蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

言ってはいけない

2016年06月18日 | 本の感想
言ってはいけない(橘玲 新潮新書)

行動遺伝学における知見をもとに、題名通り公には口にするものはばかれるような人間の本性?を語るエッセイ集。

知見をもとに、といっても(著者の他の作品でもよくみられるように)いろいろな本から得た(普通の人にとっては意外感がありそうな)話を並べたよう内容。
その情報源の本もほとんど翻訳書なので、こうした分野に興味と知識がある人には退屈に感じられるだろうな、と思えた。
私はそういう知識はないけど、著者の作品はほとんど読んでいるので「どこかで読んだな、この話」と思えるようなものも散見された。それでも新刊が出ると読んでしまうのは、やっぱり語り口がうまいせいだろうか。本書もさくさくと読めた。

頭がいい人(知能指数が高い人)ほど高い経済的地位を得られる→
知能指数は人種によって影響される→
このため特定の人種(知能指数が高くない人が多い人種)でリッチになれる人は少ない。
といったような、ミもフタもない話が続く。
「けしからん」なんて思う人もいるかもしれないけど、「まあ、そんな説もあるのかもね」くらいに受け止めてエンタテイメントの一種として楽しめばよいかと思う。

みんな、そんなことを言われなくてもわかっているけど、あえてそういうことを言わないことにして、できる限りタテマエの世界で生きていきましょう、というのが世間というものだと思う。
なので、本書を読んだ感想を一言でいうと
「それをいっちゃあ、おしめえだ」
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叫びと祈り

2016年06月12日 | 本の感想
叫びと祈り(梓崎優 東京創元社)

斉木というジャーナリストがサハラ砂漠、スペイン、ロシア、アマゾンなどに取材で訪れる先々で殺人事件に巻き込まれ、その解決を迫られる・・・という連作集。

デビュー作らしい砂漠を舞台にした「砂漠を走る船の道」は動機の意外さ二重構造の謎解きで面白かった。

ロシアの正教会の不朽体(腐敗しない死体)の聖人化認定をめぐる「凍れるルーシー」は、「いくらなんでもトリックに無理があるなあ」と思っていたら、ミステリじゃなくてホラーだったというオチだったが、それはそれで楽しめた。

「凍れるルーシー」の(ややトンデモ系の)ラストが叫びと祈りの場面で締めくくられていて、(連作集の)次の一編のタイトルが「叫び」で次が「祈り」だったので、「ホラーと見せかけた「凍れるルーシー」の真相(ホントのトリック)が次の2編で明かされるのかと思ったら全くそうではなかったし、「祈り」は(本書全体を)夢オチさせるみたいな内容だった(?)のは、いただけなかった。
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やわらかな生命

2016年06月04日 | 本の感想
やわらかな生命(福岡伸一 文春文庫)

週刊文春に連載されたエッセイ集の第3弾。シリーズ最初の「ルリボシカミキリの青」がとてもよかった。
著者の作品は結構読んでいるし、シリーズも第3弾ともあって「これ、どっかで読んだな」というエピソードが多いが、それでも面白いのは著者にエッセイのセンスがあるからだろう。本書では次の話題が特によかった。

・ノックダウンマウス(遺伝子の一部が除かれて生まれたネズミ)が、(実験している著者の思惑に反して)普通のネズミと全く変わりなく成長してしまう。いろいろな遺伝子を除いて実験しても異常が出ることの方が珍しく、生命の不思議な対応力を説いたもの。

・普通の馬はあまり走らなし、速く走ることも得意ではない。しかし、サラブレッドのスピードは年々速くなっている。それは「血の濃縮」(交配による改良)がどんどん進んでいるから。特に心臓が強化されていて高い心拍数を維持できるように改良が図られている。

・アミノ酸配列の決定法を編み出してノーベル賞を受賞した後、その地位に安住せずDNA配列の決定法を開発して2回目のノーベル賞受賞、さらにRNA配列の決定法まで考案して生きていれば3回目の受賞も間違いなしと言われたサンガー博士の話。

・終戦をまたぐ大変な時期にも虫の観察日記を書き続けた少年時代の日高敏隆さんの話。
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チャッピー

2016年06月04日 | 映画の感想
チャッピー

未来の?南アフリカでは、暴動鎮圧などの治安対策に人型ロボットを投入して効果をあげていた。
主人公のロボット研究者はAI開発にも興味があり、壊れた治安対策ロボットに自分が開発したAIを移植する。やがてそのロボット(チャッピー)は人間の赤ん坊のような行動をとり始めるが、ギャングに誘拐?されてしまう・・・という話。

同じ監督の「第9地区」と舞台を同じくし、ユーモア系SFと見せかけて、それなりに深遠なテーマを感じさせるという点でも共通点が見られる。

チャッピーの動きがとても自然(ロボットの動きが自然というのも変だが)な感じで、CGなのか特撮なのかよくわからなかったが(多分、それほどおカネをかけていない割には??)よくできているなあ、と思えて、なんというか、監督の「SF的なものへの愛?」みたいなものが感じられた。

ストーリーも予定調和的なんだけど、こちらも「古き良きSF的ストーリーにしてみました。昔、こんなのよくあったよね」的なノリなのかなあ、とも思えた。
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