女性の仕事をパンナムというアメリカのシンボル的存在であった飛行機会社のスチュワーデスの視点から考察した本
パンナムは今ではもうないので若い人にはわからないかもしれないが、今のアメリカンエアとユナイティドに引き継がれた、一昔前のアメリカの航空会社
アメリカの国力が上がってきた、その象徴的存在だったという。
一般国民が気軽に世界中どこにでも行けるようになった、富のシンボル
豊かになると人は旅行する― 馬車で、車で、列車で、飛行機で、そしてこれからは宇宙船で。
1890年にフロンティアの消滅を宣言したアメリカは、新たなフロンティアを探して太平洋へ大西洋へと拡大していった。
飛行機はそのフロンティアの拡大になくてはならないものだった。
何時間もせまい機内で過ごすため、その空間をできるだけ快適にするため、自宅のくつろぎをサービスとして提供して飛行機での旅行を広めようとした。
だから、スチュワーデスはアメリカ金ぴか時代の中流家庭のお嬢さん、隣の家のお嬢さんが世話をする、という戦略だったという。
そのように規律を厳しくして育成したスチュワーデスは、パンナムの広告塔として広くメディアでも活躍した。
ちょっとした民間大使のような役割も果たしていたようで驚く。
また、当時のアメリカの人種政策も反映している。
アフリカ系、アジア系のスチュワーデスもたくさん採用した。
太平洋ルートもドル箱線だったので、日系のスチュワーデスが活躍した。最初はほとんどがハワイに住む日系人だったという。日本語を話せることがセールスポイントだったらしいが、実際に流暢に話せる人はほんの少しだったらしい。
その頃から、スチュワーデスは女性のあこがれの職業の一つになった。
世界中に仕事でどこでも行くことができ語学が堪能で、一流の人たち、つまり今でいうセレブの人たちと接することができる。
メディアにも頻繁に登場し、才色兼備と言うイメージを植え付けたのは、パンナムの戦略が見事に当たったと言える。
アジア系、女性、というダブルハンディを背負って仕事を続けるのはなかなか大変だったようだが、女性のいわゆる『腰掛』仕事としてアピールして採用を続けたという。
今では様変わりのイメージがあるが、語学を駆使して世界中を飛び回るのがかっこいい、というのは今も昔もあまり変わらないような気がする。
このようなイメージが変わらなければ、女性が仕事をすることが世の中で当たり前に受け入れられて根付くのは遠い話になるのかもしれない。
アメリカの文化を知るには大変興味深い一冊
フロンティア、女性、仕事、人種、というキーワードがちりばめられていて、それらをうまく構成しながら納得感のある内容となっている。