北へふたり旅(95)
「これからお2人を、札幌の特別な空間へご案内します。
その場所は、こ・ち・ら」
どさん娘が自分の足元を指さす。
「君の足元・・・地下?・・・地下に何かあるの?」
「大通公園の真下に、地下街のオーロラタウンがあるっしょ。
突き当りを左へ曲がるともうひとつの地下街、ポールタウンへ行けます。
それだけじゃあらまないべ。
北へ曲がれば札幌駅まで直通の、ひろい歩道空間がつづいています」
「えっ、公園の下が地下街になってるの!。知らなかったわぁ!。
だから地上の通りに、お店が少ないのね」
「ぼくらの足元に巨大な地下街と、札幌駅まで行ける歩道空間があるのか!。
・・・おどろいたなぁ」
「びっくりしたっしょ。うふっ」うれしそうどさん娘が目をほそめる。
「どこから降りていくの?」
「入り口はわんさあるっしょ。
交差点の向こう。あそこさ見える階段からオーロラタウンへ入れます」
なるほど。交差点の向こうに地下鉄のようなアーケードが見える。
ときどき人が出入りしている。
「知らなかった。地下に巨大な商店街があったなんて・・・」
札幌地下街の歴史はふるい。
札幌冬季オリンピックの開催まであと50日と迫った昭和46年12月15日、
札幌の地下鉄が開通した。
地下鉄が開業するほぼ一ヶ月前、昭和46年11月16日。
札幌市中心部の地下に、南北と東へ伸びる地下街がオープンした。
大通駅とすすきの駅を南北に結んでいるのが「ポールタウン」。
大通駅から東、テレビ塔の下までのびる「オーロラタウン」。
背景に、札幌市の急激な人口増が有る。
ラッシュ時の『4丁目十字街』は、車があふれた。最高で7台の電車が連なった。
反対側の歩道へ行こうにも道路を横切ることができない。
狸小路のショッピング・ゾーンが、二つに分断された。
営業権や生活権をおびやかし、商売あがったりの状態をうみだした。
東西の商店街を自由に行き来できる地下歩道がほしい、という声から
札幌の地下開発がはじまった。
店舗や公共の通路、おおきな駐車場をもつ地下街をつくることは、
人の流れと車両を分散させる。
雪深い札幌で天候に関係なく、自在に移動できることを可能にした地下街は
おおきな役割を果たすことになった。
階段をおりていくとあかるい歩道があらわれた。
たくさんの人があるいている。
オーロラタウンの全長は310m。左右にずらり店舗がならんでいる。
「ここにはなんでもそろっています。
と言ってもわたしのような貧乏学生は、もっぱら見るだけですが。
目の保養と運動をかねて、毎日ここを歩いているっしょ」
「明るいし地上を歩くより便利そうだね。この地下街は」
「信号は無いし、雪が降っても雨が降っても関係あらないべ。
地下鉄の駅に直通しているので、地上を歩くより、安心で便利です」
「驚いたねぇ・・・大通公園の真下が、こんな風になっていたなんて」
「ほんと。びっくりしました・・・あらっ」
妻が何かに気が付いた。
(96)へつづく