ガソリン税を一部軽減する「トリガー条項」を巡り、自民党と政策ごとの協議をすることで合意した国民民主党が条項の凍結解除を求めている。ガソリン価格上昇の主要因となっている円安が止まらない中、解除は消費者の負担軽減につながる可能性がある一方、税収減が課題となっている。 (砂本紅年、鈴木太郎)
◆自公に協力したのに実現せず
トリガー条項は、ガソリン価格が一定の期間上昇を続けた場合に、ガソリン税の一部を停止する制度。条件を満たすと自動で発動されるため、トリガー(引き金)と呼ばれる。旧民主党政権が2010年度の税制改正で創設したが、11年以降は東日本大震災の復興財源確保を名目に、特例法によって凍結されていた。
国民民主党は22年に凍結解除を実現するために自公との政策協議を始め、同年度予算の採決で賛成に回るなど野党として異例の対応に踏み切った。その後も断続的に協議を続けたものの、自公が慎重姿勢を崩さなかったため、実現には至らなかった。
加藤勝信財務相は5日の閣議後記者会見で「トリガー条項が発動された場合、(税収が減るため)国、地方の財政への影響が生じる」などとして、あらためて慎重な姿勢を示した。
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◆3カ月連続160円超えで発動
Q トリガー条項とはどんな仕組みですか。
A レギュラーガソリン1リットル当たりの全国平均小売価格が3カ月連続で160円を超えた場合に、本体価格に上乗せされているガソリン税のうち25.1円(軽油は17.1円)を停止する仕組みです。3カ月連続で小売価格が130円を下回れば、上乗せ分の課税を再開します。
ガソリン税は揮発油税と地方揮発油税の総称で、1リットル当たり計53.8円です。さらに石油石炭税2.8円が課税され、全体には消費税もかかっています。
◆国と地方で税収1.5兆円減少か
Q トリガー条項の何が問題なのですか。
A トリガー条項が発動すれば、国と地方でガソリン税が年間約1兆円、軽油引取税が約5000億円の税収減となり、財政に影響が出ると予想されています。地方税収の減少により、政府が補塡(ほてん)を求められるなど地方との調整が必要になる可能性もあります。条項の発動や解除を見越した買い控えや買い急ぎで、給油所などで混乱が起こることも懸念されています。
◆政権の思惑でやめられぬ「補助金」
Q 今も続いているガソリン補助金との違いは何ですか。
A ガソリン補助金は、政府が石油元売り会社に対し、値下げの原資となる補助金を支給し、ガソリン価格を1リットル当たり175円程度に抑えています。22年1月から時限的措置として始まりましたが、既に何度も期限を延長し、これまでに6兆円超の税金を投じています。ニッセイ基礎研究所の上野剛志・上席エコノミストは、補助金は期限の延長が政府の思惑次第となるため「価格の予測可能性が低い」とみています。一方のトリガー条項は、発動の始まりと終わりが法律で決まっているため予測可能性は高まります。
条項発動で停止させる課税部分は、一時的な上乗せだったはずの旧暫定税率でもあり、上野氏は「上乗せの放置が長引き、国民に説明がつかなくなってきたのに、政治は議論を避け続けた」と指摘。その上で「実質賃金が下がり、脱炭素の潮流もある中、ガソリン税制をどうするのか正面から向き合う機会として、透明性のある議論を展開してほしい」と話しています。
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