穴にハマったアリスたち

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読んだので批判する その3:アニメ・漫画規制に賛成する人たち

2013年06月20日 | 王様の耳はロバの耳
若干くどい気もするけれど、巷で話題の児童ポルノ関係で、考えてたら色々思うところが出てきたので書いてみる。

「単純所持禁止」を謳った例の法案の狂いっぷりは今更私が書くまでもないですが、現実問題として、規制に賛成する人がいることも事実。
そして「実在する児童の性行為を記録したもの」だけではなく、アニメや漫画といったフィクションを目の敵にする人たちがいることも事実。

ではその人たちはどうしてそんなにアニメや漫画を敵視するのか。
結論が間違っていても、途中の思考が筋道だってるなら、理解や歩み寄りの余地もあるはずです。
ということで、「どうしてそんなに嫌うのか」を考えてみた。

●仮説1「アニメを見た子供は悪影響を受けるから」

子供は見知ったことを真似て成長するものです。
そのため、アニメで性的な言動が行われると、悪影響を受けてしまう。だから嫌だ…の理屈。

これ自体はさほどおかしくないと思う。
だけど「アニメ」を名指しで批判するのはどうして?
よく言われるように、時代劇だって刀傷沙汰まみれ、現代ドラマだって恋愛や犯罪を描いてるのに。

考えられるのは、「子供が一番好きなのがアニメだから」でしょうか。
好きだから、他のコンテンツと比べ影響を受けやすい。だからアニメはダメ。
まさか「アニメにはずば抜けて高い教育効果があるから」とは思ってないでしょうし。

しかしこの発想は大きな問題をはらみます。
というのも仮にアニメを禁止した場合、娯楽を失った子供は次の何かに興味を持ちます。
そしてその「何か」(例:音楽とかドラマとか)にも、やっぱり悪影響を及ぼす要素はある。
例えば小説の「赤毛のアン」等にも、普通に児童ポルノ要素が含まれますし、かなりきつい差別発言等々をアンがやってたりする。

そもそも周囲のリアル環境自体が、児童ポルノ的にはよろしくない。
日本人が学校制服に性的興味を持ちやすい理由は、ほぼ間違いなく「思春期に周囲が制服の状況で過ごしたから」でしょう。
当たり前ですが、リアル世界の状況が最も人の成長に影響を及ぼす。

つまり「アニメを見た子供は悪影響を受けるから」理論に従うなら、「アニメに限らず全ての情報を遮断すべき」となりますし、「男女を同じ環境で育てるな」となる。
実際、「男女7歳にして…」という諺もありますし、ここまで言い切るなら(主張に賛同するかは別として)筋は通ってる。
逆にいえば、そこまで言い切れないなら、この理由による批判は破綻しているという事ですね。

●仮説2「アニメを見た大人は犯罪に走るから」

アニメを見ていると現実と非現実の区別がつかなくなるから。
あるいは、アニメを見ていると欲求が掻き立てられ発散したくなるから。

どういう理由かはさておいて、アニメと犯罪を結びつけたがる人は実際いる。
ただこれは理由づけとしてはかなりお粗末な部類ですね。
「現実との区別を見失う」可能性が高いのは、アニメよりも現実に近い実写映画やドラマ、スポーツの方でしょう。

そして最も強い影響力を持つのは、周囲の直接的な環境でしょう。
よって、筋を通そうとすると、仮説1と同じく「全ての情報から遮断すべし」となる。
そこまで言い切る覚悟がないなら、自己矛盾に陥ってしまう。

●仮説3「アニメは子供向けだから」

「子供向けのコンテンツだから、大人が見るのは奇妙で異常だ」論。

これに対する最も有効な存在は、キティだと思ってます。
キティ御大は、当初は紛れもなく女児をターゲットとして雇用されてます。
が、今では海外スターからも高い支持を得ています。

また、竹トンボや独楽なんかも気になるところ。
老人会が子供に遊びを教えたりする光景は、非難されるべき奇妙で異常な状況なのでしょうか。
いい年した老人が、子供の遊びに興じるなんて…。

もしも「子供向けだから」を理由にするなら、キティや独楽も批判する覚悟が出てきます。
そこまでやるなら(賛同するかは別として)論として筋は通る。
逆にいえば、言い張る覚悟がないのなら矛盾してしまう。

「女の子向けを男が好むのはおかしい」と性別を問題にすると、更に状況が厳しくなる。
一昔前は、学校教育で「創作ダンスは女子」「武道は男子」といった性別による区別がされてました。
しかし言うまでもなく、ダンスに打ち込む男性や、武道に打ち込む女性は珍しくない。

この論を採用すると、性別や年齢別に「何を好むべきか」を厳密に線引きしていく必要がでてきてしまう。
そこまで行くと、「一昔前なら隠居していたのに、60歳過ぎても働いているなんて…」といった批判も可能になります。
というか、批判しないと矛盾してしまう。

●仮説4「アニメはレベルが低いから」

小説と比べて、絵が描かれているので頭で考えることをしなくていいから。
もしくはあまりに非現実で、リアリティがないから。
理由としては大体そんなとこだと思う。

情報量や現実との近さを並べると、下記のようになります。
左にいくほど、「情報量が多く」「伝達方法が現実の体験に近い」。

 現実の体験>実写映画・ドラマ>アニメ>漫画>小説>思索

もしも「情報量が少ない方が、頭を使うから高級だ」(小説>漫画理論)ならば、小説よりも思索の方が崇高です。
書を捨てて内にこもれ。
哲学や宗教の例を考えるに、意外と極論でもなさそう。

