名将会ブログ (旧 名南将棋大会ブログ)

名古屋で将棋大会を開いています。
みなさんの棋力向上のための記事を毎日投稿しています。

大山将棋研究(76);四間飛車穴熊に銀冠

2016-02-25 | 大山将棋研究
昭和48年1月、中原先生と第1回早指し選手権決勝です。


大山先生の四間飛車穴熊。中原先生相手にはもうやらないものかと思いましたが、意地っ張りです。

大山先生の先手ですから、位取りを拒否する、というのが研究でしょうか、その場の思い付きでしょうか。まねをしないほうがいい手です。

石田流には組めないので、銀を上がります。だから三間飛車に振りなおすのは損だと思うのです。相手にだけ74歩交換の権利があります。

中原先生からの開戦。

銀を出て66を目指すのが狙いでした。

1回4筋に飛車を回っても金を引かれると少し損したのかという気がします。

68飛に86歩同歩88歩で、攻めの手は続きます。

香車は取られても桂馬をさばけば振り飛車としては悪くないでしょう。ここで74歩ならよかったと思うのですが、65歩だったので

角交換で大山先生が少し損をしました。

そのあとで74歩と伸ばせば、角を打たれて

と金は作っても前の33金右と取った形を生かして飛車を転戦されます。後手から77歩がありますね。

これで飛角交換しかないです。

そのあと64馬が好位置なので、形勢は互角です。中原先生に銀をさばかれますが

ここで間違えました。飛車を取らずに27銀打なら45飛は逃げるしかなくやや大山先生のほうがよかったと思います。

飛車を取って銀を埋める。これが序盤の26歩を生かしてよいのだと判断したのでしょう。ですが穴熊では金をはがされるのでは飛車を取っても得とは言えません。

中原先生の好手。38金打が切れない攻めになります。

馬引きに46歩。取れば38金打なので馬を切るしかありません。

と金を使えば1手違いですが

これが敗着です。悪いとわかっての判断なのかもしれませんから、悪手ともいえないのですが、もちろん取ってはもらえず。42と のほうがもう少しアヤがありました。

これで受けがありません。

きれいに詰まされました。


大山先生は意地を張って四間飛車穴熊。石田に組もうとしなければいいのですが、そのために攻めの糸口を与えてしまいました。でも中原先生も88歩の筋しかないのではあまり自信はないでしょう。少し大山先生がリードして、65歩が疑問手。でも盛り返して馬を使うところが手厚い指し方です。終盤で飛車を取らなければよかったでしょう。飛車を取って馬筋が通るし、とやりたくなるところなのですけれど。
どちらの側も持って並べても勉強になります。大山先生の側から振り飛車らしい指し方を並べてもいいですし、中原先生の側から穴熊の攻略法を見るのもいいでしょう。


#KIF version=2.0 encoding=Shift_JIS
# ---- Kifu for Windows V7 V7.23 棋譜ファイル ----
手合割:平手  
先手:大山王将
後手:中原名人
手数----指手--
1 7六歩(77)
2 8四歩(83)
3 7八銀(79)
4 3四歩(33)
5 6六歩(67)
6 6二銀(71)
7 6八飛(28)
8 5四歩(53)
9 4八玉(59)
10 4二玉(51)
11 3八玉(48)
12 3二玉(42)
13 2八玉(38)
14 1四歩(13)
15 5八金(69)
16 5二金(61)
17 1八香(19)
18 3三角(22)
19 1九玉(28)
20 2二玉(32)
21 2八銀(39)
22 3二銀(31)
23 4六歩(47)
24 4四歩(43)
25 6七銀(78)
26 5三銀(62)
27 3九金(49)
28 4三金(52)
29 3六歩(37)
30 1五歩(14)
31 9六歩(97)
32 9四歩(93)
33 4八金(58)
34 2四歩(23)
35 7八飛(68)
36 8五歩(84)
37 7七角(88)
38 2三銀(32)
39 7五歩(76)
40 3二金(41)
41 2六歩(27)
42 8四飛(82)
43 3八金(48)
44 6四銀(53)
45 7六銀(67)
46 7四歩(73)
47 同 歩(75)
48 同 飛(84)
49 8八角(77)
50 7二飛(74)
51 7五歩打
52 4五歩(44)
53 同 歩(46)
54 8二飛(72)
55 7七角(88)
56 5五銀(64)
57 4八飛(78)
58 4二金(43)
59 6八飛(48)
60 8六歩(85)
61 同 歩(87)
62 8八歩打
63 9七桂(89)
64 8九歩成(88)
65 8五桂(97)
66 9九と(89)
67 6五歩(66)
68 4六銀(55)
69 3三角成(77)
70 同 金(42)
71 7四歩(75)
72 7七角打
73 7八飛(68)
74 8六角成(77)
75 7三歩成(74)
76 4二飛(82)
77 6三と(73)
78 4五飛(42)
79 5三角打
80 7七歩打
81 8六角成(53)
82 7八歩成(77)
83 6四馬(86)
84 4七銀成(46)
85 4六歩打
86 3八成銀(47)
87 同 金(39)
88 6八飛打
89 4五歩(46)
90 3八飛成(68)
91 2七銀打
92 4九龍(38)
93 8二飛打
94 4八金打
95 3七馬(64)
96 4六歩打
97 4八馬(37)
98 同 龍(49)
99 3九金打
100 5八龍(48)
101 5三と(63)
102 5五角打
103 6四角打
104 4七歩成(46)
105 5五角(64)
106 同 歩(54)
107 6七銀(76)
108 2八龍(58)
109 同 金(39)
110 3九銀打
111 7一飛打
112 2八銀成(39)
113 同 玉(19)
114 4六角打
115 3七銀打
116 同 角成(46)
117 同 桂(29)
118 3九銀打
119 同 玉(28)
120 3八金打
121 同 銀(27)
122 4八金打
123 投了
まで122手で後手の勝ち









