昭和47年9月、長谷部先生と第5回連盟杯争奪戦です。

晩年の長谷部先生は振り飛車だったと思いますが、このころはどうだったのでしょう。大山先生が四間飛車穴熊に。

長谷部先生は天守閣美濃。端の位を取ったので自然な流れですが、このころから天守閣美濃があったのですね。松浦卓造先生の創案ということは知っていますが、もっと新しいかと思っていました。松浦先生は大山先生より年上のようで、であればこのころには出現していないとおかしいですね。もっと後で、谷川先生や森下先生や55年組が流行させたはず。

この46歩が作戦負けの元で、左美濃とは組み合わせが悪いです。

結局角筋を止めて囲いを強化し、展開を図ります。でも46歩がいらない手です。

千日手含みで大山先生に飛車を移動され、合わせておけば無難でしたが千日手を嫌っての48飛に35歩が軽い動きです。

さらに大山先生は軽く動きます。

27歩は部分的には仕方のない手でそれはいいのですが、35歩を突き捨てられているのが不満です。45歩が利かないので攻めるところがありません。

大山先生は73角から使います。それに合わせての飛車浮きです。

飛角筋を通して勝負にできればいいのですが、

35歩に39飛では今一つ。角をぶつけてさばきます。

角交換にはすぐに応じず、45歩としておくのがいいのですね。飛車を回り、垂れ歩で反撃の雰囲気は出てきましたが、飛車が使えないので長谷部先生が苦しいです。

41角に53金。危なさそうでも角と歩だけの攻めですから受けきれるという感覚です。

45桂を狙えば角を打って受けます。

さらに歩を突きだす手が63に利いていてぴったり。でもここで45歩でどうだったかと思います。43とから63歩成が狙い。72金や67歩成同金62歩には34と で44とと使えます。33桂には34歩です。食いつくチャンスだったのではないでしょうか。

