介護民俗学という希望(六車由実 新潮文庫)
著者は民俗学の博士で、介護施設で老人から聞く昔話の意外な豊かさに感心し、それを記録することで民俗学に貢献できると考えている。自ら管理者となった沼津のデイケア施設「すまいるほーむ」での聞き書きや思い出の味の再現活動などを綴った本。
老人からの聞き書きの内容はそれほど興味をひかれなかったが、「すまいるほーむ」の運営会社の社長の村松さんへのインタビューは面白かった。いわゆる老人病院の事務長から始まって初期の介護保険関係の活動や民家を改造してすまいるほーむを創設するに至る経緯が、そのまま日本の介護の歴史を語っているように思えた。
また、認知症によると思われる幻視に苦しむおばあさんに、村松さんがお札をあげて苦しい時にはお札を拝むといい、というアドバイスをしたら、症状が軽減された、というエピソードが宗教の原型を見るようで興味深かった。
これは私の偏見なのだが、どうも介護ビジネスというのは、(老人や家族から)カネをまきあげるだけみたいな胡散くささを感じていた。しかし、本書を読んで、情熱をもって介護活動に取り組む人もいるのだということがやっと少しだけ理解できたような気がした。
著者は民俗学の博士で、介護施設で老人から聞く昔話の意外な豊かさに感心し、それを記録することで民俗学に貢献できると考えている。自ら管理者となった沼津のデイケア施設「すまいるほーむ」での聞き書きや思い出の味の再現活動などを綴った本。
老人からの聞き書きの内容はそれほど興味をひかれなかったが、「すまいるほーむ」の運営会社の社長の村松さんへのインタビューは面白かった。いわゆる老人病院の事務長から始まって初期の介護保険関係の活動や民家を改造してすまいるほーむを創設するに至る経緯が、そのまま日本の介護の歴史を語っているように思えた。
また、認知症によると思われる幻視に苦しむおばあさんに、村松さんがお札をあげて苦しい時にはお札を拝むといい、というアドバイスをしたら、症状が軽減された、というエピソードが宗教の原型を見るようで興味深かった。
これは私の偏見なのだが、どうも介護ビジネスというのは、(老人や家族から)カネをまきあげるだけみたいな胡散くささを感じていた。しかし、本書を読んで、情熱をもって介護活動に取り組む人もいるのだということがやっと少しだけ理解できたような気がした。