怪物(ノベライズ→佐野晶 宝島文庫)
シングルマザーの麦野早織(安藤サクラ)は、息子の小学5年生の湊の成長を見守るのが生き甲斐。スニーカーの片方だけをなくすなど湊の不審な行動から、早織は学校でのいじめを疑う。校長(田中裕子)に直談判に行くが、校長は、心ここにあらず、で頼りにならず、学校の幹部たちは穏便にことを済まそうとしかしない。早織は担任の保利自身が湊を攻撃しているのでは?と疑い始め・・・という話。
ノベライズは、3つの章に分かれていて、最初の章は早織の視点、2章が保利の視点、最後の章が麦の視点から物語られる。映画ではそこまで明確でないので、ノベライズの方が登場人物たちのすれ違いやそこから生じる疑念がわかりやすく浮かび上がっていたように思えた。
何が「怪物」なのかは、ノベライズでも映画でも最後まで行けば誰でもわかるようになっている。この手のサスペンスものとしては珍しいほど明確にわかる。結末を曖昧にして「後はあなたの解釈のままに」などと、見る方に解決を委ねてしまわない、というのは(脚本家や監督としては)勇気がいると思うのだが、そこにあえて踏み込んだことでストーリー性に高い評価を得たのかもしれない。タイトルをテーマそのものにしたのも自信の現れなのだろうか。
映画を見ていると、早織、校長、保利は、役柄が各人の普段の演技イメージにどハマりしていた。あてがきなのだろうか??