タイトルに惹かれて読んだ。
五木寛之ももう80代だそうだ。今までの著書をたくさん読んだわけではないけど、「親鸞」は面白かった。
それに比べると、この本は軽いエッセー集。すぐに読めるし、内容もタイトルから類推するもの。
でも、今までよく知らなかった著者の生い立ちが詳しく記されていて興味深い。戦時中に大陸に渡り、終戦後引き上げてこられたそうな。大変な苦労をされている。戦争のことを知る人はもうほとんどいない。私の母ももういない。母は歳を取ってからでも、何度も救急車のサイレンを聞いては戦争中の空襲のことをおもいだしたらしくおびえていた。今朝の朝ドラでも流していたけど、体験した人はいつまでもその記憶から逃れられないんだな。
私が阪神淡路大震災で被災したときも、我が家に母が陣中見舞いに来てくれて、周りの様子が空襲後の様子を思い出させたようで、私の家に着いた頃にはすっかり不安げにおびえていた。家の周りの様子がまるで空襲の後みたい、と言っただけで二度とその後は私の家に来ようとしなかった。
この本で言う"こころ"とは、広い意味での文化だと私は解釈した。日本の伝統文化を継承していきたい、と著者は願っているのだろう。そして、それは難しく考えることではなく、親から昔の暮らしやどのように育ってきたかを聞くことだ、と。
そう言えば、私の父は戦争のことをあまり話したがらず、しつこく聞くと外地に行かなかった、とだけボソッと言ったけど。一緒に訓練を受けた人たちは船で外地に向かっている最中にその船が沈められたとか。多分それで言いたくなかったんだろう。今となっては聞くすべがないけど。
戦争は知らないけど、大震災を経験し、今度のコロナ禍に巡り合わせ、やはり大変なことには違いない。子供や孫世代はこれらは歴史上の出来事になるのかもしれないけれど、生の声を話して聞かせるのもやはり必要なことなのかも。ニュースやメディアが残す記録とはまた違った個人の視点があるのだから。
とは言え、話をするには落ち着いた環境と時間が必要だね。まずはそっちからか・・・トホホ(´д`)