名将会ブログ (旧 名南将棋大会ブログ)

名古屋で将棋大会を開いています。
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大山将棋研究(55); 四間飛車穴熊に天守閣美濃

2016-02-04 | 大山将棋研究
昭和47年9月、長谷部先生と第5回連盟杯争奪戦です。


晩年の長谷部先生は振り飛車だったと思いますが、このころはどうだったのでしょう。大山先生が四間飛車穴熊に。

長谷部先生は天守閣美濃。端の位を取ったので自然な流れですが、このころから天守閣美濃があったのですね。松浦卓造先生の創案ということは知っていますが、もっと新しいかと思っていました。松浦先生は大山先生より年上のようで、であればこのころには出現していないとおかしいですね。もっと後で、谷川先生や森下先生や55年組が流行させたはず。

この46歩が作戦負けの元で、左美濃とは組み合わせが悪いです。

結局角筋を止めて囲いを強化し、展開を図ります。でも46歩がいらない手です。

千日手含みで大山先生に飛車を移動され、合わせておけば無難でしたが千日手を嫌っての48飛に35歩が軽い動きです。

さらに大山先生は軽く動きます。

27歩は部分的には仕方のない手でそれはいいのですが、35歩を突き捨てられているのが不満です。45歩が利かないので攻めるところがありません。

大山先生は73角から使います。それに合わせての飛車浮きです。

飛角筋を通して勝負にできればいいのですが、

35歩に39飛では今一つ。角をぶつけてさばきます。

角交換にはすぐに応じず、45歩としておくのがいいのですね。飛車を回り、垂れ歩で反撃の雰囲気は出てきましたが、飛車が使えないので長谷部先生が苦しいです。

41角に53金。危なさそうでも角と歩だけの攻めですから受けきれるという感覚です。

45桂を狙えば角を打って受けます。

さらに歩を突きだす手が63に利いていてぴったり。でもここで45歩でどうだったかと思います。43とから63歩成が狙い。72金や67歩成同金62歩には34と で44とと使えます。33桂には34歩です。食いつくチャンスだったのではないでしょうか。

43と から52馬だったので金を上がって受かっています。

連打で45歩と角筋を止めましたが、飛車を引けば受かっています。43金63歩成同金は55飛が嫌です。

と金を作り受けきりの気配が出てきました。37桂を取り切れば安心できます。

桂香を取り、18の馬を受けに使います。

この催促でいいのですね。84歩は75歩で馬が受けに利いています。これに引くしかないのでは大勢が決しました。

今度は馬を攻めに使います。

桂馬の打ちこみから

香車。得した桂香を金銀に替える寄せです。

こういうところは焦らず受けておくもの。

投了図。


まだ天守閣美濃の定跡なんてできていないころです。そのころに穴熊に天守閣美濃が指されていたとは驚きです。悪い作戦ではありません。居飛車の玉が堅いので、中盤に間違えなければ互角以上になります。
でも46歩が悪く、(当時はこれが疑問手だとは考えられていないでしょう)長谷部先生の作戦負けです。大山先生の軽い動きが流石の感覚です。35歩と突き捨てたほうが形がいいと後で気が付かされます。
長い終盤で勝負手を逃し、大山先生の受けが実を結びました。受けに使う飛角が勉強になります。


