信じられないような事故が中国広東省仏山市で起こった。市の商店街の路上を歩いていた悦悦(ユェユェ)チャンと言う2歳の女の子が、ワゴン車に轢かれた。それだけならかわいそうな事故ということになるのだが、轢かれて路上で血を流して倒れ苦しんでいるこの子を、通りかかった何人もの者が助けようともせず素知らぬ顔で通り過ぎて行ったと言うので驚いてしまう。ワゴン車の運転手は前輪で女の子を轢いて一度は停止するものの、車から降りてくることもなく、そのまま発車し、後輪でも女の子を轢いてしまった。さらに後続の車が停止もせずに女の子を轢いて通り過ぎた。この現場を通りかかったのはバイクや自転車に乗った人も合わせると、7分間に18人。19番目に通ったゴミ収集の中年女性がやっと女の子を助け起こし、警察や消防に通報した。女の子は、軍の病院で手当を受けたものの脳死状態が続き、結局亡くなった。轢いた運転手は2人とも逮捕されたが、最初に轢いた運転手は、逮捕前にこの子の父親に電話をして「カネは支払うが、刑務所に行きたくないから警察には出頭しない」と話していたということで、その心の荒廃振りにはことばもない。
http://www.youtube.com/watch?v=cJs_DyplYKE
このようすの一部始終が監視カメラに撮られていて、その映像が全国に放映されると、インターネット上には多数の批判が集中した。中国版ツイッター「微博」上では、この18人に対し「冷血動物だ」などの批判が殺到し、「経済発展の裏側で他人への関心が薄らぎ、寒々とした社会になりつつあるのではないか」「物質的に豊かになった半面で人心は失われた」などの批判が殺到し、「発展とともに私たちの社会の中に(面倒なことに関わりたくないという)計算や欺く気持ちが広がっている」と社会道徳の崩壊を嘆く声が圧倒的多数を占めたと伝えられている。
一方では、18人が通りすぎた背景として、06年に江蘇省南京で起きた事件を指摘する声もあるそうだ。中国メディアなどによると、バス停で転倒してけがをした高齢の女性を、若い男性が善意で病院に搬送したが、逆に女性から「この男に突き落とされて骨折した」と主張され、損害賠償金を払わされる羽目になったという。中国の法の運用はこれまでにも疑問があると指摘されているが、このケースもそのようなものだろう。微博上には、「善意を逆手にとられてしまうような社会では、関わらない方がましだ」と素通りした18人を擁護する意見も掲載されているようだ。