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20160225今日の一手<その285>; 穴熊だから堅いわけではない

2016-02-25 | 今日の一手
20160225今日の一手

1月24日の名南将棋大会からKさんとUさんの対局です。形勢判断と次の一手を考えてください。




昨日の一手の回答

☆ 形勢判断をします。
先手の1歩得です。でも後手に持ち歩があるのでカウントせず、損得なしです。
玉の堅さは後手のほうが堅いです。
先手の攻め駒は86角1枚。
後手の攻め駒は33角82飛で2枚。

総合すれば後手がやや指せそうです。

大局観として
問題図以前ですが

86歩には同歩と取れば先手が十分でした。この戦型は66銀の形を作れれば振り飛車穴熊が作戦勝ち。作らせないように67銀65歩の形で45歩と角交換を挑んで66銀46歩同金がどうか・・・というのが定跡です。
86同歩の後は75歩54歩42銀75歩76歩66角86飛88歩

この形で文句はありません。居飛車穴熊に美濃囲いの66銀型で左側が同じようになる定跡がありましたが、それに比べれば玉の堅さに差が少ないから、振り飛車が十分です。
実戦では86歩を角で取ったので問題図。

一目後手が十分です。形勢はともかく後手がうまく戦機をとらえたという感じです。86角が質駒ですし、55銀も狙われています。おとなしく指していると強襲を食らいそうで、どうにか後手玉に食いついて勝負の順を探します。


× 実戦は53角成でした。

55の銀が当たっている状況で角を切るのは暴発です。攻め駒も足りませんし。53同金54歩43金寄に44銀打

もう破れかぶれのような攻めです。44同金同銀同角45歩

歩を成るために99角成を許すのでは望みなしです。手順はいいでしょう、こういう図になり

角香を取られて と金を作っただけです。
でもこの後チャンスはあり

後手は銀で穴熊を攻めているので駒を渡すことになりました。73角も遊んでいます。44桂と攻めればまだわからなかったはず。ここで33角成同桂24香同銀44桂といったので、駒が足らず寄せ合い負けです。


× 54歩は打ちたくなりますが

42銀と固めさせるのもつまらない感じです。58飛くらいしかないのですが

86飛同歩67角

59飛は58歩なので57飛89角成45歩

99馬44歩同金同銀同馬

これくらいでしょうか。桂香を拾われて馬を引かれ、45桂が残っています。まだ戦えるようにも見えますが、勝負の形には持ち込みにくいです。後手は飛車を追ってと金を作るとか、小さい駒で攻めることができます。
なお、最初に58飛でもほぼ同じことになるでしょう。


○ 勝負は64歩の筋しかありません。

後手は銀交換では飛車をさばかれるので55角63歩成42銀

角を切るのは と金から逃げられるのでうまくいかず、54歩52歩62歩

これで52と からの攻めを見ます。後手は急がなければいけません。86飛同歩57角

58飛39角成同銀99角成52と

穴熊の金をはがされたのは痛いのですが、これなら勝負になりそうです。55香には68飛から63飛成とできそうですし。


△ 56歩54歩を交換してから64歩と行くのがどうか。

55歩63歩成42銀には55歩と手を戻すしかなさそうです。逆に取り込まれるのも嫌ですし。

46歩54歩52歩62歩

5つ前の図と比べると46歩と取り込まれていて後手の角の位置が55から33に。46歩の取り込みが大きく、86飛同歩57角67飛66角左

拠点があるので飛角交換でもいいでしょう。これは後手が十分。56歩54歩は後手の得のようです。


× 56歩54歩で66銀と引くと

46歩同金86飛同歩79角

これは負けです。


× 66銀と引いて46歩55歩なら

どうにか収まりそうですが、24角48飛86飛同歩67角

左の銀桂を助けにくく、ゆっくり指すわけにはいかないようです。


穴熊を指すなら序盤研究が必要です。うまく66銀の形に組んだのに、86歩同角は間違い。穴熊で片寄る分だけ角打ちの傷が多いのです。Hさんは穴熊の堅さを過信していたのかもしれません。でも角も付いている4枚の銀冠のほうが堅いです。穴熊では大駒よりも金銀の価値が上がるということも多く、銀を1枚はがせば囲いの堅さは同等。でも角香損で と金を作っただけでは全然足りません。攻め駒の数が足りないのです。

級位者同士の戦いでは悪くなっても穴熊なら勝負になるので人気があるのですが、有段者になるとそうはいきません。序中盤の研究をして悪くならないようにor作戦勝ちになるようにして、終盤の独特な指し方で相手の疑問手を誘い、食いついて寄せるのです。読みの力と感覚の習得が必要です。初心者向きではありません。(穴熊が不得意な私のひがみが入っているのかもしれません、ごめんなさい。)
後手のOさんとしては、馬を引いてしっかり守り、と金を作って攻めるような指し方が理想です。







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