蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

神器

2009年08月01日 | 本の感想
神器 (奥泉光 新潮社)

太平洋戦争末期、主人公が操舵員として乗り込んだ軽巡洋艦は、正体不明な陸軍将校達を乗せて横須賀から呉、舞鶴を回航し、やがて司令部の命令に反して単独で太平洋を東に進む。陸軍将校たちは実は狂信的な皇道派で、敗戦間近となった現在の天皇の正統性に疑問を持ち、本物の天皇をさがして、海底に沈んだムー大陸へ赴こうとしていたのだった。

簡単に書くとこういう筋なのだが、軍艦内の生活が詳細に語られたり、タイムスリップするネズミ(殺された乗組員の化身)が饒舌におしゃべりしたりして、延々と800ページに渡って話が続き、正直にいうと読み終わるのに一苦労だった。

著者は、「小説にしかできないことを追求して物語を作った」という旨のことを新聞のインタビュウで語っていたが、確かに内容がぶっとびすぎていて、映像表現は難しいだろうと思えた。

私にとって、著者の最高傑作は「滝」なのだが、著者にとってはただの若書きにすぎないみたいで、最近の著作は衒学的というのか芸術的すぎるというのか、素人(?)にはついていくのが難しくなりつつある。

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2 コメント

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初めまして (こに)
2010-05-08 11:20:42
あまり大衆受けしない佐藤亜紀さんや奥泉光さんの記事を見て嬉しくなり、あちこちトラバ貼らせてもらいました
m(__)m

奥泉さんの「滝」
未読です
早速探してみます
ありがとうございました
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Unknown ()
2010-05-15 14:35:41
コメントありがとうございます。
「滝」は、今手に入りやすいものとしては、「北村薫のミステリー館」(新潮文庫)に所収のものかと思います。
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