【タカオカ解説】ケンカを売ったのはどっち? これからどうなる? 米ウ首脳会談決裂 両首脳の言葉と態度から見る裏側
在日米軍経費 最大更新
24年度8601億円
義務なき「思いやり」増加続く
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日本政府が2024年度の当初予算に計上した在日米軍関係経費の総額が、8601億円に達したことが防衛省への取材で分かりました。4年連続で過去最大を更新しています。さらに24年度補正予算にも、沖縄県名護市辺野古の米軍新基地建設費など3307億円が計上されており、実際には1兆円を大きく超える見通しです。大半は日米安保条約上も支払う義務がなく、「対等な同盟」を標榜(ひょうぼう)する石破政権の下でも対米従属が深化し続けています。
防衛省は「在日米軍関係経費」として、(1)在日米軍駐留経費(米軍思いやり予算など)(2)在日米軍再編経費(3)SACO(沖縄に関する日米特別行動委員会)経費―を計上。これ以外に他省庁分(自治体への基地交付金など)があります。
費目を見ると、思いやり予算の増加傾向が続いており、なかでも米軍基地のインフラ整備などを負担する「提供施設整備」(FIP)と、米軍に訓練用のシミュレーターなどを提供する「訓練資機材調達費」が前年度から増えています。
日米地位協定24条は、在日米軍駐留経費のうち、基地の地代や補償などを除き米側が負担すると規定しています。しかし、米側は「円高・ドル安」を口実にして駐留経費の負担を要求。1978年度から基地従業員の福利費を手始めに、米兵用の住宅や学校・娯楽施設、さらに戦闘関連施設などの建設費、基地従業員の基本給や光熱水料、訓練移転費を負担するようになりました。さらに、現在では「訓練資機材調達費」まで加わっています。
「円安」が進行する現在、思いやり予算の当初の口実は崩壊。それでも日本政府は米軍「思いやり」をやめようとせず、「同盟強靱(きょうじん)化予算」と言い換えて継続・拡大を続けています。
トランプ米大統領は1期目に、日本の思いやり予算の「4・5倍」化(約2000億円→約8500億円)を要求していたことが明らかになっています。
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主張
自衛隊の職業体験
学校を隊員募集の場にするな
自衛官の採用達成率が過去最低の51%に落ち込み、中途退職者が過去30年で最多(2023年度)となるなか、自衛隊が自衛官募集業務の一環として、小中学校の「職業体験授業」「防災教室」を利用する例が広がっています。
小中学校では23年度、自衛隊の地方協力本部の受け入れがコロナ禍前の2倍になっています。沖縄県石垣市のように自衛隊の駐屯地から頼まれて市教育委員会が中学校長あてに職場体験の案内を送る自治体もあります。「防災訓練」後に自衛官募集のチラシなどを配ったり、自衛隊の駐屯地が「#自衛官募集」のタグを付けて中学生の職場体験をSNSに投稿したりしています。宣伝・募集の一環であることは明らかです。
■他の職業との違い
職業体験に自衛隊を入れている学校は「自衛隊も職業の一つだから」としています。
国民の間には災害時に救援にあたる自衛隊への信頼や親しみがあります。しかし国際法上、自衛隊は軍隊であり、自衛官は戦闘員とされ本来の任務は戦闘です。自衛隊法は「事に臨んでは危険を顧みず、身をもつて責務の完遂に努め」「上官の職務上の命令に忠実に従わなければならない」という賭命義務、服従義務を定めています。
自衛隊の『服務ハンドブック(幹部隊員用・服務参考資料)』は「自衛隊はその規律の基礎を戦闘におく」「戦闘の規律から発して、すべて平時の規律が作られていることが、一般の社会の規律とは異なっている」としています。
しかも、安保法制の下、いまの自衛隊は「専守防衛」ではなく、海外の戦場で殺し殺される任務に当たる危険が高まっています。労働権も保障されていません。
一般の職業や企業と同列に扱うことはできません。
服従が自衛隊の規律維持の根本とされていることがいじめやハラスメントを生んでいます。24年の『防衛白書』によれば、年間1700件超のハラスメント相談がありました。相談による不利益や加害者からの報復への懸念などから相談していない人が多数いることも明らかになっています。
■国際的なルールで
そうした本質に触れずに、判断力の未熟な小中学生に学校教育の場で宣伝・募集行為をすべきではありません。
子どもと軍隊を切り離す国際的なルールがあります。日本も加盟する国際刑事裁判所ローマ規定は、15歳未満の子どもを自国軍隊に徴用もしくは志願入隊させることを戦争犯罪としています。日本も批准する子どもの権利条約「武力紛争における児童の関与に関する選択議定書」では、18歳未満の者について▽志願者が軍務における任務について十分な情報提供を受けていること▽敵対行為に直接参加しないことを確保する措置をとること―を求めています。
各地の職業体験では、戦車に乗せたり殺傷能力のある武器に触れるなどが行われています。国際的ルールから見て子どもに武器を触らせることはふさわしくありません。
教育委員会や学校長に中止を申し入れ、学校教育の場で行うのをやめさせましょう。