北へふたり旅(89)
「君の育った釧路って、どんなところ?」
「人のすくない道東の町。
夏は涼しい。暑くても20℃前後。半袖だと肌が寒い日もあるっしょ。
冬。雪はあまり降らないべ。積もることはまれさ。
私の家は釧路の町はずれ。ばん馬をそだてる牧場で育ちました」
「ばん馬?」
「ばんえい競馬のばん馬です」
「どさんこじゃないの、北海道の固有種は?」
「どさんこは北海道で生まれた品種と思われがちだけど、
ルーツは内地です」
「えっ・・・どさんこは内地馬なの!」
「北海道が『蝦夷地』と呼ばれていた時代。
夏、ニシン漁のためさ内地からおおくのひとがやってきました。
そのとき東北地方から、南部馬を連れてきたのが始まりだ。
寒さが厳しくなると人間は内地へ帰るけど、馬はそのまま残されました。
春になるとまた捕えられて、使役馬として働いた。
南部馬が北海道の気候さ適応していったのが、どさんこです」
「なるほど。では、ばん馬はどこから来たの?」
「ばん馬の祖先は、海外から輸入されたものです。
北海道を開拓した主役は馬だべさ。
切り株を引き抜いたり、山から木を運び出すのは馬の役目でした。
田畑を耕したのも馬です。
開拓がすすむと、より馬力の強さが求められるようさなった。
その結果、小柄などさんこではなく、大型の重種馬が開拓の主役さなったしょ。
おおきなものは体重が1トンをこえます」
「1トン!。一般的な競走馬・サラブレッドのほぼ倍の体重だ。
そんな大きな馬が北海道で活躍していたのか」
「馬たちの能力を競い合った「お祭りばん馬」が、ばんえい競馬の原型。
2頭の馬に丸太を結び付け、互いに引っ張り合った「ケツ引き」がはじまり、
といわれてるっしょ」
ばんえい競馬のコースは200mの直線。
途中に2つの障害(高さ1m、1.6mの坂)がある。
馬はこの障害を乗り越えてゴールを目指す。
騎手は重りを載せた480㎏~1トン前後の鉄そりに乗り、手綱を操る。
ゴールは鼻先ではなく、そりの後端で決まる。
世界中を探してもこんなルールの競馬はない。
1トン以上もある重種馬の迫力。
スピードをあらそうだけでなく、農耕馬だった時代と同じ“馬力”を
競うところに面白味が有る。
「1トンの馬が力を競うあうレースか。見たいな。壮観だろうね」
「開催地は十勝地方の帯広。帯広はマチ(札幌)から東へ150キロ。
広々した牧場がわんさかあるっしょ。
地図の上ではすぐお隣だけんど、途中に日高山脈がそびえていて、
帯広までの道のりは山越えのルートです」
「お~い。チャコちゃん。オーダーお願い!」
奥から常連の声が飛んできた。
「はぁ~い」釧路生まれのどさん娘が、奥へ向かって手をあげる。
「ごめんなさい。すっかり話し込んでしまいました。
奥でお客さんが呼んでます。
お仕事さもどるっしょ」
どさん娘が軽快な足取りで、奥へ向かって飛んでいく。
(90)へつづく
「君の育った釧路って、どんなところ?」
「人のすくない道東の町。
夏は涼しい。暑くても20℃前後。半袖だと肌が寒い日もあるっしょ。
冬。雪はあまり降らないべ。積もることはまれさ。
私の家は釧路の町はずれ。ばん馬をそだてる牧場で育ちました」
「ばん馬?」
「ばんえい競馬のばん馬です」
「どさんこじゃないの、北海道の固有種は?」
「どさんこは北海道で生まれた品種と思われがちだけど、
ルーツは内地です」
「えっ・・・どさんこは内地馬なの!」
「北海道が『蝦夷地』と呼ばれていた時代。
夏、ニシン漁のためさ内地からおおくのひとがやってきました。
そのとき東北地方から、南部馬を連れてきたのが始まりだ。
寒さが厳しくなると人間は内地へ帰るけど、馬はそのまま残されました。
春になるとまた捕えられて、使役馬として働いた。
南部馬が北海道の気候さ適応していったのが、どさんこです」
「なるほど。では、ばん馬はどこから来たの?」
「ばん馬の祖先は、海外から輸入されたものです。
北海道を開拓した主役は馬だべさ。
切り株を引き抜いたり、山から木を運び出すのは馬の役目でした。
田畑を耕したのも馬です。
開拓がすすむと、より馬力の強さが求められるようさなった。
その結果、小柄などさんこではなく、大型の重種馬が開拓の主役さなったしょ。
おおきなものは体重が1トンをこえます」
「1トン!。一般的な競走馬・サラブレッドのほぼ倍の体重だ。
そんな大きな馬が北海道で活躍していたのか」
「馬たちの能力を競い合った「お祭りばん馬」が、ばんえい競馬の原型。
2頭の馬に丸太を結び付け、互いに引っ張り合った「ケツ引き」がはじまり、
といわれてるっしょ」
ばんえい競馬のコースは200mの直線。
途中に2つの障害(高さ1m、1.6mの坂)がある。
馬はこの障害を乗り越えてゴールを目指す。
騎手は重りを載せた480㎏~1トン前後の鉄そりに乗り、手綱を操る。
ゴールは鼻先ではなく、そりの後端で決まる。
世界中を探してもこんなルールの競馬はない。
1トン以上もある重種馬の迫力。
スピードをあらそうだけでなく、農耕馬だった時代と同じ“馬力”を
競うところに面白味が有る。
「1トンの馬が力を競うあうレースか。見たいな。壮観だろうね」
「開催地は十勝地方の帯広。帯広はマチ(札幌)から東へ150キロ。
広々した牧場がわんさかあるっしょ。
地図の上ではすぐお隣だけんど、途中に日高山脈がそびえていて、
帯広までの道のりは山越えのルートです」
「お~い。チャコちゃん。オーダーお願い!」
奥から常連の声が飛んできた。
「はぁ~い」釧路生まれのどさん娘が、奥へ向かって手をあげる。
「ごめんなさい。すっかり話し込んでしまいました。
奥でお客さんが呼んでます。
お仕事さもどるっしょ」
どさん娘が軽快な足取りで、奥へ向かって飛んでいく。
(90)へつづく