、アフリカの資源国での採掘や精錬、流通までを包括した供給網の構築を目指す。
コバルトやニッケルといった重要鉱物を巡っては脱炭素社会の実現に向けた蓄電池の需要の増加で重要性が高まっている。コンゴ民主共和国は世界のコバルト供給量の7割を占めている。用途が広範な銅もアフリカで採れる。
官民を挙げて取り組む政府の念頭には中国の動きがある。中国企業はコンゴ民主共和国を中心に大規模投資に乗り出し、重要鉱物の精錬でシェアを急速に高めた。
米国などとの対立姿勢を強める中国が輸出規制などに踏み出せば、日米欧などにとってEV普及を通じた脱炭素化の足かせとなるおそれがある。
日本など主要7カ国(G7)は重要鉱物の多くを中国を含む特定国からの輸入に頼る。5月の首脳会議(G7広島サミット)で採択した共同文書でも新興国との連携などで一致しており、重要鉱物の供給網を多様化を急ぐ。
日経記事 2023.08.01より引用