熊谷三郎徒然日記(gooブログ版)

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能登の復興についての提言(テキスト版)

2024-06-13 09:33:45 | 日記
 マイあさ!のホームページにテキスト版がアップされましたので、以下に引用させていただきます。
>今回は能登半島地震からの復旧・復興について考えます。
国の予算のあり方を議論する財務大臣の諮問機関は4月、能登半島地震の復旧・復興にあたっては「住民の意向を踏まえつつ、集約的なまちづくりを検討すべきだ」と提言しました。それに対して、住み続けたいと願う人たちの権利は憲法に定められた人権を保障するためにも守られるべきであると「住み続ける権利」を提唱している人がいます。著書『住み続ける権利~貧困、震災をこえて』があり、憲法と人権、社会保障政策について詳しい金沢大学名誉教授の井上英夫さんに聞きます。(聞き手・田中逸人キャスター)
【出演者】
井上:井上英夫さん(金沢大学名誉教授)
“住み続ける権利”とは?
――この「住み続ける権利」ですが、井上さんが以前から提唱している権利ということです。そもそも、どういった意味があるんでしょうか?
井上:
要するに「住み続ける権利」とは、人々が自己決定に基づいて、どこに、誰と、どのように住むか、それを決めることができる、それを国が権利として保障するということです。憲法の体系でいえば「居住移転の自由」という22条が、いわば直接的に住み続ける権利をうたっている。そして、それを国が保障する。それが憲法でも基本的人権、「人権」として定められていて、現に保障されているという、そういうことですね。
――今、能登半島地震の被災地から、果たしてこの場所に住めるんだろうか、そういった声も聞かれます。今回の地震とこの権利の関係、どのように考えますか?
井上:
能登の人たちだけじゃなくて、日本で田舎に住んでいる人は自分の住んでいるところが一番いいところで、そこに帰りたい。しかもみんなで一緒にそこに住み続けたいという、そういう強烈な願いがありますね。その願いを実現するということが、人権の保障、住み続ける権利の保障だということですね。それを保障するのは誰かということになれば、やはりお金も人も物も持っている、そういう大きな力を持った国が「住み続ける権利」という人権を保障する。単に支援する、助ける、寄り添うだけじゃなくて、そういう責任があるということです。
必要な財源は?
――過疎地のインフラの整備ということでは、どの程度、お金をかけるのかという議論もありますよね。井上さん、このあたり、どのようにご覧になっていますか?
井上:
はい、ばく大なお金がかかりますね。しかし、東日本の大震災をはじめ、被災地の復興を見ていくと、日本はそれだけお金を持っている国ですね。問題はお金の使い方ですよね。ばく大なお金を、例えば、一番不要・不急だと思う軍事費ですね、こういうことに使っていたら、いくらあっても足りません。もう一つは、東日本の被災地でも行ってみると分かりますが、道路や14メートル以上の堤防、巨大な堤防を作るというところに、ばく大なお金が注がれています。本当に必要なところ、人々の生活・人間の復興に必要なお金が使われているのかどうか、そこから問い直していく。つまり、税金は、人権を保障するということ、そのために使われなければならないということですね。


集落ごとに仮設住宅に住む権利
――その能登半島地震の被災地で「住み続ける権利」を保障するためのヒント、そういった事例というのは何かありますか?
井上:
2007年の能登半島地震の時、門前の深見地区は地区全員、船で避難しました。そこでは、仮設住宅を比較的近いところに作り、みんなでまとまって地区の人たちが住む。区長さんも、地域の区長さんがそのまま勤めるみたいなやり方をした。これが非常に心強いわけですよね。
さらに近くが大事だっていうのは、たとえば「仮設に行って一番困ったことは何ですか」ってあちこちで聞くと「実はやることがない。これが困ったことだ」っておっしゃるんですね。そういう意味では仮設住宅から家の田畑や海に戻って仕事をするとかですね、そういうことができることが精神的に非常に安定するということなんですね。ですから、そういう暮らし方、これも今度は生かしていかなければならない、大事にしなければならない。
それから仮設住宅も、東日本の時から自治体によって木造住宅の仮設を作るというふうなことがありまして、それは今度も一部いかされています。木造住宅を作るということはそこに仮設ではなくて、能登に戻ってきて、そこに住み続けるという話になるわけです。それができるよう、公営住宅を作っていくということですね。
今回、住宅についても新しい動きは出ている。「いしかわ方式」と呼ばれているようですが、全体から見れば、数的質的に微々たるものですよね。数が非常に少ない。でもそういう新しい目を大きくして、さらに全体に行き渡るようにしていくということでしょうね。
インドネシアで見た! 自己決定権
――井上さんは、災害などの現場は、日本各地だけではなくて海外も10カ国以上、調査に行っています。その中で「住民の住み続ける権利」を国が担保あるいは保障した例があるということなんですが、これについて教えてください。
井上:
スマトラ沖の大地震大津波で最も大きな被害、30万人以上が亡くなったインドネシアのバンダアチェには何度も行っているんですが…。
――2004年に発生したスマトラ島沖の巨大地震によるインド洋大津波の被災地ですね。
井上:
インドネシアは発展途上国だから、復旧や復興政策も進んでないんじゃないかと思うでしょう。しかしそうではない。政策の基本的な考え方は、先ほどから言っている「住み続ける権利」です。被災者が自己決定に基づいて、どこに、誰と、どのように住むか、を決めることができる、それを国が保障する…という、そういう考え方が具体的な形で見られたわけです。
被災した人たちに、これは州の政府ですけどね、「あなたはこれからどこに住みますか」という問いかけをします。さらわれた、そのところに堤防なんかありませんからね、そういうところにまた住みますか、「山と海の間の真ん中辺に住みますか」、それとも「山の上の本当に津波の来ないところに住みますか」という問いかけをして、それを選んでもらって、その人たちの望みどおりのところに住むんですね。
ただし、国・州は、自分で決めるんだから、あとはほっといて、あんたたち海辺に住みたいという人たちはね、津波にさらわれても知らないよと、そういうことではない。防災=徹底的になくすんではなくて、「減災」=災害を減らすという政策がとられている。つまり避難路を整備する、とにかく津波が来るという時は逃げる、そのための道路をしっかりと作る。もう一つは高いところで避難できるような建物を作ったり、そういう政策を取っているんです。これは逆にいうと、お金がないから大堤防は作れないということでもあるんですが、しかし大事なのは、そういう根本的な考え方、思想、そしてそれが人権の保障の基本だということ、こういうことですね。これがインドネシアのアチェで学んだことです。
イタリアで見た! 国の責任者のふるまい方
――そして、もう一つ参考になる国があるようですね。
井上:
イタリアで2016年ですね、大きな地震が起きています。その一番大きな被害があったアマトリーチェとか、被災地域に1か月後ぐらいに行っているんですが、行ったところで、テントの中に災害対策本部が設けられている。そこには国、自治体、それから民間の人たちや地元の人たちが集まって、みんなで議論しているんですね。そしてこの責任者は女性でしたけども、国の職員、公務員なんです。その人が「私が責任者です」と。そして、「イタリアで今やろうとしていることは、ここにいる被災した人たち、住民の皆さんの願い、希望を叶えることです。それは国の責任です」って明言しましたね、はっきり。
それがどういう願いかというと、アマトリーチェっていうのはチーズが有名で、乳製品が有名なところで牧場がある。その牛のそばにいないと成り立たないわけですよね。だから被災された人たちでも牛のそばにいたいと。そういう話だったら、牛のそばに仮設住宅を作る。自動車の中で寝たい、暮らしたいという人については、そういう場を設置する。繰り返せば、人々の願いを実現するのが国の仕事であるし、責任であるということですね。こういうことを改めて確認させられたということです。
日本で必要な制度~参加権の保障~
――では、今後日本で「住み続ける権利」を獲得していくためにはどういうことを議論したらいいでしょうか?
井上:
一番大事なのは自己決定ということですから、自分が自分の暮らし方を決めていくという権利があるとなると、それを保障するのはやっぱり「参加」なんですね。「参加の制度」といっていいでしょうね。つまり、この復旧復興計画を作るときに、一番被災した人たち、そして住民の皆さんのやはり声を聞く。ただ“意見を参考に聞く”んではなくて、その人たちが自分たちの復興計画を自ら作り上げる、政策決定過程に参加する。そのこと自体が参加の権利として保障されているということなんですね。これが一番私は大事なことだと思います。
能登半島の現場で必要なこと
――被災した能登の人たちはどうしたらいいですか? 能登の人たちからこうしたいと発信すべきこと、できること、どんなことがありますか?
井上:
能登の人たちは、やさしい、我慢強いと言われます。やはり国にものを言ったり、自治体にものを言うというのが少ないですね。だけれども、そこで声を上げなければ、やはり自分たちが願いとする「能登に戻る、能登に住み続ける」ということはできないですね。被災して大変でしょうが、私たちが行って話を伺うとそこで本音を語ってくれるわけです。そういう本音を国や自治体にぶつけるべきだと思うんですね。行動には、被災していない私たちがお手伝いをしていくというのも、また必要なことですが…。
――ありがとうございました。けさは「住み続ける権利」について、金沢大学の名誉教授、井上英夫さんに聞きました。ありがとうございました。
井上:
ありがとうございました、またよろしくお願いします。
皆さん、能登、見守ってください。能登、忘れられるのが一番怖いんですね、被災された人たち。ですから忘れないでください。考え続けてください。よろしくお願いします。
リスナーからの反響
――リスナーからメールをいただきました。石川県の金田俊一さんです。
奥能登からの転出が、今回の地震で激増しています。しかし、地元に戻りたい人も多くいます。そういった人の人権をしっかり守ることが重要だと思います。あと、最後に「能登を忘れないで」と言っていましたが、風化してしまうのが一番こわいのです。被災者も声を出すことが重要なんだなと痛感しました。

 写真は8年前に訪れた白米千枚田です。早く元どおりに復旧されることを願っています。
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