子 今、ママとシンクロしてる。
父 シンクロって、考えると難しい概念だな。シンクロしているのは、偶然なのか、必然なのか。二人が同時に湯呑みを右手に持って首をかしげた訳だが、単に偶然にそうなったのか、何らかの必然性を持ってそうなったのか。必然なら、二人の関係には因果関係が存在するように思えるけど、因果関係であれば同時に起こるのでなく、連続して起こる。同時に起こるということは、二人に起きている事象は別々の事象かな。
子 シンクロって、同時に起きるだけのことじゃないの。
父 だから、同時に何故、同じ事象が起きているのかが不思議じゃない。物の見方になるけど、世界に起きることは偶然と考えるのか、必然と考えるのか。必然とすれば、連続した因果関係の存在が必要になるし、偶然しかないと考えると、因果関係はヒュームが言うように存在しなくなる。
子 言葉が上滑りしているだけのように思うけど。
父 考えると面白いんだけど。ブラジルと日本で同時に同じ事象が起きたとしよう。これは二つの事象に関係ないように思うよね。でも距離を近づけていくと、同時に起こる二つの事象には関係があるように思える。
子 それは、後から見て意味をつけるからそうなるんじゃない。
父 そうだけど、事実というのは、人が意味をつける出来事以外は事実にはならないから。確かに人が事実と認める出来事のベースには物理的な事象が必要だけど、それば無限個の事象の連続で、人があるエピソード、トピックに意味をつけないと事実にはならないから。そういう意味では、事実というのは人が意味をつけた出来事。
子 それとシンクロとどう繋がるの。
父 二つの事象について、別々に意味を持たすのか、一つの事象として意味を持たすのか。それは偶然の出来事なのか、必然の出来事なのか。こういうことを考えない人がほとんどだと思うけど、運命は存在するかって、誰でも一度くらいは考えたことがあるんじゃない。必然なら運命は存在するし、偶然なら運命は存在しない。シンクロの意味を偶然で考えるか、必然と考えるかで運命の存在のあるなしが変わってくる。普段使う意味では、偶然ではないんだろうね。ブラジルと日本で同時に起こる事象についても、ひょっとすると偶然ではないのかもしれない。
子 ふーん