ロシアの侵攻で破壊されたウクライナの生活基盤を再建するには国際社会の支援が必要だ。地雷・不発弾の除去やがれき撤去、電力の確保など多岐にわたる。非軍事の民生支援こそ平和国家の道を歩む日本の役割にほかならない。
ウクライナに対する国際社会の支援は同国政府の要請に基づき、欧州連合(EU)を中心に各国の分担を調整している。
日本政府は三月に約二百二十四億円、四月に約五百三十億円の無償資金協力を決め、現地での再建実務は国際協力機構(JICA)が担う。巨大ダム破壊に対しても国際機関を通じて七億円規模の緊急人道支援を実施することを、岸田文雄首相が明らかにした。
住民の命に関わる深刻な問題がロシア軍が敷設した地雷や放置された不発弾だ。危険地域は国土の約30%に及び、約五百万人が近くに居住している、という。
日本はカンボジア内戦後の地雷除去に協力した実績がある。ウクライナには、金属探知機と地中レーダーを組み合わせて地雷を発見しやすくした探知機を供与し、技術指導も行うとしている。
破壊された建物のがれき撤去も大きな課題。ウクライナ政府は撤去実施の主体を各自治体としているが、機材もノウハウもなく、手に余っているのが実情だ。
日本は東日本大震災からの復興の体験を踏まえ、がれき撤去の計画を策定。ショベルカーなど重機を提供し、がれきを再利用する技術も伝授する方針だという。
JICAが戦時下の国を支援するのは初めてだが、停戦のめどは立たず、スタッフは渡航中止が勧告されている現地に入れない状況だ。リモートワークやウクライナの担当者を日本に招くなど、技術指導の手段も限られてはいる。
欧米諸国は軍事支援に力を入れている。慎重だったドイツも、自国製戦車「レオパルト2」供与に踏み切った。政府・自民党からは殺傷能力のある武器の輸出を解禁するよう求める声も上がる。
しかし、武器供与で戦闘が激化すれば、命は失われ、インフラの破壊が続く。憲法九条の範囲内とはとても言えまい。殺傷能力がない防弾チョッキやヘルメットなどに限ることが妥当だ。
地雷除去だけでも十年以上かかるとされるなど困難は多いが、日本の経験や技術力を生かして息の長い民生支援を続けたい。
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