穴にハマったアリスたち

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「停止した時の果て」:HUGっと!プリキュア 愛崎えみる研究室問題考察

2020年09月13日 | ハグプリ最終回考察
劇中で何度も語られる「時間が止まる」。そもそもこれは何を引き起こすのかを考えてみる。

【世界の終わり方】

仮に今この瞬間に時間が止まり、1億年後(※)に再開したとしても私たちはそれに気づけません。
時間が止まると意識も止まるので、その間のことを認識できず、どれだけ長大な時間が流れようと無関係。
これと似たことは、全身麻酔や卒倒や熟睡、あるいは何かに極度に集中している時などにも起きますが、それの比ではない強烈な停止です。

※時間が止まっているので「1億年」といった概念は成立しないのですが、イメージとして以下多用します。

そのため、実のところ野乃さんの戦いは意味がなかったとも言えます。

ジョージ:「さあ時間を止めよう」
野乃さん:「させない!」


(「HUGっと!プリキュア」48話より)

と突撃した後、実は時間停止が発動、それから1兆年ほど経過してから何らかの理由で再開していたのだとしても、野乃さんにはそれを認識できません。
止まる前と完全に連続した意識で突撃を続けてジョージを殴り倒し、「やった!防げた!」と誤解してしまいます。

では時間停止は解けるんでしょうか。量子論的には確率がゼロにならない以上は、必ずいつかは起きるでしょう。
それならばどれだけ時間停止していても、1京年や1垓年が経過しても、止まっている本人には一瞬ですから上記の状況が起きてしまいます。

ジョージの視点でも同様です。
彼の時間停止は「自分も止まる」のか「自分は動ける」のか定かではありませんが、「自分も止まる」の場合、「さあ時間を止めよう」⇒実際に時間停止⇒1穣年後に時間再開⇒「おや、止まらないぞ」となり、野乃さんに殴り倒される。

「自分は動ける」の場合、停止した野乃さんをしみじみと眺めること1溝年、何らかの事情でいつかは再開する(技術的限界か他者の介入か気まぐれかは分かりませんが)日が来るでしょう。
「させない!」と突撃して停止した野乃さん(しかし停止に気づかない)の時間が再開したところに、いきなりジョージが「やっぱりやめたよ」と言い出し、目を白黒させる彼女を置いてどこかに去る。

どのようなケースでも、野乃さんの立場でもジョージの立場でも、微妙に何かがすっきりしません。時間を止めるという発想そのものが狂気の末の行為なので、もはや常人に理解できる範囲を超えています。
「実は時間停止は成功していた」の可能性もかなりある気がする。

【轟音ではなくすすり泣きと共に】

この問題はハグプリ世界というより、私たちの人生に関わります。
「意識が機能しない状態」の典型にして究極の例は「死」です。

「死んだらどうなるか」は分かりませんが、「あの世に行く」「生まれ変わる」等々と並び「無になる」は割と主流の考えだと思う。
無になってしまえば時間も何もありませんから、死んでからの時間経過は全く関係なくなります。

ここで少し話がずれますが、「沼男」問題を考えてみたい。(参考:wiki
もしも自分と全く同じ存在が出現したとして、私たちの意識はどうなるのか。
「それは別人だ」「他人からは違いを区別できないが、主観として別人だ」等々議論はあるにしても、ここでは「意識が連続し、主観としても同一性が保たれる」としてみます。
絶望的なまでに長大な時間があればいつかは起きる可能性があるので。

例えば、机に放置された水がいきなり沸騰し、直後にいきなり凍結することも(外部からの熱供給が一切ないとしても)確率としてはあり得ます。
それが日常的に起きないのは、あくまで「確率が桁外れに極度に低いから」に過ぎず、圧倒的な時間があるなら、いつかは起きます。まぁ「水」の場合、水が水として存在できる有限時間内では到底起きない極低確率なので「起きない」と言うべきでしょうけれど。

現代物理によれば1垓年後には銀河がブラックホールに飲み込まれ、1正年後には漂流していた天体を構成する素粒子も消滅。10の100乗年後にはブラックホールも蒸発し、「世界」は終焉を迎えます。が、終焉といっても「世界」はそこにあり続けますから、「その後」(※)は存在します。
「その後」に起きるのが、宇宙の再創造なのかループなのか別宇宙との統合なのか、あるいはそれらは起きないのかは分かりませんが、とにかく何かが起きるはずです。10の100乗の100乗の100乗とかの果ての果てには。
※粒子が消滅しているのに、「時間」の概念が成立するのかは別として。

幾度とない宇宙の再創造だか別宇宙との統合だかの永劫の先には、いつかは「沼男」を満たす状況も出現するでしょう。確率がゼロにはならない以上は、いつかは起きてしまう。
そして10の100乗の100乗の100乗の100乗の100乗、宇宙が誕生してブラックホールが消滅するまでの期間を数え切れないほど繰り返す絶望の時の長さも、死んで意識がなければ一瞬です。
つまりは「死んだ」と思った次の瞬間には、別の人生を歩んでいる可能性がある。その間に横たわる無限を超えるほどの時間経過を認識できずに。

