ロシアのプーチン大統領(6日、モスクワ)=AP
米大統領選で共和党のトランプ前大統領の当選が確実となり、ロシア政府は米国がウクライナ政策を修正するのか見極める構えだ。
トランプ氏がウクライナへの支援を縮小し、停戦圧力を強めることに期待が広がる。ロシアメディアによると、政権幹部が水面下でトランプ氏に祝意を示した。
ペスコフ大統領報道官は6日「米国がウクライナでの戦闘に関与する非友好国であることを忘れるべきではない」と指摘した。
「米国はウクライナでの対立終結に貢献できるが、一晩での解決は不可能だ。米国が外交政策を変更できるか、(トランプ氏が就任する25年)1月にどうなるか見てみよう」と述べるにとどめた。
同氏はプーチン氏がトランプ氏の勝利に祝意を示すか「分からない」とも語った。
ロシア外務省も米国は超党派でロシアを敵対視しており「トランプ氏に幻想を抱いていない」と指摘した。
ロシア政府は表面的に静観の構えを示す一方、トランプ氏がロシアとの融和路線に転じることに強い期待を抱いている。
トランプ氏は大統領選で自ら大統領に復帰する前に停戦を実現すると主張し「ロシアのプーチン大統領とも非常に良い関係にある。大統領就任前に良い結果に導く」と強調していた。
ロシアの独立メディア「ビョルストカ」は6日、ラブロフ外相やメドベージェフ安全保障会議副議長(前大統領)、上下両院の議長など政権幹部が水面下でトランプ氏に祝意を伝えたと報じた。
メドベージェフ氏は「トランプ氏には我々にとって有益な資質がある。ビジネスマンとして厄介者に資金を投じるのを嫌うことだ」と発言した。トランプ氏がウクライナへの軍事・財政支援を縮小すれば、ウクライナでの戦況はロシア優位に傾く。
ビョルストカによると、クレムリンの情報筋は「トランプ氏が中東情勢を優先課題とし、米国はウクライナへの支援を欧州に肩代わりさせる可能性がある」とし、有利な条件で停戦に持ち込めるとの楽観論を示した。
政府系ファンド「ロシア直接投資基金」のキリル・ドミトリエフ総裁は「トランプ氏の勝利はロシアと米国の関係をリセットする新たな機会となる」と期待を示した。
ロシア財界にはトランプ氏の経済政策に懸念の声もある。トランプ氏は原油など資源開発に前向きな政策を掲げ、油価の下落がロシア経済の打撃となりかねない。
ロシアの「アルミ王」と呼ばれる新興財閥(オリガルヒ)のオレグ・デリパスカ氏は、通信アプリ「テレグラム」に「原油は5月にかけて1バレル50ドルに下落するだろう」と投稿した。
2022年2月、ロシアがウクライナに侵略しました。戦況や世界各国の動きなど、関連する最新ニュースと解説をまとめました。
日経記事2024.11.07より引用