16日告示の統一地方選後半戦。地下水の有機フッ素化合物(PFAS=ピーファス)汚染に揺れる東京・多摩地域では、4市長選と20市議選を実施中だ。18日には瑞穂町議選と檜原村長議選も告示された。市議選のある東京都国分寺市では、市民団体によるPFASの血液検査を受けた住民79人の約95%が、健康被害の恐れがある米国の指標値を超えた。市民団体の卯城公啓さん(74)=国分寺市=は「統一選が汚染源解明の議論の場になれば」と願う。(松島京太)
有機フッ素化合物(PFAS) 泡消火剤やフライパンの表面加工に使われてきた化合物の総称。約4700種類あるとされ、PFOS(ピーフォス)とPFOA(ピーフォア)が代表的。人体や環境への残留性が高く、腎臓がんの発症やコレステロール値の上昇など健康被害も懸念され、国際的な規制が進む。2018年に英国人ジャーナリストが米軍横田基地(東京都福生市など)で土壌にPFASを含む泡消火剤が漏出したと報道している。
国分寺市選管が17日に公表した市議選(定数22)の選挙公報で、PFAS汚染(地下水汚染などの表記も含む)に言及した候補者は、全30人中11人と3分の1だった。
市名の由来の武蔵国分寺近くに環境省の名水百選の一つ「お鷹の道・真姿の池湧水群」がある。卯城さんは「話題にしない候補は地元のイメージ低下を避けたいのか…」といぶかしむ。
卯城さんの市民団体がPFASの血液検査を実施した背景には、2019年に東京都水道局の国分寺市の配水所など5カ所の井戸で取水を停止したことがある。PFASが水道水に高濃度で含まれていたことが停止の理由とされた。
都水道局の調査では、少なくとも十数年前から高濃度のPFASが検出された場所も。「住民の健康に影響があるのでは」と思ったが、都も市も調査しない。20年に市などの22人の血液を調べたNPO法人が、都や国に大規模な血液検査を提言したが、血中濃度の国内基準がないことなどから動かなかった。
卯城さんらは都の取水停止後、PFASに詳しい研究者らとともに学習会を開催。京都大の研究室と連携して多摩地域での血液検査の態勢を整え、昨年8月に市民団体「多摩地域のPFAS汚染を明らかにする会」をつくった。
市民団体が国分寺市などでPFASの学習会を開催すると、血液検査の希望者が増えた。昨年11月から多摩地域で検査を始め、今年3月までに650人が採血。4月、中間報告として273人の分析結果が出た。卯城さん自身も参加し、結果は指標値の5倍超。「自分も当事者だ」と活動への責任を感じた。
2月に市に調査を求めたが、大きな動きはない。市議選の候補者には「市民の不安に目を背けないで」と望む。「選挙がPFASへの関心を高める契機になれば。民主主義とはまず知る場を提供すること」と考える。
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◆PFAS問題に言及した候補の数 国分寺市以外では?
都水道局は2019年以降、高濃度のPFASを検出した多摩地域の7市の井戸34カ所で取水を停止した。統一選では、7市のうち国分寺を含む5市で市議選が実施されている。本紙の調べでは、国分寺市以外の市議選の選挙公報でPFAS問題に言及した候補は、国立市(定数21)が31人中8人、小平市(定数28)が33人中4人、府中市(定数30)が35人中4人。調布市(定数28)は44人中ゼロだった。
国分寺市議選のある候補は「まだ関心のある人だけが取り上げる段階だが、市民の不安の声が多く、4年前になかった争点の一つになっている」とみる。
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