経団連が春闘交渉の基本方針となる経営労働政策特別委員会(経労委)報告を公表し、前年を上回る賃上げを参加企業に促した。労働側をけん引する連合も5%以上の賃上げを求めている。
労使の賃上げ姿勢は一致し、株式市場では平均株価が上昇している。賃上げに向けた財務環境は整った。企業には大幅な賃上げを断行する責任がある。
経労委報告は基本給を引き上げるベースアップ(ベア)について前年の「前向きな検討」から「有力な選択肢」と表現を強め、企業に実現を迫った。ベアは賃金構造改善に欠かせない。各企業は呼び掛けに積極的に応じるべきだ。輸出関連を中心に主要企業の多くは2024年3月期決算で過去最高益を計上する見通し。好調な決算が国内外からの投資を促し、株価上昇に反映された形だ。ただ、好決算には円安が大きく寄与している点は見逃せない。日銀の大規模金融緩和を背景とした円安は輸入物価の上昇に拍車をかけ、国民生活を苦しめている。大手企業は好決算が暮らしの犠牲の上に成り立っていることを肝に銘じ、暮らし向きを少しでもよくするために、賃上げや積極的な設備・研究開発投資を通じて利益を社会に還元せねばならない。懸念されるのは中小企業の倒産が激増していることだ。調査会社の東京商工リサーチによると23年の倒産は前年比で約35%増えた。原材料費の高騰や人手不足が経営を直撃したという。中小企業の多くは、原材料費が上がっても取引先の大手企業が価格転嫁に応じないため資金繰りが悪化する事態に直面している。雇用者数の7割を占める中小企業に賃上げを拡大しない限り消費の底上げは望めない。大手企業の経営陣は価格転嫁に応じ、社会的責任を果たすべきである。連合によると昨年の春闘の平均賃上げ率は3・58%と30年ぶりの高水準だった。しかし、実質賃金は20カ月連続で前年同月を下回っており、賃上げの力不足は明らかだ。円安と株高で大企業と投資家が潤う一方、働く人たちが物価高で苦しい生活を強いられるいびつな構造を放置することはもはや許されない。公平な社会を実現するには富の分配が前提だ。暮らしを底上げするため、継続的な賃上げ実現に向けて力強い春闘を期待したい。
↑結局、格差社会は今世紀中続くのか😢
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