逆に「リアリティがある方が高級だ」(現実>アニメ理論)ならば、小説や思索は論外です。
いいから外に出よう。そして思考を停止しよう。
これも意外と極論ではない気がする。

よって「外界との情報を遮断し内なる思索に挑め」もしくは「心を無にして、ただただ目の前の体験に身を委ねよ」と主張するなら、(賛同するかはどもかくとして)筋は通る。
そこまで言えないなら理由としては破綻してる。

●仮説5「アニメが自分の趣向にあってないから」

自分にとって理解できないものが、評価されていると不快感を抱くものです。
何が楽しいのか分からないので、ただただ嫌悪感ばかりが募っていく。

この立場で主張されると、矛盾を突くのはちょっと難しい。
嫌いなものは、嫌いだからです。
それ自体は自由だし、完結してる。

しかし「公の場で流す」といったことに対する規制ではなく、「単純所持」すら禁止となると、もはや殲滅戦です。
自分と全く無関係の機会ですら、存在を許さん。
そこまで言われたら全面戦争ですね。まさに今の状況ですが。

そしてこの理由は「子供を守る」ことと全くの無関係です。
もしもこの理由づけを今回の件でしてしまったら、「法案の目的と関係ない」で終了です。

●仮説6「自分が嫌悪を抱く人が見ているから」

「アニメが嫌いというより、アニメを見ている層が嫌いだから、その人たちが好きなアニメも嫌いだ」論。
坊主憎けりゃ袈裟まで憎し。
但しこの理屈は「では何でアニメを見ている層が嫌いなのか」に行きつくし、おそらく結果は仮説5と同じでしょう。

●仮説7「アニメを見ていると現実への興味を失うから」

仮説2の、ある意味逆パターン。
「アニメを見ていると非現実の方を好んでしまい、現実の犯罪に走らなさ過ぎるから」論です。
性犯罪が起こらない(=現実の異性に興味を持たない)から問題だ、という逆説。

要はアニメキャラに恋をしてしまうと、実際の人間との恋愛をしなくなる。
(アニメと現実は違うのだから、アニメキャラの代わりに好きになるなんて展開はない)
リアルを性対象にしなきゃいかんのかと問われれば、私らが生殖によって繁殖する生物である以上、「そうです」と答えるしかない。

ただこの立場に立ち、「実際の生殖を行えないからアニメはダメだ」と言ってしまうと、同性愛等々を否定することになってしまいます。
それどころから、生殖を伴わない関係(老夫婦とか子供を育てる予定の無い夫婦とか)も否定することになる。
「生物としての自然さ」を強調したら、人間性を否定することになってしまった。


…で、こうして考えて行くと、規制賛成派の理屈がどうにもこうにも筋が通らない。
規制すべき根拠が不明確な上に、当人たちの中でも消化しきれていない自己矛盾した感情で騒いだら、反発されまくるのも当然です。
せめて筋の通った首尾一貫した思考をして欲しい。本当に。

【追記】

最後にもう一つ気付いた。

●仮説8「規制に反対する人はロリコンの犯罪者なので、反対する人がいる以上は規制すべきだから」

「陰謀の証拠が見つからないのは、証拠隠滅が図られた証拠。証拠がないことが陰謀があった証拠だ」「無罪を主張するなんてあやしい。あいつが犯人だ」論。

本末転倒を通り越し、もはや戦いのための戦いです。
巷の規制賛成派を見ていると、最も多い理由はこれのような気がしてきた。
上の立場のつもりで軽い気持ちで抑えつけようとしたら、あっさり負けてしまったので腹立ち収まらないといったところでしょうか。

この理屈に普通に反論するならば「私は犯罪者ではない」を示せばOK。
ところがこの法案自体が、誰であろうと犯罪者に仕立て上げることができるもの。
なるほど、だから「単純所持」に拘るのか。

よく「自分の子供の写真を持つことが犯罪なのか」との批判がありますが、「その通り。お前が持ってるなら犯罪だ。だってお前は犯罪者なんだから」が規制派の信念なのかもしれない。
しかし現行ではこれを犯罪とする方法がない。
故に「お前が持っているなら犯罪」の裏付けのために、「単純所持禁止」が必要になる。

そう考えると、法案の危険性に無頓着なのも分かる。
反対する犯罪者を裁くための法案なのだから、賛成している非犯罪者の自分らは関係ない。
論理構造がぐちゃぐちゃ過ぎますが…。(反対する=犯罪者だからといって、賛成する=犯罪者ではないは成り立たないし、それ以前に無茶苦茶)

曖昧性も少なく法案の趣旨にも合致する「児童の性行為を記録した媒体を作成すること」よりも、グレーな上に何を守ってるかも不明な「非実在も含めて、それっぽく見えるものの単純所持禁止」に執念を燃やすのも、「単純所持禁止」に反対する人が多いからでしょうか。
強く反対されればされるほど、反対すべき根拠が出てくればくるほど、「だから規制すべきだ」と信念を固めてしまうと。

恐ろしいことに陰謀論は反論不能です。(宗教ですので)
どれほど反論されても、何の根拠も示さず理由も述べないまま、執念深く食い下がってくるのは、このせいか。
あの人たちの頭の中では、「反対する人がいる」ことが根拠となり、「だから規制すべき」と筋道立って主張してるつもりなのかもしれない。

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