蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

ディア・ファミリー

2025年01月10日 | 映画の感想
ディア・ファミリー(映画)

1970年代 ゴムヒモなどメーカーの会社を経営する坪井(大泉洋)は、娘が心臓の難病で治療法がなく、それほど長くは生きられないと告げられる。坪井は当時開発の著についたばかりの人工心臓を自らの手で作ろうと決意するが・・・という実話に基づく話。

原作を読んでから見た。
筋を知っていたせいか前半はやや退屈な感じがしたが、終盤になってかなりぐっとくるシーンが増えた。

実話なので、結末はけっこうほろ苦いのだが、自らの保身しか頭にない医学部の教授(光石研)にギャフンをいわせるシーンもあってけっこうカタルシスが感じられた。

大泉洋は本当に上手。引く手あまたな理由がよくわかる。
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ハコウマに乗って

2025年01月07日 | 本の感想
ハコウマに乗って(西川美和 文藝春秋)

「すばらしき世界」などの作品で知られる映画監督のエッセイ。半分くらいは「Number」に掲載されたものであることと、著者の趣味がスポーツ観戦(プロ野球はカープファン)ということもあり、スポーツに関する話題が多い。

著者監督の映画もいいんだけど、同じくらい自作のノベライズやエッセイも素晴らしい。本作でも、大笑いさせてくれるものがある一方、社会的課題に関する真摯な提言もあってバラエティにあふれた素材を楽しく読ませてくれる。

伊藤みどりのジャンプを絶賛した「勝利と健康。」、
10.19近鉄VSロッテを主題にした「テレビよ継れ」、
中学受験時のおける同級生の完全犯罪?を描いた「ゆきのしわざ」、
福岡の球場にカープの交流戦を見に行った時に感じた相手球団のビジネスセンスに感心した「みるはたのし」、
が特によかった。
映画監督だけあって映像がうかんでくるような描写なんだよね。「ゆきのしわざ」は、分量は数ページしかないけど短編映画みたいだった。
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ゴールデンカムイ(実写映画)

2025年01月07日 | 映画の感想
ゴールデンカムイ(実写映画)

原作は、荒唐無稽なストーリーを、自ら「こんなアホな話にリアリティないよね」と韜晦するかのように、ギャグ要素をそこかしこに埋め込んでいて、それがかえって重要なシリアスシーンの迫力を増大させていたように思えた。
映画も、そうしたユーモラスな側面を取り込もうとしていたが、ちょっと逆効果だったかなあ、と思えた。

主役の二人を始めとして主要キャラは原作の見た目に近づけようとしていて、確かにかなり似ているのだが、どうも実写映画としての魅力にはつながっていなかったように思う。

原作にはほとんどなかった日露戦争時の杉元の描写を多くしたのはよい工夫に思えたが、どうにも野性味が感じられなくて、二枚目の主役俳優、そのままというイメージでしかなかった。
ただ、鶴見中尉はよかったかな。原作のキャラが反映されていたように見えた。

こんなにケチばかりつけるのは、劇場公開なのに、本作がTVシリーズの序章程度に過ぎないからだ。続きのTVシリーズは当面劇場公開はしないだろうから、入場料をとっておいてプロローグだけ見せるのはどうよ。
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私の最後の羊が死んだ

2025年01月03日 | 本の感想
私の最後の羊が死んだ(河崎秋子 小学館)

著者の実家は北海道の酪農家でたくさんの牛を飼っていた。著者は(食肉供給を目的とした)羊の飼育に興味があり、農業試験場から貰い受けた年増?の雌羊から繁殖を進めていく。一方で小説家をめざして文学賞に応募しようと作品を書きためる。ただでさえ多忙だったのに、父が脳障害で倒れ介護まで担うことになる・・・という自伝風エッセイ。

地方紙主催の文学賞→受賞後の出版が約束されている三浦綾子賞→デビュー後も大藪賞など複数の文学賞を獲得→直木賞、と作家としてきらびやかや王道を歩んでいる著者。
一方で、本書を読むと、相当強気でプライドが高そう。本書ではそちらの方が強調されるが、ありがちな売れっ子のわがままというのとは全く違う、作家修行とは別の(都会育ちの遊び人作家にはない)ハードな人生遍歴に裏打ちされた自信みたいなものが感じられる。

前半が羊飼いの話で、後半になると作家になるまでのプロセスを描いているのだが、タイトル通り、羊飼いの話をもう少し膨らませてもらいたかった。
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ツイスターズ

2025年01月03日 | 本の感想
ツイスターズ

アメリカのオクラホマ州で竜巻の研究をするケイト・カーター(デイジー・エドガー・ジョーンズ)は、水分の吸収体を大量に竜巻に供給することでその勢いを削げるという仮説を立て、実際の竜巻で実験するが失敗し、恋人を含む研究仲間は竜巻で死亡してしまう。
5年後、唯一の生き残りの仲間のハビに誘われて再び研究を始める。竜巻を実況中継?するユーチューバーのタイラー(グレン・パウエル)がちょっかいを出してきて・・・という話。

前作(ツイスター)に絡むエピソードも出てくるが、独立した作品としても楽しめる。

竜巻来襲の場面は作り物とわかっていても、自動車や建物がぶっ飛んでいくシーン、何よりすぐそばにいた人が竜巻に持っていかれてしまうシーンは、DVDで見ていてもいわゆる「思わず声でる」くらいの迫力がある。特殊効果が楽しめる映画館でみたらきっとすごいんだろうなあ、と思わせた。

ただ、本作は観客を怖がらせることを目的とした恐ろしげなパニック映画では全く無くて、ケイトやタイラーの明るくあっけらかんとしたキャラや、各種ギミック(代表的なのはドリルを地面に打ち込んで固定を図るタイラーの愛車。あんなんで竜巻に対抗できるはずないけど、なんか面白い。ラストシーン近くでの違う目的での使用法もいい)が充実していて、エンタメとして非常に楽しめる作りになっている。さすがスピルバーグのプロデュース。
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