みの虫や啼かねばさみし鳴くもまた (酒井抱一)
ミノムシの季語は秋で、よく「蓑虫鳴く」と詠まれるようですが、本当は鳴きません。ある説によればこれは秋の深い頃まで枝先で鳴くカネタタキの鳴き声であると言いますが、秋も深まったとき葉の落ちた枝にぶら下がっている風情は、何となくさびしげに鳴いているように思われたのでしょう。
インタネットより
しかし小さい時にはミノムシを捕まえてそのミノを剥ぐと中から真っ黒でグロテスクな幼虫が現れて、気味の悪い思いをしたものです。色とりどりの布や色紙の小片の中にこの幼虫を置くと、やがてきれいな蓑をまとったミノムシができるというのでやってみましたが、根気がなかったのかうまくできませんでした。
そのミノムシが近年激減しているそうです。そう言えば近所でも近頃目にしません。ミノムシは蛾の仲間ですが、特にオオミノガの幼虫に寄生するハエが繁殖し、ミノムシが激減したたようです。このオオミノガは作物を食い荒らすので、中国で駆除するために寄生蜂が放たれたのが、日本に一九九〇年代以降、侵入したようです。
蓑を剥ぐと出てくるのは雌で羽化することはなく、雄は羽化すると蓑の外から体を入れて、その中の雌と交尾します。その後雄は死にますが雌は蓑の中で産卵してから外に出て死にます。詳しいミノムシの生態を読むとなかなか興味深く、自然はこのような奇妙な生き物をなぜ造り出したのかと不思議です。
冬の寒さの中、枯れ枝にぶら下がるミノムシは風情のあるものですが、最近の激減で各自治体で絶滅危惧種に選定されるようになってきているそうです。ミノムシはいわば害虫ですが、私達にはあまりそのような意識がないので、こんな地味な虫でも絶滅しては寂しいと思います。