43と から52馬だったので金を上がって受かっています。

連打で45歩と角筋を止めましたが、飛車を引けば受かっています。43金63歩成同金は55飛が嫌です。

と金を作り受けきりの気配が出てきました。37桂を取り切れば安心できます。

桂香を取り、18の馬を受けに使います。

この催促でいいのですね。84歩は75歩で馬が受けに利いています。これに引くしかないのでは大勢が決しました。

今度は馬を攻めに使います。

桂馬の打ちこみから

香車。得した桂香を金銀に替える寄せです。

こういうところは焦らず受けておくもの。

投了図。
まだ天守閣美濃の定跡なんてできていないころです。そのころに穴熊に天守閣美濃が指されていたとは驚きです。悪い作戦ではありません。居飛車の玉が堅いので、中盤に間違えなければ互角以上になります。
でも46歩が悪く、(当時はこれが疑問手だとは考えられていないでしょう)長谷部先生の作戦負けです。大山先生の軽い動きが流石の感覚です。35歩と突き捨てたほうが形がいいと後で気が付かされます。
長い終盤で勝負手を逃し、大山先生の受けが実を結びました。受けに使う飛角が勉強になります。
#KIF version=2.0 encoding=Shift_JIS
# ---- Kifu for Windows V7 V7.23 棋譜ファイル ----
手合割:平手
先手:長谷部久雄7段
後手:大山王将
先手省略名:長谷部
手数----指手--
1 7六歩(77)
2 3四歩(33)
3 2六歩(27)
4 4四歩(43)
5 4八銀(39)
6 3二銀(31)
7 5六歩(57)
8 4三銀(32)
9 6八玉(59)
10 4二飛(82)
11 7八玉(68)
12 6二玉(51)
13 5八金(49)
14 7二玉(62)
15 9六歩(97)
16 8二玉(72)
17 9五歩(96)
18 9二香(91)
19 8六歩(87)
20 9一玉(82)
21 8七玉(78)
22 8二銀(71)
23 7八銀(79)
24 5二金(41)
25 3六歩(37)
26 7一金(61)
27 2五歩(26)
28 3三角(22)
29 4六歩(47)
30 2二飛(42)
31 1六歩(17)
32 1四歩(13)
33 5七銀(48)
34 5四歩(53)
35 7七角(88)
36 6四歩(63)
37 6六歩(67)
38 7四歩(73)
39 6七金(58)
40 6二金(52)
41 5九角(77)
42 4二角(33)
43 6八銀(57)
44 3三角(42)
45 3七角(59)
46 5二飛(22)
47 5八飛(28)
48 3二飛(52)
49 4八飛(58)
50 3五歩(34)
51 同 歩(36)
52 4二角(33)
53 2六角(37)
54 2四歩(23)
55 同 歩(25)
56 2二飛(32)
57 3八飛(48)
58 2四飛(22)
59 2七歩打
60 6三金(62)
61 7七銀(68)
62 5三角(42)
63 1八香(19)
64 6二角(53)
65 8八玉(87)
66 7三金(63)
67 8五歩(86)
68 1三香(11)
69 5八飛(38)
70 6三金(73)
71 3八飛(58)
72 7三角(62)
73 3六飛(38)
74 5五歩(54)
75 同 歩(56)
76 6五歩(64)
77 同 歩(66)
78 5五角(73)
79 3四歩(35)
80 3五歩打
81 3九飛(36)
82 4六角(55)
83 3七角(26)
84 4五歩(44)
85 6四歩(65)
86 6二金(63)
87 2六歩(27)
88 5四銀(43)
89 5九飛(39)
90 5五歩打
91 5三歩打
92 3七角成(46)
93 同 桂(29)
94 2六飛(24)
95 4一角打
96 6六歩打
97 6八金(67)
98 5三金(62)
99 7四角成(41)
100 3六角打
101 3三歩成(34)
102 4六歩(45)
103 4三と(33)
104 同 金(53)
105 5二馬(74)
106 7二金(71)
107 4四歩打
108 同 金(43)
109 4五歩打
110 2二飛(26)
111 6一馬(52)
112 4三金(44)
113 2三歩打
114 4二飛(22)
115 6六銀(77)
116 4七歩成(46)
117 7五銀(66)
118 3七と(47)
119 5七飛(59)
120 1八角成(36)
121 8七飛(57)
122 2九馬(18)
123 5二歩打
124 7一金(72)
125 5一馬(61)
126 7四歩打
127 6六銀(75)
128 5六馬(29)
129 6七金(68)
130 4五馬(56)
131 4二馬(51)
132 同 金(43)
133 5一歩成(52)
134 6五歩打
135 7七銀(66)
136 2五角打
137 7九金(69)
138 6六桂打
139 同 銀(77)
140 同 歩(65)
141 同 金(67)
142 6五香打
143 8四歩(85)
144 同 歩(83)
145 9四歩(95)
146 同 歩(93)
147 9三歩打
148 同 香(92)
149 9六桂打
150 9五銀打
151 2二飛打
152 6六香(65)
153 4二飛成(22)
154 6八金打
155 投了
まで154手で後手の勝ち

晩年の長谷部先生は振り飛車だったと思いますが、このころはどうだったのでしょう。大山先生が四間飛車穴熊に。

長谷部先生は天守閣美濃。端の位を取ったので自然な流れですが、このころから天守閣美濃があったのですね。松浦卓造先生の創案ということは知っていますが、もっと新しいかと思っていました。松浦先生は大山先生より年上のようで、であればこのころには出現していないとおかしいですね。もっと後で、谷川先生や森下先生や55年組が流行させたはず。

この46歩が作戦負けの元で、左美濃とは組み合わせが悪いです。

結局角筋を止めて囲いを強化し、展開を図ります。でも46歩がいらない手です。

千日手含みで大山先生に飛車を移動され、合わせておけば無難でしたが千日手を嫌っての48飛に35歩が軽い動きです。

さらに大山先生は軽く動きます。

27歩は部分的には仕方のない手でそれはいいのですが、35歩を突き捨てられているのが不満です。45歩が利かないので攻めるところがありません。

大山先生は73角から使います。それに合わせての飛車浮きです。

飛角筋を通して勝負にできればいいのですが、

35歩に39飛では今一つ。角をぶつけてさばきます。

角交換にはすぐに応じず、45歩としておくのがいいのですね。飛車を回り、垂れ歩で反撃の雰囲気は出てきましたが、飛車が使えないので長谷部先生が苦しいです。

41角に53金。危なさそうでも角と歩だけの攻めですから受けきれるという感覚です。

45桂を狙えば角を打って受けます。

さらに歩を突きだす手が63に利いていてぴったり。でもここで45歩でどうだったかと思います。43とから63歩成が狙い。72金や67歩成同金62歩には34と で44とと使えます。33桂には34歩です。食いつくチャンスだったのではないでしょうか。

