日本航空(JAL)は21日、2025〜33年度に欧州エアバスと米ボーイングの新機材42機を国内線・国際線で導入すると発表した。
新型コロナウイルス禍後の旅客需要回復を見込んで、大規模投資に踏み切る。低燃費の機材や小型機材に更新し、収益力を高める。
JALは購入予定金額を明らかにしていない。カタログ価格(定価)では合計1兆8700億円となる。
新たな機材計画では国際線で30機、国内線で12機を購入する。メーカー別ではエアバスが32機、ボーイングが10機となる。
国際線は27年度からエアバスの中型機「A350-900」を20機、米ボーイングの中型機「ボーイング787-9」を10機導入する。
北米やアジア路線を中心に機材を増やす。傘下の格安航空会社(LCC)を含め、輸送能力を示すASK(有効座席キロ)を国際線で30年度に23年度の1.4倍に拡大する方針だ。
赤坂祐二社長は同日の記者会見で、「増えるインバウンド(訪日客)需要を取り込むという強い決意で、国際線を拡大していきたい」と話した。
国内線は28年度からエアバスの小型機「A321neo」11機を購入する。現在運航しているボーイング「767-300ER」の後継機にする。さらに、1月の羽田空港の衝突事故で全損した機材の代替機としてエアバスの「A350-900」を25年度に1機購入する。
国内線では、ボーイングの「737-800」の後継機として、26年度から同社の小型機「737-8」を21機導入することも決めている。
エアバスとボーイングの新機材に置き換え、現在よりも運用機材を小型化する。「ビジネス需要の減少などに合わせて、需給を適正化する」(斎藤祐二グループ最高財務責任者)という。
機材の更新により、脱炭素化も進める。新機材の導入で従来機に比べ1席あたりの二酸化炭素(CO2)排出量は、国内線・国際線全体で更新前に比べ平均で2割減るという。
JALは歴史的にボーイングの機体を利用してきた。エアバスは23年3月時点で国内・国際線合わせて16機にとどまる。新たに32機を導入することでエアバスの比率が高まると見られる。
世界的にはエアバスのシェアがボーイングを上回っている。ボーイング機で不具合が相次ぎ、エアバスへのシフトが進んでいる。
JALは同日、21〜25年度の中期経営計画を修正したと発表した。本業のもうけを示すEBIT(利払い・税引き前利益)で25年度に1850億円としていた目標を、2000億円に上方修正した。国際線が想定を上回って回復する。
4月から社長に就任する鳥取三津子専務は記者会見で、「国際線は需要が戻っている。このチャンスをしっかり捉える」と語った。
競合のANAホールディングスも国際線の拡大に向けた機材導入と、低燃費機材への置き換えを進めている。20年には「ボーイング787-10」11機と、ボーイング「787-9」9機の計20機を発注した。30年度にはボーイング787型機を100機以上に増やす予定だ。
国際線の拡大戦略にはリスクもはらんでいる。コロナ禍にあった政府補助が縮小するほか、国際線の単価も下落基調にある。人手不足から人件費も世界的に上昇するなか、国際線の利益率が低下する可能性がある。
日経記事2024.03.21より引用