きっと明日は雨のち晴れ

六甲道診療所での仕事は忙しいけど、それなりに楽しい。ちょっとくじけそうなことがあっても、雨のち晴れです

RSウイルスワクチンの値打ちを考える

2024-06-16 20:20:55 | 診療
健康いちばんの四季のカルテの担当になっています
が、なんとか締め切り間際に完成

今月のお題はややニッチなところで
話はそれますが、この「ニッチ」の語源は “niche”(くぼみ)。今頃診療所では胃のバリウム検査はしていませんが、胃潰瘍のくぼみにバリウムの「たまり」として映った画像のことを、「ニッシェ」を呼んでいたのを思い出します。日常会話では「隙間」や「マニアック」のようなネガティブなイメージですが、多様性が重視されるようになって、ポジティブで「個性的」という意味あいも。

乳児の病気?
 最近各所で RSウイルスワクチンはどうなの?と聞かれています。そもそも、小児の診療現場でRSウイルス感染症は日常的で、とくに、乳児が感染すると、咳や喘鳴が悪化し、ときに入院を要とすることに。特効薬はなく対症療法で回復を待つのみで、重症化すると将来の喘息につながるともいわれます。ウイルスを特定する抗原検査の保険適応は、1歳未満に限定。そのような乳児の感染予防に、以前から「シナジス」という「基礎疾患を有する児や早産児」限定のワクチンはありました。さらに最近 承認されたワクチンは 妊婦に接種することで、胎盤を通じて母体から胎児に抗体が移行することで生後のRSウイルス感染を予防するとされています。

大人でも実は重要
 最近、テレビのCMが先行してしまう医薬品が少なくないですが、大人のRSウイルスワクチン 2種が今年になって、承認発売されました。そもそも、大人であればRSウイルスの多くは風邪症状だけで自然軽快すると考えられていました。ただ、インフルエンザや新型コロナのような迅速キットを用いた検査の精度が高くなく、保険適応外なので、大人のRSウイルス感染症の実態が十分は把握されていませんでした。昨年60歳以上の調査で年間、約6万3000人の入院と、約4500人の院内死亡を起こしていると「推定」しています。海外の研究では 喘息、慢性閉塞性肺疾患、糖尿病、冠動脈疾患、うっ血性心不全などの基礎疾患のある患者では、ない人に比べると数倍から10数倍入院率が高いことが示されました。そして、このワクチンを接種することで、とくに慢性呼吸器疾患をもつ方の入院、死亡リスクを減らす効果は相当なものと評価されました。その効果はインフルエンザや新型コロナのワクチンを上回る高いレベルのものだと。

お高いワクチン事情
 大人のワクチンといえば、肺炎球菌ワクチンがひろく知られています。実はこの肺炎球菌ワクチンにも2種類ありますが、日本ではその1種のものに、65歳以上の高齢者対象に1回限りの助成で接種をすすめてきました。65歳以上全年齢にゆきわたるように、5歳刻みの対象者を選んで接種券が送られていましたが、今年度からは65歳になった人だけに限定。5年の有効期限なのに、1回限りで、「そのあとは自腹で」と。
 一方で最近すこし普及してきた「帯状疱疹予防ワクチン」も基本は自費です。全国で300以上の自治体が公費助成をされていますが、それでも、1回2万円以上×2回は、格差社会となった日本で広く接種を行き渡らせられる代物ではないのでは。RSウイルスワクチンも同等の値段になりそうですし、1回接種ですが有効期限が2年(帯状疱疹ワクチンは10年)というのも、なんとも。なんとか重症化リスクの高い方への負担軽減策など、いい意味での「ニッチ」で有効な施策を期待したいところです。
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