蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

官報を読む

2005年05月29日 | Weblog
仕事の関係で毎日官報を読んでいます。
もちろんすみからすみまで読んでいるのではなくて、目次を見て自分の部署に関係のありそうな法令だけを拾い読みしています。
官報の主な目的は新しくできたり改正されたりした法律や命令を報せることだと思いますが、毎日最大のページ数がさかれているのは破産関係の記事です。
毎日実に多くの人が破産しています。昔とちがって破産できたら(免責されるので)一安心という時代なのかもしれませんが、それにしてもこれだけあるとお金を貸した人にも少々同情したくなってくるほどです。
時々、「行旅死亡人」という記事もあります。文字通り行き倒れの人の心当たりを募る内容です。例えば・・・
「本籍・住所・氏名・性別不詳、年齢5~15歳小児の白骨化した前頭骨、遺留品はなし
上記のものは、平成16年10月26日午前9時頃XX市XX町望海公園地先海岸砂浜の砂上において発見されました。遺体は火葬に付し、遺骨は保管してあります。お心当りの方は当市生活福祉課までお申し出ください」
これだけでは手がかりがとぼしすぎるわなあ。もっとも手がかりがあれば関係者に連絡が行くわけで、もうどうしようもないもので事件性がないことが確定したものだけがここに掲載されるのでしょうが・・・
その他にも自衛隊の射撃訓練の予告とか天皇陛下の行幸予定とか実に様々な記事があります。こんんなの見てる人いるのかなあ、とも思いますが、中には血眼で求める記事を毎日さがしている人がいるのかもしれません。宮部みゆきさんの「火車」に主人公が必死になって自分の父親の死亡記事をさがす場面があり(官報じゃなかったかも・・・未確認)、とても印象的でした。

競艇の話。
笹川賞は総理杯と違い、順当なメンバーが優勝戦に残り、順当に植木さんが勝ちました。常滑で植木さんがインでは逆らいようがありませんが、例によって2着狙いの戦法ですので、3-5、4-5、3-6、4-6などを買い、押さえで1-5、1-6も。ほぼトントンでした。しかし、今時2連単を買う人もめっきり少なくなったのかなあ。あるいはSG優勝戦のせいか。植木-今垣で1140円はつきすぎでないかい?
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リミット

2005年05月28日 | 本の感想
昨日、野沢尚さんが書いた「リミット」を読み終わりました。
誘拐事件を担当する婦人警官が、捜査中に同じ犯人に自分の子供を誘拐され、警官の立場を離れて自ら子供をとりもどそうとする話です。警察小説としても暗黒小説としても読め、どんでん返しもあります。

筋立てがとてもよく練られていて、読みやすく、ラストへむかってすべての伏線がきれいに収束していきます。
ちょっと説明的な部分が多いような気がするのと主人公の婦警の活躍ぶりがあまりに超人的なのが現実離れしている感じがしましたが、まあ十分許容範囲で、安心して(?)ハラハラドキドキできます。私の読書時間はほとんど通勤の電車の中ですが、混みあって不快な電車内の環境を忘れさせてくれました。

ただ、(贅沢を言うと)あまりによくできすぎているというのか、破綻がなさすぎるというのか、スマートすぎるというのか、ミステリ教室の教科書みたいな感じで、作者の思い入れみたいなのがあまり表にでてこないように思いました。例えていうとビニールハウスで大事に栽培された均整のとれた花みたいなものかなあ。ぶかっこうでも野性的なむきだしの美しさみたいなものも欲しいような気がします。
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大仏破壊

2005年05月23日 | 本の感想
「色と金。概ね人間はこれでいいように動かせます。悲しいかな。これが真実、それもとびきり健全な真実ですよ。色と金以外の何かが人間を動かすなんて不健全な事態には反対ですね。」(「バルタザールの遍歴」佐藤亜紀)

今日、高木徹さんの書いた「大仏破壊」を読み終わりました。アフガニスタンを支配していたイスラム教の宗教集団タリバンがバーミヤンにある巨大石仏を破壊するに至るプロセスを書いたものです。
大仏の破壊は結果であって、大部分は当初アフガニスタンを救おうとしていたタリバンがビンラディンによってテロ支援者に変質していく過程が描かれています。世間的には悪の権化のように言われているタリバンに対する著者の視点はけっこう同情的です。
この本によれば、タリバンのリーダーのオマルは最初は冷静な計算と判断のできる人であったが、ビンラディンの巧みな誘導により判断力を失い、極端な行動(世界中を敵にまわすきっかけとなる大仏の破壊)に走ったということになっています。しかし、「大仏破壊」の中で引用されているタリバンの関係者の以下の証言を読むと(著者同様)「説得力の断片」を認めざるをえません。
「勧善懲悪省の連中が、こう言ったのです。『今、世界は、我々が大仏を壊すと言ったとたんに大騒ぎを始めている。だが、わが国が旱魃で苦しんでいたとき、彼らは何をしたか。我々を助けたか。彼らにとっては石の像の方が人間より大切なのだ。そんな国際社会の言うことなど、聞いてはならない』。その言葉の説得力に勝るものはありませんでした」

