前にこのブログにも書きましたが、先日、中国映画の「さらば、復讐の狼たちよ」(中国題名「譲子弾飛」)を観ました。中華民国成立直後の1920年頃の盗賊と、ある市の悪徳ボスとの対決を描いたもので、なかなか面白いものでしたが、20年代と言うと中国の偉大な作家の魯迅が小説で描いていた頃です。それで興味を持ち改めて岩波文庫の『阿Q正伝』(竹内好訳)を読み直したのですが、長篇小説の「阿Q正伝」やその他の短編の時代の人物描写はとても面白く、現代の中国を考えると、こんな時代もあったのだなと感じ入ることが多くあります。特に私は短編の「から騒ぎ」や「孔乙己」、「故郷」、「村芝居」などが好きで、何度読んでも飽きません。
今の中国では想像もつかない時代から100年くらいで中国は大発展を遂げたのですが、それだけに社会に生じたひずみも大きく、魯迅が生きていたら何と言うだろうかと思います。西安の李真は魯迅の時代に比べると。私たちの想像以上にめちゃめちゃと言いましたし、魯迅が生きていたら「死ぬほど怒るだろう」とも言いました。「死ぬほど」と言うのは「とても」を強調した表現で、中国人はよく使います。魯迅は今でも中国では敬愛されていますし、上海には旧居が保存されていますし、記念館や記念公園もあります。
旧時代の弊風を厳しく批判し、新時代の到来を期待した魯迅ですが、金権主義に毒され、官吏の底知れない汚職にまみれた今の中国には、失望し、厳しい批判の目を向けるでしょう。このような気骨のある文化人は今の中国には存在しないのでしょうか。