北へふたり旅(100)
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大病院へ行くかと思ったら、タクシーは小さな医院の前で停まった。
(ここか?・・・大丈夫か。古い看板がかかっている町医者だぞ)
「学生たちが良く来る病院です」とユキちゃんがささやく。
「学割がきくの?。ここは」
「うふっ。よかった。冗談が出るまで回復したようです」
「タクシーの中ですこし休めたからね」
「でも急に動かないで。気を付けてくださいな。
病院へ着いたからと言って、安心するのはまだ早いっしょ」
孫に諭されるジイャのように病院へみちびかれていく。
受付で容態を説明するユキちゃんによどみは無い。
「てきぱきしています、あの娘は。おかげで助かります。
わたしが説明したのでは要領を得ず、たぶん、しどろもどろですから」
待つこと5分。診察室へ通された。
中で50代半ばくらいの、メガネをかけた先生がまっていた。
「とりあえず心電図をとりましょう」
座るなり。先生が切り出す。
「心電図?」
「きゅうに具合悪くなったと聞きました。
疲れが原因で、心臓になにかの異常がおきているかもしれません。
まず心電図をとり、原因をさぐりましょう」
案内されるまま検査室へとおされる。
検査担当の若い看護師さんがでてきた。2種類の心電図をとるという。
「2種類?」
「安静の状態で、さいしょの心電図をとります。
その後、かるい運動していただきます。
踏み台を上下してもらいます。
50回前後を予定していますが途中で苦しくなったり、
具合が悪くなったら中止しても問題ありません」
「完走しなくても大丈夫ということ?」
「はい。無理に動いて悪化したら、心電図どころではありませんから」
うふふと看護師さんが笑う。
言われるまま上着を脱ぐ。シャツだけになり、診察台へ横たわる。
「電極をつけますね」看護師さんがのぞきこむ。
「あきみちゃんのブラは むらさき・・・」
小声でつぶやきながら赤、黄色 緑 茶 黒 ムラサキの電極を貼り付けていく。
「君。あきみちゃんというの?。もしかしてブラはムラサキ?」
「そんなことありません。私のブラは・・・あっ!」
看護師さんが顔をあげる。
「ごめんなさい。緊張してました。
心電図とるの、はじめてなんです。
貼る順番を間違えないよう、口のなかで呪文をとなえていました」
「そんなことないよ。しっかり聞こえたよ。
大きな声で、わたしのブラはムラサキ色ですって。はっきりと」
「失礼しました!。申し訳ありません。
電極を順番通り張るためのゴロ合わせが、あきみちゃんのブラは
むらさき、なんです。
ごめんなさい。ブラは白です。うふっ。わたしったら」
「よかったぁ・・・
君のブラがムラサキでは、あまりにも刺激的すぎる。
ドキドキし過ぎて、とんでもない心電図が記録されるところだった」
(101)へつづく
「よかったぁ・・・
君のブラがムラサキでは、あまりにも刺激的すぎる。
ドキドキし過ぎて、とんでもない心電図が記録されるところだった」
(101)へつづく