それでも人生にイエスと言う(V・E・フランクル 春秋社)
日経新聞の読書欄に「リーダーの本棚」というコーナーがある。経営者や学者が自分の読書遍歴やおすすめ本を紹介している。たいていが有名な経営書や専門領域の古典、1冊くらいは小説、みたいなパターンが多くて、正直、あまり面白みがない。
しかし、2023年9月16日付の大手生命保険社長の永島さんのそれは違った。ビジネスのことにはふれず、人生とはなにか、幸福とはなにか、を常に追求していて、その参考になった本を紹介しているのだが、極く少ないスペースの中で、その、深遠ともいえる主題に一応の回答を提示していた(と、私には思えた)。
記事によると永島さんは、現場にいっても保険の話はしないで、「幸せのヒント」をテーマに話す、という。(以下、引用)
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ひとは、誰かに意味を届けられたとき、幸せを感じられます。社員一人ひとりが自分の幸せや生きる意味を誠実に考え行動すれば、結果としてお客様の満足や会社の価値が高まる。そんな美しい循環が生まれると信じています。
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こんな人が経営している会社になら、ぜひ投資してみたい、と思ったが、残念ながら、この会社は株式会社ではなった。
まあ、相互会社だからといって経営者がみんなこう考えているとは思えないし、もしかしたら、この記事も実はキレイゴトを並べているだけなのかもしれないけれど。
そこで紹介されていたのが本書で、著者は「夜と霧」で有名な精神科医。
現代は、意味喪失の時代であり、人生と世界に意味があるのかが問われている。
著者は、生きるということは義務であり、重大な責務だという。よろこびや幸福は求めるものではなくて結果にすぎないという。
「私は人生になにを期待できるか」を問うのではなく、「人生は私になにを期待しているか」と問うべき。私たちが意味を問うのではなくて、私たちは問われている存在だとする。(永島さんも記事の中でこの点を冒頭にあげていた)
強制収容所の収容者の話題は、常に食事や食料のことだったという。朝から晩まで考えるのはひたすら食べることだったという。
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「私たちは、どれほど悲しく切ない思いで、動物のような苦痛や期限ではなく、人間らしい苦悩や問題、葛藤がまだあったころのことを回想したでしょうか。将来に対してもそうでした。私たちは、苦悩や、問題や葛藤なしには生きていけないような状態をどれほど切望したでしょうか」
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そして人生を意味あるものできるのは次の3つであるとする。
1)なにかを行うこと、活動したり想像したりすること、自分の仕事の実現(創造価値)
2)なにかを体験すること、自然、芸術、人間を愛すること(体験価値)
3)自分の可能性が成約されていることが、どうしようもない運命であっても、その事実に対してどのような態度をとるか、その事実にどう適応し、どうふるまうか、に意味をみいだす(態度価値)