43と から52馬だったので金を上がって受かっています。

連打で45歩と角筋を止めましたが、飛車を引けば受かっています。43金63歩成同金は55飛が嫌です。

と金を作り受けきりの気配が出てきました。37桂を取り切れば安心できます。

桂香を取り、18の馬を受けに使います。

この催促でいいのですね。84歩は75歩で馬が受けに利いています。これに引くしかないのでは大勢が決しました。

今度は馬を攻めに使います。

桂馬の打ちこみから

香車。得した桂香を金銀に替える寄せです。

こういうところは焦らず受けておくもの。

投了図。
まだ天守閣美濃の定跡なんてできていないころです。そのころに穴熊に天守閣美濃が指されていたとは驚きです。悪い作戦ではありません。居飛車の玉が堅いので、中盤に間違えなければ互角以上になります。
でも46歩が悪く、(当時はこれが疑問手だとは考えられていないでしょう)長谷部先生の作戦負けです。大山先生の軽い動きが流石の感覚です。35歩と突き捨てたほうが形がいいと後で気が付かされます。
長い終盤で勝負手を逃し、大山先生の受けが実を結びました。受けに使う飛角が勉強になります。
#KIF version=2.0 encoding=Shift_JIS
# ---- Kifu for Windows V7 V7.23 棋譜ファイル ----
手合割:平手
先手:長谷部久雄7段
後手:大山王将
先手省略名:長谷部
手数----指手--
1 7六歩(77)
2 3四歩(33)
3 2六歩(27)
4 4四歩(43)
5 4八銀(39)
6 3二銀(31)
7 5六歩(57)
8 4三銀(32)
9 6八玉(59)
10 4二飛(82)
11 7八玉(68)
12 6二玉(51)
13 5八金(49)
14 7二玉(62)
15 9六歩(97)
16 8二玉(72)
17 9五歩(96)
18 9二香(91)
19 8六歩(87)
20 9一玉(82)
21 8七玉(78)
22 8二銀(71)
23 7八銀(79)
24 5二金(41)
25 3六歩(37)
26 7一金(61)
27 2五歩(26)
28 3三角(22)
29 4六歩(47)
30 2二飛(42)
31 1六歩(17)
32 1四歩(13)
33 5七銀(48)
34 5四歩(53)
35 7七角(88)
36 6四歩(63)
37 6六歩(67)
38 7四歩(73)
39 6七金(58)
40 6二金(52)
41 5九角(77)
42 4二角(33)
43 6八銀(57)
44 3三角(42)
45 3七角(59)
46 5二飛(22)
47 5八飛(28)
48 3二飛(52)
49 4八飛(58)
50 3五歩(34)
51 同 歩(36)
52 4二角(33)
53 2六角(37)
54 2四歩(23)
55 同 歩(25)
56 2二飛(32)
57 3八飛(48)
58 2四飛(22)
59 2七歩打
60 6三金(62)
61 7七銀(68)
62 5三角(42)
63 1八香(19)
64 6二角(53)
65 8八玉(87)
66 7三金(63)
67 8五歩(86)
68 1三香(11)
69 5八飛(38)
70 6三金(73)
71 3八飛(58)
72 7三角(62)
73 3六飛(38)
74 5五歩(54)
75 同 歩(56)
76 6五歩(64)
77 同 歩(66)
78 5五角(73)
79 3四歩(35)
80 3五歩打
81 3九飛(36)
82 4六角(55)
83 3七角(26)
84 4五歩(44)
85 6四歩(65)
86 6二金(63)
87 2六歩(27)
88 5四銀(43)
89 5九飛(39)
90 5五歩打
91 5三歩打
92 3七角成(46)
93 同 桂(29)
94 2六飛(24)
95 4一角打
96 6六歩打
97 6八金(67)
98 5三金(62)
99 7四角成(41)
100 3六角打
101 3三歩成(34)
102 4六歩(45)
103 4三と(33)
104 同 金(53)
105 5二馬(74)
106 7二金(71)
107 4四歩打
108 同 金(43)
109 4五歩打
110 2二飛(26)
111 6一馬(52)
112 4三金(44)
113 2三歩打
114 4二飛(22)
115 6六銀(77)
116 4七歩成(46)
117 7五銀(66)
118 3七と(47)
119 5七飛(59)
120 1八角成(36)
121 8七飛(57)
122 2九馬(18)
123 5二歩打
124 7一金(72)
125 5一馬(61)
126 7四歩打
127 6六銀(75)
128 5六馬(29)
129 6七金(68)
130 4五馬(56)
131 4二馬(51)
132 同 金(43)
133 5一歩成(52)
134 6五歩打
135 7七銀(66)
136 2五角打
137 7九金(69)
138 6六桂打
139 同 銀(77)
140 同 歩(65)
141 同 金(67)
142 6五香打
143 8四歩(85)
144 同 歩(83)
145 9四歩(95)
146 同 歩(93)
147 9三歩打
148 同 香(92)
149 9六桂打
150 9五銀打
151 2二飛打
152 6六香(65)
153 4二飛成(22)
154 6八金打
155 投了
まで154手で後手の勝ち