#KIF version=2.0 encoding=Shift_JIS
# ---- Kifu for Windows V7 V7.23 棋譜ファイル ----
手合割:平手  
先手:長谷部久雄7段
後手:大山王将
先手省略名:長谷部
手数----指手--
1 7六歩(77)
2 3四歩(33)
3 2六歩(27)
4 4四歩(43)
5 4八銀(39)
6 3二銀(31)
7 5六歩(57)
8 4三銀(32)
9 6八玉(59)
10 4二飛(82)
11 7八玉(68)
12 6二玉(51)
13 5八金(49)
14 7二玉(62)
15 9六歩(97)
16 8二玉(72)
17 9五歩(96)
18 9二香(91)
19 8六歩(87)
20 9一玉(82)
21 8七玉(78)
22 8二銀(71)
23 7八銀(79)
24 5二金(41)
25 3六歩(37)
26 7一金(61)
27 2五歩(26)
28 3三角(22)
29 4六歩(47)
30 2二飛(42)
31 1六歩(17)
32 1四歩(13)
33 5七銀(48)
34 5四歩(53)
35 7七角(88)
36 6四歩(63)
37 6六歩(67)
38 7四歩(73)
39 6七金(58)
40 6二金(52)
41 5九角(77)
42 4二角(33)
43 6八銀(57)
44 3三角(42)
45 3七角(59)
46 5二飛(22)
47 5八飛(28)
48 3二飛(52)
49 4八飛(58)
50 3五歩(34)
51 同 歩(36)
52 4二角(33)
53 2六角(37)
54 2四歩(23)
55 同 歩(25)
56 2二飛(32)
57 3八飛(48)
58 2四飛(22)
59 2七歩打
60 6三金(62)
61 7七銀(68)
62 5三角(42)
63 1八香(19)
64 6二角(53)
65 8八玉(87)
66 7三金(63)
67 8五歩(86)
68 1三香(11)
69 5八飛(38)
70 6三金(73)
71 3八飛(58)
72 7三角(62)
73 3六飛(38)
74 5五歩(54)
75 同 歩(56)
76 6五歩(64)
77 同 歩(66)
78 5五角(73)
79 3四歩(35)
80 3五歩打
81 3九飛(36)
82 4六角(55)
83 3七角(26)
84 4五歩(44)
85 6四歩(65)
86 6二金(63)
87 2六歩(27)
88 5四銀(43)
89 5九飛(39)
90 5五歩打
91 5三歩打
92 3七角成(46)
93 同 桂(29)
94 2六飛(24)
95 4一角打
96 6六歩打
97 6八金(67)
98 5三金(62)
99 7四角成(41)
100 3六角打
101 3三歩成(34)
102 4六歩(45)
103 4三と(33)
104 同 金(53)
105 5二馬(74)
106 7二金(71)
107 4四歩打
108 同 金(43)
109 4五歩打
110 2二飛(26)
111 6一馬(52)
112 4三金(44)
113 2三歩打
114 4二飛(22)
115 6六銀(77)
116 4七歩成(46)
117 7五銀(66)
118 3七と(47)
119 5七飛(59)
120 1八角成(36)
121 8七飛(57)
122 2九馬(18)
123 5二歩打
124 7一金(72)
125 5一馬(61)
126 7四歩打
127 6六銀(75)
128 5六馬(29)
129 6七金(68)
130 4五馬(56)
131 4二馬(51)
132 同 金(43)
133 5一歩成(52)
134 6五歩打
135 7七銀(66)
136 2五角打
137 7九金(69)
138 6六桂打
139 同 銀(77)
140 同 歩(65)
141 同 金(67)
142 6五香打
143 8四歩(85)
144 同 歩(83)
145 9四歩(95)
146 同 歩(93)
147 9三歩打
148 同 香(92)
149 9六桂打
150 9五銀打
151 2二飛打
152 6六香(65)
153 4二飛成(22)
154 6八金打
155 投了
まで154手で後手の勝ち




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20160204今日の一手<その264>; 金銀の価値

2016-02-04 | 今日の一手
20160204今日の一手

12月13日の名南将棋大会からMさんとAさんの対局です。形勢判断と次の一手を考えてください。






昨日の一手の回答

☆ 形勢判断をします。
角と金歩の交換で、持ち歩があるので歩は数えず角金交換、竜と と金を作り合っています。後手の駒得ですが、終盤なのでこれくらいは同等と思っていいでしょう。相穴熊だからという事情もあります。
玉の堅さは先手のほうが堅いです。でも79角成と切られることまで考慮すればあまり違いません。
先手の攻め駒は51竜と持ち駒金金で3枚。
後手の攻め駒は13角と持ち駒角で2枚。(玉の囲いに迫っているものだけ)

