世界史としての「大東亜戦争」(細谷雄一編 PHP新書)
タイトル通り、「大東亜戦争」を世界史の中でとらえようとする評論集。
大東亜戦争は日本側の命名、太平洋戦争はアメリカ側の命名だそうで、どちらも(日本の)おおやけの場面では使いにくく、だから公的な立場にある人は「先の大戦」とか「あの戦争」と発言する、というのを本書で初めて知った。
太平洋では日米戦争、南アジアでは日英戦争、対立では日中戦争を同時に戦った、と改めて言われると、「なるほど、そういう風に見ると、勝てるわけないわな」と今さらながら思ってしまった。
日本の「国制」は敗戦をきっかけにして変遷してきた。白村江→律令制、秀吉の朝鮮出兵→徳川政権・鎖国、黒船→明治維新、大東亜戦争→米国モデルの追従
対米戦について避決定を続けてきたのにそれを貫徹できなかった。逆にいうとアメリカの石油禁輸のインパクトは、あいまいな態度の日本を一転させるくらいのインパクトがあった、という考え方が面白い。人気はないだろうけど、局面によっては避決定を貫くというのも戦略だよなあ。
中国が戦後すぐ「五大国」になれたのは、蒋介石の外交手腕のおかげで、宋美齢の存在も大きかった。
ドイツは、当初親中政策をとっており、ドイツの植民地を横取り?した日本にいい印象はなかった。
ド・ゴールはパリ陥落のあと、北アフリカ植民地を根拠地にした。これが、フランスだけがやけに植民地の維持にこだわる要因なのかな、と思えた。
日本陸軍は、米軍の相当に高度な暗号も解読していたが、海軍はさっぱり。しかし陸軍は解読した情報を海軍と共有することはなかった。これは日本じゃなくてもありそうな話だが、イギリスは情報共有が比較的進んでいた。