直感的な可能性としては、「別の人生」のようなまとまった安定した形よりも、「一瞬だけ意識が接続されるような何か」が起きる確率の方が高そうに思えます。
したがって「死んだ」の後には、「なんだか分からないが一瞬だけ意識が繋がる状態」が飛び飛びで出現し(一つ一つは1那由多年とかの間隔があっても、当事者は気づかない)、自己を保てるかも定かではないノイズのような状態を経過して、安定した意識に繋がる…ように思えます。
なお、過去の記憶を保持している必要はない。1年前や1日前、それどころか今のこの一瞬一瞬ですら、私たちは次々と忘却を繰り返しているのに、1年前や1日前と同じ自分だと認識できますから、この長大な「生まれ変わり」の過程で記憶を欠落しても、「沼男」のように「全く同じ」世界が出現しなくても、自己の同一性は保てるはずです。

【シュレディンガーのえみる】

もう一つ別の観点で考えてみる。

「シュレディンガーの猫」という有名な思考実験があります。猫を箱に閉じ込めて、毒ガスがでるかどうかのルーレットをする狂った実験です。(参考:wiki
箱の外にいる観測者には、箱を開けるまで猫が死んだかどうか分からない。だから箱を開けるまでは、「死んだ猫」と「生きてる猫」が重ね合わせの状態で存在するとか何とか。(こんな変な解釈をしなくてもこの実験は説明できるそうですが)

この奇妙な現象を説明する考え方の一つとして、「死んだ猫」と「生きてる猫」の二つに分けるのではなく、「死んだ猫を自分が観測した世界」と「生きてる猫を自分が観測した世界」のどちらに自分がいるのかを確認しただけだ、というのがあります。
箱を開けた途端に「死んだ猫」の世界が作られるとか、開ける前は世界が分岐していたとかそんなのではなく、開ける前から結果は決まっていて、ただ単に自分がどんな世界にいたかを確認するだけ。

SF的にいうなら「死んだ猫」世界と「生きてる猫」世界のパラレルワールドがあり、自分はそのどちらかにいる。箱を開けたことで、「死んだ猫」世界にいたんだと知る。
箱を開けたので「死んだ猫」世界に移動したのではなく、最初から「死んだ猫」世界にいたのだけど、今までそれを確認する手段がなかっただけ。
(但しここでいう「パラレルワールド」は情報のやり取りができない正真正銘の「異世界」であり、行き来が可能なSF的な「パラレルワールド」とは違います。情報のやり取りができないことが定義の一部なので、フィクションであってもここはクリアできない)

ここまでは良いとして、そこから派生する「量子自殺」と呼ばれる実験が厄介です。(参考:「不自然な宇宙 宇宙はひとつだけなのか?」
毒が出るかどうか分からない謎箱ではなく、弾が出るかどうか分からない謎拳銃を作り、それを自分の頭に当てる。そして撃つ。ばーん。これでランダムに観測者が死亡する状況が作れる。猫に飽き足らず、自分まで殺しだした。物理学者、怖い。
そしてこれをやられると非常に困ったことになる。

先ほどの猫と同様に、「弾が出ず、自分が生き延びる世界」と「弾が出て自分が死んだ世界」のどちらかの世界にいたことを確認するはずですが、「死んだ世界」は確認できません。観測者たる自分が死んでしまっているので。
そのため、この実験をやってる当事者の視点では必ず「弾が出なかった世界」に行き着いてしまいます。「弾が出た世界」にいた自分は死ぬので、観測できない。
横で見ている第三者の視点では、ランダムに弾が出たりでなかったりするのですが、当事者の視点ではなぜか毎回確率に勝利し、生き延びてしまいます。

この状況は謎拳銃に限らず、普通の病死や老衰でも起きえるように思えます。
「ガンで死んだ自分を観測した世界」と「奇跡的にガンが治った自分を観測した世界」でいえば、前者は死んでしまうので観測できず。必ず後者に行き着く。ということは主観的には死ねないんじゃなかろうか。
確率がゼロにならない限り、超低確率でも生き延びる世界が観測され続ける(というか死んだ世界は観測できない)ので、主観では常に「奇跡が起きて助かった」が続いてしまいかねません。

ただし「助かった」といっても、上記は「意識があれば成立する」ので、それこそ死んだ方がマシに思えるような悲惨な状況で意識が保たれ続ける恐れもあります。
これが適用されるのは「自分自身」だけですから、周囲の人たちは確率にしたがって普通に死んでいきます。そしてそれぞれ分岐世界で、各自自分だけは驚異的な低確率を潜り抜け、なぜか孤独に生存し続けてしまう。
パラレルワールドを現実世界で想定すると、何かとてもろくでもない世界観になりかねない。


これらが合っているかどうかは分かりませんが、もし正しいならいずれにせよ「死ぬ前に何を考えていたか」はその後に進む未来に影響を与えそう(「死んだら火炎地獄行きだ」と信じていたなら「灼熱の状態」に親和性があり、そこに連続しそうに思える)なので、精々明るく前向きに生きたいです。
プリキュアさんのせいで「時間」を考え「宇宙」に興味が沸き、「生命」に話が進んでる気がする。「スタプリ」「ヒープリ」に綺麗に誘導されてるような。

参考:
●HUGっと!プリキュア 愛崎えみる研究室問題考察(一覧)

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