総合すればやや先手有利です。

大局観として
相穴熊の中終盤は玉の堅さに関することを優先します。また、金銀の価値が高くなります。相手の囲いの金銀をはがせば堅さで有利になりますし、金銀を持っていれば受けに使えるので玉が堅くなったようなものです。だから79角成のような大駒を切ってしまう手、特に角で金を取る手は優先して考えます。金銀でも金のほうがより受けに適した駒ですから。
62竜の形で71銀打に51竜と逃げて47と(37から)としたのが問題図です。竜と銀の交換は少しやりにくくて、そのあとの寄せの見込みがあるときだけです。
問題図では受けていると と金を使われるので、まず攻めを考えたいです。1手勝ちを読み切りたいのです。その時に金銀の枚数を意識し、後手に受ける金銀が無くなれば寄りということになるでしょう。


× 実戦は61金と打ちました。

金の価値が高いので、ここで使うのはもったいないです。79角成同金72金と受けられてみると

攻めても金を渡すので寄っている感じがしません。53角62歩11竜と駒を補充しましたが

52歩42角成39飛成52馬57角78金打58と

これは形勢不明の終盤ですが、後手の勝ちになりました。


○ まず考えたいのはと金を作ることです。54歩。

と金を作れば4枚目の攻め駒です。あとは攻め合いの速度ですが、39飛成53歩成58と62と

1手早く と金が届きました。であれば1手勝ちのはずです。62同銀同竜79角成同銀71金に

同竜同銀53角72飛63金

竜を逃げるようなへまをしなければ勝てるはずです。

62と では62金と打つ方がわかりやすくて

69と71金同銀同竜となれば

82に何か打っても取れば詰みです。

62金は同銀と取るのですが

62同と71金

71同と同銀同竜82角72銀

と金で金銀2枚取れている計算ですから寄せやすいです。


△ 金を打つなら63金と控えて打つ方がよいのです。

39飛成に72金打

72同金同金71金

71同金同銀同竜82角72銀71角同銀成82金54角52飛72銀

長く進めましたが切れないように攻めます。後手も抵抗するのですがどうにか寄る感じです。金銀を1枚もらうので攻め切れるのです。

63金の時に後手は受けなければいけません。27角はかっこいい受け方です。

54歩に61歩

61同竜54馬53金打

馬が逃げれば54歩から62金直、馬を切ればもらった角を足していって、というように攻めます。どうにか先手有利という感じです。

63金には72角が難しく、

角金交換なら構わないという受けです。72同金同銀62金61金

61同金同銀同竜71金

あとは71同竜から攻めるわけですが、後手は79角成でもう一枚金を手に入れる余地があり、なかなか大変です。先手もちですが、寄せきったという感じではありません。


○ 一回37歩と受けると

58と に54歩のつもりならこれも先手が指せそうです。

飛車の侵入を防ぐ代わりに と金に1手早く迫られるわけですが、これでも勝ちのようです。


○ 35歩もあって

35同角37歩58と54歩

これでもいいでしょう。
手順は省略しますが、後手が角を切っても

この図の角打ちが詰めろになるので先手が勝ちます。72に何か埋めたら53歩成という手順が得られます。



穴熊の場合は金銀の価値が高いというのがわかっていただけましたか?角を切ってはがすというのも頻出しますし、と金ではがすのは少し手数がかかりますが確実に得です。桂香ではがすのも有効でしょう。そして手に入れた金銀で補強を考えつつ、相手玉を寄せます。

実戦の61金は良い手には見えません。72金と埋める余地があります。63金から72金打のほうが72に埋められないのでよさそうですが、それでも72角と埋められてしまうと攻めにくいです。

と金を作って確実に攻めるほうがいいでしょう。その前に35歩とか37歩とかの工作もこの問題の場合は有効です。寄せ合いで1手勝ちというのが穴熊の場合の基本の考え方ですが、形勢不明とみたら受ける手を考えてもいいでしょう。



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