主にオートバイ。時々クルマ。
なんだかんだと永年のブログです。
風に向かう刻
ジャガイモ鉄砲的な。
大気圧、と一言に申し上げましても
我々の存在する空間では様々な影響が出ているものですよね。
皆様も小中学校の理科の時間で習ったご記憶がおありかと存じますが、
気体というのはなかなかに面白い振る舞いをするものです。
懐かしい手品で、お湯を沸かした薬缶の水蒸気を満たした牛乳瓶を
温度が下がる前にゆで卵で塞ぐと、
暫くして「スポッ」と中に卵が入るものがありますが、これも大気圧ですね。
我々、多くのオートバイ乗りが常にお世話になっている
操舵と路面追従を担う一般的なテレスコピック式フロントフォークは
常に高い物理的な負荷が掛かっている部品だったりします。
そのフロントフォークのメンテナンスといえば
OHに代表される、摺動部の部品交換やダンパーオイルの交換が想像されますが
意外と見落とされがちなのが、中に入っている”空気”の扱いです。
構造上完全なる気密ではないものの、
正常時にはオイルが漏れないというだけでも、その密閉度合いは容易に想像できますが
そんな密閉された空間で、金属製の筒が常に容積を激しく変化させながら、
オイルとスライドするパーツを動かしつづける空間にあっては
当然、内部の空気も激しく圧縮と膨張を繰り返す事になります。
構造は若干違いますが、
リアサスペンションのリザーバタンクに対する加圧具合によって
サスペンションの特性が変わることも、内部エアの圧力の影響が解ります。
(リアサスの場合は作動油の安定と減圧発泡の防止もありますが…)
例えば気温の上がる夏場。内部に充填された空気は、
路面やブレーキからの力で激しい圧縮を受け、
外部の気温の高さもあいまって、体積はより膨張し圧力があがってゆきます。
その状態で加圧されたエアの一部が外部に漏れだすとすると、
作動が落ち着き冷えた状態では、内部の気体密度は下がることになります。
完全に静止したあとは、今度は徐々に負圧状態に向かってゆきます。
勿論、常に変化を続ける環境ゆえに気にしたらキリがない部分もありますが
大きく周囲の環境が変わる節目には、外界の大気圧と同調させる事によって
より確実な作動性が得られるようになります。
古い設計のバイクや、負荷の低い自転車、
キャビテーションが問題になる為に分離加圧を採用しているオフ車とは違い、
スーパースポーツバイクのように高荷重が比較的穏やかにかかる部分に利用される
現代の【 カートリッジダンパー式フロントフォーク 】は
基本的に加圧されたエアバネありきの設計ではありませんので
(作動時の荷重で掛かる分の圧力を見越してあるだけとも言えますが)
フォーク内の容積が最大の時に合わせた大気圧との同調が必要になります。
・・・と、理科レベルの思考実験はここまでと致しまして。
実際に行う事は実に簡単な作業ですので、ササッとやってしまいましょう。
敢えてこのタイミングなのは、『秋になったら』などと考えていたからです。
午前の早い段階ならば、涼しく心地よい秋の風も吹いており湿度も低かったので
丁度良いタイミングだと考えての作業です。
まずは、フロントフェンダーの上に傷防止の適当な布を敷きます。
左からにょきっと出てる黒いものが、フロントスタンドです。
御覧のように、RC211Vと同じ著しいスラントノーズデザインのCBRは
フロントフェンダーとアッパーカウルの隙間が狭いので
無造作にスタンドを差し込むとガリガリに傷ついてしまいます。
よいしょと持ち上げると、これぐらい隙間が出来ます。
この状態で、フロントフォークは全て伸びた状態です。
少し考えればまずやらないでしょうが、
フロントに掛かる荷重を0にして行わないと大変な事になります(笑
余談ですが、私の使っているフロントスタンドはJ-TRIP製です。
このスタンドは品質もよく気に入っているのですが・・・。
CBR1000RR(SC57)で使う場合は、
リフト時に力の掛かる力点と作用点の角度が狭く、結構な力が要ります。
トップブリッジのクランプボルトを緩め、
手持ちの32mmのソケットでキャップボルトを緩めてゆきます。
ブレーキレバー部分のタイラップは、フロントタイヤの回転防止用です。
緩める程度はこれでも充分。
気密を受け持つOリングがパイプ上端から上に出れば完全にエアは抜けます。
エア抜きは上記の状態で充分ですが、
キャップボルトの周辺とOリングの状態を確認したかったので、
タイヤごと左右のフォークインナーチューブを持ち上げます。
ブレーキでタイヤをロックしているので、空転はしません。
このパンタジャッキ、安かったのでイキオイで買ったのですがまず使いません。
3年ぐらい前に買って、これで2度目かなというぐらいの頻度。
足が絶望的に悪いので、どこかに固定しないと使い物にならないのです。
キャップボルトもOリングも問題ないようです。
Oリングにシリコングリスを薄く塗って組み付けます。
はみ出したグリスは締めてからふき取ります。
以上、たったこれだけの事ですが、
実際に乗ってみるとフロントフォークの作動性は大きく変わります。
どんなバイクでも内部の圧力変化からは逃れられないものなので
皆様がお乗りのオートバイでもなさってみると変化が楽しいかもしれませんね。
直接事故に繋がるような問題ではありませんが、
折角の高性能フォークですから、本来の作動をさせてみたいものです。
それにしても、先日買ったワゴン&工具用チェストがいい感じです。
工具の取り出し易さもさることながら、
今までは近くの部屋や、足下、バイクのシートの上などに置いていた工具が
”立ったままひょいと手を伸ばせば取れる位置”にあるというのはとてもラクですね。