晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

乃南アサ 『凍える牙』

2009-07-17 | 日本人作家 な
ミステリーやサスペンスでは、面白い「条件」のようなものがあり、
まずは当然ながら、物語の秀逸がありますが、なんといっても恐怖
を演出する側(犯人など)がどれだけ読者に恐怖感を煽るか、それ
とその対極側(刑事、探偵など)のキャラクター設定がどれだけ個性
的か、というもの。
刑事や探偵は、まず強く印象に残るキャラクターでなければならず、
ここが弱いと、ただお化け屋敷をぐるりと歩き回っただけという不完全
燃焼というか、なんともバランスの悪さが目立ちます。
だからこそこのジャンルには個性的な刑事や探偵のシリーズものが
多いということでしょうか。

『凍える牙』は、こういった犯人側の与える恐怖感と、それを追う側の
設定やキャラクターの面白さがじつにバランス良く整っています。
登場人物の背景や過去を描くのは推理小説ではお馴染みですが、
たまにですが、この部分が「どうだ!」といわんばかりに強調されてし
まい、現在進行形の本筋を邪魔するような作品もあるのですが、それ
がちゃんと物語の奥行き、奥深さを持たせるしっかりと味を立たせる
材料となっていなければならず、『凍える牙』は、追う側追われる側の
背景と過去が本筋のアクセントとして効いています。

深夜、東京都下のファミレスで、客の男から突然火が出て、そのまま
燃えてしまいます。他の客や従業員に被害は無かったものの、その
原因は店側の過失ではなく、焼死した男の体に付いていた時限発火
装置だと判明。
管轄署に捜査本部が設置され、機動捜査隊に所属の音道貴子は、
ベテラン刑事の滝沢とペアを組むことに。
滝沢はあからさまに女と同行するのを嫌がり、そんな蔑視や偏見に
慣れっこの音道も負けじとしますが、溝は埋まらず意地の張り合い。
そんな中、東京湾岸で動物に襲われて死んだ男が発見されますが、
ファミレスで焼死そた男の足にも動物に噛まれた跡があり、同一犯行
の可能性が見えてきた本部は、音道と滝沢に動物の線から捜査する
ように命令。
そして、またしても別の場所で動物に襲われ殺された女性が発見。
焼死の男と動物に襲われた被害者の接点とは・・・

音道と滝沢のコンビもはじめこそ相性最悪の不協和音奏でっぱなし
だったのが、両者の溝もだんだんと埋まっていきます。
たんに治安維持や正義感ではない、両者の司法警察官としての生
き方が物語に幅を持たせております。


コメント (2)
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