前にも書いた『毎日』朝刊の「万能川柳」という投稿欄にこんな句が載っていました。
ただいまぁおかえりぃああしあわせだ
女性の句ですが、おそらく母子の遣り取りではないでしょうか。ごく普通の挨拶の中に「幸せ」を感じる気持ちがよく出ています。私は勤めていて帰りが遅かったので、妻と子ども達のこのよう情景は記憶にありませんが、多分同じだったのでしょう。次男は中学生の時、帰宅途中に電話して「今日のご飯は何?」とよく聞くので妻は笑っていました。「ゴチャ煮よ」と答えた時は、息子はため息をついたそうです。「ゴチャ煮」というのは野菜などいろいろなものを混ぜて炒め煮したようなもので、子どもたちが名付けたものらしいのですが、彼らはこれが苦手でした。食べ盛りでしたから、もっとボリュームのあるものがほしかったのでしょう。それでも、小さい時から私が「お母さんが作ったものは嫌いと言ってはいけない」と言っていたものですから、文句は言わずに食べていたようです。
一日の終わりの母と子の遣り取りには何かほのぼのとしたものがあります。子どもは家に帰ってお母さんの顔を見て安心し、母親も何かほっとするのではないでしょうか。上の句は新婚間もない若い夫婦の遣り取りなのかも知れません。それでもいいのですが、私にはどうも母子の方がいいように思います。
最近は家庭でも挨拶が少なくなっていると聞きますが、やはり基本的な挨拶、「おはよう」、「いってきます」、「ただいま」、「いただきます」、「ごちそうさま」、「おやすみ」などは家族の中では欠かしてはならないものと思います。
これを書いている今は夕方でもう薄暗く辺りは静かで、妻や息子達の「ただいま」、「おかえり」が聞こえてくるような気がします。