東京都調布市の市立小学校で2年生の担任だった50代の女性教諭が、複数の児童に暴言を繰り返し、学校の勤務から外されていたことが分かりました。市教委によると、発覚したのは昨年11月中旬で、子どもが登校したがらないのを不審に思った保護者が、子どもにボイスレコーダーを持たせて、授業の様子を録音させました。レコーダーには、教諭の呼び掛けに返事をしなかった児童に「動物じゃないんだから、ちゃんと返事をしなさい」と叱ったり、別の児童には給食の際に「(もらう量を)少なくして。いつも残して迷惑だから。みんなもそう思うよね」とクラスの児童に同意を求める様子が録音されていたそうです。
私は小学校2年生の子どもに教師のことばを録音させる親の行為には違和感を覚えますが、親は我が子と担任教師の間がうまくいっていないのを心配したのでしょう。録音した子は担任に対して決定的な不信感を持つようになったのではないかと思います。親はそれを教育委員会に持ち込み市教委はすぐ教諭を担任から外し、副校長が担任となりました。1月からは学校に勤務もさせず、都教委に報告して処分も求めましたが、3月に「懲戒処分に当たらない」との判断を受けましたので4月から学校勤務に復帰させようとしましたが、保護者から反対の声が上がり、取りやめたそうです。よほどその担任に対する保護者の不信は強かったのでしょう。
録音された教師の発言の中の「動物じゃないんだから、ちゃんと返事をしなさい」も暴言なのかと私にはちょっと分かりませんでしたが、よほどきつい言い方だったのかもしれません。この教師は厳しい指導に定評があったそうですが、昨年6月には校長から言動について口頭で注意を受けていたといいます。それでも繰り返すのはやはりきつい性格なのかもしれません。
この記事よりも私がもっと衝撃を受けたのは、このニュースを報じたあるサイトへの書き込みの内容です。書き込みは1000件に達しましたが、そのほとんどはこの教師を批判するものです。いや、批判というよりも悪しざまに罵る罵詈雑言がほとんどで、読んでいると気分が悪くなりました。例えば「バカじゃねこの糞婆教師」、「馬鹿はお前だこの糞クズ教師」などはほんの序の口です。こういう書き込みには「糞」という言葉を使うのは当たり前のようで、私も前に私のブログへのコメントでこのことばを使って罵られたことがあります。
書き込みを見ていると、どうも教師、とりわけ小学校教師を見下げる者が多いのか、「昔から小学校の教師なんてきちがいとクズばっかりじゃん何を今更」というのもありこれはひどいと思いました。また「人格破綻者だから、東大出身なのに小学校教諭なんかにおちぶれたのか、東大出身なのに小学校教諭なんかにおちぶれたから、ヤサグレてしまったのか」という悪質なものもありました。この教諭は東大卒なのだそうですが、この書き込み者は、よほど東大出身が優れていて、小学校教師は落ちぶれた存在に思っているのか、小学校教師をしている次男が聞いたら怒るよりも軽蔑して苦笑するだろうと思いました。また許せないような差別観に溢れたものに「まず間違いなく 鬱病のチョン(帰化済み)の日教組だろうな」というものがありました。
小学校の幼い児童に乱暴なことばを吐くのは許されることではありません。しかし、だからと言ってこの教師に寄ってたかって聞くに堪えない暴言を浴びせかけることも許されることではありません。これではまるで集団リンチのようなものです。
『毎日』の夕刊のコラムに山口誓子の句「遠足の女教師の手に触れたがる」というのがありましたが、今も多くの教師達が子ども達から見ればこのような存在でありたいもので、そのような教師は少なくないと思います。上に挙げたようなひどい書き込みをした人達は、おそらく小学校時代に良い体験をせず、教師に対して親しみを持ったことがなかったのでしょう。可哀そうだと思います。