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感想:小説 ハートキャッチプリキュア!

2021年05月01日 | 小説版プリキュア
■小説 ハートキャッチプリキュア!

 
小説 ハートキャッチプリキュア!【電子書籍】[ 山田隆司 ]

ゆりさんから見たハートキャッチの物語。
本編終了後の後日談にあたる小説版「スイート」「スマイル」と違い、「ハートキャッチ」は本編を別視点から。

「ハートキャッチ」のテーマは「外見を変えても内面が変わらなければ意味がない」からの「服を変えるだけでも気持ちが変わる。単純だけでそれでいいと思うんだよね」。これから転じて「各自の事情は分からない。だから他人では本質的な解決はできない」「しかし表面的なお手伝いでも、大きな助けになる」だと思っています。
そのイメージ通りに「本編のあの場面を、ゆりさんサイドから見たらどうなのか」が描かれる。あの時ゆりさんは何を考えていたのか。分からなかった「他人の事情」が明らかに。一方でゆりさん視点では花咲さんらの事情は分からない。分からないので、物凄く愉快なことになってる。

ゆりさんは華やかなりし中学生時代にプリキュアになり、日常でも武道を学び、数年間に渡り砂漠の使途と交戦、満を持してプリキュアの試練に挑んだとのこと。花咲さんに対する冷たい視線もむべなるかな。前準備なし・素の性格が戦闘に向いていない・プリキュアの自覚薄・半年間の短期決戦と不安材料しかなさすぎる。

しかも「ゆりさんの出番があるシーン」が舞台になるので、必然的に「ブロッサムらがピンチ」ばかりになります。ダークさんにゴミのごとく蹴散らされ、死屍累々と倒れ伏すブロ子たち…。ゆりさんの視線がますます冷たくなる。あなたたち、プリキュア舐めてるの?

[引用]
薫子はプリキュアの先輩として、二人にアドバイスだけでもしてもらえないかと頼んできた。
ゆりがきっぱりと断った時、息を弾ませながらつぼみが温室に飛び込んで来た。
つぼみは、えりかやその姉ももかとショッピングに行こうとしていたが、薫子からリュウゼツランが開花したとの連絡を受け、向こうを断って駆けつけてきたのだった。
「何十年に一度ーーっ!」
と、つぼみが興奮気味に叫んだ。リュウゼツランがただ一度開花するまで要する期間を言っているのだが、ゆりには何のことかさっぱり分からなかった。
[引用終]

もはや珍獣。思い返せばハートキャッチ13話でそんなシーンがあったような気がしますが、ゆりさん視点では不可解な生き物にしか見えない。そう、これが今のプリキュア…。アドバイス?お断りします。

相対的にサソリーナさんらの評価は妙に上がる。あのムーンライトと数年も戦い抜き、ブロ・マリ・サンシャイン相手には五分以上。というか、よく半年程度で勝てたものだ。
プリキュアの試練を受ける際の「まだ早すぎる」「でもやらせてください」のようなやり取りも、こうしてみると確かに深刻です。「まだ早い」はお約束展開ですからテレビ本編では大して気にしなかったけど、ゆりさん視点だと自殺行為にしか見えない。死に急ぐ脇役プリキュアたち…。(なお小説本文中には「ムーンライトの死体」とかの物騒なワードも出てくる)

そんなどうしようもない最弱プリキュアども(マリンやサンシャインも、ゆりさん視点では大差ない)が、仲間の力で押していくのはなかなかに強烈。
依然としてゆりさんの方が圧倒的に強く、彼女の事情を3人は詳しく知らない。が、それでも確かに力になってる。
「詳しい事情は分からない。でもお手伝いならできる」。ハートキャッチの真骨頂。本質的な解決には踏み込めなくても、それでも何かが力になるはず。

また、薫子さん視点でも描かれており、彼女から見た月影家族やつぼみらの様子も興味深い。孫のこと、めちゃくちゃ不安ですね…。花咲さんが古風な言葉遣いをするようになった経緯も書かれているのですが、この子をプリキュアにして戦地に送り込むのは並大抵の覚悟ではない。
一方で、孤立していることを気にしていたようなので、えりからのことも踏まえて後押ししたのも分かる。改めて考えてみれば「薫子さんが(性格的に明らかに不向きに見える)つぼみをプリキュアとして戦わせた背景」は謎といえば謎だった。世界を守る云々の大仰な話の前に、「孫の交友関係」というささやかな願いがあったのかもしれない。

欲を言うなら、同じ形式で「マリン視点」「サンシャイン視点」の物語も見てみたい。映画「花の都」がそんな感じ(オリヴィエを介して各自の物語が進む)ですが、「同一場面で、各自が何を思っていたのか」は、アニメよりも小説に適してる。二人とも色々と抱えていますから「おちゃらけてたけど、内心ではこう思ってたのか…」みたいなのが沢山ありそう。読みたい。

 
小説 ハートキャッチプリキュア!【電子書籍】[ 山田隆司 ]
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