ロシアのウクライナ侵攻開始から間もなく2カ月。戦争の長期化で「食料危機」が顕在化してきた。特に深刻な犠牲者は、中東・北アフリカの途上国に住む人々だ。
ウクライナとロシアは合計で世界の小麦輸出の約3割、トウモロコシ輸出の2割を占める。
世界有数の穀倉地帯で起きた紛争で、小麦価格は年初から約30%上昇。小麦輸入の半分以上を両国に依存する国は36カ国に上り、多くが中東・北アフリカ地域に集中する。現地の穀物自給率は4割程度。両国からの輸入に大きく依存してきただけに、影響は深刻なのだ。
経済危機下のレバノンは国内に出回る小麦の9割以上がロシア・ウクライナ産。外貨不足で穀物を代替輸入する余裕もなく、パン屋の前は連日、長蛇の列だ。イラクでは小麦などの価格が3~5倍となり、各地でデモが頻発。内戦下のイエメンも小麦の3割をウクライナに依存し、国連は「年末までに飢餓状態の国民が5倍の16万人になる」と懸念を表明した。
飢えた貧困国の犠牲の上で米国一人勝ち
国連のグテレス事務総長は先週、「食糧やエネルギー価格の上昇で貧困と飢餓が拡大している」と指摘。戦争に伴う戦乱により、世界107カ国で17億人が深刻な打撃を受け、うち5億5300万人が貧困状態、2億1500万人が栄養不足との報告書を発表した。
グローバルに見れば、この戦争は軍事攻撃の犠牲者よりも、貧困と飢餓で亡くなる人の方が圧倒的に上回りそうだ。
「食料危機はこれからが本番です。まだ、昨年収穫分のウクライナ産小麦が出回っているようですが、戦争下で春まきの作付けは壊滅状態。トウモロコシの輸出量が減れば家畜のエサ不足に直面し、肉や卵、乳製品も枯渇する。しかも、ロシアは窒素肥料の生産に不可欠な天然ガスや原料の輸出大国です。制裁の影響で肥料の供給が滞れば、あらゆる食料の生産が落ちます。この秋には世界中が深刻な食料危機に陥り、穀物やエネルギー、肥料の代替需要を賄う米国だけが儲かる構図です。米国経済の一人勝ちは飢えた貧困国の犠牲の上に成り立つのです」(経済評論家・斎藤満氏)
なるほど、バイデン政権が戦争の長期化を望むわけだ。
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