蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

夜明けのすべて(映画)

2024年10月30日 | 映画の感想
夜明けのすべて(映画)

月経が近づくとイラつきが抑えられず周囲の人たちに当たり散らしてしまう藤沢(上白石萌音)は、新卒で就職した会社に居づらくなって辞める。
山添はIT関連?企業でバリバリ働いていたが、パニック障害になって休職?する。
二人はそうした訳あり?人たちを積極的に採用する理科教材の製造販売会社に就職して巡り会うが・・・という話。

パニック障害はなんとなく聞いたことがあって、どうもそれを患っているらしい人を実際に見たこともあったが、PMS(月経前症候群)は(恥ずかしながら)初めて知って、こんなに劇的な症状なんだ、と驚いた。

藤沢と山添は、付き合っているけど、恋人には遠いふんわりした関係。
二人が務める会社は、経営者(光石研)も従業員も二人の障がいに対して理解も思いやりもある。
そんな都合のいい環境、現実にはないよな、と思いつつ、ホントにそんな会社や人たちがいればいいのに、とも感じさせてくれる。なので、心がささくれだっているような時にみると効果がありそうだな、と思えた。
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貨物列車で行こう!

2024年10月28日 | 本の感想
貨物列車で行こう!(長田昭二 文藝春秋)

幼い頃からの貨物列車ファンの著者が各地の貨物ターミナルを訪ね、実車に同乗したルポ。

本作を読んでいて楽しいのは、著者が本当に貨物列車好きで、貨物列車しか走らない路線に同乗できてマジで喜んでいることから来ていそう。
一方でそこまでマニアでもないので、編成とか列車の種類とかに深入りせず、実車経験が中心になっているのも(私のような興味はあっても専門的知識に欠ける者には)好ましかった。

特に読みどころとなっているのは、新鶴見から出発して尻手短絡線を経て東京港トンネルを経由して東京貨物ターミナルへ至る経路。東京港トンネルへ進入する箇所を撮った写真も興味深かった。

今や都心に近い住宅地となりつつある南千住に依然として蟠踞?する広大な隅田川駅、
広島車両区の古くさい(空調もない)施設で整備にはげむ(ここでは本格的な整備のため全分解して組み立て直している!)人たち、
広島貨物ターミナル駅から出発してセノハチ(瀬野〜八本松間の急勾配がある難所)での、補機(後ろから押す動力車)による支援ぶり、
も楽しく読めた。
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救いたくない命

2024年10月27日 | 本の感想
救いたくない命(中山祐次郎 新潮文庫)

都心の病院の外科医、ベテランの外科医剣崎と松島をめぐる短編集。「俺たちは神じゃない」シリーズ第2弾。

表題作は、手術中の患者が重大テロ事件の犯人と実体験ときの執刀医の心境を描く。

「午前4時の惜別」は高校時代の部活の顧問の先生を執刀するが、術後、合併症が発生してしまう。恩師が患者になった際の複雑な心境を描く。

「医学生、誕生」は松島が突如医者を死亡することにした患者をコーチ?する話。

「メスを擱いた男」は、前作からの続きで、飛び降り自殺者を救おうとして自分が重大な障がいをおってしまった医者の話。

「白昼の5分間」は、剣崎の病院のベテラン看護師の息子が急性の病気で即座に手術を強いられる話。手術シーンの迫力がすごい。

「患者名・剣崎啓介」は剣崎自身が虫垂炎にかかってしまう話。自らが手術を受けるとなると、簡単なものとわかっていても不安になる心理が面白い。

著者は現役の外科医で今もバリバリ手術をしているらしい。なので、ある程度自身の経験を素材にしていると思われる。本作では「患者名・・・」の心理描写が真に迫っている感じだったので著者もオペを受けたのかもしれない。
「白昼の5分間」は創作なのだろうか。急変した事態に焦る医者の心理や手術シーンの緊迫感は相当のものだったが、実話だとすると出来過ぎのような気がしてしまう。
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あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら(映画)

2024年10月23日 | 映画の感想
あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。(映画)

高三の加納百合(福原遥)は、シングルマザーの母と進路をめぐってケンカし家出する。近所の洞窟?で雨宿りしているうち昭和20年6月の鹿児島?へタイムスリップする。そこで知り合った佐久間彰(水上恒司)は特攻に志願し出撃命令を待つ若い軍人だった・・・という話。

あまりに安易すぎるタイムスリップによる時空往還、ご都合主義がすぎるストーリー展開、ありえないような特攻志願者たちの生活ぶり、と欠点をあげつらえばキリがないけれど、そもそもいまや「特攻って何?」という人も多くなったらしいので、そういった若者向けのソフトな入門編と考えればよいのかも。

建前上ですら生還可能性が全くない作戦を長期に渡って組織的におこなった正規軍は当時の日本軍だけだろう。
まさに狂気の沙汰としかいいようがないのだが、それは平和な時代にのほほんと生きている私だからこその感想にすぎない。
その犠牲になった人たちには言葉もないが、つい数十年前までわたしたちの社会はそれを受容していた、という事実を噛みしめなければならないと思う。

本作を(レンタルDVDで)見てみようと思ったのは、映画館でみた予告編で、主題歌の「想望」がとてもよく聞こえたから。クライマックスでこの歌がかかるんだろうなあ、と期待していたら、エンドロールのみでちょっと残念。DVDでよく聞くと彰の行動を肯定する歌詞ではあったが。。。。
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バッドランズ

2024年10月22日 | 映画の感想
バッドランズ

橋岡ネリ(安藤サクラ)は、大阪の特殊詐欺組織の一員で、受け子の指示役(三塁コーチと呼ばれている)を担っていた。矢代ジョー(山田涼介)はネリの弟格(血縁はない)だが、バクチで借金をつくり、組織のボス高城(生瀬勝久)を襲おうとする・・・という話。

説明しすぎる映画はシラケるが、説明不足がすぎるとそもそも見る意欲が減退する。本作は2時間半もあるが登場人物の人間関係とか背景がよく理解できなかった(見ている私の理解力不足かもしれないが)。なので原作(勁草 黒川博行)を読んでみようと思う。

高城とネリ、刑事と犯罪組織、ナゾ?の富豪とネリという3つの対立軸があるのだけど、全く絡み合いがなくてそれぞれ孤立してストーリーが進む感じ。少なくともナゾ?の富豪の話はない方がいいでしょう。

ただし、個別の俳優の演技はとてもよかった。生瀬勝久はまあ当然として、刑事役の吉原光夫、組織の古株メンバー?の曼荼羅(宇崎竜童←すごい存在感があるのにこの人がなぜそこまでネリのシンパなのかがさっぱりわからない)、そして意外といっては失礼だが山田涼介もなかなかのもの。ただ最終盤のとってつけたようなジョーの行動は理解不能だったけど。
主役の安藤サクラは関西弁が苦手なのかイマイチだったかな・・・(文句ばっかりですみません)
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