同じ著者の前著「戦争広告代理店」でも、ボスニア紛争で”民族浄化”を行ったとされるセルビア人について、一方的な決め付けを戒め、他の民族も似たようなことをしていたがセルビア人は関係国や世界中から集まっていたジャーナリストへの対応が稚拙であったという見方を紹介しています。
ともに世間の通り相場の報道からは読み取り得ない、斬新な視点を提供している点で非常に高く評価されるべき2冊であると思います。ただ、すべての関係者を平等に評価しようとしていた「戦争広告代理店」に対し、「大仏破壊」では”タリバンはともかく、ビンラディンこそは諸悪の根源といったような記述・評価が目立ったように思いました。(ビンラディンに関する情報が少なすぎるせいかもしれません)

著者はNHKの記者なのですが、極めて危険かつ取材が困難な国々でこれだけの成果をあげる力量は並たいていではありません。また、それを許すだけのサポートができるのも、採算(ある程度は)度外視のNHKならではかもしれません。そうだとすれば受信料を払う意義も見出せるかもしれません。

冒頭の引用は、指導者が損得勘定を超越した主義主張をはじめると国家は危険な方向に動き出す、ということを示唆しています。タリバンもそうだったのかもしれません。私の住む国の指導者もちょっとそんな臭いをただよわせているような気がしないでもありません。

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金庫の中の毒蛙

2005年05月21日 | 本の感想
もう25年以上前になりますか、高校時代に村上龍さんの書いた「コインロッカー・ベイビーズ」(現在は講談社文庫)を読みました。
本を読むことによって気分が悪くなって本当に吐き気がしたり、逆にスッキリしてハイな状態にもなれることをこの本により初めて体験しました。また、登場人物の感じ方が自分にそっくりである箇所がいくつかあり、架空の人物との一体感みたいなものを覚えました。
こうした感覚を「感動」と呼ぶのかもしれません。だとすると「コインロッカー・ベイビーズ」以来、「感動」した本というのは片手で数えるほどしかありません。

ゴールデンウィークに同じ著者の「半島を出よ」(幻冬舎)を読みました。
北朝鮮政府に対する反乱軍と称する人たちが福岡市を占領するという話で、特に下巻は冒険小説っぽくなって面白いのですが、えー、すみません、「感動」には至りませんでした。

かなり厚めの上下巻で、数多くの人物がそれぞれのエピソードを積み上げていく構成になっていますが、本筋以外のほとんどのエピソードは提示されるだけで収束には至りません。それが不満という人も多いのでは?と思われます。
しかし私としてはすべての伏線が終末に向かって処理されていく予定調和の筋立てよりも、ちょっと突き放されたような終わり方の方が好きです。本筋は全く破綻なく終わっていますが、著者が読者に言いたいことは別にあって本筋はサービスのようなものかなあと感じました。
色鮮やかなヤドクガエルがデザインされたカバーに影響されたのでしょうか、毒蛙や虫の面倒を見ることが生きがいというシノハラのエピソードが一番印象に残りました。そのシノハラのエピソードも本筋とは全くといっていいほど絡みがありません。
(最初は、蛙の毒を使って敵をやっつけるのか・・・なんて思ってましたが)
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田紳有楽 空気頭

2005年05月20日 | 本の感想
朝、いつも通勤に使う電車が遅れていました。ターミナル駅の信号機故障が原因で10分ほど遅れたのですが、それだけで(いつも私が乗る駅の時点はかなりすいている)電車が超満員。乗換駅ではホームから人があふれ落ちそうで、駅員にクレームをつける人がちらほら。多少無理しても定時運転を厳守せざるを得ない理由がちょっとだけ理解できた気がしました。

昨日、藤枝静男さんの書いた「田紳有楽 空気頭」(講談社文芸文庫)を読み終わりました。川上弘美さんがエッセイで熱烈に推奨されていたので、読んでみましたが、すみません、私にはあまり面白くありませんでした。
文庫本の裏表紙に「私小説の極北」みたいな紹介が書かれていて、内省的な重苦しい内容かなあ(私はそういう小説もけっこう好き)と読みはじめたのですが、かなり(何というか)ポップなところもあります。「田紳有楽」の主人公は骨董のグイ呑みや皿で、これが金魚と恋愛したり、空を飛んだりするのですから、「この話のどこが私小説?」と素人には思えました。
昔の筒井康隆さんや今の町田康さんの小説が好きな人には面白く読めるのかなあと思います。

「田紳有楽」で鳥葬のやり方をかなり詳しく説明している箇所があって、とても興味深かったです。また「イカモノ」(ニセモノとかまがいものといった意味)という言葉が妙に気に入りました。

競艇の話。
今日は津と若松の記念の優勝戦。
津では矢後さんが38歳にしてG1初優勝。もっともSG優勝は経験済みなので、大感動というわけではなさそうですが、2号艇なのにコメント通り6コースにでて内5艇をまくりきったとのこと。まくり勢が作るレースは派手で見る楽しさがある。インが勝つばかりじゃおもしろくない。昔のようにチルト3に跳ね上げて勝負!みたいな時代がこないかなあ。
私の好きな買い方は2連単の2着流しで、2着が多い矢後さんはよく買う選手。きょうは1着でとれなかったけど。

若松では菊池さんがこれもまくって(市川さんと競り合った後)優勝。こちらは市川さんの2着を3点買っていてとれました。
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