参院選で最大の争点は物価対策である。私たちの暮らしを追い詰める物価上昇の痛みを和らげるには、どういった政策が適切か。各党、候補者の公約や訴えを比較、吟味して投票先を決めたい。
原油高とともに、物価や光熱費上昇に拍車をかける円安への対応が大きな課題となっている。
日銀は二〇一三年、当時の安倍内閣と出した共同声明に基づく大規模金融緩和を今も続ける。その結果、日銀が銀行経由で国債を引き受け、それを財源に野放図な財政支出をする図式が常態化した。
財政悪化は金融政策に限らず、税制など経済政策全般で選択肢を極端に狭めた。政府が物価対策の定番である利上げや、消費税を含む減税に二の足を踏む要因に、金融緩和と財政出動を軸に据えた第二次安倍内閣以降の経済政策「アベノミクス」が招いた極度の財政悪化を挙げざるを得ない。
岸田内閣はアベノミクスの基本路線を継承している。自民、公明、日本維新の会、国民民主各党は金融緩和を支持する一方、立憲民主、共産両党などは共同声明の見直しを訴える立場だ。
金融緩和から利上げへの転換は急激な円安を止め、物価上昇に歯止めをかける有効策になり得る。その一方、企業の資金調達コストや住宅ローン金利の上昇を招き、国債の価値も下落しかねない。
消費税への対応でも各党の主張が鮮明に分かれた。自民、公明の与党は現状維持、立民、共産、維新、れいわ新選組など野党七党は税率引き下げか廃止を訴える。
消費税減税は、所得階層にかかわりなく恩恵が広がり、物価対策としての即効性は期待できる。
ただ、税率1%当たり約二兆六千億円の税収が不足する。景気が上向き、所得税など税収の伸びで減収分を穴埋めできる可能性がないわけではない。ただ消費税が社会保障の主要財源である以上、減収となれば国債増発などで直ちに補う必要が出てくる。
有権者は物価高対策としての金融緩和、消費税の双方で、それぞれリスクを抱える政策の一方を選ぶという難しい判断を迫られるが、忘れてならないのは そうした苦しい状況に至った背景にアベノミクスがあることだ。その是非も同時に問われるべきであろう。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます