蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

海よりもまだ深く

2017年06月18日 | 映画の感想
海よりもまだ深く

主人公(阿部寛)は、かなり昔に文学書を受けたものの、その後、鳴かず飛ばずで、今は(浮気調査を主とする)探偵をやっている。
妻(真木よう子)と離婚したが、まだ未練たっぷりで、元妻が新しい男とデートしているのを尾行したりする。
主人公の母は古い団地で一人暮らしだが、ある台風の夜、偶然その団地の部屋で主人公と元妻、長男が一晩すごすことになり・・・という話。

阿部さんが演じるバツイチの小説家志望の主人公、とだけ聞くと、ハードボイルドか?そうでなくても少なくともミステリだろ、なんて思うものなのですが、全然そうではありませんでした。主人公はかなり最低な男で、探偵活動の対象者と裏取引したり、高校生をカツアゲ?したり、母親のへそくりをちょろまかそうとしたりします。(仕事が終わってボロいアパートに帰り、机の前で小説を書こうとしたりするところは、ちょっとだけカッコいいのですが)

本作のテーマは、古き良き団地生活のノスタルジー、でしょうか??(違うか・・・)。
母親の部屋が描写されるシーンがやたらと多いですし、一応クライマックスである台風の夜に主人公と妻と子供が入り込む修理中のタコ型滑り台ドーム?も昔なつかしいフォルムでした。

是枝監督の作品は、事件がない日常を描く、みたいなパターンが多いのですが、本作はあまりにも事件(というかストーリーの起伏)がなさすぎのような気がします。作品を重ねるにつれストーリー性が薄れていくというのは、アート系の監督にはありがちな傾向かもしれませんが、ちょっと退屈でした。

登場する時間はごく短いのですが、探偵事務所の潔癖症?の所長役のリリーさん、主人公の助手役の(主人公に対して)ツンデレな?池松さんが、いい感じでした。
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マイインターン

2017年06月18日 | 映画の感想
マイインターン

衣料の通販サイトを起業して急成長させた主人公(アン・ハサウェイ)は、多忙すぎて育児と家事は夫にまかせっぱなし。
その通販会社は社会貢献の一環として高齢者のインターンを受け入れることになる。
退職後、妻を亡くして手持ち無沙汰なベン(デ・ニーロ)はインターンに採用されて主人公の第二秘書役のような立場になるが・・・という話。

「プラダを着た悪魔」の続編のような内容。
同作では、メリル・ストリープが(コメディ的な内容の中にも)寿司のワサビのようにピリッとした味をきかせていたのが印象的だった。

本作ではメリルの役どころをデ・ニーロが担うんだろうなあ、と思って見ていたのだが、最後まで(能力はあるが)大アマのおじいいちゃんみたいな立場は変わらず、ちょっと締りのないストーリーになってしまっていた気がした。

こんな映画になるのだから、高齢者のインターンを受け入れる、といのはアメリカでは足り前のことなんだろうなあ。職場の人がそれほど違和感なくそうしたインターンを受け入れているように見えることも印象的。かの国にはいろいろ問題がありそうだけど、やはり他の多くの国よりも進んでいるなあ、と思える‥がたくさんあるのだが、こうした活動もその一つ。
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小倉昌男 祈りと経営

2017年06月18日 | 本の感想
小倉昌男 祈りと経営(森健 小学館)

ヤマト運輸の中興の祖、というより宅急便の創始者として知られる小倉昌男さんの評伝。

企業経営者として、行政の不公平、不公正な規制への挑戦者として、この上ないほどの地位を築いた小倉さんが、ヤマトの経営から退いた後、障がい者のための福祉活動、というより、障がい者の自立(月給10万円を支払える事業)をめざしてパン屋の経営を開始したのはなぜなのか?という謎を、小倉さんの家族関係から解こうとする。

謎の提示、そしてそれが次第にほぐれて解き明かされていく過程は、ミステリ仕立てっぽくで、ちょっとしたサスペンス風味もあってとても面白く読めた(面白い、というのは多少憚られる内容ではあるが)。

そうではあるのだけれど、こんな家族の秘密みたいなことを暴いてしまっていいのかな、とも感じた。もちろん小倉さんの子供たちに直接インタビュウしているので了解を得ているのだろうけど、小倉さんって確かに有名人ではあるけど、何か犯罪的なことをしたのではもちろんなく、「公人」といえるほどでもない、と私は思うので。
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バッタを倒しにアフリカへ

2017年06月17日 | 本の感想
バッタを倒しにアフリカへ(前野ウルド浩太郎 光文社新書)

著者は、博士号を取った後(任期なしの)所属先が決まらない状態、いわゆるポスドクである。
昆虫、特にバッタを専攻?していて、モーリタニア(西アフリカの国で日本へのタコの輸出で有名)のバッタ研究所(アフリカではバッタの集団発生による農業被害が深刻なため、その対策などを研究している)へ、野外研究のために赴く・・・という話。

タイトルから想像すると、バッタの集団発生を防ぐ画期的な研究成果を語っているのかと思えるのだが、実際はポスドクという厳しい立場を自虐的に語る部分がほとんど。
ポスドクの悲哀を描くというと、福岡伸一さんの作品が思い浮かぶのだが、福岡さんのがハイブラウ、文学的とすれば、(失礼ながら)本作は、若干下世話でマンガ的だった。もっとも福岡さんはとっくにテニュアを得てから書いた作品だからこそいろいろ飾って描ける面もあると思う。著者はポスドク真っ最中なわけで、本音に近いところが出ているのかもしれない。

実はモーリタニアでの研究成果はまだ論文化できていないので、この本には書けないのだとか。「え~これって看板に偽りあり」なのでは?と正直なところ思ったが、本筋とは関係なく面白く感じた内容、トリビア的な記述(以下に例示)も多くて結構楽しめた。

◆昆虫の研究といえば、(ファーブルのように)野外での観察が中心なのかと思ったら、少なくとも日本ではインドアでサンプルの昆虫を育てて観察するという手法がほとんどらしい。著者もフィールドでの研究に臨むのはモーリタニアが初めて。

◆砂漠にあるオアシスは、イメージと違って悪臭ただよう泥沼のようなところ、らしい。

◆西アフリカでは、女性は太っている方が魅力的と考えられている。このため子供に無理矢理大量の食物を食べさせる慣習がある。

◆モーリタニアは、一夫多妻制。著者が雇ったドライバーも複数の妻を持ち、妻たちの家を行ったり来たりしている。(今でも法的に一夫多妻が認められている地域があることにびっくり)

あと、モーリタニアのバッタ研究所のババ所長がとても魅力的に描かれていた。
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俳優 亀岡拓次

2017年06月10日 | 映画の感想
俳優 亀岡拓次

脇役専門の俳優である主人公(安田顕)は酒好きでロケ先でも酒場に立ち寄る。ある居酒屋で美人で気さくな女将(麻生久美子)に一目惚れするが・・・という話。

主人公が美人女将とカウンタをはさんでぼそぼそ話すところや、超いいかげんなフィリピン人女優??との撮影で酔っ払ってしまうシーンはなかなかよかった(特に、安田さんの「アル中になりかけ?の人が酒を飲む」シーンがいかにもそれらしくてよかった)のだが、舞台芝居の稽古のシーンやスペイン人名監督との絡みは幻想的というか観念的な場面が続いて「何かよくわからんなあ。監督の一人相撲?」という感じだった。

原作があるようなので、もともとがそういう話なのかもしれないが、美人女将との不器用な恋の行方が主軸の方が面白かったと思う。
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