またしても怪しげな法案が成立しようとしている。学問の自由や大学自治の原則を脅かしかねない「国立大学法人法改正案」が20日に衆院本会議で可決。今週にも参院での審議が始まる。
この改正案は、東大・京大など大規模な国立大学に中期目標や予算を決める強力な権限を持つ合議体「運営方針会議」の設置を義務づけるもの。会議の委員の人選には文科相の承認が必要で、政府が大学への介入を強める可能性がある。
政府が気に入らない人物を任命拒否できるわけで、これは菅政権で物議を醸した日本学術会議の任命問題と同じ構図だ。政府や財界が運営方針会議に人材を送り込んで、自分たちに都合のいい研究をさせたり、国立大学を金儲け主義に走らせることも考えられる。
この改正案について、元文部官僚で京都芸術大客員教授の寺脇研氏も「問題だらけの法案です」と、こう言う。
「今回の法案は、“稼げる大学”を旗印に国立大の株式会社化を促進するものです。小泉政権時代に国立大学を独立行政法人化したことに始まり、国立大も自力で稼げという新自由主義が背景にある。しかし、大学は本来、金儲けの場所ではありません。特に国立大は、安い学費で優秀な人材が高等教育を受けられることに意義があるのに、法人化から20年で国立大の予算は減らされ、研究力が低下し、それが国力の衰退につながっている。国立大の基本は、国の力で人を育てること。研究・学問より儲けが優先なら、何のための国立大なのか。本末転倒です」
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実際、すでに東大は港区・白金台に所有する医科学研究所のキャンパスで外国人向けのホテル・レジデンスの建設計画を進めている。東京工業大も港区の田町キャンパスに高層ビルを建てて事業収入を得る計画がある。
国立大の土地は2018年度から規制緩和され、文科相の「認可」を受ければ企業に貸し付けることが可能になった。今回の改正案では「届け出」だけでOKになる。大学も土地で稼げということだ。
「法案は財界と経産省の意向をくみ、官邸主導で“だまし討ち”のように進められた。大学に関する重要事項を審議する中央教育審議会に諮られることもないまま、10月31日に閣議決定され、国会に提出された。国立大学協会の会長も、閣議決定まで改正案の中身を知らなかったそうです」(文科省関係者)
拙速に進めるのは、国民が気づかないうちに成立させたいからなのか。大規模軍事研究や学問の利権化につながる“稼げる大学法案”の改悪は廃案にすべきだ。
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