蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

竜宮城と七夕さま

2024年12月20日 | 本の感想
竜宮城と七夕さま(浅田次郎 集英社文庫)

JALの機内誌に連載されているエッセイ集第4弾。
2013年から2016年ころに掲載されたもの。

銭湯好きで湯に入るとどうしも唸ってしまうさまを描いた「唸る男」

皇居のお濠には巨大な鯉が住んでいるという・・・長寿の動物を描いた「寿命の考察」
当時の研究では最長の動物は507歳のアイスランドの二枚貝だそうである。

カジノがない日本は実はギャンブル大国という話の「GOODLUCK」

自宅にある絵画のデッサンが狂っているのでは?という疑いを実物を見て晴らした「大雁塔とドラ焼き」

著者は実物を見たことがあるという「君は虚無僧を見たか」

著者はいかにして63歳にしてフルヌードを雑誌に掲載されたか、を描いた「温泉礼賛」

小学生のころ、兄とキャッチボールをしていると当時珍しかったモンゴルからきた留学生がいて・・・という話の「初めてのキャッチボール」

などが、面白かった。
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メトロポリタン美術館と警備員の私

2024年12月20日 | 本の感想
メトロポリタン美術館と警備員の私(パトリック・ブリングリー 晶文社)

著者は大手出版社に勤務していたが、やりがいのない仕事に倦んでいて、兄の若死をきっかけに美術館の警備員(展示場に立って見張りをする人)になる。警備員の経験とメトロポリタン美術館の収蔵絵画の素晴らしさを語ったエッセイ。

美術館の警備員ほど展示されている絵画を時間をかけて見つめられる職業もないだろう。著者のように、絵心があり(本作にも自身によるスケッチが収録されている)、浮世に嫌気が差した人が回復する場所としては、この上ない機会だったようだ。

メトロポリタン美術館に行ったことはないが、本書を読む限り、収蔵品は多岐にわたり、野球カードなんかもあるそうで、博物館に近いものがあるのかな、と思えた。
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私はヤギになりたい

2024年12月14日 | 本の感想
私はヤギになりたい(内澤旬子 山と渓谷社)

小豆島に移住した著者は、庭で一頭のヤギを飼い始める。他のヤギを一時預りなどしているうちに繁殖が進んで?5頭に増えてしまい、利用されていないビニールハウスを借りてそこで飼育を始める。餌の確保のため知り合いから農産の副産物をもらったり、野生?の木々を刈り取ったりするうち、ヤギと同じくらい小豆島の植生に興味が湧いて・・・というエッセイ。

タレントがヤギを引き連れて雑草駆除をする、みたいな番組があったが、本作によるとヤギは草より枝についている葉の方が好き(落ち葉は嫌いで枝についていないといけないそうだ)で、食べる量は除草どころではなく、軽トラに囲いをしていっぱいいっぱいまで伐採してきても1週間ももたないそうである。

本書を読む限り、ものすごい労力をかけているように見えるが、ヤギから乳を取ったり肉にして売ったりするわけでははい。見返りは(本書の印税を除いて?)何もない。
一方で手間がかかる世話がとても楽しげでもある。愛玩動物こそ無償の愛の体現なのだろうか。
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地面師たち(TVシリーズ)

2024年12月14日 | 映画の感想
地面師たち(TVシリーズ)

ハリソン山中(豊川悦司)率いる地面師グループは、並の案件には飽き足らず、高輪の寺が持つ100億円規模の土地を狙う。グループの交渉担当の辻本拓海(綾野剛)は、かつて自分と父親が地面師詐欺の被害にあっていたが、今はハリソンの忠実な部下となっていた。辻本は寺の住職の尼様がホスト狂いであることを突き止め・・・という話。

流行りはじめ?の頃のオレ詐欺が、なかば笑い話(そんなのに騙される人いるの?)的に扱われていたように、昔は地面師詐欺もそれ系の、(語弊があるが)騙される方が悪い、と思われていた時期があると思う。
しかし、オレ詐欺が今や社会を揺るがすような深刻さとなってきたように、地面師詐欺も、本作のモデルとなった事件以来、重大な犯罪として認知されたように思う。

本作でも語られているように、デベロッパーとしては大手とはいえなかったS社には、焦りがあって、普通なら当然行う地主本人の内偵も近所での聞き合わせも行わず、「社長案件」として強引に社内稟議を通したことが、まさかの結果をもたらしたようだ。

しかし、事件以上に(私が)スゲエな、と思ったことが2つある。
一つは、詐欺案件の土地は事件後すぐに別の大手が買い取ってさっさとマンションを建ててしまったこと。
もう一つは、詐欺にあった案件の担当者の後ろ盾だったS社社長が、その後の社内抗争で(中興の祖といわれ強権をふるっていた)会長派に勝ってしまったことだ。

詐欺の裏側を描いたコンゲーム的なエンタメ作品なんだろうなあ、と思って見始め、最初の小さな案件のあたりまではその通りだったのだが、だんだん血生臭くなってきて最後はヤクザ映画みたいになってしまったのがちょっと残念だった。
豊川悦司は、最近はやさしいお父さん役とかI気がいい?部長役など穏やかな役柄が多くなってきたような気がするが、やはり本作のような陰がある悪役がバツグンに似合っているなあ。
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グレイスは死んだのか

2024年12月11日 | 本の感想
グレイスは死んだのか(赤松りかこ 新潮社)

動物病院でグレイス(4歳メス)は衰弱していた。原因がわからず女医は苦慮する。グレイスの飼い主は30歳くらいの男で競馬の調教師をしている。男とグレイスは登山中にがけ崩れで遭難し長期間山中をさまよっていたことがあった・・・という話。

著者は獣医で、もう一つの収録作「シャーマンと爆弾男」(町中の小さな川べりを主人公が彷徨う話)で新人賞を取ってデビューしたらしい。

表題作のテーマは飼い主と犬の関係性で、遭難して食料や水に事欠くようになった極限状態において展開される異様な立場逆転は迫力がある。
なので、エンタメ風に読みやすく書いてくれれば、より多人気がでたのではないかと思うが、あまりに文章が”文学的”で必要以上にこねくり回した表現になっているように感じた。
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